新語時事用語辞典とは?

2020年5月27日水曜日

ニューノーマル

別名:新常態
別名:新たな常態
別名:新しい普通
英語:new normal

ニューノーマルは「かつての社会とは異なる新たな世界秩序」を指す意味合いで使われる言葉。これまで当然とされてきたことが当然でなくなり、ありふれていたものが衰退・消失し、従来とは違った生活様式が「普通」として浸透するという、新たな社会のあり方や価値観などを指す語である。

ニューノーマルは、2000年代末の金融危機(リーマンショック)の機に提唱された言葉である。そして2020年現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連する(いわゆる「アフターコロナ」の世界を指す)語としてもしばしば言及されている。

リーマンショックもコロナ禍も、どちらも世界を震撼させる大きな出来事が生じて世界経済を落ち込ませる出来事だっだといえる。ここから立ち直るとしても、完全に以前の経済状態へと回復・復旧することは不可能に近い。もし以前と同様の水準まで回復できたかのうように見えても、そこには質的・構造的な変化が生じており、全く別も経済へ変容している可能性が高い。

「ニューノーマル」はリーマンショックに絡む表現であることもあり、経済寄りの文脈で用いられることが多い。新型コロナウイルスの関連では「アフターコロナ」および「ウィズコロナ」という言い方がニューノーマルと同様の意味合いで用いられている。

アフターコロナ

別名:アフターコロナウイルス
別名:コロナ後
英語:after coronavirus
英語:after the coronavirus

アフターコロナとは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行した後の社会のあり方を問う文脈で用いられる表現。コロナ禍は社会に不可逆的な変化をもたらした(完全に「コロナ以前」の状態へ戻ることはもはや不可能)という見解を前提した上で「今後あるべき社会」を模索・提言するような文脈で用いられる。

アフターコロナの社会像は、感染症の存在を前提した生活を今後も継続してゆくということである。典型的には、ソーシャルディスタンスの確保、人が密集するライブ等イベントの減少、リモートワークの積極的導入、ウェブ会議の増加、オンライン飲み会の導入、非接触型決済の普及浸透などが挙げられる。国家レベルではグローバル化の流れが停滞し縮小に転じるのではという見方が強い。

「アフターコロナ」はしばしば「ウィズコロナ」という言葉と共に言及される。「ウィズコロナ」は「コロナウィルスと共にある」時期を指し、コロナウィルスの感染例や感染の脅威がいまだ残存している時期を指す。

厚生労働省は2020年5月に《新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」》と題した行動指針を公表している。これは一種のアフターコロナの社会像といえる。

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2020年5月22日金曜日

コロナ疎開

読み方:コロナそかい

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が都心部を中心に流行しつつある状況を危惧し、都心在住者が、帰省あるいは旅行の名目で地方に移動しようとすること。地方へウイルスを持ち込むリスクを考えず、国の封じ込め政策を害する、自己中心的な行為として非難されている。

「疎開」とは、都会で暮らしている人が災禍を逃れるために居所や財産を移すことである。
 新型コロナウイルスに関しては、たしかに、都会より人口の密集度合いの低い田舎の方が、感染する可能性が低いとは言い得る。しかしながら、疎開した当事者が実はすでにウイルスを体内に取り込んでいる(無症状のキャリアである)という可能性を払拭することは難しい。つまり、疎開した当事者がウイルスを田舎で蔓延させる要因になる可能性が拭いきれない。

2020年4月初頭には、東京や大阪などから鳥取などへ観光客が大挙している旨や、鳥取県知事がこれに苦言を呈したことなどが報じられるに至った。

ソーシャルディスタンシング

別名:社会的距離の拡大
別名:社会的距離を取るということ
別名:ソーシャルディスタンスの拡大戦略
英語:social distancing

ソーシャルディスタンシングは、感染症の感染リスクを低減するために、他人と接近しすぎず、ある程度の物理的な距離を置くことである。2020年現在は新型コロナウイルスの感染拡大抑止策として言及される機会が多い。

ソーシャルディスタンシングの適切な実践には、感染者のマスク着用と並び、飛沫や接触によるウイルスの伝播(ヒト-ヒト感染)のリスク低減の効果が期待できる。各人が物理的距離を置くことは、いわゆる「3密」状態の1要素である「密接」を回避することであり、ひいては「密集」を避けることにもつながる。

