新語時事用語辞典とは?

2022年1月25日火曜日

理論と論理の違い

「理論」と「論理」は、漢字の順番が違うだけですが、意味も違いますし使われ方も違います。アインシュタインの「相対性理論」とは言いますが、「相対性論理」とは言いません。「なぜ、地球は自転していると言えるのか。論理的に説明しなさい。」とは言いますが、「理論的に説明しなさい。」とは言いません。「理論」と「論理」はどのように違うのでしょうか。

「理論」「論理」の違い・概要

「理論」は、「相対性理論」や「ゲーム理論」や「モチベーション理論」「経営理論」のような使い方がされます。それに対して「論理」は、「君の意見は、論理的ではありません。」のように使われます。「アインシュタインは論理的に考えて相対性理論を導き出しました。」のように使えるのです。または、「相対性理論は、アインシュタインに論理的思考力があったからこそ完成したのです。」のように使うこともできます。「理論」は結論に対して言う言葉であり、「論理」は過程に対して言う言葉なのです。

「理論」「論理」の意味・読み方は?

要するに「理論」は、考え抜いた結論として導き出された「法則」や「体系」のことです。バッティング理論や愛着理論、インフレーション理論などいろいろな理論があります。バッティング理論は、「たくさん打てるために、いろいろ試して考えぬいて到達した一つの法則または理屈」です。野球チームの監督などは多かれ少なかれ持っているものです。「イソップのうさぎとかめの法則」といえば、「どんなに才能があっても怠けたり油断したりしていると、あまり才能はなくてもコツコツと努力を積み重ねてきたものに最後には負けてしまうものです。」ということを伝えている法則です。理論は「イソップのうさぎとカメの法則」の「法則」の部分とほぼ同じ意味で使うことができるのです。ところで、「理論」は「りろん」と読みます。英語でに置き換えるとしたら、「theory(セオリー)」です。

「論理」は、物事を考える過程での「筋道」、「組み立て方」のことです。「論理的に考えるくせを身につけましょう。」のように使うことができます。また、「論理に飛躍がある」という使われ方もよく耳にします。筋道よく考えていかずに、いきなりなんの関連性もないことを考え、そこから結論を導き出してしまう思考の過程に対して言っているのです。このような思考過程から導き出された結論は説得力のないものになってしまいます。ところで、「論理」は「ろんり」と読みます。英語に置き換えるとしたら、「logic(ロジック)」です。

「理論」「論理」の使い方、使い分けは?

「理論」「論理」は、意味が違いますので、使い方もちがいます。「理論」は、考えかたの過程を表す言葉ではありません。「理論」には、その「理論」を知っていてもその理論がどのような過程で導き出されたのかを知らない、または説明できないものはたくさんあります。それでも生活の中ではその理論を使って、説明したり学習や研究を進めたりしています。

一方、「論理」は、「あなたの言っていることは論理的ではない。」のように使うことができます。この場合、「言っていること」が結論にあたります。その結論を導き出した思考過程の筋道が通っていないことを伝えたいのです。

「君の集客理論は、すばらしいね。採用させてもらうよ。」と社長が言ったとします。集客理論とは、「こうすれば、客がたくさん来ますよ。」という法則です。この場合、社長がすばらしいと感じたのは、その法則なのです。その法則を導くために考えた過程の筋道ではありません。もし、社長が集客理論にいたるまでの考え方をほめたいのだとしたら、「君の集客理論のための論理は、すばらしいね。」と言うべきです。そして、その後に社長は、「しかし、君の理論のように実際には人は動かないよ。所詮君の理論は、机上の空論なのだよ。」という言葉を続けることもできるわけです。

「雨が降ると客が減るという理論がありますが、それでは利益があがりません。ぜひ、雨の日の集客を増やす方法を論理的に考えてみてください。」と言われたとします。「理論」は「法則」、「論理」は「筋道を立てて考えること」と置き換えてみると理解しやすくなります。「雨が降ると客が減るという法則がありますが、それでは利益があがりません。ぜひ、雨の日の集客を増やす方法を筋道を立てて考えてみてください。」という意味です。

「理論」「論理」の用例・例文

・どの理論を使えば、その解答を導くことができるのでしょうか。
・イソップのありときりぎりす理論について考える。
・暖かい冬は服が売れないという理論は本当だろうか。
・太陽が地球の周りを回っているという理論はくつがえされました。
・あなたの論理には一貫性がありません。
・あなたの論理は飛躍しています。
・論理の飛躍を指摘されてしまいました。
・友だちに論理の矛盾を指摘されてしまいました。
・論理的に考えれば、簡単に解ける問題です。
・論理的に考えたので、その理論に到達することができました。
・論理的考えた方が良いと友人にアドバイスをしました。
・論理的考えたので、その難問を解決することができました。

利用と使用の違い

「利用」と「使用」はどちらも「物や人の機能を生かして目的達成に役立てること」を意味する語です。そして、「利用」は「あるものの特性を生かして役立たせること」、「使用」は「あるものを役立てること」を指す意味で使われます。

「使用」はあくまでも、そのもの本来の役割が果たされる際に用いられます。たとえば、辞書を読んで単語の意味を調べるときは「辞書を使う」となります。しかし、「辞書の重さを利用してシワ伸ばしに使った」という場合なら「辞書を利用した」と表現できるでしょう。

「利用」「使用」の意味・読み方は?

そもそも、利用は「りよう」と読みます。利用には物や人を、ある状況にあてはめるという意味合いがあります。仮に物や人の目的と違っていたとしても、性質を状況にあてはめるのであれば「利用する」となるでしょう。なお、利用にはネガティブな意味合いが含まれることもあります。なぜなら、物や人の目的が違った場面で生かされることは、それらの意図に反しているケースもありえるからです。特に、「人が人を利用した」と書く場合、否定的な意味が強くなるといえます。

次に、使用は「しよう」と読みます。使用の意味合いは「物や人を、それぞれの領域で生かす」ということです。基本的に、物や人の能力、機能にそった形で使用は行われます。あるいは、その人の望みを叶えようと、役割を与えることも「使用する」と表現可能です。ただし、人に対して「使用する」という言葉を用いる際には注意が必要です。「使用人」という言葉があるように、「人が人を使う」ということは、そこに主従関係が生まれているからです。もしも両者が対等な関係であるならば、「使用」と表現するのはふさわしくないでしょう。

「利用」「使用」の使い方、使い分けは?

利用と使用を使い分ける際には、対象となる物や人の役割を踏まえなければなりません。本来の役割と異なる場面で対象物が用いられるなら「利用」が正しいといえます。逆に、本来の役割通りの用いられ方をするのであれば、「使用」が正しいでしょう。ただし、設備や建物の機能を目的のために役立てる際には、「利用する」とすることが一般的です。たとえば、娯楽施設に行ったり、アトラクションや遊具で遊んだりするときは「利用」があてはまります。

対象物が用いられたことにより、利益が発生したかどうかも重要です。「割引券を支払いのときに提示した」「携帯料金のプランを踏まえて、支払額が安くなるようにした」といった場合は、「自己の利益のために対象物を用いた」といえるでしょう。すなわち、「割引券を利用した」「料金プランを利用した」と書くことができます。ただし、「パソコンで文字入力した」「包丁で料理を作った」などという状況では、それらの行為自体が直接、利益につながっているわけではありません。そのため、「パソコンを使用した」「包丁を使用した」といった表現になります。

対象物が用いられた方法が、「単純かどうか」も大きなポイントです。利用は物や人の役割を応用して、目的達成に役立てるというニュアンスを含んでいます。つまり、何かが利用される際には、その方法が複雑になることも珍しくありません。例を挙げれば、「顕微鏡を利用して、日光を集めて、紙に火をつけて調理した」といった書き方になります。ここでは、顕微鏡を本来の役割とは別の状況で用いただけでなく、「調理」という大きな目的達成のために一部を担わせたとの意味が込められています。もしも顕微鏡を、小さなものを見るという単純な役割で用いたなら「顕微鏡を使った」という書き方で正しいでしょう。

そのほか、サービスや特典を用いる際には「利用」、道具や物体を用いる際には「使用」とするのが適切です。

「利用」「使用」の用例・例文

利益や打算が絡んだ文脈では、使用よりも利用を用いるのが適しています。「夏休みを利用して旅行した」「彼のリーダーシップは現場をまとめる際に利用できる」といった例文が挙げられるでしょう。なお、利用を含んだ言葉には「利用者」「利用価値」などがあります。いずれも、何らかの利益と関係している使われ方です。それぞれ、「ホテル利用者に向けてサービスを用意した」「どれほど傲慢な従業員でも、利用価値があるうちは解雇できない」といった文脈で用いられてきました。

シンプルに、物や人の機能を何かに用いるという場合は「使用」が的確です。「手袋を使用すれば、雪かきは楽だ」「明るい場所ではなかなか寝られないので、サングラスを使用した」といった例文が挙げられます。さらに、使用は「使用料金」「使用人」などにも含まれてきました。「使用料金を確認する」「使用人に言い渡す」といった表現で使われている言葉です。

利子と利息の違い

「利子」と「利息」は、ともに「元手となったお金に上乗せされるお金」のことですが、慣例的に「この上乗せ分のお金を支払うか受け取るか」に応じて使い所が区別されます。

「利子」は「お金を借りた人が支払う、借りたお金に上乗せするお金」のことです。一方「利息」は「お金を貸した人が受け取る、貸したお金に上乗せされるお金」のことです。

「利子」「利息」の意味・読み方は?

「利子(りし)」は、「お金を借りた人が支払う、元金に上乗せするお金」という意味で使われています。「利子」に使われている「利」という漢字は、「元金から生じた余剰なお金、もうけ」を意味します。もう一つの漢字「子」はその字の通り「こども」を表すとともに、こちらにも「元になるものから生まれたもの」という意味が含まれています。よって「利子」という言葉は、構成する二字とも「元から生まれたもの」という共通の意味を持った漢字の組み合わせであり、「利」が「お金、もうけ」を表すことから、「元金から生じたもうけ」という意味を表していると解せます。

「利息(りそく)」は、「お金を貸した人が受け取る、元金に上乗せされるお金」という意味で使われています。「利子」と同じ「利」という字を使っているため、こちらも「元金から生じた余剰なお金、もうけ」という意味を含んだ言葉であることはわかります。「息」という漢字にも、「子」と同じ「子ども」という意味があります。「愛息」「子息」など、こどもを意味する言葉で使われていることからもわかります。よって「利息」も「利子」同様、構成する二字とも「元から生まれたもの」という意味を含み、「元金から生じたもうけ」を表していると解せます。

「利子」「利息」の使い方、使い分けは?

ここまで、「利子は借りた人が払う」、「利息は貸した人が受け取る」と説明しました。しかし、「利子」と「利息」それぞれの言葉を構成する漢字の意味を見る限りでは、「支払う側」と「受け取る側」に分けて使われている理由がはっきりしません。実際、多くの金融機関などでは「利子は借り手が払うお金」、「利息は貸し手が受け取るお金」と使い分けられていますが、必ずしも統一されているわけではないのです。

例えば、多くの民間銀行では預金に対して支払われるお金を「利息」としていますが、ゆうちょ銀行では「利子」としています。国税庁では「受け取った元金に上乗せされたお金」を「利息所得」ではなく「利子所得」としています。会社が資金調達するために発行する「社債」では、「お金の借り手である会社」が「お金の貸し手である投資家に支払う、元金に上乗せしたお金」を「社債利子」ではなく「社債利息」といいます。このように、受け取る側で「利子」を使ったり支払う側で「利息」を使うケースもあって、厳格に使い分けをされているとは言えません。それでもある程度使い分けて使われているのは、「子」と「息」の意味合いの違いからだと考えられます。

「子」には「両親から生まれた人=こども」という意味があります。一方、「息」にも「こども」という意味がありますが、「息」が表す「こども」は「他人の子」なのです。「子息」「愛息」「息女」のように「息」がつくこどもを意味する言葉は、すべて他人の子のことをさす言葉で自分の子に対しては使いません。このように「子」には自分の子か他人の子かを区別する要素はありませんが、「息」には他人の子という意味合いが含まれています。このことから、特に顧客にお金を預けてもらって利益を上げる民間銀行や、投資家に社債を引き受けてもらう企業の立場からすれば、預かったお金は「お客様、投資家」のものであり、そのお金を元金として上乗せされるお金は「お客様、投資家のお金から生まれたこども」だという観点から、「他人の子」を意味する「息」を含んだ「利息」を使うようになったのではないかと考えられます。

「利子」と「利息」の意味は同じですので、「利息を支払う」と言ったり「利子を受け取る」と言っても間違いではありません。金融機関や国の制度の中でも統一されていないように、使い分けに明確なルールがあるわけではありませんが、慣例として広く浸透しているので覚えておきましょう。

「利子」「利息」の用例・例文

・「利子」の用例・例文
「借金の利子が膨らみ返済できなくなった」
(慣例として、借り手側が支払う元金に対する上乗せ金を「利子」という)
「利子所得とは、預貯金および公社債の利子ならびに合同運用信託、公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます。」(国税庁HPより引用)
(慣例では受け取り側から見た場合は「利息」だが、国税庁では「利子」所得としている)

・「利息」の用例・例文
「預金に利息がついた」
(「利子」、「利息」とも、元金に上乗せ金が加わるときは「つく」という)
「期日がきたので社債の債券者に利息を支払う」
(社債の場合、支払う側でも「利息」という)

問題と課題の違い

「問題」と「課題」はどちらも「処理しなくてはならない問いかけや仕事」を指す語です。特に問題は「答えを出すべき問いかけ」を指し、課題は「解決するべき出来事」を指します。

問題は、「答えを出すべき問いかけ」です。問題は多くの場合、明確な答えが用意されています。解答者は論理や数式などを応用し、答えを導き出さなくてはなりません。そのほか、「トラブル」のことを問題と呼ぶときもあります。

課題とは「解決するべき出来事」を意味します。課題には答えがないかわりに、技術や労力を駆使して乗り越えなくてはなりません。なお、課題は横文字だと「タスク」と表現されています。

「問題」「課題」の意味・読み方は?

まず、問題は「もんだい」と読みます。問題は、考えれば答えや結論にたどりつく問いかけです。また、ビジネスシーンでは、「目標との間にある差」が問題と呼ばれています。つまり、問題をどうにかして処理すれば、「目標達成」という結果にたどり着くという仕組みです。そのほか、個人の能力や知識を試すための問いかけも問題と表現されてきました。問題については、正しい答えがあることも珍しくありません。そのため、問題の答えを導き出すには、定められた手順、技法が必要とされます。

一方、課題は「かだい」と読みます。課題は、克服することで成功体験を得られる障害です。ビジネスシーンでは、「目標との差を埋めるために処理しなければならない物事」という意味です。問題を処理するにあたり、現場が任される具体的な作業が課題だといえるでしょう。課題は定められた方法論を使わなければ、解決できないわけではありません。効率的な手順こそあるものの、個人の考えで解決にあたります。

「問題」「課題」の使い方、使い分けは?

正解と不正解で語られるべき事象は問題で、解決と未解決で語られるべき事象が課題だといえるでしょう。たとえば、数学の式には明確に答えがあります。国語の文章読解や、日本史の年表の穴埋めなどにも正解が用意されています。これらの問いかけは、問題と呼ばれてきました。一方、「数学の重要性についてのレポート」「体育で創作ダンスを考案」といった物事には、絶対的な正解がありません。解決することで、本人の成長を促すような内容です。つまり、これらは問題ではなく課題と呼ぶのが相応しいのです。

ビジネスシーンにおいては、「トラブルそのもの」が問題で、「トラブルを解決するための手段」が課題と呼ばれています。問題は組織全体が共有するのに対し、課題は役職や部門によって異なります。例を挙げるなら、「前年度比で売上が20パーセントも下がってしまった」というのは問題です。企業が生き残るためには、どうにかして問題を処理しなくてはなりません。そこで、上層部は「新商品を開発しなくてはならない」「Webマーケティングを強化しなければならない」といった課題を考え、現場に指示します。課題を解決することで問題は処理され、企業の利益になるのです。

そのほか、言葉に込められているニュアンスでも、問題と解決は使い分けられてきました。問題は、「物事があるべき形をなしていない」というネガティブな状況に使われてきた言葉です。もしも学生がいたとして、「単位が足りていないから卒業できない」というのは問題だといえます。訪れるはずだった卒業から、遠ざかってしまっている状態だとみなせるからです。

それに対し、「卒業のために急きょ、追試を用意してもらった」とするなら、それは課題です。課題は「ネガティブな事象の克服につながる」という、ポジティブなニュアンスを含んでいます。第三者が何かを「問題」とみなすとき、そこには批判的な響きが加わります。しかし、「課題」とみなされる際には、前向きで今後を見守っていこうとする感覚が込められているでしょう。

「問題」「課題」の用例・例文

問題も課題も、特定分野を意味する言葉と合わせて使用されることが珍しくありません。たとえば、「パワハラ問題」「経営課題」といった例が挙げられます。このうち、問題にはネガティブで、「報いを受けなくてはならない」というニュアンスが加わっています。そのため、「パワハラ問題で辞任を迫られている」「経営者としての才覚を問題視されてきた」といった、批判的な文章になることも多いのです。

一方、課題には「克服することで人や組織の改善につながる」という感覚が込められています。例文もまた、「経営課題を踏まえて、抜本的な改革に踏み切った」「この合宿では得点力の強化が課題だ」と、ポジティブなニュアンスになるケースが多いでしょう。注意点として、問題は「解く」ものであるのに対し、課題は「克服する」ものです。「問題を克服する」「課題を解く」といった表現はほぼされていないので、要注意です。

目的と目標の違い

「目的」は、最終的に目指すもの、理想とする姿を指しており、長期的なものや、抽象的なものになる場合が多くなっています。一方、「目標」は、掲げた「目的」を達成するために、設定される目印のことを指しています。短期的なものや、具体的なものが求められ、さらに、目的を達成するためには、ほどよい高さのレベルにしておくことも大切です。「目的」や「目標」は、ビジネスシーンで使われることが多く、上手に活用することでモチベーションアップやステップアップが図れると言われています。

「目的」「目標」の読み方・意味は?

「目的」は、「もくてき」と読みます。「これから成し遂げようと目指す事柄」や「目指す姿」など、最終的に到達したいことを指しています。最終地点やゴールとも言えるでしょう。登山で言えば、山頂にあたる部分です。また、「目的」は「何のために達成したいのか?」「何をしたいのか?」という問いかけによって明らかにすることができます。手に入れたい理想の姿でもあるため、抽象的な表現となっていたり、長期的な内容に設定されていることが多いでしょう。「目的」は、チーム全員に共有認識を持たせ、方向性を示すという役割も担っています。

一方、「目標」の読み方は「もくひょう」です。「目標」の場合、通過点や目印といった意味合いを持っています。目的という最終地点に向かうために、設定される目印のことを指しているのです。山頂にたどり着くまでに経由するポイントや、時間配分などがこれにあたるでしょう。つまり、その目的を達成するために必要なプロセスと言えます。そのため、ひとつの目的に対して、目標はひとつだけとは限りません。複数の目標が掲げられることも多いでしょう。また、「目標」には短期的なものや、具体的なものが挙げられます。「目的」と「目標」はどちらも密接なつながりがあり、「目標」は「目的」の存在があって、はじめて作れるものです。この二つの言葉の意味や違いを明確にすることで、理想とする地点までスムーズに到達できるようになるでしょう。

「目的」「目標」の使い方、使い分けは?

「目的」はゴール、そして「目標」はそのゴールに到達するために必要な手段です。例えば、ビジネスシーンではしばしば、「自社商品でお客様を喜ばせる」などとった目的が掲げられることがあります。この場合、「この最終的な地点へたどり着くために、社員はどうすればよいか」を考える必要が出てくるでしょう。例えば、「コストパフォーマンスを上げるために、〇%のコストダウンをする」「月1回研修を行い、営業力をアップさせる」「顧客アンケートから改善点を見つけ出し、商品を改良する」などが目標として設定できるようになります。「目的」に比べて、「目標」はそれぞれ具体的な内容で、数値などを使うことが多いです。そのため、「目的」にたどり着くまでに、まずはどのような行動を取ればよいのかが分かりやすくなります。効率良く業務を進めるために、「目的」と「目標」を明確にすることが大切なのです。

次に、「痩せる」ことを「目的」にした場合を例に挙げて説明していきます。この場合、「痩せるためにどうすればよいか」を考えると、自然と「目標」がいくつか設定できるでしょう。「夜8時以降に食事をしない」「毎朝6時に起きてジョギングを30分する」など、痩せるために取り入れたい方法がいくつも考えられます。ただ単に「痩せる」という目的を思い描いているだけでは、何の解決にもなりません。そこで、痩せるためにいくつかのポイントを設定することで、着実に一歩ずつ前に進んでいけるようになります。挫折を防ぐためにも、目標には、頑張れば実現できそうな内容のものを設定し、難易度を上げ過ぎないようにすることが大切です。その他にも、勉強や美容など、様々な分野でこの「目的」と「目標」の考え方が活用できます。

「目的」「目標」の用例・例文

「目的」の用例・例文
・私にとって次の大会の目的は、優勝することです。
・弊社の目的は、自社ブランドを世界一にすることです。
・目的が明確になれば、モチベーションも上がるでしょう。
・本来目標になる部分が目的化してしまうと、よい仕事はできません。

「目標」の用例・例文
・大会で優勝するために、体幹トレーニングを毎日1時間行い、体づくりを徹底することを目標にします。
・この目的を達成するために、必要な目標を3つ挙げて下さい。
・自社ブランドを世界一にするために、売上で前年度よりも〇%アップを目標として掲げます。
・目標のレベルが高すぎるので、少し見直してみよう。
・目標を設定し、PDCAサイクルを回すことが大切です。
・私にとって、その目標は簡単すぎます。

面談と面接の違い

混同されがちな類義語として、「面談」と「面接」が挙げられます。いずれも、人と人が対面して話をする点では共通しています。しかし、細かい内容や目的は異なっているので、使い方には要注意です。さらに、これらの言葉が使われるシーンも違います。この記事では、面談と面接の意味や違い、用法や例文などを紹介していきます。

「面談」「面接」の違い・概要

もっとも大きな違いは、面談と面接の目的です。面談とは、「お互いの気持ちや素性を知るために行われる会話」を意味します。主に上司や教師などが、部下や生徒に対して行うことが多いといえます。基本的にはリーダーや年長者が、話を聞く側にまわる仕組みです。一方、面接の目的は「選考」にあります。就職活動や入学試験の一環として行われている手法であり、面接官は会話を通して志望者のスキル、人間性などを確認します。同時に、志望者も面接官を通して、企業や学校の魅力を探ることが可能です。

「面談」「面説」の意味・読み方は?

面談は「めんだん」と読みます。その意味は「面と向かって談話すること」です。談話には「くだけた態度で言葉を交わす」という意味があり、決して緊張感のある会話ではないといえます。面談は企業や学校などで行われており、主に目上の人間が、従業員や学生の気持ちを知ることが目的です。一方で、目上の人間が自分の気持ちを相手に伝える場合も少なくありません。面談は一方的な「説教」「説明」とは違い、その時間を通して今後の関係を改善するための手段です。

それに対して、面接は「めんせつ」と読みます。面接は「面と向かって接すること」です。面談よりも形式的なニュアンスを含んでおり、礼儀や敬語が重んじられる状況だといえます。面接も面談と同様に、企業や学校で行われています。ただし、面接ではその組織に属している人間が、志望者に対応することが一般的です。面接官は志望者の人となりや希望条件を聞き出したうえで、今後の選考の参考にします。多くの場合、面接では「合格」「不合格」という形で結果が志望者に伝えられます。

「面談」「面接」の使い方、使い分けは?

