新語時事用語辞典とは?

2020年10月13日火曜日

マッチポンプ

マッチポンプとは、マッチポンプの意味

マッチポンプとは、意図的に自分で何らかのトラブルを発生させておいて、そのトラブルに巻き込まれた人に、トラブルを解決するかわりに見返りを要求する行為のことである。わかりやすくいうと、見返り目当てにわざと揉め事を起こすことである。マッチポンプという言葉は英語のマッチとポンプが組み合わさってできた言葉で、日本人が作った和製英語である。マッチでつけた火をポンプで消すという意味から作られた言葉で、トラブルを起こした人間と、解決のために見返りを要求する人物が同一の人物であり、一人でマッチとポンプの役割を同時に演じていることから、マッチポンプという言葉が使われている。

マッチで建物に火をつければ、火をつけられた建物に住んでいる人は、火を消すために必死になるが、そのような時にポンプを持った人が現れれば、火を消そうとしている人にとって、その人は神様のように見える。そのような場合、見返りを要求されてもポンプで水を消してもらいたいと考えること通常のケースであることから、こうした詐欺まがいの商法が成立している。相手の弱みにつけこんで利益を得ようとするのがマッチポンプだが、このような方法で商品を販売するビジネスのことをマッチポンプ商法と呼ぶこともある。マッチポンプの本来の意味は何らかのトラブルを発生させることだが、特定のトラブルを発生させなくてもマッチポンプ商法であると非難されることもある。企業が消費者を装って商品の宣伝をするような行為も、マッチポンプであると非難されることが多い。

ビジネスシーンにおけるマッチポンプの例

ビジネスにおいてもマッチポンプという言葉が使用されることがあるが、ビジネスシーンにおけるマッチポンプの典型的な事例の一つが、新商品が販売された場合に、自社でインターネット上などに、自社の商品を称賛するような文章を書かせることである。本来の意味とは少し異なるが、自分たちで販売している商品を自分たちでほめて客に購入させようとしているので、このような行為は、企業が一人二役を演じるマッチポンプの仕事と言われることが多い。

ビジネスにおけるマッチポンプとしては、利用客の少ない店舗にサクラの客を準備して、人気がある店のように見せかけるという例もある。この方法でも店舗を運営している経営者が、自分たちが雇った人間を客として装わせているので、経営者と客の一人二役を演じているためにマッチポンプの一種だと見られている。店舗の前に長い行列ができているのを見て、人気のあるお店だと勘違いした一般の客が利用することもあるが、こうした一般人の反応を期待してビジネスのためのマッチポンプは行われる。

意図的に故障しやすい製品を作っておいて、実際に故障した場合に修理代金を得るような方法も、マッチポンプの一種である。この方法によるポイントは、本当は故障を少なくできるような方法があるのに、修理の依頼や新品を購入してもらうことを期待して、意図的に故障しやすいように設計することである。一定期間が経過した後に特定の部品が劣化しやすくなるような方法でマッチポンプがおこなわれる場合もあり、トラブルの原因を企業が自分で作っていることから、これもビジネスにおけるマッチポンプの一つと言える。

マッチポンプの語の使い方、例文

ビジネスの世界においてマッチポンプという言葉が使用される例文としてあげられるのが「その売り方はマッチポンプ商法だ」というような言葉である。これは顧客をだまして商品を購入させているという非難の意味も含まれていることが多く、ネガティブな言葉として使用されている。「マッチポンプ商法でも良いから、商品を販売したい」というような使い方がされることもあり、これは仕事の成果が上がらない時などに使用される場合が多い。「マッチポンプと言われても仕方がない」という言い方が使用されることもあり、これは厳密にいえばマッチポンプ商法ではないものの、限りなくそれに近い方法で商品を販売している場合などに使われる言葉である。

「マッチポンプだと思われるから、そのような方法で商品を売るのはやめよう」というような言葉も、ビジネスの世界では使われることがある。マッチポンプ商法のようなことをしたいと誰かが言い出した場合に、発生する可能性のあるリスクを重く見て、自重するように促すために使われる言葉である。「マッチポンプだと消費者に見破られると、会社の信頼をなくす」というような使い方もされることがあり、これはマッチポンプ商法で利益をあげたとしても、それが後で一般の消費者に知られたような場合には、企業としてのブランドイメージが大きく下がることを懸念している言葉である。いずれの例文でも、肯定的な意味で使われることが少ないのが、マッチポンプという言葉の特徴である。

マッチポンプの語の類語

マッチポンプと似たような意味を持つ言葉として使われることがあるのが「自作自演」である。マッチポンプと自作自演は互いに類語の関係にあるが、完全に意味が共通しているわけではなく、言葉の意味には若干の違いがあるために使い分けることができる。自作自演もマッチポンプも一人二役を演じているということでは共通しているが、マッチポンプの場合にはトラブルに巻き込んだ相手に、解決のための見返りを要求するということが、自作自演とは大きく異なる部分である。自作自演は自分で考えたシナリオに沿って自分で実行するという意味を持っているが、もともとは作曲家や脚本家が自分で作った楽曲や脚本を、自分で演奏したり演技したりすることが語源になっている。

