新語時事用語辞典とは?

2013年12月19日木曜日

オキシトシン

別名:OXT
別名:OT
英語:oxytocin

脳下垂体後葉から分泌されるホルモンの一種。9つのアミノ酸からなるペプチドホルモンである。

オキシトシンは主に平滑筋に作用するホルモンとして、子宮収縮作用や催乳作用が知られており、ヒトや家畜の出産時に陣痛促進剤として注射されることもある。オキシトシンは脳内で神経伝達物質としてはたらくことも知られている。

オキシトシンは母性や人間関係の形成などの社会行動や、不安の解消などに大きく関係しているといわれており、「絆のホルモン(bonding hormone)」と呼ばれることもある。マウスやヒツジなどを用いた動物実験では、オキシトシンの投与により、両親の協力関係や母子関係の向上が確認されている。

オキシトシンはまた、自閉症と関連することが知られている。自閉症の発症には、オキシトシン受容体(OXTR)の遺伝子変異が関係しているといわれているほか、自閉症患者の血中オキシトシン濃度が低い傾向にあることも知られている。

2013年現在、自閉症の有効な治療法は確立されていないが、オキシトシンは対症療法としての使用が期待されているほか、根本的な治療薬となりうる可能性もあるといわれている。オキシトシンの自閉症治療目的での処方は薬事法上認められていないが、金沢大学などでは臨床実験が行われている。

イスカンデル

別名:9K720イスカンデル別名:イスカンデルミサイル
別名:Искандер
別名:SS-26 Stone
英語:9K720 Iskander
英語:Iskander

2006年からロシア連邦軍で採用されている複数の戦域弾道ミサイルの総称。射程距離などが異なる「イスカンデルM」「イスカンデルE」「イスカンデルK」などのミサイルからなる。

イスカンデルは、中距離核戦力全廃条約による規制に対応可能なミサイルとして、旧ソ連時代から継続的に開発が行われていたと見られている。2013年現在におけるイスカンデルの開発、製造の主な目的は、米国が2000年代からヨーロッパで進めてきた「欧州ミサイル防衛計画」への対抗だとされている。米国は、欧州ミサイル防衛計画の対象を、イランなどの「ならず者国家」だと発表していたが、ロシアは自国が対象となっているとして、計画開始当初から反発していた。

2013年12月に、米国はロシアがカリーニングラード州にイスカンデルを配備したと見られることを明らかにしたとともに、イスカンデルの配備が地域情勢を不安定にするおそれがあるとして懸念を表明した。のちに、ロシア国防省は配備を事実だと認めた上で、国際条約上の違反はなく、批判されるいわれはないとして反発した。カリーニングラード州はロシアの飛び地で、NATO加盟国であるポーランドとリトアニアに挟まれた位置にある。イスカンデルの射程距離には東欧諸国やバルト三国が含まれることから、それらの国でも防衛上の懸念が高まっている。ロシアのメドヴェージェフ大統領は2008年には既に、カリーニングラード州へのミサイル配備を示唆する発言を行い、米国を牽制していた。

LAMP法

読み方:ランプほう
別名:LAMP
英語:Loop-Mediated Isothermal Amplification

日本の栄研化学が開発した遺伝子の増幅法。広く用いられているポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)よりも、簡易でコストが低いとされている。

LAMP法では、PCR法と同様に、増幅したい遺伝子とプライマー、DNA合成酵素、基質などを混合した液体が用いられるが、増幅反応が進行するメカニズムが異なっている。PCR法では、温度を一定時間ごとに変化させるために特殊な機器(サーマルサイクラー)を必要とするが、LAMP法は65℃付近の一定温度に保つだけで増幅を行うことができる。また、LAMP法では増幅反応が進行すると副産物のピロリン酸マグネシウムが大量に生じ、反応液が濁るため、電子泳動を行わずに目視で迅速に成否を判定できるという利点もある。

2013年現在、インフルエンザウイルス、結核菌、腸管出血性大腸菌、マイコプラズマなど様々な病原体に対して、LAMP法の原理を使用した迅速診断法が開発されている。2013年12月には、北海道大学の研究グループが、1検体あたり100円で結核とアフリカ睡眠病を診断できるキットを開発したと発表し、発展途上国での感染症対策に効果が期待できるとした。