面談と面接の使い方は、「その場にいる人間の立場」によって変わってきます。面談は同じ組織に属している人間が、今後について話し合う機会です。上司と部下、教師と生徒、先輩と後輩など、肩書は違っても双方が同じ組織の人間です。一方、面接は、組織の人間と志望者によって行われるのが基本です。人事部と就職希望者、教師と入学希望者、店長とアルバイト候補など、内部の人間と外部の人間という構図で表せるでしょう。面接は内部の人間が、志望者を組織に迎え入れられるかどうかを見極める場です。そして、志望者も質問や会話によって、組織の実情を見極めます。

その場にいる人数も、面談と面接を使い分けるポイントです。面談は一対一で行われることが少なくありません。なぜなら、面談では非常に繊細な本音が語られるケースもあるからです。必要があれば、組織への不満やプライベートの事情も面談者は口にします。これらの話題は周囲に広められる内容ではないので、面談は機密性を保って行われてきました。ただし、家族やパートナーのように、当人と近しい関係にある人が同席することもあります。

それに対して、面接は大人数で行われることもありえる手法です。面接官が複数いたり、大勢の志望者が同時に呼ばれたりするケースもあるでしょう。なぜなら面接はあくまでも選考過程の一部であり、公にできる情報を開示しあうことが求められているからです。

そのほか、面談と面接は今後の影響においても、使い分けたい言葉です。面談が行われた後で、上司や教師は今後の対応を考えます、部下や生徒の希望を知ったうえで、彼らや彼女らの将来に役立つ対応をしなければなりません。なぜなら、面談は両者の関係を改善していくためのチャンスだからです。しかし、面接では、面接官と志望者の関りがその場限りになることもあります。面接官が志望者を「この組織にふさわしくない」と考えれば、それ以降の関係は途切れます。面接官はすべての志望者の希望を聞き入れる必要がなく、両者の関係を持続させなくてもいいのです。

「面談」「面接」の用例・例文

面談を用いた言葉に、「三者面談」「1on1面談」などが挙げられます。面談にはさまざまな種類があるものの、基本的には前向きで、今後につながる機会という意味合いを含んでいます。面談ではお互いの条件をすり合わせることが多く、対等な立場で会話がなされるでしょう。例文としては「三者面談を通して希望校の難しさが伝えられた」「1on1面談で部下の気持ちが分かった」などです。

一方、面接を用いた言葉には「圧迫面接」「集団面接」などがあります。面接は面談よりも堅苦しい場であり、日常的に行われるものではありません。そのため、面接をあえて、批判的なニュアンスで使う場合もありえます。たとえば、「まるで面接のように糾弾されて、私はうんざりした」のような文章が挙げられるでしょう。「面接官は鉄仮面のような表情で、まったく気持ちが見えなかった」というように、面接が使われる文脈では緊張感をともないやすいのも特徴です。

報告と連絡の違い

部下が上司や先輩から与えられた業務に対して、進捗状況や今後の見通しを意志や感情を交えて伝達することが「報告」で、部下や上司の間柄に関係なく、同じ情報を共有する者同士でその情報の現況や結果を通知することが「連絡」です。「報告」は、部下から上司へのように、業務を与えられた側から与えた側に行う一方通行の関係になりますが、「連絡」は上司や部下にかかわらず、誰もが発信者と受信者の関係になり得るという点で異なります。

「報告」「連絡」の意味・読み方は?

「報告」は「ほうこく」と読み、業務を与えられた上司やその他関係者に対して今行っている作業や結果を正しく迅速に伝えることをいいます。そこには何故そういう現状になっているかの過去からの流れや、その現状から今後どのようになっていくかの未来の予測等、その業務を行っている者の意志を明確に伝えることが大切な要素となります。もちろん良い内容の伝達ばかりでなくミスの事実を知らせることも重要です。つまり与えられた業務に対して自ら行ってきた過去から現在までの事実を包み隠さずに伝達することが報告です。

「連絡」は「れんらく」と読み、ある情報を共有する関係者各位の間で今まさに起こっている事実や結果、予測等をお互いに周知徹底させることをいいます。そこには伝える側の意志や感情は必要なく、誰もが持つべき共通した情報を客観的に伝えていくことが必要となります。発信者と受信者がその都度変わることも特徴としながら、例えばイベントの日程やインフォメーションを知らせるといった関係者各位が知っておくべき内容を全員に伝達することが連絡です。

「報告」「連絡」の使い方、使い分けは?

報告と連絡の使い分けは大別すると二つの要素があります。まず一つの要素として発信者と受信者が明確に区別されているかどうかということ。そしてもう一つの要素として伝達内容に発信者の意志や感情が含まれているかどうかということです。前者では区別されている場合が報告で区別されていない場合が連絡、後者では意志が含まれている場合が報告で含まれていない場合が連絡と使い分けることができます。

部下から上司へ後輩から先輩へというように常に業務を与えられた側から与えた側へと行う伝達が報告で、上司・部下にかかわらず伝達する内容や時期等で発信者と受信者が変わり得る伝達が連絡です。また進捗状況や未来予想などを伝達するにあたり発信者の意志や感情が重要な要素となる伝達行為が報告で、現在起こっている事実や決まっている予定を客観的に伝達する行為が連絡となるわけです。

例えば、大きな会場を借り切ってあるイベントを行うプロジェクトを任された者が、そのイベントを行う会場の手配やイベントに協賛してもらう企業の誘致などを確実に進めていく過程において、この役割を自分に与えた上司に進捗状況を伝達する行為が報告になります。まず会場候補の名前や営業する予定の協賛企業の一覧といった発足直後の状況告知に始まり、会場と協賛企業決定の提言や何故そう決めたかの意図を説明する中間告知、また業務を進める上で犯してしまったミスの告知も報告として大切です。流れとしては部下から上司、後輩から先輩というように目下の者から目上の者への伝達が報告の根幹です。

それに対して、既に段取りされたイベントへの参加を勧めるために関係者各位へ場所や日程を告知する行為が連絡です。決定している会場の場所と名前、行われるイベントの日時といったように事実を淡々と伝達することが連絡で、ここには客観的事実以外の内容は必要ありません。伝達事項が何故そのように決まったかの意図や感情を含めた意味説明も必要ありませんし、受信者と発信者の間に上司と部下や先輩と後輩といった上下関係も存在しません。あるいは場合によって所属している組織の垣根を越えて伝達が行われることもあります。

「報告」「連絡」の用例・例文

報告と連絡の用例・例文として次の二つの例文を見てみましょう。「取引を行う上で浮上してきた問題点を上司に報告した」「会社へ戻る時間が遅くなる連絡を上司に入れた」前文の報告の例文では、相手が上司で内容も業務上の問題点を伝えるものです。業務そのものがそもそも上司の指示ですから、その結果導き出されたことの内容を告知する行為は報告になります。一方後文の連絡の例文では、相手が上司であるとはいえ戻る時刻の告知という業務内容とは直接関係のない客観的事実を単に伝えているだけなので連絡になります。

次の例文として「台風の被害状況が次々と報告されてきた」では、現場レベルの情報が指揮官に上がってきている伝達なので報告として、「台風が大型のため避難するように連絡がきた」では、地域住民全員に避難勧告が出ている旨のお知らせなので連絡としての用例になります。

聞くと聴くの違い

、「聞く」と「聴く」の違いは、音を認識する際の意識の違いと言えます。特に意識する事なく自然と音が耳に入ってきた場合は、「聞く」を使用するのが適切です。それに対し積極的に音の意味を理解しようと耳を傾ける場合は「聴く」を使います。

「聞く」の聞は「門」と「耳」から構成されている漢字であり、門を通って音が耳に入ってくる様子を表現しています。一方「聴く」の聴は「耳」と真っ直ぐなこころを示す「心」、突き出すを示す「壬」を組み合わせた漢字です。そのため、「耳を突き出して真っ直ぐなこころできく」という意味になります。

「聞く」「聴く」の意味・読み方は?

「聞く」の場合、訓読みでは「きく」、「きこえる」という読み方になり、音読みでは「ぶん」や「もん」と読みます。「聞く」には、音や声が耳に入ってくる、又はその内容を知るといった意味があります。自然と音が耳に入ってくる事を「隣の部屋から音が聞こえる」、内容を知ろうとする場合は「話を聞く」、周囲の人などから間接的に知る事を「美味しいレストランがあるという評判を聞いた」など、様々な状況にて「聞く」が使用されています。また「聞く」には、真意を聞くなどのように質問するという意味合いで使われる事がある他、先生の言う事を聞くなどのように、相手の意見やアドバイスを受け入れるという意味でも使用されています。

一方、「聴く」は積極的に理解しようとする気持ちを持ちながら、音や声に対して能動的に耳を傾ける状況を表す場合に用いられます。自然と音が入ってくる「聞く」よりも限定された意味になると言えるでしょう。「聴く」は身を入れて耳を傾けるというニュアンスも持っていると言えます。そのため、「友人の悩みをきく」、「落語をきく」などの場合は、「聞く」ではなく「聴く」を使います。またビジネスにおいては、上司や顧客などとコミュニケーションをとる機会も多い事から、相手とより丁寧に接する事を示す「聴く」を使用するのが賢明と言えるでしょう。尚、「聴く」の訓読みは「きく」であるのに対し、音読みでは「ちょう」と読みます。

「聞く」「聴く」の使い方、使い分けは?

「聞く」は意識しなくても自然と音や声が耳に入ってきた場合に使われる言葉です。そのため、「歌声が聞こえてくる」、「鳥の鳴き声が聞こえる」など意識をしていなくても勝手に向こうから聞こえてくるといった状況では「聞く」を使用するのが適切です。また、人の意見を受け入れるといった意味合いも「聞く」にはある事から、「相手の要望を聞く」といった場合は「聞く」を使用します。他にも「レストランの場所を聞く」などのように何かを尋ねる時や、「聞く耳を持たない」、「聞き流す」などの表現を用いる場合なども「聞く」が用いられます。

一方、「聴く」は集中して能動的に音や声を耳に入れる事を表す言葉であるため、「クラシックを聴く」、「ラジオを聴く」など意識をして音や声に対して耳を傾けている場合は「聴く」が適切な使い方となります。また「先生の話を聴く」、「著名人の講演を聴く」など自分で内容を積極的に理解しようとしたり、何かをしっかり身に付けたいという場合も「聴く」を用いるのが正しいです。そのため、自然と音や声が入ってくる場合は「聞く」、積極的又は意識しながら音や声に対して耳を傾ける場合は「聴く」を用いるといった使い分けをするのが適切と言えるでしょう。

さらに、「聞く」と「聴く」を使い分ける際、聞くに別の動詞を加えて真剣に聞く事を表現する場合は、「聴く」ではなく「聞く」を使うのが正解です。例えば「きき耳を立てる」という言葉の場合は、「聴き耳」ではなく「聞き耳」となるので注意しておきましょう。尚、音や声が「きこえる」というケースでは受け身の印象が強いと言えるため、一般的には「聞こえる」と書きます。ただ、「集中して耳を傾けていると、きこえてくる」といったように意識して音や声に耳を傾ける場合は、「聴こえてくる」と表す事も可能です。

「聞く」「聴く」の用例・例文

「聞く」を使った例文としては「喫茶店でコーヒーを飲んでいたら好きな曲が聞こえてきた」、「そとで話をしていたら消防車のサイレンが聞こえてきた」、「隣の部屋で物音が聞こえるので見に行ったら猫がいた」などが挙げられます。また、「尋ねる」の意味合いを持つ「聞く」の場合は「目的地に行く方法が分からなかったので歩いている人に道を聞いた」、人の意見を受け入れるというニュアンスの「聞く」では「先輩のアドバイスを聞く」といった例文が挙げられます。一方、「聴く」を用いた場合、「スマートフォンで好きなミュージシャンの音楽を聴く」、「英語のリスニングテストがあるので、例文を繰り返し聴いて勉強した」、「ジャズの生演奏を聴くためにコンサートホールに行ってきた」といった例文が挙げられます。

怖いと恐いの違い

「こわい」と言われた時、「怖い」「恐い」のどちらの漢字を思い浮かべるでしょうか。「真夏の恐怖体験」なんてフレーズもありますが、「怖」「恐」これら2つの漢字について、意味の違いを明確に説明できる人はそう多くはいないでしょう。ここでは「怖い」と「恐い」の違いとそれぞれの意味、使い分けについて説明していきます。

「怖い」「恐い」の違い・概要

「怖い」「恐い」の違いといえば、使用している漢字です。「怖」は常用漢字ですが、「恐」は常用外という明確な違いがあります。そもそも常用漢字というのは、「一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」となる漢字のことです。そのため、「怖い」の方が比較的多くの場面で使用されている言葉といえるでしょう。なお、「怖」の部首であるりっしんべんも、「恐」の部首であるこころも、心の働きなどに関する漢字に使われます。見た目は違えど、どちらも心について表す漢字ということになります。

「怖い」「恐い」の意味・読み方は?

「怖い」「恐い」の読み方はどちらも「こわい」ですが、明確な意味の違いも実はありません。どちらにも、「危害を加えられそうで不安なため近づきたくない」、「悪い結果が出そうで不安なため避けたい」、「不思議な能力がありそうで気味が悪い…」などの意味があります。強いて言えば「恐い」は、「怖い」の意味に「ひかえめにする」という意味が加わることくらいです。たとえば、「恐」の字を使った「恐れ入ります」や「恐縮でございます」というフレーズには、「私のようなものが」というひかえめな気持ちが表現されています。「恐」は常用漢字ではありませんが歴史は古く、日本最古の歴史書である古事記にも「恐(かしこ)し。」(=恐れ多い)との記述がありました。

読み方も意味も同じではありますが、公用文や新聞では「怖い」が使用されています。一般的なニュースサイトや書籍でも「怖い」の使用頻度が高く、常用漢字である「怖」が広く受け入れられていると判断できるでしょう。スマートフォンやパソコンで変換すればどちらの言葉も出てくる便利な時代ですが、すでに完成された文章から「恐い」を見る機会は少ない傾向にあります。

「怖い」「恐い」の使い方、使い分けは?

「怖い」「恐い」の意味については決定的な違いはありません。明確に違うのは、常用漢字を使用しているかどうかという点のみです。常用漢字に選ばれている「怖」は、法令、公用文書、新聞などで一般的に使用されることになります。そのため、どちらの漢字を使えばいいか迷ったら「怖い」を選択するのも一つの手でしょう。もちろん「恐い」も間違いではありませんが、とくに小学校や中学校で学習する漢字は常用漢字なので、テストで出題された際は迷わず「怖い」を書くべきところです。

なお、印象の違いによって使い分けることも可能です。たとえば、幽霊を見た時に感じるゾッとした恐怖には、どちらの漢字を用いればニュアンスが伝わりやすいでしょうか。「恐い」も間違いではありません。しかし、「私のようなものが」というひかえめな気持ちが含まれている「恐」よりも、「怖」を使用した方が読み手もしっくりくる可能性があります。ほんの少しの違いを意識することで言葉の選択肢が広がっていきます。

また、「強い」をなんと発音するでしょうか。一般的に「つよい」と読む人が大半ですが、こちらも「こわい」と読むことができます。「強い(こわい)」は頑固、強情など人の性格を表すものから、カチカチに固まっているなど物体の硬さを表すものまで、意味が幅広いです。しかし、「怖い」「恐い」「強い」の語源は共通して、古語の「こはし(こわし)」という意外性があります。「こはし(こわし)」には本来「かたい」という意味があり、かたい→強い→近寄りがたい→恐怖、という具合に転じたものと考えられています。「怖い」「恐い」と「強い」には意味に違いがあるように思えますが、一つの意味から派生してできた言葉だったのです。

「怖い」「恐い」の用例・例文

読み方も意味も同じの「怖い」「恐い」ですが、伝えたい文章のニュアンスによって使い分けることが可能です。たとえば、職場でリーダーに大抜擢された場合、「私のようなものが」と感じる瞬間に出くわしたとします。そんな時「挑戦するのがこわい」と感じることもあるでしょう。このケースの「こわい」には、ひかえめな気持ちが含まれている「恐」を使い、「大役を任されたが、私には荷が重すぎて挑戦するのが恐い」と表現しても良いのではないでしょうか。

なお、常用漢字を使った「怖い」に関してですが、ほとんどすべてのものに対する「こわい」を網羅できます。「あの先生は怖い」「緊急地震速報の通知音が怖い」「怖い夢を見た」「パソコンの調子が悪い。いつ故障するのか考えると怖い」など、こわい対象が人でも物でも出来事でも同様です。もちろん、「私には荷が重すぎて挑戦するのが怖い」としても良いわけです。繰り返しになりますが「怖い」と「恐い」は基本的に同じ意味をもっていて、常用漢字かそうでないかの違いのみなのです。

買掛金と未払金の違い

「買掛金」や「未払金」という言葉を聞いたことはありませんか。帳簿を付けるときに必要となるのが、「勘定科目」と呼ばれるお金の内容を表すものです。「買掛金」と「未払金」は、どちらもお金を後で支払うという義務を表す勘定科目になります。この二つの言葉はどのように違うのでしょうか。違いを具体的な例を挙げて説明していきます。

「買掛金」「未払金」の違い・概要

「買掛金」は、仕入先との通常の取引を通じて発生した未払いの代金のことをいいます。製造業での材料や部品の仕入れ、小売業の商品の仕入れに掛かった代金の未払分などです。それに対し、「未払金」は、直接商売に関係のない取引に掛かった代金の未払分のことを表します。固定資産の購入、有価証券の取引の未払分などです。また、消耗品の購入なども未払金に入ります。仕入れなど商売に関係する取引なのか、それ以外なのかという違いがあります。

「買掛金」「未払金」の意味・読み方は?

「買掛金」は、「かいかけきん」と読みます。帳簿をつけるときに、金額だけ書くと、何の取引なのかが分からなくなってしまいます。そこで、数字に「勘定科目」というラベリングをします。「買掛金」は、仕入れを行った際に、代金をまだ払っていないときに使う勘定科目です。多くの原材料や商品を仕入れている場合、その都度精算をしていては負担が大きくなってしまうので、掛取引を行います。仕入れた時に代金を支払わず、定められた期日にまとめて精算する取引です。商品を受け取ったときから、支払うときまでに時間が空くため、「信用取引」となります。「買掛金」は、後から代金を支払わなければいけないので、「債務」となります。

「未払金」は、「みばらいきん」と読み、買掛金ではない未払の債務のことをいいます。営業循環のうちには含まれない財貨を購入した際に使われる勘定科目です。買掛金以外は全て「未払金」に入るのではなく、「未払費用」とされるものもあります。「未払金」は、単発に発生するものを表し、継続的に発生して金額が決まらないものに対しては「未払費用」を使います。具体的には、「未払金」は、固定資産の購入、備品・消耗品、有価証券の購入などです。給料や水道光熱費、リース代などは「未払費用」となります。また、決算日の翌日から1年以内に支払期日があるものは「未払金」として、1年以上後のものについては、流動負債の部に「長期未払金」として処理します。

「買掛金」「未払金」の使い方、使い分けは?

「買掛金」「未払金」の使い分けは、営業活動に直接関係する取引なら「買掛金」、それ以外は「未払金」として処理します。光熱費・給料など、継続的にかかるものに対しては「未払費用」にします。「買掛金」は、商品や原材料など、営業循環と直接的に関係するものを購入した場合の未払分に対して使います。仕訳は、購入した時と支払った時に行います。仕入れた時には、借方(左側)が仕入の勘定科目で、貸方(右側)に「買掛金」とします。このとき、買掛金という負債が発生したことになります。そして、仕入という費用がかかった事になります。その後、買掛金を現金で支払った場合には、借方が買掛金で、貸方が現金という仕訳になります。これは、買掛金の負債が無くなり、現金が出て行ったということです。買掛金の仕訳をするときに、どこからの仕訳なのかが分からなくなると困るので、補助科目に取引先の名前などを記載しておくことが大切です。最終的にはお金を支払うので、買掛金はなくなります。

「未払金」も、仕訳は同じように、購入した時と支払った時に行います。例えば土地を買った場合には、借方に土地、貸方に未払金とします。そして現金で支払った時には、借方に未払金、貸方に現金とします。そのようにして、未払金を相殺します。未払金も、どの用途に使ったのか分かるようにしておくことが必要です。買掛金や未払金の仕訳をした後に、もし、欠品などで金額が変わった時には、仕入れた時と逆の仕訳によって相殺します。

「買掛金」とそれ以外を分ける理由は、営業活動をする上で、原価がどれくらいかかったのかを知ることがとても大切になるからです。それぞれの買掛金を取引先ごとに管理する「買掛金元帳」を作成すると、買掛金の支払いを忘れるリスクを減らせたり、どこからどれくらいの仕入をしているのかが分かったりします。買掛金の支払いを忘れてしまうと得意先との信用問題にもなりかねないので、支払い漏れを防ぐことは重要です。

「買掛金」「未払金」の用例・例文

「買掛金」「未払金」の用例・例文には次のようなものがあります。勘定科目として仕訳に使うことが多い言葉です。日常会話でも、「今月の買掛金、売掛金と相殺してもらってください」や、「未払金が沢山残っているのに、取引先が倒産してしまった」などと、使用します。

「買掛金」の用例:
・たとえば吉良家の町方買掛金が六千両もあるのを、藩は上方から借金して年一千両ずつ支払ってやったし、元禄十一年に吉良邸が焼失したときは、呉服橋に建築した贅沢な新邸の作事の費用の大部分を藩が負担した。(藤沢周平『漆の実のみのる国上』)
・いまZ鉄工所を運営する組合員たちのたのみを容れて、その取引先は倒産前に生じていたZ鉄工所への買掛金を清算することにしたのだ。(阿部牧郎『誘惑魔』)

「未払金」の用例:
・ワーニャ(書きながら)ええと、未払金の残額、二ルーブリ七十五也なりと…(アントン・チェーホフ神西清訳『ワーニャ伯父さん』)

認印と実印の違い

印鑑は使用する状況や提出する書類によって使い分けなければいけません。書類の重要度や状況に合わせて、認印を使用する場合と実印を使用する場合に別れてきます。認印と実印は必ず別の印鑑である必要はなく、同じ印鑑を使用することも可能です。しかし一般的には認印と実印は別の物を使用し、印鑑の大きさや形状で区別している事が多いです。

「認印」「実印」の違い・概要

認印は日常的な承認を行う時に使用する印鑑です。手軽に使用する印鑑なので、三文判と呼ばれることもあります。三文は現在の価値に換算すると、およそ90円ほどです。そのため価値が低く、手軽であるという意味合いを持った印鑑でもあります。

実印は主に不動産や車などを購入する場合に用いる印鑑です。銀行融資を受ける場合や生命保険へ加入する場合、遺産相続や公正証書の作成、土地の名義変更などでも必要となります。認印とは対照的に重要な場面で使用することが多いので、日常的に使用する印鑑とは分けておくことが一般的です。そして重要な場面で必要となるために、実印を必要とする場合には注意が必要です。実印を用いる場合には、書類の内容をよく確認して押印してください。安易な気持ちで実印を用いると、後に大きなトラブルの原因にもなりかねます。

認印と実印以外には、銀行印があります。銀行印は銀行で口座を開設する時や、解約するときにも必要です。上限を超えた金額の引き落としの際にも銀行印が必要となります。口座から上限金額以上の引き出しを行う時には、窓口で申請をしなければいけません。その際に預金者本人であるかの確認が行われ、証明された後に出金ができます。

「認印」「実印」の意味・読み方は?