マッチポンプの類語として「やらせ」という言葉が使用されることもある。ビジネスの世界で商品の人気をアピールするためにサクラの客を雇ったときなどは、その事実が判明した場合、マッチポンプではなくやらせと言って非難されることがある。やらせはマッチポンプよりも嘘をついているということを強調する時に使用される言葉で、テレビ番組の過剰な演出などにも使用されることが多い。「捏造」もマッチポンプの類語として使用されることがあるが、捏造もやらせと同じように、事実とは違うことをでっち上げるという意味を持つ言葉である。マッチポンプややらせよりも、捏造の方が硬いイメージがあり、新聞の文章などで使われることも多い。

ステロイド

英語:steroid

ステロイドとは、ステロイドの意味

ステロイドとは、構造内にステロイド骨格を有する化合物の総称であり、ほとんどの生物が体内で生合成でき、作用の違いによって、いくつかに分類されている。多種多様な作用を持っており、生命の維持活動に欠かせない物質のことを意味する。医療現場におけるステロイドとは、ステロイド系抗炎症薬のことを指していることが多い。ステロイド系抗炎症薬とは、副腎で合成されるステロイドホルモンを配合したものであり、炎症を抑えるときに使用される。わかりやすくいうと、体内で合成されるホルモンを、抗炎症などの治療に使用するために人工的に配合した医薬品のことである。英語では、steroid と表記され、ステロイド系抗炎症薬のことは、SAIDs(Steroidal Anti-Inflammatory Drugs) と表記される。

ステロイド系抗炎症薬には、炎症を抑える効果や、免疫を抑制する効果がある。これらの作用から、アレルギー性疾患や、炎症性疾患などに使われる。副作用も多様であり、主な副作用として、易感染性、高血糖、高コレステロール、筋力低下、満月様顔貌(ムーンフェイス)、骨粗しょう症、消化性潰瘍など、軽症のものから、重症になってしまうものまである。使用している量や期間、体質など、様々な要因によって、起こる副作用が異なるので、注意が必要である。投与方法は内服、注射、外用があり、使用部位や症状、また、重症度などによって、用いる方法は異なる。内服や注射で投与するときには、全身性の副作用が起きやすいが、塗り薬などの外用で使用する場合は、局所性の副作用が起きやすいといわれている。

ステロイドの種類と使用方法

ステロイドは、副腎皮質ホルモンを元につくられた医薬品の総称であり、その種類は多く、投与方法も内服、注射、外用がある。内服とは、医薬品を経口投与での使用方法であり、錠剤、カプセル、散剤など、多くの剤形が販売されている。症状の程度や、患者の年齢、医薬品の半減期、力価などから使用されるステロイドは異なり、作用の出方や副作用の出現など、状況を見ながら減量や変更が行われる。半減期とは、医薬品の効果が半減する時間のことをいい、この時間が短いほど体内から早く排出され、長いほど体内に留まる。力価とは、医薬品の効果を十分に発揮するために必要な医薬品の量から、考えられる薬の強さを表しているものである。ステロイドの場合、ヒドロコルチゾンの力価を1として他のステロイドの力価が計算されている。内服で用いられるステロイドは、短時間作用型であるヒドロコルチゾンをはじめ、中時間作用型のプレドニゾロン、長時間作用型のデキサメタゾンなどがあり、それぞれ半減期が異なる。同じ力価のステロイドであっても、半減期の長短により、効果の現れ方などが異なる場合もある。

外用剤は、皮膚科や耳鼻科、眼科などで処方されることが多く、塗り薬や吸入剤などの剤形がある。皮膚科や眼科領域で用いられることが多いステロイドの塗り薬は、最も強いストロンゲストから、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィークの5段階に分類されており、症状の程度や、使用部位によって、使われる医薬品は異なる。塗り薬以外にも、点眼や点鼻、吸入剤や噴霧薬など、さまざまなタイプのステロイドがあり、目的に応じて使用される。

注射で使われるステロイドは、内服や外用で使用するよりも作用の発現が早いため、疾患の急性期や、高用量で投与するときに使用される。

ステロイドの副作用

ステロイドは、効果が高い医薬品であるが、多くの副作用が存在することが知られている。内服や注射で使用した場合、全身症状の副作用が出ることが多く、顔面に脂肪が多くなり、丸くなってしまうムーンフェイスや、筋の萎縮から筋力低下を発症してしまうこともある。ほかにも、易感染症、高血糖、高血圧、高コレステロール、骨粗しょう症などが知られている。外用剤を使用した場合の副作用としては、色素脱失や皮膚の萎縮、感染症や刺激感などがある。また、吸入剤や噴霧薬でステロイドを用いた場合、かすれ声や、口腔カンジダなどの副作用が起こることがある。

副作用の内容によっては、ステロイドの使用開始から副作用が出現しやすい時期があり、おおよその目安とされている。投与開始数時間後から大量に使用した場合、高血糖や不整脈が見られ、量に関わらない副作用としては不眠やうつ症状、食欲亢進が見られることが多い。数日後から中等量以上において、高血圧や高血糖、精神障害などが見られ、1~2か月後から感染症や骨粗しょう症、ムーンフェイスや消化性潰瘍などが起こりやすい。3か月以上経つと使用している量に関わらず、感染症やムーンフェイス、動脈硬化や白内障、緑内障などが認められることがある。ただし、これはあくまで起こりやすい時期と副作用の目安であり、人によっては量や時期に関わらず副作用が出てしまう人や、逆に副作用が出にくい人もいるので、一概にステロイドを使用すると必ず副作用が出るというわけではない。

