新語時事用語辞典とは?

2014年1月22日水曜日

ボン・ガイドライン

別名:遺伝資源へのアクセスとその利用から生じる利益の公正・衡平な配分に関するボン・ガイドライン
英語:Bonn Guideline
英語:Bonn Guidelines
英語:Bonn Guidelines on Access to Genetic Resources and Fair and Equitable Sharing of the Benefits Arising out of their Utilization

2002年にオランダのハーグで行われた生物多様性条約第6回締約国会議(COP6)で採択された、生物多様性条約に基づく遺伝資源へのアクセスと、それに伴う利益の配分について定めたガイドライン。

ボン・ガイドラインは、ABS(Access to genetic resources and Benefit Sharing)、すなわち「遺伝資源へのアクセスによって生じた利益の公平な配分」が国際問題となったことを背景として定められた。具体的には、先進国の企業などが発展途上国の遺伝資源を利用し、医薬品などの製品を開発したり、特許を申請したりして利益を上げているにもかかわらず、発展途上国にはその利益が還元されないという構造があったことが問題視されていた。その是正のために、発展途上国側の提案により策定されたのがボン・ガイドラインであった。

ボン・ガイドラインでは、PIC(Prior Informed Consent)やMAT(Mutually Agreed Terms)と呼ばれる、遺伝資源利用に際しての合意形成に関して、一定の基準が定められ、ABSに関する基本的な概念が明文化された形となった。しかし、ボン・ガイドラインはあくまで任意のガイドラインであり、法的拘束力を持つものではなかった。

その後、発展途上国を中心に、新たな枠組みを必要とする声が高まったが、複数の論点に関して対立の構図が続き、実現したのはボン・ガイドライン採択の9年後にあたる、2011年の生物多様性条約10回締約国会議(COP10)であった。COP10では法的拘束力を持つ「名古屋議定書」が採択されたが、その基本的な理念は、ボン・ガイドラインをそのまま踏襲する形となっている。

関連サイト:
ボン・ガイドライン - 財団法人バイオインダストリー協会生物資源総合研究所

古式捕鯨

読み方:こしきほげい

日本における伝統的な捕鯨の手法の総称。その中でも特に、「網取り式捕鯨」と呼ばれる手法を指すことが多い。

広義の古式捕鯨は有史以前から行われてきたといわれており、初期は沿岸での追い込み漁や、銛や槍などでクジラを突いて仕留める「突き取り式捕鯨」が行われてきたことが記録されている。1677年に、現在の和歌山県太地町で和田頼治(太地角右衛門)が網取り式捕鯨を開発すると、江戸時代から明治時代にかけてこの漁法が全国各地に広がり、盛んに行われるようになった。なお、網取り式捕鯨の発祥の地である和歌山県太地町は「古式捕鯨発祥の地」として知られている。

狭義の古式捕鯨である網取り式捕鯨は、数十隻の船団でクジラを網に追い込み、銛などで突いて仕留める漁法のことである。それぞれの船には「網船」や「勢子船」など異なる役割が与えられており、陸上にはクジラの位置を確認し、狼煙や旗で船団に伝える、「山見」と呼ばれる人員が配置された。網取り式捕鯨を行っている様子は、太地町立くじらの博物館所蔵の「古式捕鯨蒔絵」に記録されている。

網取り式捕鯨は、多数の漁師を動員する必要があり、経営が難しかったことなどから、19世紀前半をピークとして次第に衰退し、捕鯨砲と捕鯨船によるノルウェー式捕鯨に取って代わられることとなった。現在、古式捕鯨の伝統は途絶えているが、関連する施設の跡が史跡に指定されていたり、道具が博物館や資料館などに収蔵されている例がある。

追い込み漁

読み方:おいこみりょう
別名:追込み漁
別名:追い込み猟
別名:追込み猟
英語:drive fishing
英語:drive fishery
英語:drive hunting

音や光などによって、水中に仕掛けられた網に魚などの群れを誘導して捕らえる漁法。一般的に、浜辺や浅瀬などで、数人から数十人ほどの熟練した漁師によって行われる。

群れを追い込む具体的な方法としては、漁師が海に潜って泳いだり、竹竿などで水面を叩いたり、漁船を走らせたりして誘導する方法などが一般的である。追い込み網と呼ばれる網を用いる方法もある。