認印とは自治体に印鑑登録を行っていない印鑑のことを言います。個人名が入っている小判型もしくは丸形の印鑑が主で、基本的には何本持っていても構いません。法人の認印は個人の認印と比較すると大型で、主に正方形の角印を用いられています。

認印の読み方は、一般的には「みとめいん」です。「にんいん」という読み方を用いる場合もありますが、この読み方でも間違いではありません。その他には認印の「認」の部分のみで「みとめ」と呼ぶ場合もあります。

実印とは自治体に印鑑登録を行った印鑑なので、法的な効力を有している印鑑です。印鑑登録を行う事ができる印鑑は個人では1つのみで、複数の印鑑登録を行うことはできません。実印はどのような形状の印鑑でも印鑑登録を行う事が可能です。ただしスタンプ式の印鑑では、印鑑登録を行う事ができません。スタンプ型の印鑑は印面がゴム製となっているので経年劣化する恐れがあり、元の形状を長く保つことが困難となります。そのため時間の経過とともに印影に対する真正性が薄くなっていくので、実印として利用することができないのです。ちなみに法人の場合には「会社実印」と呼ばれています。会社の代表者が複数である場合には、複数の会社実印を持つことも可能です。

実印の読み方は、「じついん」です。

「認印」「実印」の使い方、使い分けは?

認印は、主に簡易な申請や承認などをするときに使用されています。スタンプ式の印鑑も認印として利用できますが、使用用途が限られてきます。例えば、出生届や転入届、住民票の申請や戸籍謄本の請求など公的な書類の届け出や申請などでは使用できない場合が多いです。

スタンプ式の印鑑が活用される場面としてまず挙げられるのは、会社で事務を行う際の簡易な承認です。会社で行う簡易な承認は、大量の書類などに繰り返し押印する場合が多いです。スタンプ式の印鑑はインクが内蔵されているので、印面にインクが浸透してきます。その為通常の印鑑のように押印のたびに朱肉を付ける必要がありません。このように連続で押印できるスタンプ式の印鑑は、会社での事務作業などを効率的に行うために活用されている事が多くなっています。

その他には回覧板や荷物の受け取り、レシートやスタンプカードなどで良く用いられています。

実印は、重要な契約などを行う時に用いられている印鑑です。重要な契約の際には、その契約書に押印された印鑑が真正性のある印鑑だという事を証明しなければいけません。そして真正性のある印鑑だということを証明するためには、自治体で印鑑登録を行った印鑑であるということを証明する必要があります。その為重要な書類に印鑑を押印し契約などを行う時には、同時に自治体が発行した印鑑証明書の提出を求められます。契約書に押印された印鑑が実印であることを証明する印鑑証明書とセットになる事で、相手に対する信用度が非常に高くなるのです。

「認印」「実印」の用例・例文

認印の用例・例文は、「書留を受け取る際に、子供に認印を渡して受け取りをお願いした」や「婚姻届けを提出する際に、認印を押印した」などです。また「会社に入社する際の契約書に認印を押印した」という風にも用いられます。

実印の用例・例文は、「マイホームを購入する際に、購入先の不動産会社の契約書に実印を押印した」や「自動車の購入の際に契約書に実印を押印した」などです。その他には「自治体で印鑑登録を行う際に、実印を押印した」や「アパートの賃貸契約を行う時に実印を押印した」となります。

不定詞と動名詞の違い

英語の不定詞と動名詞は、英語の特徴的な概念です。

不定詞は名詞の前に「to」をつける表現です。toの後に続くのは動詞の原型です。すなわち、「to play」「to do」と書きます。不定詞もまた、「遊ぶこと」「すること」と訳します。それに加え、動詞と不定詞が対になり、特定の意味を表すことも少なくありません。たとえば、「need to do」といった並びが挙げられます。

動名詞は動詞の後に「ing」をつけた形です。「playing」「doing」といった表記で書かれ、日本語では「遊ぶこと」「すること」と訳されます。

「不定詞」と「動名詞」意味・読み方は?

不定詞は「ふていし」と読みます。「to」の後に動詞の原型が続けば、不定詞となります。仮に「to playing」のように、原型以外の動詞が続くようなら不定詞ではありません。不定詞も動名詞と同様、「~こと」と訳せる言い回しです。ただし、注意したいのは、不定詞は基本的に動詞とセットで使われる点です。「I want to go home.」「You have to kick the ball.」といった文章が代表的な用法です。不定詞は動名詞と違い、未来の出来事や願望を表します。もしも「まだ起きていないこと」「起きてほしいと願っていること」について言及するのであれば、不定詞を使うのが望ましいでしょう。

動名詞は「どうめいし」と読みます。動名詞とは動詞を名詞にしたものです。基本的には「ing」のついたものを動名詞とみなします。動名詞は名詞として扱われるので、英語では主語と目的語として登場します。たとえば、「Playing guitar is easy.」「He needed eating food.」といった表現が代表的です。動名詞は過去の事象を表すときに使われることが一般的です。すでに起こったことや自明の理を伝えるときには、動名詞を使うのが賢明でしょう。

「不定詞」と「動名詞」の使い方、使い分けは?

不定詞も動名詞も、日本語では一般的に「~(する)こと」と訳されます。使い分け方のコツは「過去なのか未来なのか」を考えることです。仮に、「私は君と会ったことを忘れる」と言いたいなら、「I forget seeing you.」と表現するのが適切です。それに対して、「私は君と会うのを忘れる」と言う場合は、「I forget to see you.」と書きましょう。「もう起きたこと」について書くなら動名詞、「これから起きること」について書くなら不定詞を使うようにします。

次に、それ単体で主語や目的語になれるかどうかもポイントです。動名詞は文法上、完全に名詞として扱われます。そのため、「Smiling is the key of life.」といった表現をしても、間違いにはなりません。しかし、「To smile is the key of life.」といった書き方はかなり特殊であり、滅多に使われることはないでしょう。ただし、不定詞が他の語句と結びつけば、主語や目的語になることも可能です。たとえば、「All we need to do is money.」といった書き方です。

動詞によっては、動名詞と不定詞のいずれにも結びつくものがあります。そのかわり、これらの動詞は、続くのが動名詞か不定詞かでまったく意味が変わってしまいます。文脈を把握しておかなくては、間違った表現になりかねません。たとえば、「I stop going.」という文は、「私は行くのを止める」という意味です。それに対して、「I stop to go.」と書いたら「私は行くために止まった」と別の話になってしまいます。ここでも、動名詞は過去、不定詞は未来についての表現という原則が採用されています。

そのほか、不定詞が使われる際には「~するために」「~しようと」と訳されることも少なくありません。例を挙げるなら「I try to hold on.(我慢しようと頑張っている)」といった表現です。動名詞はこれらの文脈で使われることがないでしょう。

「不定詞」「動名詞」の用例・例文

不定詞を使った例文です。

「It is important to do the best.(ベストを尽くすことが重要だ)」
「She wants to run away.(彼女は逃げたい)」

原則的に、未来の話をするなら不定詞を使いましょう。いずれも「これからベストを尽くす」「今から逃げ出そうとしている」といったニュアンスが含まれている文章です。


以下は、動名詞を使った英語の例文です。

「Going to the moon is possible.(月に行くことは可能だ)」
「I like playing the piano.(私はピアノを弾くのが好きだ)」

いずれもすでに起きたこと、誰もが共有している事実についての文章だといえます。


そのほか、動名詞と不定詞でまったく意味が変わる例文を挙げます。

「I try using the machine.(私は試しにその機械を使う)」
「I try to use the machine.(私はその機械を使おうとする)」

「I remember playing baseball at the park.(私はその公園で野球をしたのを覚えている)」
「I remember to play baseball at the park.(私はその公園で野球をするのを覚えている)」

そのほかにも、「forget」や「stop」なども、後に続くのが動名詞か不定詞かで文の意味を変えてしまう動詞です。

動名詞と不定詞の違い

社会全体のグローバル化に伴って、英語教育や英会話能力の取得が重要視される傾向が強まっています。これから本格的に英語の学習を始めるという人も少なくないでしょう。英語には様々な文法表現がありますが、日本人がつまずいてしまいがちなのが「動名詞」と「不定詞」の使い分けです。両者には以下のような違いがあります。

「動名詞」「不定詞」の違い・概要

文法上、動名詞と不定詞は共に名詞的機能を備えているため置き換えが可能なケースもあります。しかし動名詞は「現在の動作・ある一定の現実」、不定詞には「これから向かう先にあるもの・未確定の事象」という語義的なイメージがあり使い分けが必要な場合が多いです。また、不定詞には名詞として機能する以外にも様々な用法があるため、文脈によってどのような役割を果たしているのかを慎重に見極める必要があります。

「動名詞」「不定詞」の意味・読み方は?

「動名詞」は「どうめいし」と読み、「動」と「名詞」の2つに分解する事が出来ます。ただし、この場合は元々「動詞」+「名詞」だったものが省略されて「動名詞」になったと考えるのが自然です。動詞とは「主語となる事物の動作・状態」を表すものであり、名詞は「物質・人物・場所などの具体的な呼称」を意味する品詞となります。「動名詞」は「事物の動的な変化を伴った様子を名詞化したもの」と言えるでしょう。例えば「play(遊ぶ)」という動詞を動名詞にするには、末尾に~ingを付加して「playing(遊ぶ事)」とします。動名詞化した事により元の名詞の綴りが変化する場合もあるので留意しましょう。

「不定詞」の読み方は「ふていし」であり、「不定」+「詞」という構造になっています。「不定」は「ある一定の状態に限定されない様子」、「詞」は「ことば、文字」といった意味です。「不定詞」は「特定の状態に限定されないことば」という解釈が出来ます。英語では主語の人称・単数・複数によって動詞の形が変化するのが基本です。しかし不定詞には主語の影響を受けず「変化しない・限定されない」という特質があります。一般的に不定詞と呼称されるのは「to + 動詞の原型」の形式で用いられるパターンです。ただし、一定の条件化では「to」が存在しない「原形不定詞」が用いられる事も覚えておきましょう。

「動名詞」「不定詞」の使い方、使い分けは?

動名詞と不定詞はそれぞれ名詞的用法が存在しているため、文中の目的語や補語として用いられる事があります。例えば「I continue ~ing(to ~)」という文章は「~する事を続ける」という和訳になり、動名詞あるいは不定詞が「continue」の目的語として機能しているパターンです。同様に「begin」「start」「prefer」などは動名詞・不定詞どちらも目的語として使用可能な動詞となっています。多少ニュアンスの違いこそあれど、大まかな意味は変わらないため会話に支障を来たす事はないでしょう。

ただし、動名詞と不定詞は語義的なイメージの違いから使い分けられるケースが多いです。端的に表すと動名詞は「現在・あるいは過去」、不定詞は「未来」の要素を含む文脈に用いられます。両者の使い分けを解説する際、参考書や学校教育でよく例文として挙げられるのが「I remember ~ing」「I remember to ~」という2つの文章です。前者では動名詞、後者では不定詞がそれぞれ「remember」の目的語として名詞的な機能を果たしています。動名詞は現在・過去の文脈で用いられるため、前者の和訳は「~した事を覚えている」となるでしょう。対して不定詞は未来の要素を含む文脈のため、和訳は「~する事を覚えている(忘れずにいる)」となります。目的語が動名詞か不定詞かによって意味が変わる動詞は他にも「stop」「try」「forget」などがあるので注意が必要です。

また、動詞によっては動名詞・不定詞それぞれどちらかしか目的語に出来ないものも多数存在します。これは動詞が持つイメージと動名詞・不定詞が持つイメージが食い違っている場合、文脈に齟齬が生まれるためです。動名詞のみを目的語とする動詞には「過去志向・動的イメージ・消極性」といった特徴が見られます。一例としては「finish(過去志向)」「enjoy(動的イメージ)」「avoid(消極性)」などが挙げられるでしょう。対して不定詞を目的語とする動詞には「未来的志向」が見られます。不定詞の「to」が到達点を表す前置詞としての用法がある事からも自然な流れと言えるでしょう。不定詞のみ目的語とする動詞には「decide」「agree」「hope」などがあります。

「動名詞」「不定詞」の用例・例文

動名詞・不定詞はそれぞれ中学校英語の単元として習うものであり、高校受験や大学受験の基礎項目であると言えます。そもそも日本語には「不定詞」という概念が存在しないため、動名詞も不定詞も基本的には英語学習における単元として用いられるパターンがほとんどです。例えば「動詞によっては動名詞か不定詞かで意味が変わるので注意するように」「動名詞の活用パターンが小テストとして出題された」「不定詞には形容詞的用法や副詞的用法も考えられるので、長文読解では特に作題者に狙われやすい」といった用例が挙げられるでしょう。

聴くと聞くの違い

「聴く」と「聞く」は、どちらも「耳で音を感じ取る」ことを意味する言葉です。このうち「聞く」は、「音を感じている」「音が耳に届く」さまを指し、基本的で意味の幅広い語彙です。「聞く」には「質問する」という意味もあります。そして「聴く」には「しっかり理解しようと努める」という意味合いまで含まれます。音が耳に届くので聞こえている、というだけでなく、音に意識を割いて聞こうとしている、耳を傾ける、という状況が「聴く」に該当します。

「聴く」「聞く」の意味・読み方は?

読み方は、「聴く」も「聞く」も「きく」です。まず、「聴く」は「傾聴」「広聴」といった言葉があるように、「じっくり話に耳を傾ける」とのニュアンスがあります。あるいは、流れてくる音に対し、理解や分析をしようとする行為です。そのため、「聴く」は音楽やラジオなどに対して使われてきました。その場合、「音楽を聴く」「ラジオを聴く」といった書き方がなされます。さらに、「聴く」は「意識的に情報を集めようとする」との意味もあります。授業やスピーチに反応し、情報を得ようとする行為は「聴く」とするのがふさわしいでしょう。

「聴く」に比べると、「聞く」には「なんとなく音が入ってくる」というニュアンスが含まれます。このとき、本人が意識しているかは関係ありません。むしろ、意識していないのに音を感じ取っている状態を「聞く」と表現します。なお、「聞く」には「情報が自然と入ってくる」との意味もあります。「伝え聞く」「人から聞く」といった使い方は、こちらの意味だといえるでしょう。そのほか、「聞きたがり」「なんでも聞く」といったように、「分からないことを教えてくれるように願う」という場合にも「聞く」が使われてきました。

「聴く」「聞く」の使い方、使い分けは?

まずは、耳に入ってくる「音の種類」によって、「聴く」と「聞く」は使い分け可能です。たとえば、流れているのが音楽やCD、誰かのスピーチだとすれば、本人は意識的に耳を傾けているといえます。この場合は、「聴く」とするのが適切です。一方で、環境音や話相手の声は、特に意識をしなくても耳に入ってくるでしょう。こうしたケースは「聞く」と表現できます。ちなみに、「すでに教えてもらって知っている」という意味でも、「聞いた」という言い回しが使われます。「その話は聞いた」といえば、「もう知っている」と同義です。

次に、本人が「どのような状況で音を感じているか」も重要な使い分けのポイントでしょう。コンサートや授業、講演会などでは、誰もが音に対して集中しているはずです。あるいは、自分の意思でかけた音楽、つけたテレビなどにも、じっと耳を傾けるでしょう。こうした状況では、「聴く」という言葉が使われてきました。ただ、誰かと話しているだけでは、本人が集中しているとは限りません。特に労力を使わず、話や音を感じ取っている状況では「聞く」が使われます。そのかわり、音に対して「もっとよく理解しよう」と集中したら、「聞く」は「聴く」に変わります。

コミュニケーションにおいても、「聴く」と「聞く」は違う行為だとみなされてきました。たとえば、ある人と会話をするとき、どちらかが話を「聞く」ことから始めることが一般的です。これは、「相手の情報を教えてもらう」という意味です。聞かれた側が話し始め、聞いた側は「聴く」ことを意識します。つまり、「情報を理解しようと集中する」状態です。ちなみに、自分の話を押さえて、相手の話を引き出す行為は「聞く」と表現されます。コミュニケーション能力が高い人ほど、「聴く」と「聞く」の使い分けが上手です。

「聴く」「聞く」の用例・例文

まず、「聴く」の用例には以下のようなものがあります。

「大好きなバンドの新譜が出ていた。さっそく買って家で聴いた」
「あの教授の講演を聴いていて、たくさんの発見があった」
「最近、暗い気持ちになっていたので気晴らしに落語を聴きに行った」

基本的には、「鑑賞する」「じっと耳をすます」といった場合に「聴く」を使うのが適切です。そのほか、「情報を収集する」という意味で、

「証人の話を聴き、弁護士は考え込んだ」

といった使い方もされてきました。

次に、「聞く」の用例を挙げていきます。

「人から聞いた話だが、彼は昨日失恋したらしい」
「祭りばやしが聞こえてきて、真夏の風情を感じた」
「うるさいなあ。そんなに大きな声を出さなくてもちゃんと聞こえてるよ」

努力をしなくても、「音が耳に入ってくる」という場合には、「聞く」を使いましょう。さらに、「質問をする」という意味では、

「どうやってセルフレジを操作するのか分からず、店員に聞いてみた」

といった使い方ができます。

貯金と預金の違い

「貯金」と「預金」はいずれも、お金を貯めておくことを指す言葉であり、基本的には金融機関にお金を預けることを指します。そして「貯金」と「預金」の違いは「預ける金融機関の種類の差」です。

預金の対象となるのは銀行や信用金庫、信用組合などです。それに対して貯金は、協同組合や郵便貯金銀行にお金を預けることを指します。

ちなみに、「預金」は金融機関にお金を預けることしか指しませんが、「貯金」は手元に金銭を貯めておくという意味でも使えます。その意味で「貯金」の方が幅広い意味で使える表表現といえます。

「貯金」「預金」の意味・読み方は?

預金は基本的に、「よきん」と読みます。一般的に使用される同音語はないため、「よきん」と口に出すだけで「預金」だということが伝わります。そして、お金を預けるという意味で、漢字もそのまま「預」と「金」で構成されています。現代の日本では、一部を除いた金融機関にお金を預けることを指します。また、預けたお金そのものを預金と呼ぶ場合も多いです。

さらに、同じ漢字で「あずけきん」あるいは「あずかりきん」と読むこともあり、その場合は意味が異なります。「あずけきん」は、金融機関とは別の第三者にお金を預けることや、そのお金自体を指します。「あずかりきん」はお金を預かる側が使う言葉で、金融機関などで用いられる場合があります。ただ、いずれも「よきん」と比べると使用する頻度がそこまで多くはないため、「預金」という漢字は「よきん」として扱われることがほとんどです。

預金は読み方が色々ありますが、貯金は原則として、「ちょきん」以外の読み方はありません。基本的には、郵便貯金銀行や協同組合にお金を預けるという意味です。ただ、意味の範囲は非常に広く、ただお金を貯めておくこと自体を指す場合も珍しくはありません。そして、昔の日本で、お金を貯める貯金という考え方を一般に広めたのは、郵便貯金です。その名残から、郵便貯金銀行にお金を預けることを貯金と呼びます。それに対して預金は、資産運用として、金融機関にお金を預けるという意味合いが強いです。そのため、資産運用をする銀行や信用金庫にお金を預けることが、預金となるわけです。

「貯金」「預金」の使い方、使い分けは?

「貯金」と「預金」は、基本的な使い方は同じです。郵便貯金銀行や協同組合にお金を預けることを「貯金する」と言い、その預けたお金を「貯金」と呼びます。銀行や信用金庫などにお金を預けるのであれば、それは「預金する」こととなり、預けるお金は「預金」として扱われます。お金を預ける金融機関によって、貯金と預金を使い分けます。したがって、「郵便貯金銀行や協同組合に預金する」という使い方は間違いです。ただ、貯金の意味の範囲は広く、預金の意味合いも含みます。そのため、預金の代わりに貯金を使用することは可能です。「銀行に貯金している」という使い方をしても、特に問題はありません。

そして、「貯金」と「預金」には、お金を資産として考えているかどうかという違いもあります。資産だと考えているのであれば、それは預金となります。資産として活用する目的があれば、金融機関に預けてはいなくても、「預金」として扱われます。実際に資産運用の一部として、手数料や税金対策のために、お金を手元に置いておく「タンス預金」という言葉もあります。さらに、「預金」には数多くの種類があるため、貯金の内容を詳しく説明する場合に用いられることがあります。それに対して、ただお金を貯めておくだけであれば、それは「貯金」です。

また、貯金はお金に関する分野以外でも使用されることがあります。一部のスポーツで、勝利数と敗北数の差を貯金と呼ぶのが代表的です。さらに、スケジュール的に余裕を持って使用できる日数を貯金と呼ぶなど、例えとして用いられる場合も珍しくはありません。それに対して預金は、原則としてお金に関することのみで使用される言葉なので、貯金のような使い方をすることはまずありません。

「貯金」「預金」の用例・例文

「預金」は、お金を資産として運用するために使用することが多いです。そのため、例文としては「利息を当てにして利率の高い銀行に預金する」「資産運用のために預金を考えている」のような形となります。お金そのものを指す場合は、「預金の額が限度に達した」「銀行の経営難によって預金が思ったように増えない」といった使い方となります。

「貯金」は、お金を貯めることが主軸となります。そのため、例文は「将来のことを考えて貯金を始める」「貯金額が目標に達したため嬉しく思う」といった形です。また、お金に関すること以外では、「休みの貯金が残り少なくなってしまった」「あのスポーツチームの貯金はもうないため、優勝は見込めない」といった使い方も可能です。

暖かいと温かいの違い

「暖かい」と「温かい」の主な違いは、気候や室内などの温度を表すのに使うか、気持ちなどを表すのに使うかどうか、という点です。

「暖」の字は「日」と「爰(※ゆるやかという意味がある)」で構成されている会意文字です。基本的には体全体で感じるあたたかさを表現する際には「暖かい」が使われます。

「温」の字は、さんずい+「昷(=日+皿)」からなる会意文字です。「昷」はもともと、器の中のものを熱気であたためるさまを示す字とされています。

「暖かい」「温かい」の意味・読み方は?