ステロイドによるあせもやニキビへの効果

ステロイドをあせもやニキビなどに使用する際は、抗炎症作用を期待して使われることが多い。ステロイドは根本的な治療には向かないため、炎症を抑えて、かゆみや赤みを抑えるために使われる。あかぎれの場合にも、抗炎症作用を期待して使われるが、あかぎれには、悪化する前のステロイドが効果的とされている。

ステロイド配合の塗り薬などを使用した場合の副作用は、局所的なものであり、全身的な副作用は起こりにくいとされているが、皮膚の脱色やニキビなどが起こるとされており、ニキビを治療しているのに新しいニキビが出来てしまう、などといったことも起こりかねない。市販の製剤にもステロイドが配合されているものが販売されているが、正確な知識のもと、適切な使用が求められる。

ケロイドを治療する際にはステロイドの注射が用いられることが多い。ケロイドとは傷あとのことであり、かゆみ、痛みが強く、見た目が悪いことが特徴である。ケロイドのかゆみや痛みは、ケロイドの中にある様々な炎症細胞から発せられるものであり、これを止めるためにステロイドの注射が用いられる。ほかにも、ステロイドが配合されているテープ剤が使用されることも多く、ケロイドの治療にはステロイドの使用が基本である。

口内炎にもステロイドが用いられることがある。軟膏や貼付剤、噴霧剤などの剤形があり、痛みの緩和に用いられることが多い。こちらも根本的治療を行うものではないうえ、ステロイドの性質上、口内の常在菌バランスを崩してしまう恐れがあり、違う疾患を引き起こしてしまう可能性もある。また、口内炎の原因によっては、ウイルス性のものなど、ステロイドが禁忌となってしまうこともあるため、注意が必要である。

オンラインサロン

英語:online salon

オンラインサロンとは、オンラインサロンの意味

オンラインサロンとは、インターネットやSNS上で、参加者が主催者のノウハウを吸収しながら交流していく場所を意味する。わかりやすくいうと、Webを使った会員制コミュニティのことである。英語での表記は online salon である。そもそも、サロンとは上流階級の集まりを意味する言葉だった。17世紀ごろから、貴族や文化人たちが豪邸に集い、情報を交換するサロンは社交界のたしなみのひとつだった。こうした風習が発展し、共通の目的を持つ人々の交流会をサロンと呼ぶようになる。オンラインサロンとは、インターネットが浸透した時代でのサロンの形である。

オンラインサロンの大きな目的は、主催者から参加者への情報提供である。主催者には特別な経験、スキルがあるため、参加者はオンラインサロンを通して勉強したいと考えている。たとえば、ビジネススキルや企画の発想力、成功につながる思考法などを主催者は講義していく。参加者は定期的、または不定期的に行われるセミナーで、主催者の考えを深く学ぶ。

参加者にビジネスチャンスを与えるのもオンラインサロンの役割である。オンラインサロンはしばしば、参加者同士で新しいプロジェクトを立ち上げるきっかけとしても利用される。あるいは、主催者が自らの仕事に参加者を登用する場合もある。主催者は優秀な人材を簡単に見つけられて、参加者は自らの可能性を広げることが可能である。双方が成長できるチャンスとして、オンラインサロンは機能している。

オンラインサロンの作り方

大前提として、オンラインサロンの作り方そのものは難しくない。主催者が自力でサイトを開設する場合もあれば、専用プラットフォームを通してネットユーザーに呼びかけることもできる。ただし、主催者にある程度の知名度や人望がないと、参加者は集まりにくい。開設にあたっては、主催者がスキルを自己分析し、何を提供するサロンにするのかはっきりさせることが大切である。

まず、特定の経験やノウハウを誇っている主催者が、オンラインサロンを立ち上げる。ここで主催者が提供する知識、スキルはビジネスに関する内容であることが多い。そして、主催者から学びを得たいと考えるネットユーザーがサービスに登録し、サロン活動は本格化する。オンラインサロンはほとんどの場合、月額料金制をとっている。参加者が多くなるほど、主催者の利益も増えていく仕組みである。サービスに見合った料金設定をできるかどうかは、サロンの成功に直結する要素である。

オンラインサロンは、既存のプラットフォームを使って開設するのが手軽である。決済や入会などの手続きをプラットフォーム側に任せられ、主催者はサロン活動に集中できるからである。オンラインサロンが始まったら、主催者は定期的にコンテンツを配信しなくてはならない。料金の価値がないと参加者に思われてしまうと、離脱者を増やしてしまう。さらに、サロン参加者は人脈形成の場として利用していることもある。主催者が、ある分野の有名人を参加者に紹介してあげるのは喜ばれるイベントの代表例である。

オンラインサロンを開設している芸能人

お笑いコンビ、キングコングの西野亮廣が主催するオンラインサロン「西野エンタメ研究所」は、彼が関わっているプロジェクトの行く末を見届けられる内容である。ときには参加者がプロジェクトに携わることもでき、約7万人が籍を置いている。

芸能人といえば、キングオブコント2020優勝者のジャルジャル主催「ジャルジャルに興味ある奴」も好調である。ジャルジャルのネタ作りを学びながら、ときには参加者が一緒にお笑いを作り出すこともできる。「ネタ」という着眼点がユニークで、お笑いファン以外からも強く支持されているサロンとなった。

