新語時事用語辞典とは?

2020年6月11日木曜日

アベノマスク

アベノマスクは、2020年春頃の慢性的なマスクの不足を解消するために政府が実施した、布マスクを全国民(全住所)に配布する施策の通称、または、そのようにして配られた布マスクの通称である。「アベノミクス」の造語法を転用したモジリ表現といえる。

マスク配布の方針が公表された4月初頭の当初は、「アベノマスク」という言葉はもっぱら、マスク配布を愚策と捉える立場の人々による揶揄まじり(あるいは罵り)の表現として用いられていた。次第に悪意あるニュアンスは薄れ、5月半ば頃にはマスメディアも含めて広く使われるようになっていた。

アベノマスクの施策は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全国的に流行しつつあり、感染予防策としてのマスクの需要が急騰し、入手困難な状況が続いている状況を受けて講じられた。配布されたマスクは使い捨て型の不織布マスクではなく、洗って繰り返し使えるガーゼ使用の布マスクだった。配布事業にはマスクの調達に郵送にと多大な出費が伴い、マスコミや野党の批判の槍玉に上がったが、配布は実施された。

アベノマスク配布との直接的な因果関係は定かでない(時期的要因も大きいと考えられる)が、全国全世帯にマスクが行き渡るにつれ市場のマスク需要も緩和され、高額転売が減少するなどの動向が見られた。

再々々々委託

読み方:さいさいさいさいいたく

業務委託や外注が4度またはそれ以上の複数回にわたり行われること。いわゆる「やしゃご請け」にまで外注・委託が行われている状況。2020年6月現在、いわゆるコロナ禍における支援事業として政府が進めている「持続化給付金」の給付事業に関連するキーワードとして、時事通信社が使用した。

「再々々々委託」を文字通りに解釈して展開すると次のような構図となる。
・業務委託先の事業者が第三者に業務を委託(再委託)、
・その(委託を受けた)事業者がさらに他の第三者に業務を委託(再々委託)、
・その者がさらに別の第三者に業務を委託(再々々委託)、
・其奴がさらに違う第三者に業務を委託(再々々々委託)

政府の「持続化給付金」の案件については、時事ドットコムが報じたところによれば、次のような構図である。
・経済産業省が「サービスデザイン推進協議会」へ業務を委託(発注者)
・サービスデザイン推進協議会が経済産業省から業務を受託(元請け)
・同協議会が広告代理店・電通に外注(再委託)(下請け)
・電通がグループ会社5社へさらに外注(再々委託)(孫請け)
・各グループ会社がパソナや大日本印刷に外注(再々々委託)(ひ孫請け)
・恐らくここからさらに外注が行われている(再々々々委託)(玄孫請け)

テセウスの船

テセウスの船の意味

テセウスの船とは、「物の構成要素すべてを一つ残らず新しい部品へ置き換えた場合、それは以前のものと同一物といえるだろうか、あるいは全くの別物というべきだろうか」という問題のこと。ギリシア神話に題を取る。「テセウス」は神話に登場する伝説的人物の名。

テセウスの船の語源・由来

神話に登場する「テセウスの船」は、クレタ島のラビュリントスに住まう怪物ミノタウロスを征伐するためにテセウスが乗り込んだ船を意味する。(ミノタウロスはアテナイから生贄を捧げさせており、テセウスはアテナイの王でありながら自らミノタウロスを退治するためラビュリントスに向かったのである)。テセウスの船は大いなる記念として後世へ受け継がれていった。しかし建材の老朽化に伴い、古くなった箇所が段々とが新しい部品へ置き換えられていった。――さて、すべての部品が更新されてしまった船は、テセウスがクレタ島へ向かった船と同一の船であろうか? もはやオリジナルの部品が全くない以上、もはや全く別個の個体と言ってしかるべきではないのか?

テセウスの船と類似する考え方は古今東西に見られる。方丈記の「行く川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず」というくだりも、同じに見えて別物であるという点においてテセウスの船と同じパラドックスを提起しているともいえる。人間をはじめ動物は新陳代謝によって全身の細胞が更新されているが、すべての細胞が更新される前と後では何をもって同一人物とみなすべきか一考の余地がある。

2020年にTBSテレビが日曜劇場の枠で放送したテレビドラマ「テセウスの船」は、東元俊哉による同名のマンガ作品を原作としている。同作品は「主人公が過去へタイムスリップして殺人事件の真相に迫る」という大筋のミステリー作品である。