「暖かい」の読み方は訓読みでは「あたたかい」、「あたたまる」、「あたためる」などがあり、音読みの場合は「だん」です。暖かいとは「寒すぎず暑すぎず人にとって程よい気温」を意味します。また暖かいは「懐が暖かい」といった金銭的余裕や「暖かい色調のテーブル」といった柔らかい色感という意味もあります。暖かいの特徴は、寒い又は暑いといった人が感じる温度と深く関係しているという点です。暖かいには、温かいのように心や気持ちなどメンタル的な「あたたかさ」を表現する際には用いられません。そのため、温度に関係したあたたかさを表す場合にのみ、「暖かい」を使うのが適切と言えます。

それに対し「温かい」は、冷たくなく、熱すぎでもない丁度良い状態を意味します。温かい飲み物、温かいお湯、温かい鍋など飲食物や触れる物に対して使用するのが適切で、冷たいの対義語と捉えれば「暖かい」との区別はしやすくなるでしょう。また温かいには「優しい心と思いやりの気持ちがある」という意味合いもあります。そのため、気持ちや心などに対してあたたかいを使用する場合は、「温かい」が適切な表現です。尚、温かいの読み方に関しては訓読みでは「あたたかい」、「ぬるい」、「つつむ」などがあります。一方、訓読みでは「おん」又は「うん」となります。

「暖かい」「温かい」の使い方、使い分けは?

「暖かい」は体で感じるあたたかさや、自然現象によるあたたかさを感じた時に使われるため、「暖かい天気」、「暖かいマフラー」、「日差しが暖かい」などの使い方があります。また、暖かいの使い方を間違えているケースが多いと言われているのが、金銭に関連した事です。例えば金銭が十分にある事を意味する「懐があたたかい」の場合は、「暖かい」が正しい表現となります。これは対義語である「寒い」を使うと分かりやすいですが、「懐が冷たい」という使い方はしません。また色についても、視覚によって得た情報が人の感じ方に影響をもたらす可能性があるため、「暖かい」を使用するのが正解です。

尚、赤系やオレンジ系など、暖かい印象を与える色を表現する場合、「暖色」という言葉が使われる事があります。一方、「温かい」は体の一部で触れた物の温度が適温である事を表す際に使います。また人の感情など目に見えないものに対してあたたかさを表現する場合も「温かい」が適切です。例えば、相手に安らぎを与え、穏やかな気持ちにさせてくれる人に対し「温かい人柄」と表現する事があります。また心を温かくして好意的に相手を受け入れるという意味で「温かく迎える」という表現が用いられます。

相手が来る事に喜びを感じ、リラックスできる空間を提供してあげるという意味も込められていると言えます。このように「暖かい」と「温かい」は場面によって使い分けられています。「暖かい」と「温かい」を混同しないようにするためには、「寒い、暖かい、暑い」、「冷たい、温かい、熱い」のように区分けしておくと使い分けがしやすいでしょう。例えば「この部屋は寒い」という表現はありますが「この部屋は冷たい」とは言いません。なので、部屋があたたかいという事を表現する場合は「この部屋は暖かい」となります。

「暖かい」「温かい」の用例・例文

「暖かい」を気候に対して使用する場合の例文としては、「外はだいぶ暖かくなってきて春が近づいている」、「ここは年間を通じて気候が暖かく、過ごしやすい」、「マンゴーは暖かい気候の地域で生産されている」などがあります。また服装の暖かさや金銭的な余裕を表現する場合は、「冬に備えて暖かいセーターやマフラーを購入した」、「店内では定期的に換気を行っているため、暖かい服装でお越し下さい」、「今月は懐が暖かいから思い切ってフランス料理を食べに行こう」といった例文が挙げられます。一方、「外にいて体が冷えたので温かいスープが飲みたい」、「ホテルのスタッフは温かい笑顔で出迎えてくれました」といった文章が「温かい」を使った例文です。

代表取締役と社長の違い

「社長」と「代表取締役」の大きな違いは、法律的な根拠に基づいているかどうかという点にあります。企業における代表取締役は会社法によって権限が認められている最高責任者ですが、社長という役職には法律的な根拠はありません。また、代表取締役は1つの企業において複数人存在するケースがありますが、社長と呼ばれるポストに就くのは1人に限られるのが一般的です。代表取締役には社外との取り引きに関する単独での決定権が認められている一方、社長の権限はあくまで社内での意思決定に留まります。

「社長」「代表取締役」の意味・読み方は?

「社長」は「しゃちょう」と読み、会社を管理運営する長である事を意味しています。社長は商習慣上企業をまとめるトップが必要になった流れから自然発生的に生まれた役職であり、社内の統制および最終的な意思決定が主な役目です。企業の事業活動における様々な基準を取りまとめた会社法では、社長という役職について具体的な権限は明記されていません。また、社長と代表取締役は兼任可能であるため「代表取締役社長」という肩書きを持つ経営者も多いので留意しておきましょう。

「代表取締役」の読みは「だいひょうとりしまりやく」であり、会社法によって様々な権限が認められています。例えば社内業務において株主総会や取締役会での決定を実行出来る「執行権」、企業の代表として裁判をはじめとする社外的な手続きを行う事が出来る「代表権」などです。代表取締役の任期は法律で定められている訳ではありませんが、一般的には2年を一区切りとしている企業が多いと言われています。

また、株式会社は原則として会社法によって「取締役」の設置が義務付けられています。代表取締役とは取締役3人以上から構成される「取締役会」から選出される代表者なのです。代表取締役には人数制限が設けられていないため、大企業になると複数の人間が代表取締役に就任しているケースも珍しくありません。取締役会については企業規模によって設置しなくても良い場合がありますが、その場合でも最低1人の取締役を任命する必要があるので注意しましょう。

「社長」「代表取締役」の使い方、使い分けは?

「社長」と「代表取締役」は認められている権限に明確な違いがあるため、行使する場面や相手によって使い分けられるのが一般的です。例えば社内業務の統括責任者という立場にある社長は、新規プロジェクトの立ち上げおよびその進捗管理についてしばしば肩書きが用いられます。会社の経営を支える経理の各種承認業務や、人事における評価・表彰も社長の肩書きで行われるケースが多いです。ただし、社長が持つこうした権限のすべてを社長自身が直接行使する事は現実的ではありません。規模の大きい企業であれば従業員数や管理すべき工数も膨大になるため、社長1人ではすべてを把握出来ないのです。そのため、一般的に社長が持つ社内業務に関する執行権限は経理部・人事部など様々な部門に委任されます。

一方、代表取締役には前述の通り「執行権」と「代表権」という2つの大きな権限が法的な根拠に基づいて認められています。代表取締役の権限が行使される場面は、主に「自身の意思以外から影響を受けて社内でのアクションを行う際」「社外に対して手続きをとる際」などです。例えば執行権は社内業務において大きな影響力を持つ権限ですが、原則として行使出来るのは株主総会や取締役会で決定された内容に限定されています。理屈の上では社長が独断で社内の意思決定が可能であるのに対して、代表取締役はあくまで最終的なGoサインを出すのが役割なのです。

代表権は自社に関わる裁判や、資金調達のための借り入れを行う際に代表取締役が行使する権限となっています。裁判所や金融機関といった社外組織との関わりが必要になるため、こうした手続きは対外的責任者である代表取締役の役割です。社長という役職はあくまで企業がそれぞれ独自に定めた社内での役職であり、社内業務における統制権限が集約されています。これに対して代表取締役は会社法に基づいた法的な権限を持つ役職なのです。

「社長」「代表取締役」の用例・例文

社内業務において多くの権限を持つ社長という肩書きは、従業員間の会話で登場する事も珍しくありません。例えば「この資料をまとめたら、社長に承認をもらっておいてください」「社長直々の指示なので、各自早急に取り掛かるように」といった具合です。一方、代表取締役は企業が外部組織と関わる際によく登場する肩書きとなっています。そのため「本日のセミナーには講師として株式会社○○の代表取締役、××さんをお招きしました」「今回の株主総会では代表取締役の選出が大きな議題となった」というような用例が挙げられるでしょう。

退職願と退職届の違い

「退職願」や「退職届」は、一般の会社員が退職の意思を伝える場合に使います。「辞表」というものもありますが、こちらは会社の役員や公務員が退職する時に使うもので、一般的な会社員は使いません。「退職願」と「退職届」が持つ役割には、大きな違いがあります。「退職願」は、あくまでも退職をお願いするための書類です。一方、「退職届」は会社の退職の意思を通告するものです。そのため、「退職届」を提出した場合、会社の承諾は必要ありません。

「退職願」「退職届」の意味、読み方は?

「退職願」は「たいしょくねがい」と読みます。労働者から会社に対して、「退職を認めてください」という依頼をするための書類です。この場合、労働者は会社側から承諾を得て、ようやく退職することが決まります。会社側の最終権限者が承諾し、労働者にそのことが伝えられた時点で、その効力が発生するからです。そのため、退職願を提出した時点では、まだ労働契約が解除されていません。承諾されるまでの期間であれば、撤回することも可能です。しかし、承諾後には撤回が難しくなります。穏便に退職したい場合、この「退職願」を提出することが多いです。また、双方が合意して、ようやく退職が決まるという性質を持っているため、「退職願」を出しても会社から承諾が得られない場合、退職は難しくなります。

「退職届」は、「たいしょくとどけ」と読みます。これは、労働者から会社へ「退職します」という意思を伝えるための書類です。「退職届」を一度提出すると、撤回することはできません。「退職届」の効力は、会社側の最終権限者の手に渡った時点で発生します。会社側の可否は必要ないのです。「たとえ、状況が改善しても続ける意思はない」という場合に使うようにしましょう。また、口頭で会社側と退職に向けた話を進めており、決定した場合にも使います。ただし、「退職届」を提出したからといって、すぐに辞められるわけではありません。就業規則によって、「退職する場合は、〇カ月前に通告する」と定められている場合もあるため、確認しておくようにしましょう。

「退職願」「退職届」の使い方・使い分けは?

スムーズに退職する場合は、まず直属の上司に相談するところからスタートします。この時点で「退職願」や「退職届」を出す行動は、マナー的に避けた方がよいとされています。まずは、口頭で退職の意思を伝えるようにしましょう。話し合いの場を持ったことで、「退職願」の提出は不要とされるケースもあります。一方で、その会社の慣習や、状況によっては、「退職願」の提出を求められる場合もあるため、その場でその後の流れを確認しておくようにしましょう。なお、「退職願」には、退職する日付を記入するため、スケジュールについて話し合っておく必要もあります。また、口頭で済ます場合は、「言った」「言わない」のトラブルにつながったりするリスクもあるため、注意が必要です。着実に退職の手続きを進めていきたい場合は、書類で「退職願」を提出する方が望ましいでしょう。

会社側から退職することが承認され、正式に決まったら、次は「退職届」を提出します。提出する時期などについては、就業規則によって定められているケースも多いため、事前に確認しておくようにしましょう。言い換えれば、口頭での相談や「退職願」の提出は、それよりも前の段階で済ませておく必要があるということです。

また、会社から退職を承認してもらえず、自分の意思も変わらないという場合にも、「退職届」を提出します。「退職届」は、「退職します」という強い意志を宣言するためのものです。民法第627条によって、期間の定めのない労働者は、いつでも労働契約の解約の申し入れをすることができると定められています。つまり、労働者には退職の自由が認められているのです。そのため、「退職届」を提出すると、会社側はその意思を拒否することができません。この場合、退職希望日の二週間前までに、会社の最終権限者の手元へ届くようにしましょう。事業所の閉鎖や縮小、早期退職といった会社都合で退職する場合でも、「退職届」の提出は必要になります。

「退職願」「退職届」の用例・例文

「退職願」の用例・例文
・退職願を作成する前には、就業規則を確認するようにしましょう。
・さらにスキルアップを目指すために、退職願を提出することにしました。
・以前、退職願を準備したこともありましたが、もっと今の場所でできることがあると気付き、提出しませんでした。

「退職届」の用例・例文
・何の相談もなく、いきなり退職届を出すのは、できるだけ避けた方が良いでしょう。
・退職届に記載する日付は、会社側とも話し合って決めます。

対応と応対の違い

「対応」と「応対」は日常生活はもちろん、ビジネスでもよく使われる事の多い言葉でもあります。2つの言葉は同じ漢字を用いられている他、漢字の順番が逆になっているだけである事から、混同して使っている方もいるのではないでしょうか。しかし「対応」と「応対」にはハッキリとした違いがあるのです。そこで今回は「対応」と「応対」に注目し、2つの言葉の違いやそれぞれの意味や使い方などを詳しく紹介していきます。

「対応」「応対」の違い・概要

「対応」と「応対」の違いと言えるのが、人以外のものに対しても使用されているか、人だけを対象にして使用されているかという点です。対応が良いという表現は、出来事に応じた処理の手法に対して評価されています。一方、応対が良いという表現では、言葉使いや人との接し方などその人のマナーが評価されているのです。例えば、電話が掛かってきた時に、相手の要件に対し何らかの行動を起こす事を表す場合は「対応」が適切です。それに対し「応対」は用件を聞くだけで、行動までは起こしません。

「対応」「応対」の意味・読み方は?

「たいおう」と読む「対応」は人だけでなく、自然災害なども含めた状況や問題といった物事に応じる事を意味しています。電話やメール、来客などが対象となる場合、接しているのは人ですが、実際に向き合っているのはその人からの用件です。そのため、要件に対処するための処置を行う必要があります。例えば、クレームに対応する場合は、ただ相手の話に耳を傾けるだけではなく、クレーム内容に応じた処置や対策を行う事が要求されてくるのです。「対応」する際に必要と言われているのが柔軟さであり、要求や出来事に対して迅速に対処できる人は対応の良い人と評価されます。

一方、「おうたい」と読む「応対」は、人からの要求に向き合って受け答えする事を意味しており、対象となるのは人のみとなります。例えば、受付が来客と話しのやりとりをしている場合、受付の行為は「応対」という事になります。「応対」はどちらかというと、相手とのコミュニケーションに重点が置かれており、電話や来客と接する際によく用いられる言葉と言えます。ただ、状況や問題を解決するという意味までは含まれていないため、「客のクレームに応対する」という表現はしません。一般的に「応対」は、顧客からの電話や来客時の受付などビジネスシーンで使用される言葉となっています。

「対応」「応対」の使い方、使い分けは?

「対応」と「応対」が良く使われる例として挙げられるのが、電話を受ける場面です。ビジネスシーンでは「電話対応」と「電話応対」という2つの言葉があり、同じ意味として捉えて使用されるケースが多いです。ただ、対応は出来事に対する対処の事であり、応対は受け答えのみを意味しているので、似ている言葉でも意味は大きく異なります。「電話対応」は状況に応じて対処する際に使われる言葉、「電話応対」は受話器を取って相手の用件を聞くまでの行為を表す言葉なのです。例えば宿泊を予約するためにホテルに電話を掛けた際、宿泊日時を聞いて予約の手続きを行う場合は「対応」を使います。

一方、話を聞いた結果「満室で予約できません」と伝えて予約の手続きは行わない場合の使い方としては「応対」が適切と言えます。電話では迅速に対応できるよう、丁寧で的確な応対が必要です。電話応対に当たる人が相手と正しく接すれば、対応する人は用件を素早く把握して対処する事ができます。また「対応」と「応対」が用いられる事が多いと言える場面が、飲食店や商品・サービスを提供している店舗での接客です。お客さんの要望に沿った提供や提案などをする場合は「対応」を使い、お客さんの要望を聞くだけの場合は「応対」を使う事になります。
一般的にサービス業などでは、1人のスタッフが「対応」と「応対」を担っている事が多いです。

飲食店の場合は、注文を受付けて料理を作り提供する場合は「対応する」、注文を受付けるだけであれば「応対する」という使い方となります。同じ商品やサービスを取り扱っていても「対応」と「応対」が良い企業やお店の方がビジネスは成功しやすいと言えます。「対応」と「応対」を分かりやすく使い分けるには、人の話を聞いて行動する時は「対応」、話を聞くだけの時は「応対」を使うと覚えておくと良いでしょう。「対応」と「応対」を上手に使い分ける事ができれば、企業やお店にとっては来客数の増加や売上げのアップが期待できます。

「対応」「応対」の用例・例文

「対応」は人の要求に対して行動する意味を持つ言葉であるため、「お客様の返品要求に対応する」、「クライアントからのクレームに対応する」、「ユーザーの口コミや評価を参考にした対応を行う」といった例文が挙げられます。また「対応」は出来事に対する行動も対象としている言葉でもあります。そのため、「想定外の出来事にも柔軟に対応できるよう、日頃から準備しておく」、「予想以上に来客数が多く、その対応に追われる」、「自然災害では迅速な被害への対応が重要となってくる」といった例文もあります。一方、「応対」は行動は含まれていない人のみを対象とした言葉です。「この企業の受付は接客態度が良く、応対が素晴らしい」、「彼は常に感じの良い応対を心掛けている」、「笑顔と丁寧な言葉使いで応対する」といった例文が作成できます。

体身と体の違い

「身体」と「体」は、基本的にはどちらも同じ意味で使われますが、それが「心」を宿すものとしての肉体を指すのか、それとも物体・物質としての肉体を指すのか、という意味合いによって使い分けられます。「体」は純粋に物体としての肉体に使うことができ、人だけでなく生物全般に使うことが出来ます。それに対し「身体」は心を含めた肉体に使われ、主に人間にのみ使われます。

「身体」「体」の意味・読み方は?

「身体」は人間や動物の肉体、「魂」を宿すものとしての肉体と定義されます。
「体」は動物の頭から足までの全体、単に物体としての肉体と定義されます。
肉体を表しているという点ではどちらも同じ意味ですが、「体」は生物全般や機械など、純粋な物体としての「からだ」を表すのに対し、「身体」は人や動物の心の働きも含めた「からだ」、つまり心身としての「からだ」を表します。

「身体」も「体」のどちらの単語も「からだ」と読むことができますが、常用漢字に照らし合わせると、「体」は「からだ」、「身体」は「シンタイ」と読むことに注意が必要です。ですから新聞の表記や公用文書でなどの常用漢字を使うことになっている場面では、「からだ」を表記したい場合は「体」と書くようにしましょう。

例えば、

「厚生労働大臣は、身体に障害のある者の状況について、自ら調査を実施し、または都道府県知事その他関係行政機関から調査報告を求め、その研究調査の結果に基づいて身体に障害のある者に対し十分な福祉サービスの提供が行われる体制が整備されるように努めなければならない。(身体障害者福祉法第二章第一節第十四条)」

この場合は単に肉体としての「からだ」だけでなく心も含めた「からだ」についての法令なので、常用漢字の「体」ではなく「シンタイ」と読む方の「身体」を使っています。使いたい意味によって常用漢字を選ばないといけない場合もあるということに注意してください。

「身体」「体」の使い方・使い分けは?

上述した通り、「身体」と「体」には物体としての「からだ」、心身としての「からだ」という意味の違いがあります。これら使い分けの基準としては、「からだ」という言葉を用いる対象に心の働きを捉えられるかどうか、を基準とするとよいでしょう。どちらの単語を使っても間違いではありませんが、対象とする「からだ」を心の働きを伴ったものとして表現したいのならば「身体」、単に物体としての「からだ」を表現したいのならば「体」を使いましょう。

例えば、手紙などの最後に書く「おからだにお気をつけください」という文章ではどちらの単語を使うのがよいでしょうか。もちろんどちらの単語を使っても間違いではありませんが、手紙を送る相手のことを慮って使う場合は「身体」の方がよいでしょう。「お体にお気をつけください」という文章よりも「お身体にお気をつけください」という文章の方が、単に相手の肉体の健康だけでなく、精神的な健康についても思いやった文章になります。では「体」という単語を使う場合はどのような場合でしょうか。「私は運動不足なのでからだがかたいです」という文章を考えてみると、この場合は単に物体としての「からだ」の筋肉がかたいことを表しているので「私は運動不足なので体がかたいです」というように「身体」よりも「体」を使うのがよいでしょう。

ここで一つ気をつけなければならないのが、この「からだ」の使い分けは書き手が対象の「からだ」をどう捉えたかによって変わってくるということです。一つ例文をあげましょう。
・狸はもうなみだで身体もふやけそうに泣いたふりをしました。(宮沢賢治『蜘蛛となめくじと狸』)
このように、書き手が狸の「からだ」を泣くという心の働きを伴ったものだと捉えた場合は、対象が動物であっても「身体」を使うことがあります。このように、文章を読む時は書き手が持たせたいニュアンスによって「からだ」の使い分けがされているということにも注意するようにしましょう。

「身体」「体」の用例・例文

・体が震えるほど喜びがこみ上げる。
・震災以来は身体の弱い為もあったでしょうが蒐集癖は大分薄らいだようです。(芥川竜之介『夏目先生と滝田さん』)
・彼女は孤独で震えるように成ったばかりでなく、もう長いこと自分の身体に異状のあることをも感じていた。(島崎藤村『ある女の生涯』)
・父の体から、ムジナのような、悪臭がわき上がってくるような気がした(山本有三『路傍の石』)
・酔いがまわって汗腺のすべてが、じくじくと体のぬくもりをもて余した(高樹のぶ子『その細き道』)

尊敬語と謙譲語の違い

「尊敬語」と「謙譲語」は、どちらも「敬語」です。敬意を示したい対象(相手)も同じ場合もあります。しかし、「将軍が清水寺へいらっしゃる(いらっしゃるは「行く」の尊敬語)」と「将軍のもとに参る(参るは「行く」の謙譲語)」などと同じ敬語であっても使い分けられています。「尊敬語」と「敬語」には、どのような違いががあるのでしょうか。

「尊敬語」「謙譲語」の違い・概要

「尊敬語」と「謙譲語」はどちらも敬語です。敬意を表す対象(相手)の動作・行為を敬意を込めて表現するのが「尊敬語」です。それに対して、相手に対して敬意を表現するために自分の動作・行為をへりくだって表現するのが「謙譲語」です。つまり、「尊敬語」は敬いたい相手の動作・行為を表現する言葉です。それに対して「謙譲語」は自分の動作・行為をへりくだって表現する言葉です。そのことにより、相手に対する敬意を示す言葉なのです。

「尊敬語」「謙譲語」の意味・読み方は?

「尊敬語」の意味は、「話し手・書き手が動作・行為の主体者に対して敬意を持っていることを示すために使う言葉」です。また、「動作・行為の主体者」に対して「話し手・書き手」が実際には敬意を持っていなくても、「動作・行為の主体者」が、お金持ちである・会社の役員であるなど、社会的にみて敬意を払われるにあたいする立場にある時なども使用されます。また、揶揄的に使われる場合もあります。慇懃無礼な表現になります。また、「御」や「ご」や「貴」などを名詞につけて「尊敬語」を作る場合もあります。「尊敬語」は「そんけいご」と読みます。

いっぽう、「謙譲語」の意味は、「敬意を示したい対象(相手)に対し、動作・行為の主体者が自分の行為をへりくだって表現することにより、相手への敬意を示す言葉」です。また、「弊」「拙」などを名詞につけて「謙譲語」を作る場合もあります。こちらも、「尊敬語」と同じく揶揄的に使われる場合もあり、慇懃無礼な表現になります。「謙譲語」は、「けんじょうご」と読みます。

どちらも「敬語」であり、対象(相手)への敬意を表現する言葉です。「尊敬語」は敬意を示される側の動作・行為を表現する言葉であり、「謙譲語」は敬意を示したいという気持ちを持つ側の動作・行為を表現する言葉であるという点が大きく違う点なのです。

「尊敬語」「謙譲語」の使い方、使い分けは?