音楽プロデューサー、つんく♂の「エンタメ♪サロン〜絶対言うたらあかんでぇ♫〜」では、参加者に創作術を伝授している。数々のヒット曲を手がけてきたつんく♂の思考に触れることで、ものづくりに関わりたい人々は大きな刺激を受けている。サロンの参加者には有名人も多い。

中田敦彦(オリエンタルラジオ)のオンラインサロン「PROGRESS」も、広く知られている。月額が低く設定されており、入会しやすいのはPROGRESSの大きなメリットである。中田の活動を中心として、さまざまなテーマについて参加者同士の活発な議論が交わされている。

音楽集団スクランブルズ代表、松隈ケンタもオンラインサロン「スクランブルミュージックサロン!!」を主催している。BiSHや中川翔子、柴咲コウなど、有名アーティストに名曲を提供してきた松隈の創作論を直に聞けるスペースである。交流会や草野球など、音楽以外の活動も盛んである。

ビジネスマン向けのオンラインサロン

株式会社Limの社内研修用で立ち上げられ、社外の参加者にも向けられるようになったオンラインサロンが「MUP」である。動画やライブ配信などのコンテンツが充実していて、参加者は具体的なノウハウを教えてもらえる。主催者が参加者のキャリア相談に乗ってくれるのもメリットである。

「The Startup」編集長の梅木雄平が開設したのは「Umeki Salon」である。起業に関するコンテンツが配信されており、有名な実業家同士の議論、最新の経済情報を確認できるなど、参加者は特別感を抱けるだろう。サロンメンバーには大企業の幹部も名を連ねている。

「Market Hack Salon 〜世界について広瀬隆雄と語ろう!〜」はWebメディア「Market Hack」編集長の広瀬隆雄が立ち上げたオンラインサロンである。経済や金融について、参加者同士で活発な議論を交わせるのが特徴である。オフラインで開かれる親睦会を通じ、人脈を広げることも可能である。

経営者向けオンラインサロンとして強い支持を受けるのは「NOLIMIT(ノーリミット)独立〜2店舗目を目指す美容室経営戦略会議」である。西川礼一、大河内隆広、鈴木淳也という、美容業界の経営者3人が共同で開設した。3人が美容業界で店舗を増やしていくノウハウを参加者に伝えている。

そのほか、「StockSunサロン」もビジネスパーソンから注目を集めてきた。株式会社StockSunが主催のオンラインサロンで、同社での案件を参加者間で共有している。そのうえで、プロジェクトを受発注することもでき、ビジネスチャンスを増やしたい社会人が数多く登録してきた。

イニシアチブ

英語:initiative
別名:イニシアティブ

「イニシアチブ」とは、「主導すること・主導権・先導・率先・自ら提唱した方針や戦略」などを意味する表現である。「集団を率いる」あるいは「相手の上に立つ」という意味・ニュアンスを含む。

主導権を握って先導する・全体を率いることを「イニシアチブを取る」あるいは「イニシアチブを握る」のように表現する。

「イニシアチブ」という言葉は、ビジネスシーンや行政分野で用いられることが多い。日常会話などの一般的な文脈では「率先」「先導」などの表現が用いられれることの方が多い。

「イニシアチブ」を英語でいうと

「イニシアチブ」は英語の initiative に直接由来するカタカナ語である。英語の initiative は、主に「主導権」「構想」「やる気」「計画」などの意味で用いられる。

英語の initiative は「協力を目的として自分が率先する」といったポジティブな意味合いが中心であり、基本的にポジティブな言葉である。

イニシアチブの語の使い方や例文

イニシアチブはカタカナ語であり、ビジネス用語でもある。日常会話で使われることは決して多いとは言えないものの、逆に仕事を進めて行く行く上での、会議や営業におけるビジネスシーンでは、イニシアチブという語が発話される機会は発生しやすい。イニシアチブは名詞のため、「イニシアチブをとる」や「イニシアチブを握る」など、動詞と組み合わせて使う。決して「あの人はイニシアチブだ」という使い方はしない。「イニシアチブをとる」も「イニシアチブを握る」も、どちらも「主導権を握る」という意味として使うことができ、言い回しとして明確な使い分けは無い。例文として挙げると「次の会議では、こちらがイニシアチブをとれるかどうかが会社の今後の立ち位置を左右する。」、「まさかこの業界がイニシアチブを握ることになるとは思いもよらなかった。」という使い方ができる。このように、イニシアチブという語は個人においてもグループ単位においても用いることができる。

イニシアチブとは主導権という意味の他に「リードする、先頭に立って導く」という意味で使われることがある。その場合は「イニシアチブを発揮する」という表現を使うことが多い。「イニシアチブを発揮することができれば、営業成績ももっとのびるかもしれない。」という風である。主導権を握るという意味合いで用いられる場合は自分と相手との間に力関係が存在するが、リードするという意味で用いる場合は人との関係は含まれない。よって、リードすると言う意味での用い方が英語の initiative に最も近いものとなる。

