新語時事用語辞典とは?

2016年10月29日土曜日

生前退位

読み方:せいぜんたいい

王位や皇位などについて、存命中に地位を退くことを指す言い方。

生前退位は「退位」の便宜的な言い方である。基本的に終身制の地位であり、かつ、ほとんどの場合は逝去に伴って後継者が選ばれるような地位について、存命中に地位を退くという点を際立たせるために敢えて「生前」の語が添えられている。

たとえば、オランダ王室では、生前退位は特段珍しいことではない。2013年1月には、オランダのベアトリクス女王が2013年4月をもって王位を王太子ウィレムに譲位すると発表した。これは生前退位に相当する。ちなみに先代の女王ユリアナも生前退位している。

2013年2月には、ローマ教皇ベネディクト16世が自ら退位を表明した。ローマ教皇の生前退位はおよそ600年ぶりの出来事であり、極めて異例という。ベネディクト16世は退位の理由を、高齢に伴う身体の衰えとしている。

2016年8月には、天皇陛下が退位の意向を示す「お言葉」を公にされた。天皇が崩御に伴わず退位された事例は、2016年時点では江戸時代後期(約200年前)の光格天皇の事例が最後としている。

天皇陛下がお示しになった意向も、当初は「生前退位」の語をもって報じられた。ただし「生前」という表現はもっぱら故人について言及する際に用いられる語であり、存命中の陛下について用いることは適切でないとの見解もあった。2010年10月末頃には、産経新聞は「譲位」、朝日新聞は「退位」の語に換えることを表明している。


関連サイト:
象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば - 宮内庁
Queen Beatrix of the Netherlands to abdicate for son - The BBC News 28 January 2013
Queen Beatrix of the Netherlands abdicates in favour of son - The Guardian, Monday 28 January 2013
Pope Benedict gives last Sunday blessing at Vatican - The BBC News 24 February 2013
Pope Benedict XVI's shock resignation breaks '600-year taboo' - The Guardian, Monday 11 February 2013

2016年10月27日木曜日

バーセシズム

英語:Birtherism

生まれ(birther)に基づく偏見や先入観を意味する語。特に、バラク・オバマ第44代アメリカ大統領について、アメリカ本土出身ではない(ハワイ州生まれである)ため米国大統領にふさわしくないとする考え方・立場を指すことが多い。

バーセシズムと同様に出身地によって偏見や差別的な視点をもつことを「バーシズム」(birthism)と呼ぶこともある。

バーシズム

英語:Birthism

生まれ・出自・出生地などにもとづく偏見・先入観・差別を指す語。英語で「生まれ」を意味する birth(または birthplace)に、「主義」の意味を加える接尾辞「-ism」を加えた表現をカタカナ表記したもの。

豪州の教育関連ニュースメディア「Campus Review」では、バーシズムを「出生地に依拠した偏見や先入観を指すことば」というように定義している。
BIRTHISM
Birthism is a new word for a very old kind of bias or prejudice against others according to their birthplace.
―― Campus Review October 2, 2012

バーシズムとほぼ同じ意味の語に「バーセリズム」(Birtherism)がある。バーセリズムは、特にアメリカ大統領バラク・オバマに対して、アメリカ本土の生まれではないために大統領としてふさわしくないとする考え方、および、そうした立場を取る者を指す語として用いられている。

2016年10月19日水曜日

ヘイト対策法

読み方:ヘイトたいさくほう
別名:ヘイトスピーチ対策法
別名:本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律

国籍の違いや肌の色の違いなどの人権差別を煽る言動を規制するための法律の呼称。

ヘイト対策法では、ヘイトスピーチをした者への罰則規定は設けられておらず、主にヘイトスピーチの防止のための活動指針や、ヘイトスピーチを受けた人への支援などが盛り込まれている。

関連サイト:
本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案 - (PDF)

2016年10月12日水曜日

アシッドアタック

英語:acid attack
英語:acid attacks

強酸を用いた攻撃。特に女性の美貌を損なう目的で行われる暴力行為を指す語として用いられる。

女性への暴力としてのアシッドアタックは、インドやパキスタンおよびその周辺の国・地域で比較的多く見られる。男尊女卑の文化が根強く、酸が入手しやすいといった経緯があると見られている。

アシッドアタックにより酸を浴びせられると、肌は焼けただれて半ば崩れたようになってしまう。目に浴びれば失明は避けられない。被害者は生涯にわたって消えない大きな痕に苦しめられることになる。

アシッドアタックの被害者を救済する団体としては、Acid Survivors Trust International やMake Love Not scarsなどがある。

過労死ライン

読み方:かろうしライン

過労死に直結する健康障害リスクが高まると見なされている時間外労働時間の通称。具体的には「時間外労働時間数が月平均80時間を超過している勤務状況」と規定されることが多い。

過労死ラインを月平均80時間超とする規定は、2001年の厚生労働省の通達に根拠が求められる。

同通達は過労死の原因となりうる(労災認定の対象となる)疾患の発生と労働との関係について、「発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」との見解を示している。

過労死の原因として想定されている疾患は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等」、つまり脳梗塞、くも膜下出血、心筋梗塞といった急性疾患である。(脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について

2001年の厚生労働省の通達では、「1か月当たりおおむね80時間」の他にも、「発症前1か月間におおむね100時間」等の目安を提示している。時間外労働の時間が長くなればなるほど、業務と発症との関連性が強くなっていくとされ、特に時間外労働の時間が45時間を超えてくる辺りからこの傾向が認められるという。