「尊敬語」は、「目上の者」や「社会的地位の高い者」の動作・行為について使われます。逆に言えば、「尊敬語」が使われている場合には、その動作の主体が「目上の者」や「社会的に地位の高い者であることが分かります。例えば、「教授がいらっしゃる」という表現があったとします。教授の「来る」という動作に関し、「いらっしゃる」という尊敬語が使われているわけです。このことにより、教授が敬意を示される立場にある人物であることがわかります。また、話し手または書き手は、教授に対して敬意を示していることが伝わります。「尊敬語」は、敬語ではない動詞に「お~なる」や「~(ら)れる」などをつけて作ることもできます。

「謙譲語」は、「目上の者」や「社会的地位の高い者」を前にして、話し手または書き手が、動作・行為をする者の行為をへりくだって表現する言葉です。話し手・書き手は自分自身であることもあります。動作・行為をへりくだって表現することにより対象(相手)を持ち上げるという形で敬意を示すのです。教授が呼び出されて、大学の学長のところへ来たとします。「学長、ただ今参りました」と教授は言うでしょう。教授は自分の「来る」という動作を「参る」という謙譲語で表現することにより、学長への敬意を表現したのです。

「尊敬語」は敬意を払う対象(相手)の動作・行為を表現する言葉、「謙譲語」は敬意を払う主体(自分)の動作を表現する言葉です。ですから、例えば「社長がうなぎをいただく」は誤用です。「いただく」は謙譲語ですので、敬意を払いたい対象である社長の「食べる」という動作をこの言葉で表現するのは誤りなのです。自分の行為を「いらっしゃる」と、尊敬語で表現してしまっているので、「昨日、私はデパートへいらっしゃった」も誤用となります。

「尊敬語」「謙譲語」の用例・例文

・「尊敬語」の用例
殿さまが寝ていらっしゃいます。
社長が結婚式においでになりました。
社長令嬢がお着物をお召しになりました。
社長がスープを召し上がりました。
社長がおっしゃる。
社長がお越しになる。
奥様はなんでもご存じだ。
社長令嬢がミレーの絵をご覧になる。
社長がカレーをお食べになりました。
奥様が指輪をお試しになりました。
大臣が椅子にお掛けになる。
王様は、指輪をお与えになりました。
貴行、御社、貴社、御宅

・「謙譲語」の用例
社長に「今日は暑いですよ」と申し上げました。
社長宅へ昨日参りました。
おいしいシュウマイをいただきました。
時間が遅くなりましたので、おいとまいたします。
お手紙を拝見いたしました。
そちらは寒いだろうと拝察いたします。
そのようなことは存知あげません。
素敵なお手紙をいただきました。
かしこまりました。すぐに対処いたします。
我が家で採れたみかんを差し上げます。
申し訳ありませんが、座らせていただきます。
弊行、弊社、弊紙、拙宅、小誌

足と脚の違い

「足」と「脚」はどちらも「腰から下の二本に分かれている部分」を示す語です。「足」は特に「足首から下の部分のみ」を表せる語です。また、「脚」は元来「膝から下の部分」だけを表す言葉でした。今日では「足」と同じく全体を表せますが、もともとは太ももやお尻の部分は「脚」の対象外だったのです。

「足」「脚」の意味・読み方は?

「足」も「脚」も主な読み方は同じで、「あし」と読みます。その他に、「足」には音読みで「ソク」、訓読みで「た(りる・る・す)」という読み方があります。例を挙げれば、「俊足」「足し算」などです。一方の「脚」には、音読みで「キャク」「キャ」という読み方があります。例を挙げれば、「脚本」「脚立」などです。

「あし」の意味を国語辞典で調べると、「足・脚」としてまとめられて記載してあります。意味は同じで、動物の胴から分かれ出て、歩いたり身体を支えたりする部分を表す名詞です。人間では腰から下の二本に分かれ出ている部分全体をいいます。しかし、「机の脚」のように、本体を支えるものという意味では動物だけでなく物体にも使われます。この場合は、「足」よりも「脚」が多く使われます。

その他、「足として自転車を使う」というように移動手段や交通機関の意味を表したり、「客足が遠のく」というように行くこと・来ることを意味することもあります。さらに、「お足」という言い方をすれば金銭という意味も持ちます。これらの意味で使う場合は、「脚」ではなく「足」を使います。また、「あの子は足(脚)が速い」というように、「足(脚)」だけで歩くことや走ることを示すこともできます。

「足」「脚」の使い方・使い分けは?

国語辞典では一つにまとめて記載されるほど、「足」と「脚」は似た意味を持ちます。日常会話の中で「あしが痛い」と言われても、その「あし」がどちらの「あし」なのか分かりませんし、気にする人もいないでしょう。しかし、両者には、ある点で明確な違いがあります。一般には「足」を使う機会の方が多いですが、「脚」と表記する方が適切な場合、または「足」と表記しなければならない場合もあるのです。

まず、両者が表せる部位には若干の違いがあります。腰から下の全体を表せるのは「足」も「脚」も同じですが、足首から下を示す場合には「足」の方しか使えません。そのため、足首を挫いた場合には「脚の捻挫」ではなく「足の捻挫」となります。同じ理由で、「脚の指」という表現は不適切です。正しくは「足の指」です。また、「脚音」も間違いで、「足音」となります。なぜなら、歩いた時に音がなるのは必ず「足」の部分だからです。

また、「脚」はもともと、膝から下の部分のみを表す言葉でした。それが今では足全体の意味でも使われますが、本来の意味にこだわるのであれば太ももを痛めた場合に「脚が痛い」と書くのはやめておきましょう。ちなみに、「足」「脚」と似た意味を持つ漢字として「肢(シ)」があります。しかし「肢」は「四肢」というように腕の部分まで含んだ意味を持ちます。使い分けとして、哺乳類には「肢」、昆虫には「脚」を使う場合もありますが、哺乳類に「脚」を使ってもなんの問題もありません。

「脚」と表記する方が正しい場合は、支える対象が物体であるときです。たとえば「机の足」よりも「机の脚」と表記する方が適切です。また、漢字には上下に分けられるものがありますが、その下側の部分を「脚」と呼びます。「思」という漢字なら「心(したごころ)」の部分、「点」という漢字なら「灬(れっか)」の部分が「脚」に当たります。

そして、「足」という漢字を使った慣用句は非常に多くあります。腐りやすいという意味の「足が早い」や、歩き続けて疲れたという意味の「足が棒になる」、悪事から離れるという意味の「足を洗う」など、有名なものも多いですが、これらの「足」を「脚」で代用することはできません。

「足」「脚」の用例・例文

「足」と「脚」を使った例文を、以下に挙げます。

「足」でも「脚」でも、どちらでも使える場合。
・あの人は足(脚)が長い。
・脚(足)が太いのがコンプレックスだ。
・足(脚)の速い男の子は人気がある。
・脚(足)を伸ばしてくつろぎたい。

「足」を使う場合。
・雪道で足を滑らせて転んでしまった。
・足の裏がかゆい。
・友人からの提案を足蹴にしてしまった。
・足音を殺して歩く。

「脚」を使う場合。
・テーブルの脚を掴んで持ち上げる。
・「音」という漢字の脚は「日」だ。
・昆虫には六本の脚がある。

総合職と一般職の違い

就職や転職において「総合職」もしくは「一般職」として働きたいという人も多いでしょう。混同されがちなこの2つですが、紐解いてみると様々な違いがあるためしっかり把握しておく事が大切です。誕生した背景やそれぞれの役割を併せて覚えておけば、双方の違いについてもより一層理解が深まるでしょう。総合職と一般職の違いは次の通りです。

「総合職」「一般職」の違い・概要

「総合職」と「一般職」は1986年に施行された「雇用機会均等法」がきっかけになって誕生したと言われています。従来の日本の雇用管理システムでは、男女それぞれが就く事の出来る職種がある程度制限されていました。雇用機会均等法では性別ではなく、仕事内容や成果に応じた適切な待遇・評価を目的としています。そのため採用活動においても男女平等の扱いが求められ、個々人が希望する働き方に合わせて「総合職」と「一般職」がコースとして選択出来るようになりました。総合職は、企業の事業活動を左右する総合的判断が必要な基幹業務に従事するコースの事です。一般職は、事務作業や補助的業務を中心に担当するコースを指しています。

「総合職」「一般職」の意味・読み方は?

総合職は「そうごうしょく」と読みます。将来的に管理職や幹部となるであろう候補生が集まるポジションとしても知られており、事業全体を見渡すために様々な業務を経験してノウハウを集積します。幅広い職種を経験する必要があるため転勤が多く、関連会社や子会社に出向して人脈を作る事も重要な仕事の1つです。1986年以前の日本では、主に男性社員が総合職に該当する働き方を担っていました。そのため、管理職や役員といった重役のほとんどを男性が占めていたのです。しかし雇用機会均等法が施行された事により性別による区分は撤廃されており、採用活動においても「総合職は男性のみ」「一般職は女性のみ」といった制限は禁止されています。

一般職の読み方は「いっぱんしょく」です。顧客対応・書類作成・受発注といった定型業務がメインとなり、一度配属先が決まると比較的長期間にわたって同じ勤務地で働くケースが多いです。一般職が総合職をサポートする役割を担っている企業も少なくありません。裏を返せば総合職の働きは一般職の仕事によって支えられているため、どちらが優れているという訳ではないという点には留意しておきましょう。

「総合職」「一般職」の使い方、使い分けは?

総合職と一般職は、求職者・企業それぞれの思惑によって様々な場面で使い分けられています。例えば総合職と一般職では「出世のスピード」が大きな違いとして挙げられるでしょう。総合職は企業側が幹部候補生を集め、将来の管理職となる人材を育成する事を目的としています。そのため基本的には総合職は出世スピードが早いとされており、若いうちからどんどんキャリアを積んでいきたい人に向いているコースなのです。総合職は従業員のキャリアプランに合わせて「事務系総合職」「技術系総合職」に大別されるという事も併せて覚えておきましょう。一方、一般職は転勤が少ない事から腰を据えて落ち着いた環境で働き続けるワークスタイルに向いているため、ワークライフバランスを重視する求職者から一定の需要があります。

また、総合職では責任の大きい業務を任される場面が多い事から、給与や待遇を高めに設定している企業が多いです。仕事の成果が重要視されるコースなので、若くして高年収を実現する事も不可能ではありません。したがって総合職には年収を重視する求職者が集まりやすく、昇給・昇格に積極的な風土が出来上がりやすいです。一般職では補助的な事務仕事がメインとなる関係で、仕事の成果を出しにくいという側面があります。そのため、一般職での昇給・昇格には資格の取得が有効であるケースが多いです。

多くの企業では先行して総合職の採用活動を展開し、その後で一般職の人選を行っています。これにはまず「早い段階から優秀な人材を幹部候補生として押さえておきたい」という企業側の思惑が見て取れると言えるでしょう。総合職として入社したい企業がある場合、求職者は早めのアクションが求められます。また、一般職は本社・本店のみならず各支店や営業所単位で採用される場合も多いです。

「総合職」「一般職」の用例・例文

総合職にはキャリアアップに積極的な姿勢を見せる人材が集まるため、例文としてはビジネス色の強い文面が多いと言えます。「総合職として大企業に勤め上げ、若くして管理職まで上り詰めた」「今年の総合職コースには将来有望な人材が大勢入社してきた」といった用例が挙げられるでしょう。一般職は企業を縁の下から支える役割を担っている事から「一般職に就いて誰かの役に立つ仕事がしたい」「表立って評価される事は少ないが、我が社の一般職が果たしている役目は非常に大きい」などのように用いられる事が多いです。また、雇用機会均等法が施行されて以降も慣習的に男性は総合職、女性は一般職に集まりやすい傾向が見られます。男女平等な社会参画の実現を目指す識者の間では「総合職と一般職には未だに性別的な隔たりがある」という論調で比較されるケースも少なくありません。

早いと速いの違い

「早い」は時間帯や時について言う時に使い、「速い」は、速度やスピードや動作について言う時に使います。

「早い」「速い」の意味・読み方は?

「早い」は、時間帯や時(時期・時季・時機)がはやいという意味です。「はやい」と読みます。「早」は音読みでは「ソウ」と読みます。部首は「日」で、人の頭上に太陽が昇りはじめるところを表現しています。そこから「早い」という意味を表すようになったのです。早朝・早暁・早春・時期尚早などの熟語にも使われています。それぞれ、早朝はそうちょう・早暁はそうぎょう・早春はそうしゅん・時期尚早はじきしょうそうと読みます。「時期尚早」は、「なにかをするにはまだ早い」という意味です。例えば、「君が社長の座を狙うのは時期尚早だ。」のような形で使われます。

「速い」は、速度やスピードや動作が「はやい」という意味です。「速い」は「はやい」と読みます。「速」は音読みで「ソク」と読みます。部首は「辶(しんにょう)」です。速度・速達・音速・高速道路・速戦即決などに使われています。それぞれ、速度はそくど・速達はそくたつ・音速はおんそく・高速道路はこうそくどうろ・速戦即決はそくせんそっけつと読みます。「速戦即決」は、「短い時間で勝負を決める」という意味です。「彼は、速戦即決で勝ち進んでいった。」のような形で使われます。

「早い」「速い」の使い方、使い分けは?

「雪が降るのがはやいです。」という文は、「はやい」の部分を「早い」にするか、「速い」にするかで意味が違ってきます。例えば、いつもは年が明けてから雪が降るのに、今年は12月に雪が降ったということを説明したかったのだとします。その場合には「雪が降るのが早いです。」と表記します。一方、雪が激しく降っている様子を見て積もりそうな気配を感じて警戒しながら「雪が降るのがはやい」と言っているのだとします。その場合には「雪が降るのが速いです。」と表記します。

また、「トラックが朝まだはやいのに、はやいスピードで走っています。」という文の「はやい」の部分を漢字にする場合を考えます。「朝まだはやい」は、朝という時間帯の中で、はやいほうの時間ということを伝えたいわけですから「早い」を使います。「はやいスピード」は、スピードがはやいということを伝えたいわけですから「速い」を使います。ですから、「トラックが朝まだ早いのに、速いスピードで走っています。」となります。

次に「光の伝わる速度は音の伝わる速度よりもはやいことは、かなりはやい時期から知られていました。」という文の「はやい」を漢字に置き換えます。「光の伝わる速度は音の伝わる速度よりも速いことは、かなり早い時期から知られていました。」となります。さらに「お弁当を食べるには、まだはやいです。」は「お弁当を食べるには、まだ早いです。」と表記します。「彼の投げるボールははやいです。」は「彼の投げるボールは速いです。」と表記します。「結婚を考えるのは、まだはやいです。」は、「結婚を考えるのは、まだ早いです。」と表記します。

ところで、「早春」や「速球」など、「早」や「速」の使われている熟語があります。「早春」は、「春の初め頃」「春の早い頃」です。「速球」は「速い球」です。このような熟語の意味から判断して、「早い」と「速い」を使い分けることもできます。

「早い」「速い」の用例・例文

「早い」「速い」の用例・例文には次のようなものがあります。
・川の流れが速いので、ボールを拾うことができませんでした。
・チータの走りはウサギの走りより速いです。
・速いランナーはかっこいいです。
・あの人は足が速いです。
・急いでいるのか、彼のお弁当の食べ方はいつもより速いです。
・彼女のタイピングの速度はとても速いです。
・彼女の計算は速いですが、正確です。
・彼女は仕事が速いです。
・新幹線よりも速い乗り物はありますか。
・知りませんでしたが、カラスも意外に速いのですね。
・あなたがお弁当を作るスピードはとても速いですね。
・速い人が、リレーの選手になればいいと思います。
・早い時間帯に仕事が入ったのですが、がんばります。
・まだ早いので、だれも来ていません。
・鎌倉時代の早い時期に彼は生まれました。
・早い時間の電車に乗りました。
・朝の早い時間に散歩をすると気持ちいいです。
・早い時間帯の映画館はすいています。
・衣替えにはまだ早いです。
・ふたをあけるのは、まだ早いです。
・早い時間帯に走っているランナーは速いです。
・高速道路を早い時間帯に走っているトラックはかなり速いです。

創業と設立の違い

会社を立ち上げるときに「創業」「設立」といった表現をします。いずれも似た意味なので、何気なく使っている人は少なくありません。しかし、実際には細かい定義が異なります。それぞれを使用するシチュエーションについて、意識するようにしましょう。この記事では、創業と設立の違いや意味、使い分けの基準などを解説します。

「創業」「設立」の違い・概要

どちらも、新しく会社や団体を作るときに使われている言葉です。両者の違いを挙げるとすれば、創業は「営利目的の事業を始める」際に用いられます。たとえば、会社や店舗は営利目的なので創業にあてはまります。しかし、ボランティア団体やサークルは非営利目的であり、原則的に創業とは呼びません。一方、設立の意味は法務局に登記し、法人を作ることです。法人の目的は関係なく、宗教法人でも財団法人でも等しく創業と表現されます。仮に「会社設立日」と書かれていれば、それは登記がなされた日付を意味します。

「創業」「設立」の意味・読み方は?

創業は「そうぎょう」と読みます。創業は事業を新しく始めることであり、その形態は問われません。会社や店舗、個人事業主などに対しても同じように使われる言葉です。なお、創業では法人登記を行ったかどうかは関係ありません。そのため、創業の基準は事業主の自己申告になっているケースが多いといえます。老舗であれば「創業100年」「明治時代に創業」といった表現がなされているものの、その時期に正式な法人登記がなされていたわけではありません。店舗の創始者や経営者が、「今日から事業を始める」と決めた日が創業日とみなされます。

一方、設立は「せつりつ」と読みます。設立は法人登記を行うことであり、法人以外の団体について使われることはありません。たとえば、法律では「組合契約の規定による組合」「匿名組合契約の規定による匿名組合」などは、法人に含まれないとしています。つまり、これらの組合を立ち上げる際には設立といいません。「結成」「設置」といった表現が適切でしょう。また、創業日と設立日が異なるケースもあります。法人登記の概念がなかった頃に創業した老舗などは、後年になってから設立日を迎えることもありえます。

「創業」「設立」の使い方、使い分けは?

使い分けの最大のポイントは、「法人登記をしているかどうか」です。法人登記をしていてもしていなくても、創業という言葉は使えます。しかし、設立と表現できるのは、法人登記がなされている場合のみです。そのため、設立は団体や組織でなくてはなりません。個人事業主やフリーランスが「設立」と使うのは間違いです。それに対して、創業はあくまでも「営利活動を始めること」を意味しています。組織に属していない個人であっても、営利活動を始める際には創業とする場合があります。

次に、書類上の正確性の有無も使い分けの基準になるでしょう。創業日は本人の記憶や記録にしか残されていない可能性があります。有名な会社、店舗であっても、創業日の裏付けがとれていないケースは珍しくありません。経営者の自己申告や伝承によって、創業日が決められていることもあるのです。しかし、設立は法人登記という手続きに、日付が残されています。設立の日付は揺らぎようがなく、誤って伝えられることもありません。すなわち、設立の方が創業よりも、書類上の正確性がある概念だといえます。

そのほか、創業や設立を使うときには、「誰による行為だったか」を意識しましょう。なぜなら、創業と設立が同じ人によるとは限らないからです。仮に、大正時代にAさんが魚を売り始めたとします。その場合、Aさんが創始者です。Aさんの事業はどんどん拡大し、昭和になってから有名な店舗になりました。そこで、法人登記をしようとする動きが出てきます。ここで主体となり、登記を行ったのはBさんです。つまり、Bさんが設立者です。創業者と設立者が変わる場合は、それぞれの呼び名を正しく使い分けなくてはなりません。創業と設立の定義を踏まえながら、あらかじめ確認しておきたいところです。

「創業」「設立」の用例・例文

設立に比べると、創業の定義はやや曖昧です。店舗の場合、開店日を創業日と同じにしていることもあれば、開店準備の段階で創業とみなしていることもあります。そのため、創業はさまざまな文脈で使われる言葉だといえるでしょう。例文としては、「創業100周年に向けて、我が社では大々的なキャンペーンを企画している」「この店は祖父が汗水たらして創業した」などが挙げられます。

一方、設立は創業よりも厳密な定義を持つ言葉です。法人登記を済ませていなければ「設立した」とはいえません。「設立~周年」のような書き方をするときは、法人登記からどれくらい経ったかを表してきました。例文としては、「念願だった株式会社を設立し、私はとても満足している」「社団法人の設立に向けて尽力した」などが挙げられます。なお、ある会社が新しく子会社や新事業を立ち上げるときも、別に法人登記が必要になります。その際も、設立という言葉が用いられるでしょう。

戦略と戦術の違い

軍事用語として生まれ、スポーツやゲームなどの世界でも使われるようになった言葉が「戦略」と「戦術」です。両者は使われる状況が似ているので、意味を混同している人も多いでしょう。実際には、戦略と戦術の定義は明確に異なります。この記事では、戦略と戦術の違いや使い方、それぞれを用いた例文などを解説していきます。

「戦略」「戦術」の違い・概要

まず、戦略とは、ある結果を目指し、物事を組織的に動かしていくための方針、原則などを指します。戦略は大局的な概念であり、組織が共通して認識しておかなくてはならない決まり事です。それに対して、戦術はより具体的に示される業務や作戦の内容です。戦略よりも戦術のほうが局地的で、専門的になることが少なくありません。一般的には、戦術の上にある概念が戦略だとされています。組織を動かすには、戦略を固めたうえで戦術に落とし込む必要があります。

「戦略」「戦術」の意味・読み方は?

戦略は「せんりゃく」と読みます。組織が成長したり、目的を達成したりするうえで、指針となるものが戦略です。目標から逆算して決められるのが戦略であり、組織のメンバーに戦略は共有されなくてはなりません。メンバーが「何を優先して動くべきか」「無駄なものは何か」を把握するために戦略は用いられます。戦略は長期的に守られるべき原則であり、そこから逸脱する者が多いと組織は停滞しかねません。だからこそ、組織のリーダーは戦略が守られるように、「戦術」を設定する必要があります。

戦術は「せんじゅつ」と読みます。戦略を土台として、より実行しやすい細かいルールへと落とし込んだものが戦術です。たとえば、サッカーの試合において監督が「守備を重視して勝利しよう」と言うのは戦略の伝達です。ただ、それだけでは選手がイメージを持てません。そこで、「相手のエースにマークをつける」「1人だけ前線に残して後は自陣で守る」と詳しい作戦を伝えることが必須です。これらが戦術です。戦術は戦略につながる概念であり、最終的に組織の利益を目指すという点で共通しています。

「戦略」「戦術」の使い方、使い分けは?