関連サイト:
LAMP法の原理 - 栄研化学
結核、アフリカ睡眠病の100円診断キットを開発 - 北海道大学

白ニョン島

読み方:ペンニョンド
読み方:ペクリョンド
読み方:ペンリョンド
別名:ペンニョン島
別名:ペクリョン島
別名:ペンリョン島
別名:白翎島
別名:백령도
英語:Baengnyeongdo
英語:Baekryeongdo
英語:Baengnyeong Island
英語:Baekryeong Island

韓国・北朝鮮の国境付近から西方の黄海上に浮かぶ島。韓国の実効支配下にあり、行政上は仁川広域市に属する。仁川市街からは、約200キロメートル離れた場所に位置する。白ニョン島は、北朝鮮が実効支配している黄海南道の長山串から17キロメートルしか離れていないことから、軍事上の要衝とされ、大韓民国海兵隊の第六海兵旅団が置かれている。

白ニョン島と北朝鮮の支配地域は、朝鮮戦争の休戦協定締結後、韓国側が制定した北方限界線(NLL)によって隔てられたが、北朝鮮側はこのラインに同意しなかった。1999年に北朝鮮軍の船が韓国軍に撃沈される事件が起こると、北朝鮮は白ニョン島の南方に「海上軍事境界線」を制定するとともに、白ニョン島への水路を指定し、その内部では安全な通航を保証するとした。以後、白ニョン島の近海では数度にわたって韓国軍と北朝鮮軍の衝突があり、2010年には白ニョン島西南方で、46名の死者を出した哨戒艦「天安」沈没事件が起こった。

2013年12月には、北朝鮮が白ニョン島に向けて、「島全土を墓場に変える」と威嚇する内容の数千枚のビラを撒いたことが報じられた。

イッセン・ハブレ

別名:ハブレ大統領
別名:ハブレ元大統領
英語:Hissène Habré

1942年生まれのチャドの軍人、政治家。1982年から1990年にわたって、チャドの第6代大統領として独裁政治体制を敷いた。反対派に対する残虐行為で知られており、「アフリカのピノチェト」の異名もある。

イッセン・ハブレは大統領就任以前から、同じ反政府組織に属していたグクーニ・ウェディと対立しており、1980年にはハブレ派とグクーニ派の内戦が勃発した。グクーニ派がチャド北部を拠点とし、リビアのカダフィ政権の支持を得たのに対して、ハブレ氏が率いる政府軍は、カダフィ政権と敵対関係にあったフランスおよび米国の支援を受けた。内戦は1980年代後半まで続いたが、1990年にイドリス・デビのクーデターでハブレ氏が追放されたことにより、一旦終結した。

イッセン・ハブレは大統領時代に、秘密警察組織とされる「文書管理・保安局(DDS)」を設置し、グクーニ派をはじめとする反対派に対して多数の拷問や殺害を行ったとされている。また、複数の少数民族に対するジェノサイドの事例も報告されている。イッセン・ハブレは1990年に失脚した後、セネガルに亡命したが、後任のイドリス・デビ大統領が設置した委員会は1982年に、ハブレ氏による統治時代に4万人の粛清と20万件の拷問があったとする報告書を発表した。

チャドの裁判所は2008年の欠席裁判で、ハブレ氏に対して死刑判決を下したが、セネガル側が身柄の引渡しに応じず、拘束には至らなかった。その後、2013年7月に、アフリカ特別法廷はイッセン・ハブレと側近らを、人道に対する罪などの罪状で起訴するとともに、身柄を拘束した。ハブレ氏はアフリカの元国家元首が他国の裁判で裁かれる初のケースとなる。また、2013年12月には国際NGO団体のヒューマン・ライツ・ウォッチが、13年にわたってハブレ氏による人権侵害を調査した結果をまとめ、「死の荒野」と題した報告書を作成したことを発表した。

関連サイト:
チャド: ハブレ前政権は組織的に残虐行為を行っていた - ヒューマン・ライツ・ウォッチ