政府は2014年に「過労死等防止対策推進法」を成立させ、同法第6条に基づき2016年10月に「過労死白書」(過労死等防止対策白書)を公表している。

関連サイト:
「過労死等防止対策白書」を公表します ― 厚生労働省 平成28年10月7日
いわゆる「過労死ライン」と呼ばれている、時間外労働時間数が月平均80時間というのはどの法律に根拠が示されているのか知りたい。 ― レファレンス協同データベース 2013年09月20日

過労死白書

別名:過労死等防止対策白書
別名:我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況

国内の過労死の自体、および、過労死の防止ための政府の取り組みについて取りまとめた報告書。2014年に成立した「過労死等防止対策推進法」第6条に基づき、2016年10月に初めて作成・公表された。

過労死白書は、過労死等の現状をつぶさに報告すると共に、過労死問題を受けて成立した過労死等防止対策推進法の概要と成立経緯、および、過労死の防止に関する取り組みの枠組みと各種対策の実施状況などがまとめられている。

関連サイト:
「過労死等防止対策白書」を公表します ― 厚生労働省 平成28年10月7日

2016年10月11日火曜日

日本国憲法第2条

別名:日本国憲法第二条
別名:憲法第2条
別名:憲法第二条
別名:憲法2条
別名:憲法二条

憲法(日本国憲法)第1章、第1条に次いで記載されている条文。

日本国憲法第1章は天皇に関する規定である。第2条の条文は皇位の継承について規定している。
第二条  皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。 ―― 日本国憲法(e-Gov)
 すなわち皇位継承は世襲制であり子孫に継承されること、および皇室典範に則り継承が行われることという2点を規定している。

なお、皇室典範の第1章は「皇位継承」について規定しており、その第1条が「皇統に属する男系の男子」が皇位を継承するものと定めている。いわゆる女性天皇の是非をめぐる問題では、皇室典範第1条第1章が焦点となる。

2016年8月、今上天皇が「生前退位」への御意向を示され、各メディアで大きく報じられた。生前退位の是非は皇室典範では規定されておらず、暗に認められていない状態となっている。生前退位を可能とするには日本国憲法第2条に則る以上は皇室典範の改正が必要となる。

棍棒外交

読み方:こんぼうがいこう
別名:ビッグスティックディプロマシー
英語:Big Stick Diplomacy

他国にとって脅威となり得る強大な力を携えつつ穏やかな姿勢で対話に臨む、という外交方策を指す表現。軍事力や経済力を背後にちらつかせつつ対話による協調に取り組む。外交政策としては積極的であり多分に攻撃的でもある。

20世紀初頭の米国でセオドア・ルーズベルトが初めて使用した表現とされており、その含意はアフリカのことわざに由来するとされる。

2016年10月4日火曜日

オーサグラフ世界地図

読み方:オーサグラフせかいちず
別名:オーサグラフ図

慶応義塾大学 政策・メディア研究科 鳴川研究室+オーサグラフ株式会社が製作した世界地図。1枚の長方形の図に、陸地の形状と各地・各国の面積比がほぼ正確に描くことに成功している。

一般的には、「世界地図」といえば、メルカトル図法に代表される「地図投影法」や、国連旗のデザイン等で知られる「正距方位図法」といった図法が知られる。ただしいずれの図法も、図の端に位置する地域が多かれ少なかれ歪んでしまう難点がある。オーサグラフ世界地図は北極圏から難局大陸まで地球全土を極力正しい形で1枚の平面上に描くという。

オーサグラフ世界地図は2009年に公開された。一般向けに販売もされている。2016年にはグッドデザイン賞のベスト100およびグッドデザイン大賞受賞候補6点にも挙げられている。

関連サイト:
AuthaGraph

2016年10月3日月曜日

大隅良典

読み方:おおすみよしのり
英語:Yoshinori Ohsumi

生物学者。専攻領域は分子細胞生物学。細胞が自らの細胞質成分を分解する「オートファジー」の研究により知られる。同研究の功績により2016年ノーベル医学・生理学賞を受賞した。

1945年福岡県生まれ、1967年東京大学教養学部卒業、1972年東京大学理学系研究科博士課程修了。2009年に東京工業大学特任教授に就任。2016年現在は同校名誉教授。

大隅良典は1990年代前半に、出芽酵母においてオートファジーが行われる経過を世界で初めて、顕微鏡を用いて肉眼で観察した。その後もオートファジーの構造やメカニズムの分析・解明を推進した。大隅の一連の研究とその成果はオートファジー研究のブレークスルーの役割を果たしたと評価される。

オートファジーは、細胞が飢餓状態と乗り切るために酵素のリサイクルを行う、細胞の基本的な機能の一つであると見られている。

大隅良典が研究対象とするオートファジーは、1990年代にはすでに提唱・命名がなされていたが、研究領域として注目されることはほとんどなかったといえる。東京工業大学の教員紹介ページは、「オートファジー関連の論文は、1990年代初めは年間10件程度だった」と記述している。なお、同記事は、2012年の時点では年間2000件に上る勢いで増加しているとも述べている。

2005年に大隅良典は藤原科学財団主宰の藤原賞を受賞。翌2006年に日本学士院賞、2012年に稲盛財団より京都賞が授与されている。2013年9月には論文が引用された数の多さに基づき選出される「トムソン・ロイター引用栄誉賞」にも選ばれている。

関連サイト:
大隅研究室 - 東京工業大学
大隅良典 - 東京工業大学 教員紹介
自分を食べて生き残る細胞に魅せられて - JT生命誌研究館サイエンスラボラトリー
「トムソン・ロイター引用栄誉賞」を発表。日本からは、東京工業大学の細野秀雄氏、大隅良典氏、東京大学の水島昇氏 - トムソン・ロイター2013年 プレスリリース