イニシアチブの語の類語・言い換え表現

イニシアチブの類語には主導・発議・リーダーシップ・統率・指揮などがある。「リーダーシップ」にも組織を率いるという意味がある。イニシアチブは組織の中でもトップの人に求められるものであるのに対し、リーダーシップは多くの人が身に着ける必要のある素質である。イニシアチブは行動を指すことが多いが、リーダーシップは能力のことを指すという点でも違いがある。「統率力」にもグループをまとめ率いるという意味がある。統率力はビジネスにおいて同じ目的を有する人に対して用いられる。イニシアチブには自分とは違う意見を持っている人に対し、自分の意見を取り入れさせるという意味合いが含まれるので、使い分け方に明確な差がある。統率力は営業部長やプロジェクトマネージャーなど組織内のチームのトップに立つ人に求められる能力である。「指揮」は、組織を導いてまとめるという点では同じであるが、人を指導して動かすという意味が含まれる。イニシアチブには指導するという考えが含まれることはない。どれも明確な使い分けが存在するが、ビジネスシーンでよく耳にする言葉であるため、明確な違いを理解しておくことが重要である。

ちなみに、イニシアチブとイニシアティブの違いはなく、全く同じ意味で使われる。どちらが正解でどちらが間違いということは無く、どちらを使っても良い。イニシアティブの方がより英語の発音に近い。外国籍の人が多い職場ならばイニシアティブの方が聞き取りやすい可能性がある。

ビジネス分野以外におけるイニシアチブの語義

イニシアチブという語は、一般的に浸透している言葉ではなく、日常的にイニシアチブという語を使う人は少ないと言えるが、まれにビジネス以外でも用いられることがある。主導権を持つという意味で、家庭で使われる場合がある。「うちの家庭では、夫が(妻が)イニシアチブをとっている」という風に使う。この使い方はカタカナ語として日本人だけが使う表現であり、英語圏の人には意味が伝わることはない。これには文化の違いが関係しているものと思われる。日本においては亭主関白という言葉が存在するように、家庭内において上下関係をはっきりさせる傾向にあるようである。英語圏の人に多いのはレディーファーストのような、相手を立てる文化が浸透している。

他の使い方として、スポーツや遊びで使われることもある。優勢に立っている側が「イニシアチブを握っている」という使い方をする。イニシアチブを握れる人を育てることを目的としたゲームのことをイニシアチブゲームと呼ぶ。イニシアチブゲームとは少人数のチームに分かれて、それぞれの能力と力を合わせて設定された課題や障害を解決していくゲームである。子どもは遊びやスポーツ、勉強など、様々な経験を通して自分の中にある能力を引き出していく。イニシアチブゲームによってリーダーシップを育てるとともに、チームワーク、知恵も共に培われるので注目されつつある。大人であっても、コミュニケーション能力が不足しがちな新入社員の社員研修で行われることもある。

リベラル

英語:liberal

リベラルとは、リベラルの意味

リベラルとは、自由主義に基づいて多様性を重んじる世の中を支持する思想全般を意味する言葉である。わかりやすくいうと、自由主義者ということである。語源は英語の liberal である。なお、リベラルな思想の持ち主をリベラリストと呼ぶ。現代において、リベラルはしばしば政治的な左派と混同して語られている。そのため、保守派の論客からリベラルは仮想的にされることも多い。しかし、リベラルの本当の意味では、左翼思想と直接的な関係がない。あくまでも、個人の活動や信条に、国家が介入することを防ごうとする考え方がリベラルの定義である。

リベラリストは伝統主義者と対極をなす思想の持主だといえる。もしも伝統的な価値観、古くからの体制に欠点があった場合、リベラリストは変革を厭わない。むしろ、彼らは停滞したシステムを引きずるよりも、抜本的な部分から再構築したほうが人々の幸福につながると考える。そのため、保守層とリベラル層は対立しやすい傾向にある。また、多様性を支持するリベラル層は、異なる価値観や民族にも寛容な姿勢を示す。基本的にリベラリストは反戦主義であり、日本国憲法の第九条にも肯定的である。結果的に、護憲派と呼ばれる人々の中にはリベラル層が多い。

1930年代以降、リベラリストによって、個人の経済活動の自由を無条件で認めるよう働きかける運動が起こった。これを「ネオリベラリズム(新自由主義)」と呼び、アメリカや日本で広く受け入れられている。ネオリベラリズムは、一般的なリベラリズムと別物である。

日本におけるリベラル派の政党

日本のような政党政治は、「リベラル派」「保守派」の対立構造で語られることも多い。2020年時点では、立憲民主党、日本共産党、社会民主党などが主なリベラル派政党として挙げられている。いずれも増税や外交などへの見解で食い違う部分は多い。ただ、護憲派の立場を貫いたり、社会保障の充実に向けて活動していたりする点は共通している。

日本の政党政治でリベラルが果たす役割のひとつは、保守政権の監視である。日本では2012年以来、保守政党である自由民主党(自民党)政権が続いてきた。そうでなくても、政党政治が始まって以来、保守政党の議席数が多くなる傾向は顕著だった。しかし、保守政党だけが主導する国会では、偏った価値観に基づく政策ばかりが施行される危険性を否定できない。そこで、リベラル派は保守政党が暴走しないよう、逆の視点からの意見を国会で提言し続けている。

また、新自由主義への抑止力としてもリベラル派に意義はある。戦後の新自由主義では、国が企業や個人事業主に介入せず、柔軟性の高い経済活動が守られてきた。しかし、新自由主義は成功を収められなかった人間への自己責任論を助長しかねない。失業者や障害者、後期高齢者への保障を削減し、一部の富裕層にのみ有利な社会制度を生み出す可能性を持つ。リベラル派は、新自由主義で振り落とされた人々へのセーフティネットとなる政策を提言する。すなわち、リベラル派は寛容な世の中を維持するために国会での存在意義がある。