「ソーシャルディスタンシング」と同様、「ソーシャルディスタンス」という表現も、しばしば同義語的に用いられる。ソーシャルディスタンシングは、基本的には「(物理的)距離を取る」という動作・行動を指す表現である。他方、ソーシャルディスタンスは「(個々人間の)距離」を指す表現であり、しかも往々にして「個人が確保したいパーソナルスペース」という心理学的な概念として用いられる語彙でもある。感染症対策を指す場合は「ソーシャルディスタンシング」の方がより適切な表現といえる。とはいえ、通俗的な文脈では特に区別されずに用いられている場合も少なくない。

2020年5月21日木曜日

不要不急

読み方:ふようふきゅう

不要不急とは

不要不急とは、無用でいそぎでないことを表す語。不要は不必要、無くてもよいこと、またそのさまを表す語で、不急は差し迫っていないこと、またそのさまを表す語である。

不要不急の用例、使い方


  • 不要不急の外出を控える
    食料品の買い物や通院など、生活する上で必要最低限以外の外出を控えるということ。
  • 不要不急の経費を削減する
    実利を伴わない会合や会食、出張などを中止して経費の削減を図るということ。
  • 受験勉強には不要不急な本
    受験に合格するために必要とされる参考書や辞書以外の本のこと。


不要不急の英訳

不要不急を英語で表すと nonessential and nonurgent(non-essential non-urgent)となる。nonessential は本質的でない、肝要でないといった意味であり、nonurgent は切迫してない、緊急でないという意味である。

不要不急の対義語

不要不急の対義語は、必要性が高い、緊急性が高いという意味をもつ「喫緊事(きっきんじ)」「喫緊の課題」などが挙げられる。喫緊には「差し迫っていて大事なこと」といった意味がある。


2020年5月15日金曜日

ソーシャルディスタンス

別名:社会的距離
英語:social distance

ソーシャルディスタンスは「人と人との間の(物理的な)距離」を意味する言葉である。2020年現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の飛沫感染のリスクを低減するために意識するべき要素として言及される機会が多い。

ソーシャルディスタンスという概念が登場する言及機会は、「感染症の飛沫感染リスクを抑えるために、あまり人と近寄り過ぎず、常に一定以上の距離を確保するように意識しましょう」と呼びかける場面である。これは日本政府が提唱している「3密の回避」を実現するためにも重要である。

「3密を回避するために人を近づきすぎず距離を取る」という行動は、つまり「相手との距離」そのものではなくて「距離を取るという行動」を指す場合は、「ソーシャルディスタンス」ではなく「ソーシャルディスタンシング」(社会的距離の拡大)と呼ばれることが多い。ただし通俗的には両者の区別が意識されずに用いられていることもある。

新型コロナウイルス感染症は《飛沫感染》が主な感染経路のひとつと考えられている。できるだけ飛沫感染を抑えるために実施できる手軽な方法として、飛沫が到達しにくい距離まで遠ざかるという方法が含まれる。このため、新型コロナウイルス感染症の対策としてソーシャルディスタンスの概念が重視される。

飛沫感染のリスクを抑える方法としては「そもそも飛沫を飛ばさない」ことも重要である。マスクの着用や、せき・くしゃみをする際に口元を袖で覆うといった動作は、飛沫を飛ばさないための工夫として効果が期待される。

なお、2020年5月時点の厚生労働省の見解では、新型コロナウイルスは飛沫感染と接触感染が主な感染経路と考えられている。接触感染のリスクを抑えるためには、まめに手を洗う、手に触れる対象物をまめに清掃・消毒する、手を口元にやる癖があれば意識して抑える、といった対策が推奨される。

飛沫感染対策としてのソーシャルディスタンスが具体的にどの程度の距離であるか、特に統一的な基準があるとは言いがたい。時と場所によって取りうる距離も違ってくる。平板な指針としては「行動に支障がでない範囲でできるだけ」のように括るほかない。