もともと戦略や戦術は軍事用語でした。敵軍と戦闘を行う際に、司令部は作戦会議で戦略を設定していました。しかし、戦略だけ決めても、現場の兵士はどう動けばいいのか分かりません。部隊や階級によって役割が異なるので、戦略だけがあっても任務を理解しにくかったからです。そこで、小さな部隊や個人が具体的に動けるよう、戦術が伝えられるようになりました。いうなれば、「相手の基地を占拠して、補給経路を絶つ」という大きな原則が戦略です。そこから「そのためには歩兵部隊が陽動作戦を実行しなければならない」と、細かく出される指示が戦術です。強力な軍隊は、戦略と戦術の両方がともなっていたといえます。

やがて、戦略と戦術はほかの分野にも使われるようになりました。スポーツやゲーム、格闘技など、勝敗のつく試合においては、日常的に戦略や戦術という言葉は用いられています。勝利への筋道を考えるうえで、戦略や戦術は非常に重要なポイントだったからです。特に、サッカーやラグビー、野球などの団体競技では高度に戦略と戦術が進化し、魅力の底上げにつながっています。戦術が進化したことでビッグクラブチームと地方クラブの差が埋まり、競技の面白さが増したとする意見もあります。

勝敗以外のシチュエーションでも、戦略や戦術を用いることは珍しくありません。代表例として、ビジネスシーンが挙げられます。ビジネスは勝敗がつくような世界ではないものの、ライバルが多い過酷な状況を、戦いに重ねて考えることがあります。このようなとき、経営陣が設定している長期的なビジョンを戦略と呼んできました。そして、ビジョンを従業員に伝えようと、具体的なタスクにして示したものが戦術です。もはや戦略や戦術はビジネス用語の一部であり、「企業戦略」「マーケティング戦術」といった言葉も使われるようになっています。優秀な経営者を「戦略家」「戦術家」と表現することもあります。

「戦略」「戦術」の用例・例文

使い方としては、「戦略を練る」「戦術を組み立てる」といった文脈となります。戦略も戦術もルールや作戦の一種なので、「誰かが考案し、伝えるもの」として用いられてきました。なお、それぞれが必要とされている業界、ジャンルと組み合わせた言葉も多数派生しています。たとえば、「広告戦略」「ポゼッション戦術」などの用法です。戦略も戦術もシチュエーションを問わず、さまざまな機会で使われている言葉になったといえるでしょう。

戦略を用いた例文として、「戦略的な経営ができていないと、企業成長は望めない」といったものが挙げられます。同様に、「戦術的」という言葉もあり、スポーツやゲーム、ビジネスなど、幅広い場面で応用が可能です。戦術を用いた文章例として、「戦術面では優れているが、実行できる人材がいない」「プロモーション戦術を実行する」などがあります。なお、大局的な視点や信念が、その場限りの作戦に負けることを「戦略が戦術に負ける」とも表現します。

戦うと闘うの違い

目の前の相手を乗り越えようとすることは、「戦う」「闘う」と表現されます。いずれも意味が似ているので、同じ言葉だと思われていることも少なくありません。しかし、実際は細かい定義が異なるので、正確に使い分けたいところです。この記事では、「戦う」と「闘う」の違いやそれぞれの意味、使い分けのポイントなどを解説していきます。

「戦う」「闘う」の違い・概要

そもそも「戦う」とは「勝敗を決するために行動する」という意味を持っています。戦争やスポーツ、ゲームなどで他者と争うときに用いられるのは「戦う」です。「戦う」では、試合や競争に勝利することが大きな目的となっています。それに対し、「闘う」は困難や課題を克服するための行動です。目的が達成されたとしても、「勝利」と表現されることは一般的ではありません。「闘う」には明確な勝敗がない場合もあります。「戦う」と比べると、対象が概念的、抽象的になることが多いのも「闘う」の特徴です。

「戦う」「闘う」の意味・読み方は?

まず、「戦う」「闘う」のいずれも「たたかう」と読みます。2つを合わせて「戦闘」という言葉があるように、意味そのものは非常によく似ています。「対象の人、物を制するために努力する」という点では共通しているでしょう。その中でも、「戦う」はルールやシチュエーションが限られているときに使用されてきました。スポーツやゲームには原則があり、参加者はその範囲内で相手に勝利しようと行動します。暴力や武力が用いられるときにも、「戦う」がふさわしいといえるでしょう。

一方、「闘う」があてはまる状況は、具体的な敵を目にすることができないときです。組織や理念、病気などを克服しようとする際に、「闘う」は用いられます。これらのシーンでは、対象を目視できるわけではないからです。「闘う」では基本的に、暴力や武力をともなうことは多くありません。そのかわり、政治的な手段や言葉を使って、状況を好転させようとします。病気の治療のように、専門的な知識を使って問題解決に挑むことも「闘う」と表現します。

「戦う」「闘う」の使い方、使い分けは?

優劣や勝敗が決まる場では、「戦う」を使うのが適切です。「戦う」には能力や技術を駆使して、相手を上回ろうとするとの意味があります。典型的なのは、スポーツの試合でしょう。スポーツ選手は相手に勝利するため努力しています。あるいは、点数で他の参加者を超えようとしています。スポーツははっきりと優劣や勝利があるので、「戦う」という言葉が用いられてきました。また、国家間の軍事力による衝突を「戦争」と呼ぶように、集団同士の争いにも「戦う」が使われます。

一方、成功や失敗が生まれる場では、「闘う」が適しているといえるでしょう。あるいは、問題を解決、改善させようと注力する場合にも「闘う」が使われます。すなわち、優劣や勝敗を決めにくいシチュエーションでは「闘う」が用いられてきました。たとえば、政治運動ではある団体が、組織や国家に主張を通そうと努めます。ただ、主張が通ったとしても、その団体が組織や国家に勝利したわけではありません。単に、その案件については主張が認められただけです。こうしたケースでは、「闘う」が用いられています。

「戦う」と「闘う」の使い分けとしては、「対象に実体があるかどうか」も重要です。「戦う」では、相手をはっきりと確認できます。スポーツやゲームには対戦相手がいますし、戦争でも敵国を認識できるでしょう。さらに、勝利が決定づけられる手段や条件も明確になっています。それに対し、「闘う」ときの相手は明確な形があると限りません。病気やイデオロギーには実体がなく、克服するための条件も提示されていないといえます。また、「闘う」は精神論になっていることも少なくありません。自分の欠点を自覚し、乗り越えようとするような状況では「闘う」が使われています。

誘惑を退けようと頑張る際にも「闘う」が用いられます。睡魔や食欲といった生理現象には実体がないので「戦う」はあてはまりません。そのかわり、「睡魔と闘った」のように表現されます。

「戦う」「闘う」の用例・例文

武力による衝突、試合形式の争いでは「戦う」が使われてきました。「対戦」「戦場」といった単語でも、「戦う」の漢字が採用されています。例文としては、「この戦いに勝てば、ボクシングの世界王者になれる」「激しく戦った両軍には多くの犠牲が出た」などが挙げられます。また、暴力や武力を用いるわけではなくても、勝敗が決するときには「戦う」が用いられてきました。「プロジェクトの方向性について、メンバー同士で意見を戦わせる」といった用例が代表的です。

「戦う」と違い、整った形式がない争いでは「闘う」がふさわしいといえます。たとえば、武力に優れた人間を「戦士」と呼ぶのに対し、信念が強い人間は「闘士」と表現されてきました。このように、概念的な争いにおいては「闘う」を使うのが賢明です。例文としては「ストライキが終了し、長い闘いが終わった」「病と闘った末、なんとか回復することができた」などが挙げられます。

専務と常務の違い

会社内の組織構成には様々な役職が設けられており、社長や部長といったポストはよく聞くという人も多いでしょう。同じような社内組織の役職には「専務」や「常務」が設けられている事がありますが、この2つに関してはあまり一般的に認知が進んでいません。会社の構造理解を深めるためにも、この2つの役職について意味や違いを把握しておきましょう。

「専務」「常務」の違い・概要

「専務」と「常務」は共に社長や副社長を支えるために存在する会社内の役員職ですが、それぞれに管轄している分野が異なります。専務は経営判断や方針策定といった事業全体に関わる業務を管轄し、常務の主な役目は各従業員が担っている日常業務の管理統括です。両者共に会社法に基づいて定められた役職ではありません。また、位置付けとしては会社の使用者側である「役員」にあたるため、一般的には福利厚生・失業保険・労災保険などの適用外です。

「専務」「常務」の意味・読み方は?

「専務」の読み方は「せんむ」であり「専」には「もっぱら、それに集中して従事する様子」という意味があります。「務」は「注力して果たすべき仕事や役目」という意味であるため、専務の語義的な解釈は「なすべき事に集中する」といった具合になるでしょう。ここで言うなすべき事とは、「社長や副社長といった企業のトップを経営面からサポートする」という事です。専務という言葉に関するものには「専務取締役」「専務執行役」「専務執行役員」の3つが挙げられます。単に「専務」と言う場合には専務取締役の事を指しているので覚えておきましょう。

専務執行役は専務取締役1人では業務範囲をカバーしきれないような大企業で設置される役職であり、与えられている権限は専務取締役に準じます。ただし、専務取締役は社長から任命されるのが一般的であるのに対して、専務執行役は社内の取締役会で専任されるので留意しておきましょう。専務執行役員は会社の経営陣から指示を受けて、現場での業務遂行における中心的働きを担う役職です。「専務取締役」「専務執行役」は共に会社の使用者側である役員ですが、「専務執行役員」は従業員が任命されるポジションとなっています。

「常務」は「じょうむ」と読み、「常」という字には「いつも変わらない、特別でない」といった意味が含まれています。常務は「通常業務に注力する」と解釈出来るでしょう。各部署で円滑に業務が進行するように管理・監督しながら、会社の経営層とコミュニケーションを図るのが主な仕事です。単に「常務」と呼ばれる役職は厳密に言えば「常務取締役」を指しています。

「専務」「常務」の使い方、使い分けは?

専務と常務では会社での立ち位置や役割が異なります。双方共に会社法によって設置が義務付けられているポストではないため、企業は必要に応じてそれぞれ設けるか否かを判断する事が可能です。例えば社長や副社長の経営能力が優れており、経営補佐よりも現場管理を委任したい場合には常務が設けられる場合が多いと言えるでしょう。逆に多様な意見を取り入れて経営判断を進めていきたいケースでは専務を設置する事が多いです。もちろん両者を設置した上で社内組織を構築する事も可能なので留意しておきましょう。また、専務と常務では経営層・従業員との距離感が異なります。専務の場合は経営に直接関わる業務が中心となるため、社長をはじめとする役員との距離感が近いです。一方常務は経営層と深い関わりを持ちながらも、現場の業務管理が中心となるため一般従業員との距離感が近くなる傾向にあります。

専務と常務は会社役員として設置される関係上、責任や影響力の大きさで上下関係が発生する事が多いです。一般論としては経営層に近い専務が常務の一段階上に設置されるのが通例と言えます。専務の英訳が「Senior Managing Director」、常務の英訳が「Managing Director」である事からも両者の基本的な序列が伺えると言えるでしょう。ただし、この序列は必ずしもすべての企業に当てはまる訳ではありません。企業によって専務や常務に割り当てられる業務範囲や立場は異なります。そのため、経営判断に関わる影響力が大きい常務が設置される可能性もあるのです。「専務と常務が併設されている場合には、専務の影響力が大きい」という認識を持っておくのが良いでしょう。

「専務」「常務」の用例・例文

専務は会社役員の中でも経営層に近い役職となっているため、文中に登場する場合は企業全体の事業に関わる文面であるケースが多いです。例えば「社長が不在だったため、最終的な経営判断は次点である専務に委ねられます」「社長・副社長・専務の3名で会議が行われ、今後の経営方針が策定された」といった具合に用いられるでしょう。常務は経営層のみならず一般的な従業員との距離感も近いため、日常業務の中で交わされる会話の中にもしばしば登場します。例文としては「業務効率改善のためにルーチンワークの見直しが必要であると、常務に相談を持ちかける」「常務が現場の声を経営層に届けてくれるため、社内環境は良好な状態を保っている」などが挙げられるでしょう。

製品と商品の違い

消費者が購入するモノやサービスを指して、「製品」と言ったり「商品」と言ったりするケースがあります。一見どちらでもいいように感じるかもしれませんが、実は二つの言葉には適切に使い分けをしなくてはならない意味の違いがあるのです。どのような場合に「製品」が使われ、「商品」が用いられるのか、例文も交えながら確認していきます。

「製品」「商品」の違い・概要

「製品」も「商品」も、消費者を対象として用いられる言葉という点では共通しています。しかしそれぞれが意味している内容は同じではありません。両者の違いを一言でいえば、「製品」が、原料を加工し製造したモノを指すのに対して、「商品」とは、販売・購入することを目的として調達されたモノやサービス全般を指している、という点にあります。衣服を例にとれば、製造工場で縫製が完了して服として出来上がっている状態は「製品」ですが、出荷されて販売ベースに乗った時点で「商品」となります。

「製品」「商品」の意味・読み方は?

「製品」の読み方は「せいひん」です。「商品」は「しょうひん」と読みます。

「製品」は、金属製品、プラスティック製品、石油製品など、加工製造する材料によって様々な種類が存在します。製品といえば、このように原材料に視点を合わせたものを連想するのが一般的ですが、別の視点で製品を捉える場合もあります。たとえばメーカーは製品を製造する中で、原料を一から加工して完成品を作っているわけではありません。よそから「他社製品」を購入し、これを製造し直して「自社製品」とするわけです。これは「製品」を製造プロセスから見た捉え方です。このほか、店頭に並べられる完成品ではないものの、製品の一部として販売することが可能な状態のものも、製品として成立しています。これらは「半製品」と呼ばれるもので、それ自体が一つの製品といえるものです。

いっぽう「商品」とは、販売・購入を目的として調達されたモノやサービス全般を指して言います。売り買いしようと思えば道端の雑草でも商品にすることができます。裏返して言えば、そのもの自体に大きな価値があり、いくらでも料金は払うのでぜひ譲ってほしいと言われるものでも、売る気がなければ商品にはならないということです。売り買いの対象は形のあるモノに限る必要はありません。無形のサービスであっても商品として成立します。

「製品」「商品」の使い方、使い分けは?

「製品」と「商品」の使い分けでまず注意しなくてはならないのは、それが加工製造の工程を経たものかどうか、という点です。このプロセスを踏んでいないものは「製品」と呼ぶことができません。たとえば採れたての魚や収穫したてのコメ、野菜などを販売するときには、「製品」ではなく「商品」と言うべきです。いっぽうで缶詰にした魚や、漬物にされた野菜などは「製品」と言うことができます。同様に、金融商品や保険商品など、加工製造とは無縁のサービスも「製品」ではなく「商品」と呼びます。

同じ対象物でも、それが持つ創造的な価値に重点を置くのか、経済的な価値に重点を置くのかという視点の違いで「製品」「商品」を使い分けた方が良い場合もあります。たとえばブランド品の衣服を例にとってみます。これを「商品」と言うときは、生産、管理、流通、販売などといった経済活動の中で、価値を生み出すことが期待されるモノとしての側面が強調されます。金額的に高い、安い、といった経済的な優劣を指す価値判断です。いっぽう衣服を「製品」と言った場合、金銭的な価値に加えてブランディングの側面が強調されるという意味を持ちます。「あのブランドのスーツはアッパークラスのステータスだ」など、消費者がその商品に抱くイメージも織り込んで話題にする場合には「製品」を使う方がなじみます。

このほかにも簡単な使い分けとして、実際に店頭に並んで販売されているものは売買の価値をやり取りする最前線にあるモノですから、「製品」ではなく「商品」と呼ぶほうが適切だということも挙げられます。さらに、その商品を店員さんがお客さんに説明する際には、「製品」ではなく、「商品」とか「お品」という言い方のほうがなじみます。「こちらの製品は、今回限りの販売でございます」というより「こちらの商品(お品)は、今回限りの販売でございます」というほうが自然に聞こえるのも、店頭という場所が、モノの持つ経済的な側面を強調するのにふさわしいエリアであるからといえます。

「製品」「商品」の用例・例文

「製品」を使った例文には次のようなものがあります。
・製品に使用されている繊維ごとの、その製品全体に対する質量割合を百分率(%)で表示する方法。(消費者庁「繊維製品の表示について」)
・もしも需要者のほうで粗製品を相手にしなければ、そんなものは自然に影を隠してしまうだろう。 (寺田寅彦 「断水の日」)

いっぽう「商品」には次のような例文が見られます。
・商品先物取引とは、将来の一定期日に一定の商品を売買することを約束して、その価格を現時点で決める取引のことです。(農林水産省「商品先物取引」)
・どの商店も小綺麗にさっぱりして、磨いた硝子の飾窓には、様々の珍しい商品が並んでいた。( 萩原朔太郎 「猫町」)

制作と作成の違い

同じ「モノを作る」という意味を持つ単語でありながら、「制作」と「作成」では使う場面・意味が少しずつ異なります。ここではこの2つの言葉の意味・概念を理解し、その特徴を踏まえた上で両者の違いを見ていきましょう。加えて「制作」と「作成」を用いる際の使い分け方について、またこの2つを用いた文章例も紹介します。

「制作」「作成」の違い・概要

「制作」と「作成」の違いは、作るという動作の「対象となるモノ」です。両者ともに「モノを作る」という意味を含んでいる点では共通していますが、それぞれ作る対象物は異なります。映画や絵画・楽曲などの創作活動に用いられるのが「制作」であり、文字や記号を書いて文書や計画書などを作り上げる際に用いられるのが「作成」です。作る対象が芸術作品であれば「制作」、議事録や報告書などの書類であれば「作成」が用いられます。

「制作」「作成」の意味・読み方は?

「制作」は、映画・絵画など芸術作品を創作するという意味を含む単語です。読み方は「せいさく」であり、芸術作品・創作物を作る行為そのものに加えて、創作物を作る人(職業・役割)を指すこともあります。動詞である「する」と組み合わせて、作品を創造することを「制作する」というように表現することが可能です。制作の「制」の字には、形を作り整えるという意味合いが含まれています。頭に描いた構想を具現化するための設計図を作り、それを加工し組み立てるまでの過程、すなわち創作活動の一連の流れを指します。

「作成」は、文章や書類・計画を作るという意味を持つ単語です。絵画を生み出す際に用いられる「描く」は制作に属し、文章を作り言葉を紡ぐ際に使用される「書く」は作成に属すると考えれば分かりやすいでしょう。読み方は「さくせい」であり、作成の「成」には「物事を成し遂げる・仕上げる」という意味を持ちます。元は何もなかったところから、形のあるものを作り上げるという意味合いを含むのが「作成」の特徴です。見積書や業務報告書、予算案・計画書といったものから日記まで「書物・書類」が主な対象物となります。

なお「作成」には、従来の「作る」とは異なる文脈で用いられるケースがあります。保険業界における「作成」とは自己契約を指す言葉であり、顧客の名前を借りて契約を結ぶことです。生命保険の営業を行う職員が、保険料を自身で立て替えた上で契約は顧客の名前を使うことで成立します。

「制作」「作成」の使い方、使い分けは?

「制作」と「作成」を使い分けるには、作り出される対象物の差異や属性を見定めることが大切です。生み出される対象物が芸術作品であれば「制作」を、作り上げられるのが文書・書類であれば「作成」を使います。ただし芸術作品に関連していても、作られたものが書類であれば「作成」を用いなければなりません。展覧会に展示するための絵画を創造するときは「制作」ですが、画家へ手渡す日程表や開催概要をまとめるときは「作成」を用います。

また作品であるにもかかわらず、「制作」ではなく「製作」が使用されるケースもあります。映画やテレビ番組など、芸術性よりも娯楽性が高い作品を作る場合に用いるのは「製作」です。「製作」に使われている「製」は、「布を裁断し衣服を仕立てる」という意味合いを持つ漢字です。これが転じて「製作」には、道具・機械を使用して素材を加工しモノを作るという意味合いが生まれました。加えて芸術作品を作るための資金を調達する会社、宣伝・興業の全般を担う会社のことを「製作会社」と呼びます。これらの企業が芸術作品ではなく、資金調達により「制作をするための場」やチラシなど「宣伝のための物品」を作り出すからです。

一方で「作成」の対象となるモノについては文書・文章の他に、近年ホームページやソフトウェアといったシステムも含まれるようになりました。何もない時点からモノを作り上げる行為にスポットが当たっているのが「作成」であり、ソフトウェアのように直接的に手に触れることができないモノもその対象になるという訳です。同様に書籍を作るのであれば「作製・製本」に位置しますが、記述されている内容を作り出す場合は「作成」が用いられます。

「制作」「作成」の用例・例文

「制作」を文章に用いる際は、創作活動の種別を示す単語もしくは動詞「する」と組み合わせることが多いです。創作の種別の組み合わせの例としては映画制作やアニメーション制作、楽曲制作などが該当します。実際に文章に使う際は「ドキュメント番組制作に携わった」や、「ドラマの主題歌のための楽曲制作を担当する」といったように表現します。動詞「する」と組み合わせた例としては、「来年の個展に備えて絵画を制作する」といったような使い方が一般的です。

「作成」も同様に、動詞「する」と組み合わせて使用されることが多いです。文例を挙げると「店舗の宣伝と売上アップのためにホームページを作成する」、「今日中に議事録を作成して課長に提出しなければならない」といったように用います。また「彼はプロジェクト計画書作成のために徹夜した」などのように、対象物(名詞)と「作成」を組み合わせて使用されることもあります。

身体と体の違い

多くの人が「身体」と「体」をほとんど同じ意味だと考えて使っているのではないでしょうか。実際、両者の意味はとてもよく似ています。ただし、細かい定義は異なるので要注意です。それぞれにふさわしい状況を意識して使い分けましょう。この記事では、身体と体の違い、使い分けのポイントや用例などを詳しく解説していきます。

「身体」「体」の違い・概要

身体も体も、生き物の肉体を表すときに使う言葉です。このうち、身体は肉体全体のことを意味します。腕や足、頭部や胴体などの違いに関係なく、まとめて身体と呼ばれます。なお、身体という言葉は主に、人間に対して使われてきました。動物の部位を身体と呼ぶことはありません。一方、体は「胴体」を意味することもあります。基本的には体が常用漢字であり、肉体全体を表しています。ただし、「体が太る」「体が傷つく」という場合には、胴体を指しているケースが多いでしょう。ちなみに、体は人間以外の動物にも使われます。

「身体」「体」の意味・読み方は?

身体は「からだ」もしくは「しんたい」と読みます。このうち、身体は当て字です。辞書的な意味では、「しんたい」と読むのが正しいでしょう。身体は人間の部位全体を表す言葉です。肉体のサイズや美しさ、能力などを指す言葉としても用いられており、「身体能力」「身体測定」といった使われ方をしてきました。一方で、身体には私的なニュアンスが含まれることもあります。「身体性」という風に使われるケースでは、その肉体に宿っている力や美を称えているといえます。

一方、体は「からだ」と読むのが一般的です。音読みで「たい」「てい」と読むこともあるものの、漢字単体では「からだ」が正しいでしょう。体はいかなる生物についても使われる言葉です。哺乳類や爬虫類、昆虫といった種類は問いません。なお、身体と比べると、医学的な意味が強くなります。そこに肉体の美しさや力を賛美するニュアンスは含まれません。むしろ、「死体」「遺体」という言葉があるように、肉体を客観的に表現する際、使われてきました。

「身体」「体」の使い方、使い分けは?