リベラルと保守との違い

保守とリベラルは多くの面で違いを表明している。まず、憲法改正について、保守派の多くは肯定的である。近隣諸国から攻め込まれる可能性、海外派遣された自衛隊員の自己防衛などを考慮し、保守派は日本が正式に攻撃力のある軍隊を持つよう望んできた。実際、保守政権のもとでは、憲法改正がたびたび大きな公約として掲げられている。一方、リベラルな考えに基づく人々は、憲法改正について反対の立場を示す。リベラル層は戦後日本で実施されてきた平和教育に、おおむね共感してきた。そのため、戦争放棄の核となる憲法九条の現状維持を望んでいる。

日本で保守とリベラルの、戦争観の違いが顕著に表れている事例が靖国参拝である。保守派は、太平洋戦争の戦死者を英霊としてまつっている靖国神社参拝を積極的に行ってきた。しかし、リベラル派は戦争を肯定することにつながるとして、靖国参拝に否定的な態度をとり続けている。

次に、伝統的な慣習に対して、保守派は厳守の立場をとることが多い。夫婦別姓や同性婚について反対する保守層も目立つ。保守層は国体維持を大きな目標としているので、伝統を壊すような考え方には嫌悪感を抱きやすい。逆に、リベラル派は自由主義に基づき、伝統に柔軟な考えを持っている。夫婦別姓、同性婚に対しても、リベラル派は当人たちの幸福を優先的に考える。そのうえで、伝統が邪魔になっていると判断した場合、リベラル派は変革も厭わない。社会制度の撤廃、修正を求めるリベラル派は多い。そのほか、保守が国家の経済介入を最小限に留めるよう主張しているのに対し、リベラルはむしろ、積極的な介入を求める。

リベラルの語の対義語

しばしばリベラルの対義語は「保守」といわれてきた。しかし、実際には「パターナル(権威主義)」のほうが、より逆の意味に近い。パターナルは英語の「paternal」を語源としている。パターナルでは、権威が絶対的な力とみなされてきた。主従関係が肯定され、目上の者が目下の者に介入し、支配することが肯定される。また、パターナルにおける権威は往々にして世襲制であり、本人の能力に関係なく受け継がれているケースも多い。個人の自由を認めるリベラルとパターナルは大きくかけ離れた概念である。パターナルは、実力主義を内包しているネオリベラリズムとも使い分けるべきだといえる。

レイシズムもリベラルの対義語のひとつである。レイシズムは英語で「racism」と表記し、人種差別主義を意味する。レイシズムは肌の色や国籍によって人間を差別することを肯定し、社会保障においても優劣をつけようとする。代表例は欧米で蔓延していた奴隷制度であり、現代でも当時の名残によって白人優位社会が形成されてしまった。リベラリズムはレイシズムに反対しており、人種平等の社会を実現させようと働きかけている。

そして、結束主義を意味するファシズム(fascism)もリベラルと反対の意味である。ファシズムでは、国民が国家のために奉仕するよう誘導される。そして、個人主義はファシズムの下で認められない。個人が自由に行動していいとする、リベラル思想とは大きな違いがある。ファシズムの類義語としてトータリタリアニズムやミリタリズムが挙げられる。

相対性理論

読み方:そうたいせいりろん

相対性理論とは

相対性理論とは、アルバート・アインシュタインが発表した物理学の理論で、どこかに絶対的な原点を置く座標系ではなく観測者の立場によって互いの時空間が「相対」して変わるものとしてとらえるものである。一言でわかりやすく言うと光の速さは一定であるとし、時空間は歪むものととらえる理論である。重力は時空(時間と空間)のゆがみで表され、より大きい質量による大きなゆがみに他の物体が引き寄せられるとして重力を説明する。相対性理論は「特殊相対性理論」とそれを改良した「一般相対性理論」からなる。特殊相対性理論は1905年発表。一般相対性理論は1915~16年に発表された。特殊相対性理論内では式E=mc2(エネルギー=質量×光の速さの二乗)があり、簡単に言うとエネルギーと質量が変換可能であることを示す。相対性理論によってさまざまな物理現象を説明、予測できる。

アイザック・ニュートンによる万有引力理論をより深く広範囲に適用できる優れた理論として、相対性理論は現代物理学の根幹を成すものとなっている。万有引力は重力を「引く力」と説明するが、天体を観測すると計算上合わない例外があった。相対性理論はこれを説明でき、理論の正確性は天体観測や高速ロケットを用いた実験により証明されている。GPSにもこの理論が使われており、相対性理論を使わなければ実際に誤差が生じる。 英語では、相対性理論は「theory of relativity」。特殊相対性理論は「special theory of relativity」、一般相対性は「general theory of relativity」である。しばしば冠詞「the」をつけ「the theory of relativity」、また「アインシュタインの発表した相対性理論」という意味で「Einstein's theory of relativity」と書く。