日本語ではソーシャルディスタンスは「社会的距離」と訳されることが多い。ソーシャルディスタンスは、「個人が《自分のパーソナルスペースを侵害された》という意識を抱かずに済む十分な対人距離」という意味で用いられる語でもある。この意味におけるソーシャルディスタンスは、相手との関係によっても距離が違ってくる。親しい間柄ほどソーシャルディスタンスは近く(距離が短く)なり、全く面識がなかったり警戒心を抱いていたりすると距離が開く。

2020年5月8日金曜日

アドレノクロム

英語:adrenochrome

アドレノクロムとは

アドレノクロムとは、副腎から分泌されるアドレナリンをカテコール酸化酵素または酸化銀で酸化した化合物のこと。化学式はC9H9NO3。アドレノクロムは不安定な化合物で、pH7.3、37℃という人体の組成に極めて近い状況下では顕著な分解が見られる。乾燥した結晶状態では赤色、赤紫色をしている。アドレノクロムの誘導体であるアドレノクロムモノアミノグアニジンは血管強化薬などに用いられている。

アドレノクロムとアドレナリン

アドレノクロムの前駆体であるアドレナリンは、緊急時など交感神経が興奮した状態において副腎髄質(副腎の一部)から分泌されるホルモンで、気管支の拡張、皮膚や粘膜といった末梢血管の収縮、血圧の上昇、心拍数の増加などの作用がある。アドレナリンは1895年、ポーランドの生理学者であるナポレオン・サイブルスキーによって発見された。さらに1900年には、日本人科学者である高峰譲吉と、助手の上中啓三が牛の副腎からアドレナリンの抽出と結晶化に成功し、その後、アドレナリンの製造開発が本格的に進められた。

アドレノクロムには出血時間を短縮させる効果がある

アドレナリンの酸化化合物であるアドレノクロムに注目が集まったのは、アドレノクロムに出血時間を短縮させる効果が認められたためである。もともと医療用の局所麻酔薬には、血管収縮剤としてアドレナリンが添加されている。これは、アドレナリンの末梢血管を収縮させる作用を応用したもので、局所麻酔薬を投与した部分の血管を収縮させて麻酔薬を持続させる効果がある。その際に、局所的な止血作用が起こっているのが確認されたのだが、これはアドレナリンが体内で酸化してできたアドレノクロムに止血効果があるためではないかといわれた。研究の結果、アドレノクロムには止血効果が認められ、血管強化薬として使用されるようになった。

アドレノクロムモノアミノグアニジンの開発

アドレノクロムに止血効果があることが認められたものの、アドレノクロムは自然状態では極めて不安定な化合物だったため、血管強化薬としての応用は難しかった。そこで、より安定性の高いアドレノクロムモノアミノグアニジンが開発され、血管強化薬として使用されるようになった。アドレノクロムモノアミノグアニジンの作用機序については不明な点が多いものの、ヒト由来の液状フィブリン接着剤といった血液製剤のように血液を凝固させるのではなく、血管透過性を抑制して止血作用を示すものと考えられている。またアドレノクロムと同様の効果を持つものとしてカルバゾクロムスルホン酸ナトリウムがあり、こちらも血管強化薬として用いられている。

一方、アドレノクロムは、1950~1960年代、カナダの生化学者であるエイブラハム・ホッファーが統合失調症の原因であると主張したため、世間の注目を集めたこともある。この説は「アドレノクロム仮説」といわれ、ビタミンやミネラルの不足によりアドレノクロムが正常に代謝されなくなった結果、体内のアドレノクロムが過剰になり統合失調症を発症する可能性がある、とされた。このため、統合失調症の患者にメガビタミン療法という、ビタミンCとナイアシン(ビタミンB3の一種)の大量療法が行われたこともある。しかし、この治療はその後の追加研究によって効果が確認できず、それによりアドレノクロム仮説も徐々に衰退していった。

また、このアドレノクロム仮説では、過剰になったアドレノクロムが幻覚作用や思考障害を引き起こす原因であるとされた。このため映画やテレビでは、強い幻覚作用があるドラッグのように扱われたこともある。インターネットにおいても、アドレノクロムが若返りの薬のように書かれた記事が散見されるが、そのような効果があることは確認されていない。なお、アドレノクロムはさまざまな実験に用いられることもあり、日本では富士フィルム和光純薬株式会社が研究用の試薬として販売している。