追い込み漁やそれに類似する漁法は世界的に見られるが、日本でも伝統漁法として各地に残っている。特に、沖縄県の伊良部島で行われている「アギヤー」や、和歌山県太地町などで行われているイルカ追い込み漁はよく知られている。また、追い込み漁は海だけでなく、アユなどを対象として、川でも行われることがある。近年では、ブルーギルやブラックバスなどの外来魚駆除において、追い込み漁の手法を応用している例もある。

このほか、鳥などが水面で羽ばたくことによって魚を誘導し、捕食する行為が「追い込み漁」と表現されることもある。

太地町

読み方:たいじちょう
英語:Taiji-cho
英語:Taiji town
英語:Taiji

和歌山県東牟婁郡にある、熊野灘に面した漁業の町。町域は和歌山県の自治体で最も小さく、人口は2014年現在の時点で約3000人である。日本における古式捕鯨発祥の地とされ、古くから捕鯨で栄えた歴史を持つ。

1988年に、国際捕鯨委員会(IWC)により、遠洋捕鯨や沿岸のミンククジラ漁を含む商業捕鯨が禁止されて以降、太地町ではゴンドウクジラなど、規制対象外のクジラ類を対象とした沿岸漁業や、イルカ追い込み漁が行われてきた。捕鯨産業は1988年を境に、急速に衰退したものの、依然として町の重要な収入源となっている。太地町では「新たな町づくり」を掲げ、「くじらの博物館」やクジラ・イルカとの触れ合い体験など、鯨を取り上げた観光産業を推進している。

太地町はしばしば、捕鯨に反対する動物愛護団体や環境保護団体の批判の対象とされてきた。特にシー・シェパードを中心とした過激派団体は、太地町に常駐して漁の監視を行い、漁師に対して暴言を浴びせ挑発したり、網を切断して漁を妨害するなどの行為を繰り返してきた。2009年には、太地町におけるイルカ漁の盗撮映像を基にした映画「ザ・コーヴ」が公開された。

関連サイト:
古式捕鯨発祥の地、太地町公式ホームページ
イルカ漁等に対する和歌山県の見解 - 和歌山県情報館

イルカ追い込み漁

読み方:イルカおいこみりょう
別名:イルカ追い込み猟
別名:イルカ追込み漁
別名:イルカ追込み猟
英語:dolphin drive fishing
英語:dolphin drive fishery
英語:dolphin drive hunting

水中に仕掛けられた網に、イルカ(小型のクジラ)の群れを追い込んで捕らえる捕鯨の漁法。イルカ追い込み漁は、イルカの漁法としては原始的な部類にあたり、世界各地で類似の漁法が行われていたが、2014年現在、この漁法を行っている地域は日本の和歌山県太地町にほぼ限られている。

日本では、かつては全国各地でイルカ追い込み漁が行われてきたが、明治時代の初め頃に、不採算などを理由として中止した地域が多い。2009年に静岡県伊東市の富戸で9頭のバンドウイルカが漁獲されたが、それ以降は和歌山県太地町のみで漁が行われている。太地町は古式捕鯨発祥の地として知られているが、中大型の鯨ではなくイルカを対象とした追い込み漁の開始は比較的最近のことで、伊豆の富戸や川奈で行われてきた漁法を学び、1969年から本格的に行われるようになったものである。

イルカ追い込み漁は、食肉や脂肪、革などを得るためだけでなく、生きたまま捕獲して水族館などの展示(イルカショー)や、学術研究に供するために行われることもある。また、地域によってはイルカによる漁具などへの被害が問題化している場合があり、害獣駆除としてイルカ追い込み漁が行われた例もあった。

イルカ追い込み漁に対しては、イルカに苦痛を与えるものだとして、動物愛護団体や環境保護団体などによる批判が行われており、一部の過激派団体が網を切断するなどの妨害行為を行った例もある。また、2014年1月にアメリカ国務省は、和歌山県太地町のイルカ追込み漁に対して「持続可能性と人道性を懸念している」とする反対意見の表明を行った。和歌山県は、太地町のイルカ追い込み漁を「地域特有の文化」と捉えており、水産庁の監督のもと、科学的調査の目的を兼ねて行っているとした上で理解を求めている。

関連サイト:
イルカ漁等に対する和歌山県の見解 - 和歌山県情報館