特殊相対性理論とは

特殊相対性理論は慣性運動する観測者がどのように観測し、また他の観測者に観測されるのかについて述べた理論である。そこでは「光速度不変の原理」を土台に理論が展開される。これは、真空中では光源がどんなに動こうと光の速さは変わらないことを前提に考えるということである。例えば、電車に乗っている人が電車の床にボールを落とせばI字型に手元に跳ね返ってくる。同時に、静止した状態で電車を外から見ている人にはボールはV字形に移動しているように見え、より移動距離が長く見える。これをボールではなく光で考えると、光の速度は一定で変わらないので、電車の中の人から見える光の移動にかかった時間と、電車の外の人から見たより長い距離の光の移動にかかった時間が異なることになる。光の速さが変わらない代わりに、時間の進み方が観測者によって変わる。

双子のパラドックス(または時計のパラドックス)はこのような時間の流れの違いを問題にした思考実験である。静止している人Aのもとを高速で離れて戻ってきた人Bは、静止していたAより時間の経過が遅くなっていることが特殊相対性理論から予測される。一方同理論から、高速で移動したBを基準とすればAが高速で離れていくように見えるため、Aのほうが時間の経過が遅いように見えるはずだ、というものである。このような二者の同時性を考えるとき時空図を用いそれぞれの座標を落とし込み理解することができる。また、空間も物体と別に存在するものでなく、時間と合わせて4次元時空と考える。物体は高速で動くほどその質量は大きくなり、運動方向に対して収縮する。

一般相対性理論とは

一般相対性理論では、重力を時空間の曲がりで説明し、より広範な状況における物理法則が扱われる。その実際の観測例となるのが「重力レンズ」である。これはブラックホールなど大きな質量によって曲がる空間により、ブラックホールより後方の天体があたかもレンズのように曲がる光となって観測者に届く現象である。1919年にエディントンが皆既日食を利用し太陽の重力によりわずかに曲がる光を観測したと発表し、相対性理論が注目を浴びることとなった。

この理論では等価原理が重要な要素である。これは重力質量と慣性質量が等価であるとする考えである。例えば自由落下するエレベーター空間内部の無重力状態と、無重力空間にあるエレベーター内空間は内部の人間からはどちらも同じと捉えられるというものである。または、無重力空間で急上昇するエレベーター内で慣性の力を受けることと、地上で重力を感じている状態を同等と考える。これにより特殊相対性理論の「特殊」な状況に限定した事象からより一般的な事象を扱えるようになった。

一般相対性理論は物体、時間、空間を個別に扱わず互いに関連し不変ではないものとした。巨大な重力をもつ天体であるブラックホールの解明にも大きく寄与する。中心となる方程式はアインシュタイン方程式で、重力場の力学を記述する。この理論によって予言された重力波(大きな質量によってゆがむ時空が光速で伝播する宇宙物理現象)は、2016年に重力波望遠鏡で観測されたと発表された。

相対性理論と量子力学の概念の違い

量子力学は電子や光子などごく微小な世界から発展した現代物理学の分野である。素粒子の存在と位置を確率で求める。その始まりはプランクの「エネルギー量子仮説」である。非常に小さな値であるプランク定数を用い、ある振動数の光が持つエネルギーは不連続な量をとることを示す。従来の自然科学では自然現象の値は連続するものと考えられていたため、プランクの仮説は非常に画期的であった。

ニールス・ボーアは原子内の電子の軌道半径(不連続な値をとる)について「量子条件」を提唱、原子が放つ光の振動数を「振動数条件」で説明し、量子力学に貢献した。量子力学は「観測」が結果に与える影響が大きく、観測者と観測対象を一元的に捉えなければならない性質がある。コペンハーゲン解釈では、素粒子は観測されていないとき「波」であり、観測によって波が収縮し確率的に一点に「粒子」として存在する性質だと考える。また、位置と運動量は同時に特定できない。このような素粒子の性質を実際観測するために「ダブルスリット透過実験」がある。この結果縞干渉が確認され電子の波の性質が確認された。

シュレーディンガーは波動関数(物質波の状態を示す)を含めたシュレディンガー方程式を発表し、波動力学が発展した。量子力学は発展途上であるがすでにコンピューターや電子機器には量子力学が使われており、量子コンピューターも開発されている。 量子論以前の物理学は相対性理論も含め古典物理学に分類される。アインシュタインは光量子仮説を提唱し量子論に貢献したが、決定論的な物理学に固執し生涯量子論に賛同しなかった。ミクロの世界から発展した量子力学とマクロな世界で重力を扱う相対性理論は相性が悪く、双方の理論の統合が今後の物理学の課題となっている。

辟易

読み方:へきえき

辟易とは、辟易の意味

辟易(へきえき)とは感情や様子を表す言葉で、「うんざりする」また「たじろぐ」という二つの意味をもつ。前者は、他者の言動に迷惑を感じ嫌になるさまや、ある状況に非常にうっとうしさを感じる状態を表す。後者は、相手の勢いや剣幕に押されて、しりごみ、後退するさまを表す。

「辟易」を構成する「辟」という漢字には、「かたよ(る)」「さ(ける)」「ひら(く)」「きみ」などの読み方がある。漢字の成り立ちには「座った人の尻の肉を刃物で切り裂き切断する」という意味があり、そこから「重い罪」と、それを裁く「君主」、「刑罰」や「死刑」を、「尻」という部位が身体の真ん中より偏っているため「偏る」「避ける」を意味するようになった。一方「易」には、「か(える)」「か(わる)」といった読み方がある。漢字の成り立ちは「雲の間から日の光が差し込む」さまを表すものであり、太陽光が変化することから「変える」「変わる」を意味するようになった。このように「辟」により「退避する」、「易」により「変化する」ことを表すため、辟易の本来の意味は「道を避け、場所を変える」ことになる。「辟易」は、司馬遷による中国最初の正式な歴史書「史記」(項羽本紀)にある表現が語源になっており、争いを避け進路を変更するところから転じて「相手を恐れて逃げること」を意味する。日本においては独自に変化し、相手に対して講じる策がないということから、うんざりする、たじろぐ際に用いられるようになった。