プラットフォーム

英語:platform

プラットフォームとは、プラットフォームの意味

プラットフォームとは、駅のプラットホームやデッキ、演壇、高い足場などの意味を持つ語である。ビジネス用語としては、物やサービスを利用する人と、提供者をつなぐ場のことである。IT用語としてのプラットフォームはソフトウェアが動作するための土台を指す。また、靴においては、つま先から甲の部分の厚いものをプラットフォームと呼ぶ。

プラットフォームの語源

プラットフォームは、「台」「壇」「舞台」「乗降場」などの意味を持つ英語の platform を語源としており、「一段高くなった平らな所」を意味する。転じて、駅のホームやバス停における、一段高くなっている場所を指すようになった。現代においてはビジネス用語として、また靴の種類の1つとしてプラットフォームの語が使われるようになった。

IT用語におけるプラットフォーム

IT用語におけるプラットフォームは、ソフトウェアを動かすための土台、基盤を指す。例えば、文書作成ソフトや表計算ソフトを動かすためのプラットフォームはOS(オペレーティングシステム)である。具体的には、Windows や iOS、Android などが挙げられる。また、Windows などの OS を動かすためのプラットフォームは、パソコンやモバイル端末などが挙げられる。

一般的に、異なるプラットフォームではソフトウェアは動作しない。例えば、Windows 用のソフトウェアは、Macintosh などの iOS を搭載したパソコンでは動作しない。

最近では、複数のプラットフォームに対応したソフトウェアが登場している。これらのソフトウェアをマルチプラットフォーム、あるいはクロスプラットフォームと呼ぶ。


2020年5月7日木曜日

クリエイティブ

英語:creative

クリエイティブとは、クリエイティブの意味

クリエイティブとは、一般的には創造的、独創的であること。日本語では、広告の製作物のことをクリエイティブと表現する。広告素材のクリエイティブにはバナー広告やテキスト広告、メール広告の3種類がある。インターネット広告でクリエイティブという場合には、主としてバナー広告を意味する。バナー広告およびテキスト広告は、クリックすることによって広告主のWEBサイトに遷移するものである。

クリエイティブの語源

クリエイティブの語源は英語の creative という形容詞にある。英語の creative は、創造するという意味を持つ動詞の create と「~の性質を持つ」という意味のある「ive」が組み合わさった単語である。英語の creative は創造的な、独創的な、創造力のある、工夫して作る、編み出されるなどの意味を持つ言葉である。creative の語源はラテン語の creare で、産み出す、育てるという意味がある。「創造する」という意味合いには、神が世界を創造したというニュアンスが含まれる。すなわち、これまでなかったものを神が作り出したという意味である。人間の手によって創造される場合も、これまでなかったものが作り出されることを意味する。

クリエイティブという言葉を形容詞として使う場合は「クリエイティブな発想」「クリエイティブな人」などのように、「~な」+名詞という形式で使われることが多い。独自の発想や表現、個性を持つものとして表現される。クリエイティブは人に対しても物事に対しても使える言葉である。何かの言葉にクリエイティブという言葉が冠されている場合は、他にはない、唯一無二のという意味合いを持たせることで他とは一線を画している。また、広告やデザイン業界では、クリエイティブというカタカナ語を広告素材や製作物、制作者や製作部門を意味する言葉として広く使っている。

広告業界で用いられるクリエイティブ

クリエイティブという言葉を形容詞ではなく名詞として使うのは広告業界である。広告業界で使われるクリエイティブという言葉は、広告に掲載する写真やイラストを意味する。インターネット上のバナー広告で使われている写真やイラストなどもクリエイティブと呼ばれる。バナー広告、テキスト広告、メール広告といった形式を問わず、すべての広告素材はクリエイティブである。一方、バナー広告に使用する写真やイラストをクリエイティブと呼ぶことも多い。この場合、テキスト広告はバナー広告とは区別して原稿と呼ばれる。