まず、「からだ」という読み方で使うなら、公の場では体が適切だといえます。なぜなら、身体と書いて「からだ」と読ませるのは常用外漢字だとみなされているからです。身体で「からだ」を表すのは、やや文学的な表現です。肉体を褒めたたえたり、その感触をはっきりと描きたかったりするときの使い方になります。単に、「肉体」という意味を表したいのであれば、体で問題ありません。ただし、文学やポエム、身内に向けて送る手紙などでは、身体という書き方がなされることもたくさんあります。情感を込めて、肉体を表現したい際には、身体という字を選ぶのが得策でしょう。

次に、身体(しんたい)と体(からだ)の使い分けです。両者に大きな意味の違いはなく、どちらを使っても文章に違和感は残らないでしょう。強いてポイントを挙げるなら、身体は人間に対してのみ使われます。身体は人の肉体やその形状を意味する言葉です。そのため、「犬の身体」「魚の身体」と書くと、不自然になる場合があります。仮に、人間以外の動物に対して使うのであれば、体という言葉を選びましょう。「犬の体」「魚の体」と書く方が適切です。ちなみに、体には胴体という意味もあります。胴体について言及するときは、身体でなく体を使うようにします。

そのほか、身体は見た目や能力について使われることも少なくありません。「身体が美しい」「身体能力では上回っている」といった表現は数多くなされてきました。それに比べると、体は重量や感触、健康状態を意味しています。「体が重い」「体が柔らかい」といった表現で使われてきた言葉だといえるでしょう。さらに、「体を悪くした」といえば、「病気になった」という意味になります。逆に、「身体が悪い」と書かれた場合には、「足や腕などの機能や美しさが損なわれている」といった意味です。

「身体」「体」の用例・例文

いずれも日常的に使われている言葉であり、用例はたくさんあります。以下、身体の用例です。

「身体性をともなった表現で、彼女はフィギュアスケートの世界に君臨している」
「すらりと伸びたモデルのような身体は、日本人離れしているといえるだろう」
「身体測定の結果、彼は五年生のときより2センチ背が伸びていた」

また、詩的な表現をしたいときには、あえて身体という字を当てることもあります。

「若く美しい身体で、彼女は男たちを魅了している」
「アスリートの身体にはほれぼれする」

といった用例が挙げられるでしょう。

次に、体を使った例文です。

「体つきが太ってきたので、運動をしなくてはならない」
「豚の体を調理する様子が、一般公開されている」
「寒い季節になったので、お体には気をつけてください」

さらに、人間の肉体を体と表現すれば、客観的で冷たい文章になることもあります。用例としては、

「もう動かなくなった老人の体に触れて、彼女は死の冷たさを味わった」
「どんなに抵抗しても、対戦相手の体はびくともしない」

といった文章が挙げられます。

振替休日と代休の違い

振替休日と代休はどちらも、本来休日であった日に出勤をした場合に、代わりに他の日を休日にすることを指します。この二つは労務管理上の意味が違うのですが一般的に混同されやすい言葉ではないでしょうか。ここでは振替休日と代休の違いを分かりやすくまとめています。使い分け方も例文を用いて紹介していますので参考にしてみてください。

「振替休日」「代休」の違い・概要

「振替休日」とは休日予定であった日と出勤予定であった日を事前に入れ替えた場合の休日のことです。対して「代休」は、もともと休日だった日に何らかの事情で出勤をした際に、それ以降の出勤日を代わりに休日にすることです。休日と出勤日の入れ替えが、あらかじめ予定されていれば「振替休日」、事後に入れ替えたものであれば「代休」となります。また、暦の上で祝日が休日と重なった場合に翌平日を休日とすることも、平日と休日の事前の入れ替えであり振替休日と呼びます。

「振替休日」「代休」の意味・読み方は?

「振替休日」は「ふりかえきゅうじつ」と読みます。「振替」は一時入れ替えること、一時流用することという意味で、振替休日とは「入れ替えた休日」のことです。労務上使われる「振替休日」とは、休日予定の日と出勤予定の日を、あらかじめ入れ替えた場合の休日を指します。主に会社が労働者の同意をもとに、休日である日を出勤日に、出勤日である日を休日にと事前に定めて通知します。

「代休」は「だいきゅう」と読みます。「代」は一定の場所に物や人が入れ替わるという意味の漢字で、代休は「入れ替わった休日」です。文字の意味は振替休日とさほど変わりませんが、労務上は明確に区別されています。労務上の「代休」とは、もともと休日であった日に事前に予定されていなかった出勤をした場合にその代償として、以降の他の出勤日を休みにすることを言います。振替休日が事前に決まっていた入れ替えなのに対して、代休は事後に入れ替えた休日であることが大きな違いです。

なお「休日出勤」という言葉があります。休日に出勤をすることですが、振替休日の場合の出勤日は休日出勤とは言わないので覚えておきましょう。振替休日では事前の入れ替えにより、出勤日は既に休日扱いではなくなっているからです。代休の場合は前もって休日と労働日を入れ替えてはいないので休日に出勤をしたと見なされ、出勤日は「休日出勤」となります。

「振替休日」「代休」の使い方、使い分けは?

「振替休日」は「○月○日は振替休日だ」「振替休日の告知」というように、予定されて入れ替えられた休日を指して使います。「振替休日」と聞いて一般的に思い浮かぶのはカレンダーの祝日ではないでしょうか。祝日が日曜日に当たった際に翌日の月曜が休日になることなどを振替休日と言います。これは「国民の祝日に関する法律(通称は祝日法)」で定められたもので、休日が他の休日と重なった際には月曜日以降を代わりに休日にして、休日の数が減らないようにしたものです。この場合、出勤日、登校日は事前に休日と入れ替えられていますので「振替休日」という言葉を使います。

学校行事で運動会の日や修学旅行の日程などが日曜と重なることがあります。このように休日に何らかの学校行事で生徒を登校させた場合、ほとんどの学校はそれ以降の登校日を休日と入れ替えます。「振替休業」と言いますが、こちらも事前に入れ替えた休日なので「振替」という言葉が使われます。

「代休」は基本的に労務上の言葉で、休日出勤をした場合の代償として、以後の出勤日を休日とすることです。振替休日は事前に決められたものですので、いつを休日とするかは会社が決めることがほとんどですが、代休は基本的に、社員が自分で調整をして日を選んで申請をします。ですので「代休を申請する」「代休を取得する」「代休をとる」という使い方をします。代休希望の日取りは上司と相談するなどしてから会社に申請をしましょう。受理されたのちに取得ができます。

また代休の取得方法や、有給休暇と代休のどちらを優先して取得させるかなどは会社の任意となっており、会社ごとのルールで違ってきます。会社によっては正社員だけでなくパートタイマーやアルバイトの人も、休日出勤の代わりに代休を取得することができます。多くの会社では休日出勤や代休のルールは就業規則や労働契約書などに記載されています。

「振替休日」「代休」の用例・例文

「振替休日」「代休」の用例、例文を紹介していきます。
・「社内運動会の振替休日についてのお知らせをいたします」
・「今年の春分の日は日曜日だから、月曜が振替休日になってお休みだ」
・「会社の振替休日実施日は取引先にも案内しておかないといけない」
・「会社側が振替休日と代休を混同していると、あとでトラブルの原因になりかねないから注意が必要だ」
・「日曜日なのに休日出勤になってしまったが火曜日を代休にしてもらった」
・「代休とは休日労働の代償として以後の労働日を休みとすることと、厚生労働省のホームページに記載がある」
・「代休を申請したが繁忙期なので別な日にしてくれないかと上司に言われ、来週に申請し直した」

振込と振替の違い

私たちが普段銀行などで利用している「振込」と「振替」。どちらも似たような言葉で取引の内容も似ていて混同しやすいですが、実は全く意味が違うため区別して覚えておくことが大切です。それでは「振込」と「振替」には、どのような違いがあるのでしょうか。普段からよく耳にしている「振込」と「振替」の違いについて、詳しくご紹介します。

「振込」「振替」の違い・概要

「振込」とは送金方法のひとつで、他人の金融機関や支店などの口座にお金を入れることをいいます。一方「振替」も「振込」と同じく送金方法のひとつですが、自分名義の同一銀行、同一支店にお金を入れることをいいます。「振込」と「振替」の違いは、送金する口座が「他人名義の口座」か「自分名義の口座か」の違いになります。

「振込」「振替」の意味・読み方は?

「振込」は、「ふりこみ」と読みます。
「振替」は、「ふりかえ」と読みます。

「振込」の意味は、口座などに金銭を送ることです。現金で振り込む場合は現金振込といい、金融機関口座から振り込む場合は口座振込といいます。他にもマージャンで他人の上がりパイを捨てること。また突然押しかけることという意味もあります。マージャン用語の「振込」は放銃ともいい、自分が捨てたパイで他人がロン(アガリ・勝利)されることです。つまりその局では自分の負けと点数の支払いを意味します。また突然押しかけるという意味では、昔遊女の元へ、なじみでもなく約束もない客が突然来ることとして使われていました。しかし現代では一般的に、金銭を口座に払い込むという意味で使われています。

一方「振替」の意味は、一時的にあるものを他のものと取り替えること。臨時に他のものを用いる、入れ替えるという意味です。また簿記などで、ある勘定を他の勘定に移すことという意味があります。現金収入を伴わない取引の仕訳のことをいいます。

「振込」「振替」の使い方、使い分けは?

「振込」と「振替」は、一般的にはどちらも送金のやり方のひとつで、他人名義の口座に金銭を送るのか自分名義の口座に金銭を送るのかという違いがあります。たとえば、AさんがATMなどからBさんの銀行口座にお金を送ることを「振込」といいます。言葉の使い方としては、「社員の口座に給与を振り込む」「先日Cさんに立て替えてもらった3万円を現金でCさんの口座に振り込む」などがあります。

一方「振替」は、自分名義の口座間のお金の移動のことです。たとえば自分名義の✕✕銀行の普通預金から、同じく自分名義の✕✕銀行の定期預金にお金を移動する場合「振替」といいます。使い方としては「普通預金から定期預金に自動振替の手続きをする」などです。また他のものと取り替えるという意味では、「祝日が日曜日だったので、翌月曜日を振替休日とします」「事故で電車が止まったので、バスで振替輸送を行います」などとして幅広く使われています。

「振込」「振替」の用例・例文

それでは「振込」と「振替」の違いがもう少しわかりやすいように、用例や例文を使ってご紹介します。

まずは「振込」の例文です。
・授業料を振り込む
・給与が銀行振込なので便利だ
・振込手数料を差し引いて入金します
・マージャンで勝つコツは振り込まないで満貫で勝負する
・マージャンで振り込んでも落ち込まない

「振込」の用例もみてみましょう、
・「・・・とその言葉通りに実に巧く振込みましたが、心中では気乗薄であったことも争えませんでした。」
幸田露伴 /「幻談」(青空文庫)
・「遊金あらば安い利足で丈夫な所へ振込(フリコン)で置がよい」
談義本「身体山吹色」(精選版 日本国語大辞典)
・「万燈を振込(フリコ)んで見りゃあ唯も帰れない」
樋口一葉/「たけくらべ」(青空文庫)
・「 亜矢子はさすがに面白くないと見えて、「葉ちゃんが飲むのは勝手だけど、飲みながらやると、振り込むぞ」といった。」
大岡昇平/「花影」(講談社文芸文庫)
・「『勇み勇んで』『振込むべいか』」
歌舞伎・暫(日本古典全書所収)

続いて「振替」の例文です
・給与振込口座から自動振替の手続きをするとスムーズに貯金ができて便利だ
・土曜日に運動会があったので今日は振替休日で学校は休みだ
・事故で電車が止まってしまったが、バスの振替輸送があったおかげで無事に帰宅できた
・公共料金やクレジットカード支払いを、口座から自動で引き落としてくれるサービスを口座振替という

「振替」の用例もみてみましょう。
・「斯う斯う云ふ訳ですから暫時百五十両丈けの御振替(フリカエ)を願ひます」
福沢諭吉/「福翁自伝」(青空文庫)
・「はじめのけしきを振り替へて、すがた、こと葉にはぢ、姫君をきたのかたとぞあがめける」
御伽草子/「ささやき竹」
・「・・・脱出せしめざる方向へ振り替えられていることが、関心事であろうと思う。」
宮本百合子/「イタリー芸術に在る一つの問題」(青空文庫)
・「・・・はなたれば、沙に金を振替へ、石に玉をあきなへるが如し。」
倉田百三/「学生と先哲」(青空文庫)
・「大蔵省の初の月給振替払いの日のことがのっていた。」
宮本百合子/「家庭と学生」(青空文庫)

信用と信頼の違い

日常において「信用」と「信頼」を同じ意味だと思って使用している方もいるのではないでしょうか。「信用」と「信頼」は何かを信じる時に用いられる言葉ですが、実は両者の意味は違っているのです。そこで今回は「信用」と「信頼」という2つの言葉にスポットを当て、それぞれの意味や使い方、「信用」及び「信頼」を用いた例文などを紹介していきます。

「信用」「信頼」の違い・概要

「信用」と「信頼」は、両方とも相手の事を信じるという意味が含まれている言葉です。ただ、「信用」は「過去の言動や実績から確かなものと信じて受け入れる事」を指すのに対し、「信頼」は、「未来の行動を信じて頼りにする」というニュアンスの違いがあります。「信用」は過去の実績や成果に対する評価によって生まれた言葉であるのに対し、「信頼」はその人の人柄や立ち振る舞いを評価した上で、先の保証がないまま信じて頼るという意味合いがある言葉です。尚、英語表記の場合、「信用」はcreditと書いてクレジット、「信頼」はtrustと書いてトラストとなります。

「信用」「信頼」の意味・読み方は?

「しんよう」と読む「信用」には、「信じて用いる事」という意味があり、過去の成果物や実績など目に見える形のものに基づいて評価する言葉でもあります。例えば、商品の品質や特定人物の経歴や成績などでは「信用」が使用されるケースが一般的です。点数を付けるなどで評価をし、品質や成績が定められた基準を超えていると、その商品や人物は信用に値するという事になります。「信用」は、成果物や実績といった信じられる客観的な材料を必要としている言葉と言えるでしょう。一方、「しんらい」と読む「信頼」には、「信じて頼りにする事」という意味があります。その人の人柄などを見て「この人ならこの仕事を頼んでもきちんとやってくれるだろう」など、「信頼」はその人の未来の行動を期待する感情を表す言葉とも言えます。もちろん相手を信頼するためには何らかの判断材料が必要となりますが、その判断材料を確認した上で、その人の未来を信頼するという事になります。「信頼」はその人が持っている感覚やクセなど、目に見えない物に対して期待しているという気持ちを表現した言葉でもあるのです。

「信用」「信頼」の使い方、使い分けは?

「信用」の「信」には「いつわりがない」又は「まこと」、「用」には「はたらき」又は「ききめ」という意味がそれぞれあります。例えば、相手に嘘や偽りがない事を信じてその人の言動を素直に受け取ったり、事の対処や対応を全て任せても大丈夫という気持ちを表す場合に「信用できる」あるいは「信用する」といった使い方をします。また今までの言動などから信じられると認められる事を表現する際は「信用を得る」という使い方ができます。一方、「たのむ、たよる」などの意味を持っているのが「信頼」の「頼」です。そのため、人や物に対して疑う事なく、窮地に立たされた時に頼る事ができると確信し、全面的に任せようとする気持ちを表現する場合は、「信頼できる」あるいは「信頼する」という使い方が適切です。

例えば、お互いに頼る事ができる存在であると認識している関係性が成り立っている事を「信頼関係」という言葉で表現します。また、信頼されているにも関わらず、相手の気持ちに反する言動をした時に「信頼を裏切る」という言葉が使われます。「信用」は、「書籍の内容を信用する」、「この電気製品を信用する」などの表現があるように、人だけでなく生み出された物に対する評価を示す際に用いられる事が多々あります。

さらに「信用」は、物を作った人や成果を出した人に対し、評価を付けている人が一方的に信じる気持ちという捉え方もできます。それに対し「信頼」は、その人の性格や考え方などを推察し、「期待に応えてくれるだろう」と頼る気持ちを表す言葉です。そして信頼された側もまた、自らの行動によって結果を出し、信じられている事に対して応えようとします。「信頼関係」という言葉があるように、「信頼」はお互いの気持ちが通じ合っている場合に使われる言葉と言えます。そのため、「信用」と「信頼」を上手く使い分けるには、物質的なものを信じる場合は「信用」、精神的に人を信じるという場合には「信頼」を使用すると覚えておくと分かりやすいでしょう。

「信用」「信頼」の用例・例文

「信用」の例文としては「これまでの営業努力によって、顧客から信用されるようになった」、「電話対応が改善された事でお店の信用を取り戻す事ができた」、「浮気を何度もするような人は信用できない」などが挙げられます。また「信用」は物に対しても使用する事ができるため、「友人が気に入って使っているので、この掃除機は信用できる」、「この絵は本物だと信用できる」、「この化粧品は大手メーカーが販売しているので信用できる」といった例文を作成する事も可能です。一方、「信頼」は、精神的な評価がベースになっていると言える事から「彼はほとんど実績はないが、真面目に取り組んでいるので信頼できる」、「彼の音楽家としての能力を信頼している」、「多くの友人から信頼されている」、「彼は先生の信頼を裏切った」などの例文があります。

昇進と昇格の違い

人や団体の立場が上になったとき、「昇進」「昇格」という言葉が使われてきました。ただし、昇進と昇格はおおまかに「地位が高まる」といった意味を持つものの、厳密な定義が異なります。それぞれの意味を把握し、間違えないようにしましょう。この記事では、昇進と昇格の意味や違い、使い分けのポイントなどを解説します。

「昇進」「昇格」の違い・概要

まず、昇進とは「出世する」「より上の肩書が与えられる」ことを意味します。たとえば、ある企業の中で、課長が部長になることは昇進です。昇進は同じ組織に在籍しながら、より上の役職を任せられることです。なお、反義語には「左遷」があります。昇進に対し、昇格は「能力が上がる」「上の段階へと進む」ことを意味します。昇格ではある組織から、別の組織に移るケースも少なくありません。スポーツのリーグ戦などで、下部から上に進むときに昇格と表現します。

「昇進」「昇格」の意味・読み方は?

昇進は「しょうしん」と読みます。主に、企業内で、役職が上がるときに使われてきた言葉です。そのため、「出世」と非常に意味が似ています。ただし、出世は「社会的地位が向上する」というニュアンスが含まれているのに対し、昇進は「組織内での立場が上になる」という意味を含んできました。つまり、ある会社で昇進したとしても、社会的な地位がそれほど変わらないことはありえるでしょう。なお、給料が上がることは「昇給」、資格のレベルが上がることは「昇級」「昇段」と呼びます。昇進しても、昇給や昇級が同時に行われるとは限りません。あくまでも、昇進は組織内で負う、役職や責任についての言葉です。

一方、昇格は「しょうかく」と読みます。昇格は所属していたカテゴリーやグレードから抜け出し、さらに上へと進むことです。「2部から1部」「初心者コースから経験者コース」などとレベルアップする場合には、昇格と呼ばれるでしょう。ちなみに、昇格と昇進は意味が似ているものの、正確には違う表現です。昇進はしたのに昇格が行われないことや、その逆のパターンもありえます。

「昇進」「昇格」の使い方、使い分けは?

昇進と昇格には「役職と等級」の違いがあります。昇進という言葉が使われるときには、ある役職に任命された状態を指します。組織内で出世し、肩書が変わることを昇進と呼びます。昇進した後は新しい役職名が与えられるので、周囲からの呼び名が変わるケースも少なくありません。「~係長」と呼ばれていた人が「~課長」と呼ばれ始めるのは、昇進後に起こる現象です。

それに対して、昇格は等級が変わることを指す言葉です。昇級や昇段などをまとめて、昇格と表現する場合も珍しくありません。昇格しても肩書が同じこともあるので、必ずしも本人の呼ばれ方が変わるとは限りません。たとえば、スポーツチームが2部から1部に昇格したとしても、チームに新しい肩書が加わるわけではないでしょう。以前と同じ呼ばれ方をするケースが大半です。そのかわり、将棋や囲碁のように、「名人」「竜王」といったタイトルを手にした場合には、昇格後に「~名人」と呼ばれます。

なお、企業によっては昇進と昇格で別々の基準が設けられています。そのため、それぞれの基準に照らし合わせて、昇進と昇格が使い分けられてきました。たとえば、役職が上になる場合は当然ながら昇進と呼ばれます。しかし、企業によっては役職とは別に、従業員の等級を設けています。もし昇進したとしても、従業員の等級が変わらなければ昇格とはいえません。上のポストが空いていたから自動的に昇進できたようなケースでは、昇格が行われないこともあります。その場合、昇進しても待遇が以前と変わらない可能性が高いのです。

そのほか、昇進は個人の変化を表す言葉であるのに対し、昇格は団体にも用いられます。スポーツチームや事業団体、教育機関などの等級が上がるときには昇格と呼ばれるでしょう。なぜなら、団体に役職が与えられることはほとんどないからです。役職についての表現である昇進は団体向けに相応しくなく、昇格が使われています。

「昇進」「昇格」の用例・例文

基本的に、昇進も昇格もポジティブで、「おめでたい」とされている言葉です。そのため、「昇進祝い」「昇格祈願」といった言い回しも生まれてきました。昇進も昇格も、強く願ってまで成し遂げたいことだといえます。例文としては、「昇進祝いに、家族が新しいネクタイを贈ってくれた」「昇格祈願のため、神社に参拝した」などが挙げられます。

なお、ビジネスシーンでは人の昇進や昇格を文章でお祝いすることが珍しくありません。その際は、「ご昇進」「ご昇格」といった丁寧語を用います。文章の場合、「ご昇進おめでとうございます」から始まる書き方で、簡潔に伝えるのが得策です。お祝いする相手は同僚や取引先など、さまざまです。以下、例文を記します。

「ご昇進おめでとうございます。先輩の努力が認められたこと、心よりうれしく思っています。これからより大きな責任を背負われ、たいへんだとは思いますが、くれぐれもお体には気をつけてくださいませ。」

「ご昇格おめでとうございます。~さまにご担当していただき、ひたむきなお仕事ぶりにいつも助けていただいてきました。このような形で報われたことを、弊社一同で喜んでおります。これからも弊社を、どうぞご贔屓にいただけますようよろしくお願いいたします。」

書留と簡易書留の違い

書留で郵送しようと郵便局に行った時に、「簡易書留でいいですか。」と郵便局員さんに尋ねられて、とまどってしまう場合があります。しかし、こんな時にも、書留と簡易書留はどのように違うのか、またどのように使い分けられているのかを知っていれば、とまどうことなく、「はい、簡易書留でお願いします。」などのように返事をすることができます。それでは、「書留」や「簡易書留」がどのようなものなのかをみていきましょう。

「書留」「簡易書留」の違い・概要

「書留」には、「一般書留」・「現金書留」・「簡易書留」の三つの種類があります。「簡易書留」も含め、「書留」は、特に大切な書類や商品券などを送りたい場合や、万が一の時のために補償をつけたい場合、また、現金を送る場合などに使うことができます。ただし、現金を送る場合に使うことができるのは、「現金書留」のみです。「簡易書留」は、「書留」の三つの種類のうちの一つであるという点が、「書留」との違いです。

「書留」「簡易書留」の意味・読み方は?