「辟易」は名詞であるため、「~している」「~する」「~させられる」など、サ行変格活用の動詞を付けて用いるのが一般的であるが、自分や他者が「うんざりする」という、あまり良くない意味やかんばしくない状況における感情や様子を表すため、「辟易とする」という使い方が聞かれることが多い。「~と(する)」という表現は、自分の感情や状況の判断を外部に委ねる表現であり、断言を避け、マイナス表現の意図を和らげることを目的として定着したものと考えられる。しかし、これは名詞として使用されているため、正しくは「辟易する」になる。

辟易の使い方、例文

「うんざりする」を表す際の例文としては、「会社では毎日同じ作業の繰り返しで辟易させられる」「仕事で同じミスを繰り返す自分に辟易する」などが挙げられる。いずれも、毎日変わらない作業の状況に嫌気がさしている、何度も同じ過ちを繰り返す状況に憂鬱になっている、といった、うんざりする場合の使い方である。

「たじろぐ」を表す際の例文としては、「夫婦げんかで妻の剣幕に後ろへ辟易した」「会議で部下の強気な指摘に辟易して口をつぐんだ」などが挙げられる。日本において、「たじろぐ」意味での辟易が使用されることが少ないため「辟易」だけでは意味が伝わりにくく、そのままではただ「うんざりする」という表現にとらえられ兼ねないので、辟易の後に「たじろぐ」「すくむ」「ひるむ」、また、辟易の前に「後ろへ」といった追加・補足の表現が必要である。いずれも、相手の剣幕に押されて後退する、相手の勢いに圧倒されて言葉すら返せなくなる、といった「たじろぐ」場合の使い方である。

辟易の類語

辟易を言い換える際の類語には「閉口」、「嫌気」、「尻込み」などが挙げられる。「閉口」は文字通り、相手に言い負かされたり圧倒されたりして「口をつぐむこと」「言葉につまること」、「嫌気」は「嫌だと感じる気持ち」「気が進まない」といった、いずれも相手や自分に対し困惑する感情やさまを表す言葉である。「尻込み」は「気おくれしてためらう」「圧倒される」「躊躇(ちゅうちょ)する」と言った意味があり、辟易のもつ「たじろく」に相当する言葉である。

日本においては独自に、「うんざりする」という意味で共通するため、辟易=閉口と言えるほど同義として用いられることが多く、言い換えや置き換えに多用される。しかし、「閉口」がうんざりして言葉を返せず手をこまねくだけの様子を表すのに対し、「辟易」には「たじろぐ」「後退する」という別の意味もあるため、状況に応じた使い分けが必要である。辟易の二つ目の意味である「たじろぐ」は「うんざりする」に対してあまり認知されておらず、また使用される機会も少ないため、前述の通り、前後に形容詞や動詞などを用いた補足・追加説明を要する使い方が一般的である。

辟易の対義語

辟易の持つ一つ目の意味である「うんざりする」に対する対義語としては「興味=関心がある、面白味がある」「好意=相手や状況を好ましく思う気持ち」、二つ目の意味である「たじろぐ」に対する対義語としては「勇敢=勇気があること、危険を恐れないさま」が挙げられる。

辟易の英語表現

辟易を英語で表現すると、一つ目の意味である「うんざりする」は「be bored(by~/with~)=~に退屈する」や「be fed up(with~)=~にうんざりする」などに訳すことができる。二つ目の意味である「たじろぐ」では「flinch(from~)=~から身を引く、~に尻ごみする」「shrink(from~)=~に怯む、~に縮み上がる」などに訳すことができる。ちなみに「閉口」を英語で表現すると「close=閉じる」「be nonplussed=当惑する」といった表現に訳すことができる。

辟易一閃は霹靂一閃の誤り

「辟易一閃(へきえきいっせん)」は「霹靂一閃(へきれきいっせん)」の誤りである。ただし「霹靂一閃」という「四字熟語」は実在せず、漫画家「吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)」氏による造語である。同氏の創作漫画「鬼滅の刃(きめつのやいば)」は、厳しい訓練に耐え抜いた「呼吸(こきゅう)の使い手」である少年・少女を中心とした剣士たちが、鬼退治に活躍する物語で、「霹靂一閃」は「雷の呼吸(かみなりのこきゅう)」の使い手である登場キャラクター「我妻善逸(あがつまぜんいつ)」の必殺技をさす。雷の呼吸を用いた居合切りの一種で、雷のひらめきとともに敵を一瞬にして切り伏せる表現がされている。ちなみに「霹靂」とは「晴天の霹靂(晴れた空に急に落雷があることを転じて、急に生じて人々に大いに驚きを与えるような出来事をさす)」に用いられている言葉で「雷」「雷鳴の激しいさま」「落雷」を、「一閃」は「激しく光ること」「差し込む光のひらめき」を意味する。