クリエイティブ産業とは何か

コンピューター技術の発展を受けて、現代社会では独創性や創造性のある仕事が高く評価されてきている。経済産業省はファッション、食、コンテンツ、地域産品、すまい、観光、広告、アート、デザインなど独創性や創造性のある9つの産業をクリエイティブ産業と定義している。クリエイティブ産業には文化を創り出したり発信したりする仕事が多く含まれているため、クリエイティブ産業を発展させることは文化の発展にもつながる。

この他、転職サイトや求人サイトで職種を表す言葉としてクリエイティブという言葉が使われている。クリエイティブ職といわれるもので、新しいものを作り出す力が必要とされる職種を意味する。クリエイティブ職には、実際にデザインや制作を行うクリエイター職とクリエイターの監督やスケジュール管理を行うプロデューサー職がある。プロデューサー職にはクリエイティブディレクター、ゲームプロデューサー、Webプロデューサーなどの仕事がある。

クリエイティブディレクターは広告制作の進行やクリエイターの指揮や監督を務める。ゲームプロデューサーは世の中のゲームの流行を調査し、どの機種にどのようなゲームを出すかを決定し制作管理を行う。WEBプロデューサーはWEBサイトの企画、制作、運営全般を行う役目を果たす。クリエイター職にはWEBデザイナー、ライター、グラフィックデザイナーなどがある。WEBデザイナーはクライアントの要望に応じたWEBサイトのデザインを行う。ライターは紙媒体のみならずWEBサイトに掲載する文章を企画内容に沿って執筆する。グラフィックデザイナーは商品パッケージや書籍、ポスターなどをデザインする。

インセンティブ

英語:incentive

インセンティブとは、インセンティブの意味

インセンティブとは、意欲を引き出すことを目的として外部から与えられる刺激のこと。インセンティブは、ビジネスシーンにおいては目標やノルマを達成した際に支給されるボーナスや報奨金という意味でよく用いられている。そのため、インセンティブの語は成果報酬と捉えられることが多い。

インセンティブの語源

インセンティブは、英語で「incentive」と表記される。英語の incentive の語源になっているのは「励ます」という意味を持つラテン語の incentivus である。そこから派生した英語の incentive は、何かの行動を起こさせることを目的とした刺激や動機、誘因という意味を持つ。日本語におけるインセンティブも基本的には同じ意味合いで、動機を意味することが一般的だ。ビジネスシーンでインセンティブという言葉が使われる際には、働く上での意欲の向上や仕事における目標達成といった内的意欲を引き出すために、外的に与える動機付けや刺激という意味である。動機付け、見返り、報奨という言葉に言い換えることも可能である。

ビジネスシーンにおけるインセンティブの語の使い方

ビジネスシーンにおいては、販売目標やノルマ達成などの出来高制で報奨金を与えることがしばしば行われる。インセンティブとはこうした出来高制自体を意味することもあるし、こうした制度によって引き出される意欲を意味することも時としてある。インセンティブに似た言葉に「モチベーション」があるが、モチベーションは自発的動機付けも含まれるのに対し、インセンティブは外部から与えられる動機である点で両者の持つ意味合いは異なる。日本の企業社会が年功序列型から成果報酬型に変化していることに伴い、企業がインセンティブを提供することが増えた結果、よく見かけられるようになった言葉である。

インセンティブは、一定の成果を出した社員に対して与えられる金銭的な報酬や手当だけを意味するわけではない。たとえば、スタッフの士気を上げることを目的とした労働環境の改善や、目標を達成したことに対する見返りとして旅行に出かけられる権利を得られることなども含まれる。すなわち、社員のモチベーションを上げるためのあらゆる制度のことである。

インセンティブの語の用例、使い方

インセンティブは主として給与形態に用いられる言葉であり、こうした企業の給与形態はインセンティブ報酬、インセンティブ契約、インセンティブ制度と呼ばれる。インセンティブ制度と書かれている場合は成果主義を取っており、基本給以外に成果に応じた報酬や手当を与える制度である。

インセンティブ制度の事例は、変動賞与制度や表彰制度、リーダー制度、インセンティブツアーなどが挙げられる。変動賞与制度は成果に応じてボーナスが加算される制度、表彰制度は成績優秀な社員を他の社員の前で表彰する制度、リーダー制度は実力があれば誰でもリーダーになれる制度、インセンティブツアーは成績優秀な社員だけが参加する権利が与えられる旅行のことである。報奨金という意味合いでインセンティブという言葉を使う事例には「インセンティブ導入」「インセンティブ設計」「インセンティブ付与」「インセンティブを支給」「インセンティブによって還元」などがある。

動機や刺激という意味合いで使う事例は「インセンティブが働く」「インセンティブを与える」「インセンティブを高める」などだ。「インセンティブが働く」という言葉は、スタッフがやる気になり業績が上がった場合など、報奨の仕組みが目標どおりに機能できている場合に使われる。「インセンティブを与える」という言葉は、成績優秀者にインセンティブを与えるという使われ方が一般的だ。「インセンティブを高める」は、例年よりも報奨金を多く出す場合や新規の報奨金制度を敷く場合など、報奨による効果をより高めようとする場合に用いられる。

クラスター

英語:cluster
別名:クラスタ

クラスターとは、クラスターの意味

クラスターとは、もとはブドウの房の意味であり、そこから転じて、ある属性に基づくグループ化された集団を意味する語のこと。具体的には、年齢や性別、居住地域などの人口統計学に基づくデータや、趣味、生活スタイル、思想などの心理的側面に基づくデータからグループ分けした集団を指す。日本語では、「群れ、集団、塊、房」と表現する。

クラスターの語はIT分野や天文学の分野で使われている

クラスターは、さまざまな分野で用いられる用語である。IT分野では、複数のコンピュータを統合させて、1つのシステムとしてまとめることをクラスターという。「クラスターあたりの空き容量を増やす」など、ディスク装置のメモリの単位としても使用される。

日本の大学においては、学部間で関連性のある科目をまとめたものをクラスターと呼んでいる。大学におけるクラスター制度とは、さまざまな分野を横断的、かつ専門的に学べる仕組みを指す。

天文学においては、星が集合している状態を「スタークラスター」と呼ぶ。日本語の「すばる」に当たるものもスタークラスターの1つである。まばらに集まっている星をオープンクラスター、球状に丸く集まっている星団をグローブラークラスターという。

クラスターの類語には集団、固まりなどがある。英語の cluster の類語は group である。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)におけるクラスターとは

2020年に流行した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)など、疫学におけるクラスターとは、ある時間、またはある地域内において、疾患や障害の発生率が異常な高さに及ぶ集団をいう。単に患者集団ともいう。特定の場所や人々のグループにおいてクラスターが発生することを「クラスター化する」という。

クラスター(患者集団)、または1人の患者が新たなクラスターを作り出すことをクラスター感染という。

クラスター分析は、個人や集団の意見や状況などから共通する項目を集めて分析し、調査に活かす手法のことである。クラスター分析を行うことによって、共通の症状や行動を抽出でき、その後のクラスター発生や拡大の防止につなげることができる。クラスター分析の手法には、階層クラスター分析」と「非階層クラスター分析」がある。階層クラスター分析は、調査項目を樹形図に落とし込み、それぞれの項目がどの程度近しい距離にあるかを分析する手法である。

項目同士は、低階層ほど近い関係にあり、高階層で結びつくほど遠い関係にあることが分かる。低階層にある近しい関係の項目に焦点を当てて分析をすることで、クラスターに対応すべき方法を導き出すことが可能となる。一方で、「非階層クラスター分析」とは、アンケート調査を行い、回答結果を傾向別にクラスターに分けて分析する方法である。回答者1人ひとりの傾向や行動志向を比較できるため、より細かいデータ分析に向いている。このようなクラスター分析の実施により、クラスター感染の経路や発生原因、二次感染状況における共通項目をあぶり出し、クラスター発生拡大防止のための手段を検討できることとなる。

「クラスタ」は特徴の際立って共通する集団のこと

クラスターは集団を表す言葉であるが、単なる集まりというよりも、特徴が際立って共通する集団について使われることが多い。例えば、趣味やエンターテイメントの分野で嗜好や思想が特徴的な仲間同士は「クラスター」から音引きを省いて「クラスタ」と呼ばれる。用例としては「文学クラスタ」「○○(アーティストなど)クラスタ」などがある。