「書留」は、「かきとめ」と読みます。郵便局の窓口やゆうゆう窓口で郵便物等を出す時にお願いすると、有料でつけてくれるサービスです。このサービスの内容の一つは、「送達過程」の記録です。郵便局の引き受けから配達までの「送達過程」を郵便局側で記録してくれます。もう一つのサービスとして、「補償をつけてくれる」、があります。万が一、郵便物が壊れたり、届かなかったりした場合に、原則として、差し出し人が差し出しの際に申し出た損害要償額の範囲内で、実損額を補償してくれるサービスです。

損害要償額とは、損害が出た場合に補償してもらいたい金額の上限額のことです。例えば、損害要償額が10万であれば、上限額を10万円として実損額を補償してくれるのです。また「ゆうゆう窓口」とは、本局などに設けられている窓口で、時間外にも郵便物を取り扱ってくれる窓口です。ただし、どの郵便局に設けられているかや営業時間はまちまちですので、利用したい郵便局に、ご自身で確認する必要があります。

「書留」は、第1種郵便物手紙・第2種郵便物はがき・第3種郵便物雑誌等の定期刊行物・第4種郵便物学術刊行物等、および、ゆうメール・心身障がい者用ゆうメールに、書留料金を追加することにより利用することができます。また、お金に関しては、郵便為替で送るという方法もありますが、現金で直接送る場合には、「現金書留」で送るのが唯一の方法です。

「簡易書留」は、「一般書留」に比べ、料金が安いですが、損害要償額も安くなっています。また、送達過程の記録も「一般書留」に比べると少なくなっています。ところで、「簡易書留」は、「かんいかきとめ」と読みます。

「書留」「簡易書留」の使い方・使い分けは?

「書留」三種類の使い方・使い分けをみていきます。まず「現金書留」は、「現金」を送る場合に使います。基本料金に+435円となります。この場合の損害要償額は、1万円までです。さらに+10円するごとに損害要償額を5000円ずつ上乗せしていくことができます。ただし、50万円が上限となります。現金書留を送る場合の専用の現金封筒は、郵便局で売られています。

「簡易書留」は、基本料金に+320円で利用できます。損害要償額は、5万までです。「簡易書留」では、損害要償額の上乗せはできません。また送達過程の記録は、「引受け」と「配達」のみとなります。「現金書留」と「一般書留」では、「引受け」「配達」以外にも。途中の「中継店」が記録されます。ところで、「簡易書留」は、損害要償額は少なくても良いが、期限を守って提出したことや、そもそも提出した事実などが記録として残ることが必要な場合などに利用します。例えば、受験の願書などです。また一般書留に比べれば、損害要償額は少ないですが、上限が5万円ですので、舞台の観劇チケットなどを送る場合に適しています。

「一般書留」は、基本料金に+435円で利用できます。この場合、損害要償額は10万円までです。さらに+21円ごとに損害要償額を5万円ずつ上乗せしていくことができます。損害要償額の上限は、500万円です。「一般書留」は、「簡易書留」に比べ、損害要償額が大きいですから、高額なものを送る時には、「一般書留」を利用したほうが良いです。また、金・銀・ダイヤモンドなどを送る時には、書留としなければなりません。その他にも「書留」にしなければならない貴重品が決められていますので、気になる場合には、郵便局に尋ねてみる必要があります。

また、「書留」を利用する場合に知っておくと良い点がいくつかあります。まず、古銭や、外国紙幣や外国貨幣についてですが、これらは現在の日本の貨幣・紙幣ではありませんので、「現金書留」にする必要はありません。また、「書留」は、土曜日・日曜日など休日でも配達してくれます。

「書留」「簡易書留」の用例・例文

・この書類を書留で出してきてください。
・書留ということですが、それは一般書留ですか。それとも、簡易書留ですか。
・書留でこの手紙を出してください。
・簡易書留でいいですか。
・はい。簡易書留でお願いします。
・簡易書留のほうが、一般書留よりも料金がお安いです。
・現金書留にしてもらうために、現金封筒を郵便局で買いました。
・書留といっても三つの種類があります。
・郵便ポストに投函したのでは、書留として扱ってもらえません。
・現金は必ず現金書留で送るようにしましょう。
・日曜日でも書留は配達してもらえます。
・受験の願書を簡易書留で送りました。お母さんが「一般書留でなくても大丈夫なの。」と心配してきいてきましたが、「高額なものを送るわけではないので大丈夫です。」と答えました。「願書を期日までに出したという証拠が残りさえすればいいのだから。」とつけ加えました。
・チケットが簡易書留で送られてきました。

祝日と祭日の違い

2022年現在、日本には16日の「国民の祝日」が定められています。そして、この「国民の祝日」のことを一般的には、「祝日」と呼んだり、「祭日」と呼んだりしています。また、「祝日」と「祭日」を合わせて「祝祭日」と呼ぶこともあります。しかし、正式には「国民の祝日」なのですから、「祝日」と呼ぶのがふさわしいはずです。それではなぜ、「祭日」という呼び方があるのでしょうか。

「祝日」「祭日」の違い・概要

「美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築くために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、または記念する日を定め、これを『国民の祝日』とする」と、「国民の祝日に関する法律」に定められています。このことにより定められた休日は「国民の祝日」であり、呼びやすく短くして「祝日」と呼んでいます。これに対し「祭日」という呼称ですが、これは1947年に廃止された皇室祭祀令に定められた皇室の祭祀を行う日でした。ですから、「皇室祭祀」廃止以降は、「祭日」は存在しなくなっているのですが、名前を変えて現在の「国民の祝日」に受け継がれているものもあるので、昔の名残で「祝日」ではなく「祭日」と呼ぶ場合もあるのです。

「祝日」「祭日」の意味・読み方は?

「祝日(しゅくじつ)」は、「国民の祝日に関する法律」よって定められた「国民の祝日」のことです。「元日」「成人の日」「建国記念の日」など、16の日が定められています。また、それぞれに「こんな意味のある日です」ということもうたわれています。例えば、元日は、「年のはじめを祝う日」。成人の日は「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます日」。建国記念の日は、「建国をしのび、国を愛する心を養う日」などです。

それに対し、「国民の祝日」のことを「祭日(さいじつ)」と呼ぶのは昔の名残なのです。1947年以前には、「皇室祭祀令」という皇室(宮中)の祭祀に関する法令がありました。その中では「祭日」が定められていました。皇室や神社などで宗教儀礼を行う日だったのです。しかし、1947年に「皇室祭祀令」が廃止されたので、「祭日」はなくなりました。ただ、名前を変えて「祝日」に受け継がれた日もあります。例えば、「紀元節」の日は建国記念の日になりました。また、「新嘗祭」の日は「勤労感謝の日」になりました。そのような事情もあるので、昔ながらに「国民の祝日」のことを「祭日」と呼ぶこともあるわけです。また、ご年配の方などは、子供のころの呼び方のまま「祭日」と呼んでいることもあります。

「祝日」「祭日」の使い方、使い分けは?

年間に16日定められている「国民の祝日」ですが、「祝日」のほうが、正式名称を意識した使い方になります。「祭日」という言い方も一般的には存在していますので、間違いとは言えません。しかし、「国民の祝日」は、正式には「祭日」ではありません。「祭日」は、1947年に「皇室祭祀令」が廃止された時に消滅しているのです。それでは、「皇室祭祀令」に制定されていた「祭日」とはどのような日だったのかと言うと、宮中や神社などで皇室神道的儀式を行う日でした。明治時代に制定された祭日は、すべてが宗教祭祀儀礼の日であったため、祭る日、つまり「祭日」となったのです。「国民の祝日」からは、そういった宗教色が排除されています。「みどりの日」や「こどもの日」、「スポーツの日」といった具合です。

明治時代に作られた「春季皇霊祭」は「春分の日」と呼称が変わり、「秋季皇霊祭」は「秋分の日」と変わっています。時期は変わらなくても呼称が変わっているのです。春分の日は、自然をたたえ、生物をいつくしむ日です。秋分の日は、祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日です。「祝日」となり、1947年以前の「祭日」であった時とはその日が持つ意味合いも変わっています。宗教色や天皇を神とあがめるいろが消されたのです。

ですから、会社や学校などで、「国民の祝日」のことをいう場合には、「祝日」とするほうが無難です。またカレンダーなどでも「国民の祝日(または「祝日」)」とするほうが無難です。「祭日」という言い方は、宗教儀式的な意味合いを持つ場合があります。また、かつてはそう呼んでいた訳ですから、その名残で「祭日」と呼んでしまったり、慣習的に呼んでしまったりする場合もあります。ただ、正式には「国民の祝日」であり、短くして呼ぶとするなら「祝日」のほうがふさわしい呼称なのです。

「祝日」「祭日」の用例・例文

・明治時代には、明治節という祭日がありました。
・うちのおばあちゃんは、「昭和の日」のことを祭日と呼びます。
・「元日」は祝日です。しかし、彼女は仕事へ行きました。
・憲法記念日という祝日は、日本国憲法の施行を記念する日です。
・5月には、祝日が3日もあります。
・「海の日」は、海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う祝日です。
・「山の日」は、山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝しましょうという願いの込められた祝日です。
・おじいちゃんは、戦前生まれなのに、文化の日のことを祝日と呼びました。
・日本には、何日間の祝日がありますか。
・「こどもの日」は祝日ですか。

秀才と天才の違い

皆さんの周りには何でもできてしまう人だったり、特に勉強していなさそうなのにとても成績がいい人はいますか。そのような人に対して、周りの人は「あいつ天才だなあ。」とか「やっぱり秀才は違うね。」などと言うことがあるかもしれません。しかし、「天才」と「秀才」とは何が違うのでしょうか。どちらも頭がよかったり、ある分野に秀でている人に使われる言葉ですが、何か違いがあるはずです。今回はその違いを説明します。

「天才」「秀才」の違い・概要

まず「天才」とは、ある分野のみに対して特別な才能を得ている人のことで、それは生まれた時から備わっている才能です。また生まれつきの才能であるため、感覚的な発想や表現をすることが多いです。次に「秀才」とは、様々な分野に対して自ら努力して、優秀な結果を出す人のことです。また努力で能力を発揮するため、論理的な考え方をすることが多いです。例えば、「天才」は数学だけ勉強しなくても満点が取れて、解説も感覚的で一般人にはわかりにくいです。一方「秀才」は数学だけでなく他の教科で90点以上取れて、解説も論理的であるため、わかりやすい説明をすることができます。

「天才」「秀才」の意味・読み方は?

「天才」は「てんさい」と読み、その意味は、「生まれつき備わっている、非常に優れた才能、あるいは、その才能を持っている人」という意味があります。より具体的には、「天才」は、生まれつきの才能により、その才能を与えられた分野で人が努力しただけでは絶対に追いつけないような圧倒的な結果の差を見せる人のことを意味します。つまり、論理的に結果を出す人というわけではなく、圧倒的なひらめきの力により優秀な結果を残す人を意味することが多いのです。

一方、「秀才」は「しゅうさい」と読み、「特に学問の領域で、普通の人よりも優れた能力を持っている人」を意味します。具体的には、「秀才」は、生まれつき与えられた才能はないが、後天的な訓練や努力により身に着けた優秀な能力を持っている人のことを意味します。つまり、「秀才」は、「天才」と違って、ひらめきではなく、地道な努力とその過程を積み重ねることにより、優秀なパフォーマンスを発揮する人のことです。故に、「秀才」という言葉を使うときには、一定以上の努力を経て、非常に優れた結果を出せた人というニュアンスが伴います。

「天才」「秀才」の使い方、使い分けは?

「天才」は、ある分野に突出した才能を発揮する人物のことで、その使われる範囲は、学術だけでなく、芸術やスポーツの分野にまで及びます。そのため、先ほど例に挙げた5教科の中で数学だけ教科書を一回読んだだけでいつも満点な子だったり、子供のころから写真のような絵を描く子、全く未経験のやり投げで記録更新する人のことを指して、「彼はこの分野の天才だ。」というような使われ方をします。

「秀才」は、特に学問領域において、優秀な成績を修める人のことで、使われる範囲としては、学問分野で結果を残した人に使われることが多いです。しかし、学問分野以外でも使われることがあります。「秀才」の使い方の例としては、教科書を何回も読んで、たくさん勉強して5教科ですべて満点を取る人や絵の技術や基礎を徹底して学び続けて素晴らしい絵を描く人などに対して、「努力して優秀な成績を修めているなんて彼は秀才なんだろう。」というような形で使われることが多いです。

一般に、「天才」と「秀才」の使い分けの基準となる点は、「天才」と「秀才」の意味の違いです。つまり、努力をしてできるようになったのか、あるいは最初からできていたのかという点だったり、様々な分野に対して優れた能力を持っているのか、一つの分野に対して特化しているのかという点です。例えば、歩いているときに突然新しい数学の公式を思いついたり、頭の中の実験で常識を覆すような理論を提唱できるような人には「天才」という言葉を使うべきです。そして、10年間ある分野を研究し続けて、新しい理論や方法を見つける人は「秀才」という言葉を使うべきです。つまり、「天才」と「秀才」は両方とも優れた結果を出しますが、その結果に至るまでに、一定以上の努力をした結果なのか否かという点を使い分けの基準とすべきです。

「天才」「秀才」の用例・例文

「天才」という言葉の例文として、寺田寅彦の「アインシュタイン」での「この時代の彼の外観には何らの鋭い天才の閃きは見えなかった。」という文が挙げられます。これは、幼いころのアインシュタインの見た目や雰囲気からは、過去に相対性理論などの人類史に残る大きな功績を遺すほどの他を圧倒するようなひらめきは感じられなかったということを言うために「天才」という言葉が使われた例です。

また、「秀才」という言葉の例文として、「彼は高校のころ、学年で1,2を争う秀才だった。」という文を挙げることができます。高校の頃に、生まれながらの才能ではなく、たくさん努力して学年で1,2を争うほど優秀な成績を修めていたということを言うために「秀才」という言葉が使われています。このように、「秀才」という言葉を使うときは、「努力をした結果、優れた結果を出せた」というニュアンスが込められているのです。

修正と訂正の違い

「修正」や「訂正」という言葉は、日常生活、特にビジネスシーンでよく使用される単語です。しかし、両者の違いを聞かれてすぐに答えられる人は多くないのではないでしょうか。実は、「修正」と「訂正」には、決定的な違いがあり、これを誤ると、相手方に失礼な表現になってしまう可能性もあります。両者を混同しないために、漢字の意味や成り立ち、一般的な用例を比較しながら、「修正」と「訂正」の違いについてご説明します。

「修正」「訂正」の違い・概要

「修正」と「訂正」は、よく似た意味を持つ言葉です。共通する字は「正」であり、どちらも「正しい状態に直す」ことを意味しています。しかし、何をどのように直すかという点において、若干異なる意味合いを持っています。

「訂正」という言葉は、正誤がはっきりしている場合に、明らかな間違いを直す場面で使います。これに対し、「修正」という言葉は、間違いを直すことだけでなく、もっと良い状態にするために直したり、補ったりすることも含んでいます。「訂正」は、直す対象に関して、明らかな誤りに限定されているので、「修正」よりも狭い意味をもつ語です。

「修正」「訂正」の意味・読み方は?

「修正」は、すべて音読みで、「しゅうせい」と読みます。不十分な部分や、良くない部分を直して正しい状態やもっと良い状態にするという意味です。「修正」の修の字は、訓読みで「おさめる」と読み、「修飾」や「補修」、「研修」などの語に用いられ、形を整える、飾りや模様をつけるという意味があり、そこから派生して、学問や技術を身に着けるという意味もあります。「修」は、人名にもよく使われていることからも分かるとおり、良い意味合いを含むポジティブな字です。

「訂正」は、すべて音読みで、「ていせい」と読みます。言葉や文章、数字などの情報に明らかな間違い、誤りがあった場合に、それを正しい情報に直すという意味です。「訂正」の訂の字は、訓読みで「ただす」と読みます。この漢字のつくりは「丁」という字ですが、これは頭が平らな釘の形を模した字であり、そこから派生した「訂」は、釘を打って、正しい状態に安定させることを意味する字です。

「訂」は、あくまでも「正しさ」への安定を目指しているのに対し、「修」は、単なる正しさから一歩進んで、美しさや形の良さを目指しているという点に、両者の違いが表れています。

「修正」「訂正」の使い方、使い分けは?

「修正」と「訂正」の使い分けについて、ビジネスの場面などで、書類の内容を確認した結果、一定の「直し」があった場合を例に考えてみましょう。

例えば、相手方に、「もっとユーザーの目線に立った文章に修正してほしい」、「言葉遣いが堅すぎるので、平易に修正してほしい」、あるいは「フォントサイズを大きくして見やすく修正してほしい」など、誤りがあるわけではないが、もっと良くするために内容や体裁を整えてほしいということを伝えたい場合には、「修正」という言葉を使うのが適切です。

一方、「訂正」は、明らかな間違いがあり、正しい情報にする場面で使用します。例えば、「商品Aではなく商品Bが正しいので、訂正しました」とか、「金額が10万円となっていましたが、100万円が正しいので、訂正しました」というような場合です。また、公的な書類や契約書などに字句の誤りがあった場合、訂正箇所に二重線を引き、正しい字句をその上に記入して、訂正印を押印することがありますが、それも良い例です。

このように、「訂正」は、明らかな誤りがあることを前提とした語なので、ビジネスシーンで先方に何かを依頼する場面で「訂正」の語を使うと、先方の行為に誤りがあることが強調され、失礼な態度だと受け取られることもあります。このため、「訂正」は、相手への対抗姿勢を示して誤りを指摘するような場面を除けば、自ら誤りを直す行為について使うことが一般的です。

なお、「修正」という言葉は、「訂正」が表すような明らかな誤りを直すという意味も含んでいるので、「訂正」の語を使用する場面で「修正」を使用することも、誤りではありません。ですから、先方に依頼する場合には、明らかな誤りであっても、「10万円を100万円に修正してほしい」と伝えるのが、ビジネスシーンにおいては無難です。

逆に、「修正」で表されるような、明らかな誤りがなく、内容をより良くするための直しについて、「訂正」の語を使うのは、適切ではありません。例えば、「よりインパクトのある内容になるように、訂正しました」という文章は適切ではなく、この場合、「訂正」ではなく、「修正」の語を使うべきです。

「修正」「訂正」の用例・例文

「修正」については、以下のような用例があります。単なる情報の一部の差し替えというよりも、幅広く、内容や方向性について全体的な見直しが行われている事例が多いことが分かります。
・より迅速な避難を可能とするため、本市の防災計画を修正しました。
・法改正により、プログラムの修正が必要になりました。
・話が脱線したので、論点を整理しながら、軌道修正します。

「訂正」については、以下のような用例があります。誤った情報と正しい情報があることが前提となっていることが分かります。
・先月号の内容に下記のとおり誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
・契約書の訂正は、訂正箇所に二重線を引き、契約書に捺印したものと同一の印を訂正印として、ご捺印ください。
・業務マニュアルの訂正版を公表しました。

収入金額と所得金額の違い

収入金額と所得金額という言葉は、どちらも同じ意味であると思っている人も多いのではないでしょうか。しかしこれらはそれぞれに違う意味を持ち、使用用途も異なります。正しく理解することにより節税対策にもつながり、さらに税金を誤って払いすぎる事もありません。そこで今回は、収入金額と所得金額の違いについてご紹介します。

「収入金額」「所得金額」の違い・概要

収入金額と所得金額の違いは、自営業の場合と会社員などの給与収入を得る人の場合で解釈が異なります。まず、自営業の場合では、収入金額は売上金額です。そして所得金額は、売上金額から仕入金額と必要経費を引いた金額となります。会社員などの場合では、収入金額は給与の総支給額で、所得金額は総支給額から給与所得控除を差し引いた金額となります。

「収入金額」「所得金額」の意味・読み方は?

収入金額の意味は、まず農業や漁業、自営業者や個人経営の病院などの個人事業を行なっている人の場合においては、売上金額全てが収入金額となります。また、会社などに勤めている場合では、給与の総支給額が収入金額となります。収入金額を確認する方法は、給与明細を見ることです。一般的な給与明細では、上部のあたりに総支給額の記載があり、それを見ると分かります。

この時の注意点は、現金以外の利益でも収入金額に含む場合があるということです。例えば、勤務先の商品などを無償もしくは法外な低価格で譲渡された場合や、勤務先の所有する土地や建物を無償もしくは低価格で賃借した場合、勤務先から金銭を無利息もしくは法外な低金利で借り入れた場合などで得た利益に関しては、収入金額とみなされる場合があります。収入金額の読み方は、「しゅうにゅうきんがく」です。

所得金額の意味は、まず個人事業を行っている場合では、売り上げの総額から仕入金額、そのほか光熱費や家賃、税金、従業員がいる場合には人件費などの必要経費全てを引いた金額を指して所得金額と言います。そして、会社などに勤めている場合においては、総支給額から所得税や社会保険料などが引かれた後の金額です。

この時注意しておきたいのは、会社などで任意に行っている積立金や親睦会費などは、総支給額から引いて考えてはいけないということです。つまり積立金や親睦会費などは所得金額に含まれている金額と考えてください。年金などで収入を得ている人の場合も同じように、源泉徴収税額や特別徴収税額などが引かれた後の金額が所得金額となります。所得金額の読み方は、「しょとくきんがく」です。

「収入金額」「所得金額」の使い方、使い分けは?

収入金額という言葉の使い方は、店舗などの経営者が一日の売り上げを伝えるときなどに用いられます。その他には農家の人などが生産物を卸市場に出した時に売り上げた金額も収入金額です。収入金額とは必要経費が引かれる前の金額であることから、概算という意味合いを含み「粗利益」、もしくは「粗」と表現することもあります。粗利益の読み方は「あらりえき」で、粗の読み方は「あら」です。

会社員の場合には、年収額を伝えるときなどに用いられます。つまり年収額が500万円だったということは、収入金額が500万円であったということです。そのため、一般的に年収と言われている金額は、年間の給与及び賞与の総支給額を指して言います。また、会社員などが給料の額について人に伝えるときなどに「粗で○○円だった」という風に収入金額について表現する事もあります。

所得金額の使い方は、店舗などの経営者が年間の売り上げを伝えるときなどに用います。個人で事業を行っている農家や病院なども同じように表現します。所得金額とは必要経費が引かれた後の金額であることから、実際に手にする金額という意味合いを含め「手取り」と表現することもあります。手取りの読み方は「てどり」です。そのほかには、主に自営業者が所得金額の事を「純利益」もしくは「利益」と表現する場合もあります。純利益の読み方は「じゅんりえき」です。所得金額の事を「実入り」と言うケースも稀に見られます。読み方は「みいり」です。また収入金額や所得金額どちらにも当てはまる表現としては、「儲け」「稼ぎ」などもあります。読み方は「もうけ」「かせぎ」です。

会社員は、主に年末調整の際に収入金額と所得金額を使い分ける機会があります。収入金額と所得金額は、給与の総額なのか、それとも税金や社会保険料などが差し引かれた後の金額なのかを考えた上で使い分けてください。会社員の場合にも個人事業主と同じように所得金額を手取りと表現する場合があります。

「収入金額」「所得金額」の用例・例文

収入金額の用例・例文は、自営業者の人が経理担当の従業員などに「今日の収入金額はいくらだった」と尋ねるときや、農家の人が生産物を卸市場で売り上げた際に「今日の収入金額は少なかった」のように用います。

所得金額の用例・例文は、自治体で住民税を決定するときに「課税所得金額の〇%を基準にして算出します」と伝えるときや、子供などの扶養家族のいる給与所得者が、年末調整の際に、所得金額調整控除を経理担当者に依頼する場合などに用いられます。「申告書の所得金額欄はどのように記載すれば良いですか?」などと尋ねた時に「年間の収入金額から給与所得控除を差し引いた金額が所得金額ですので、それを記載してください。」などと用いられます。

収入と所得の違い

労働などの対価として自分の手元に入ってくるお金のことを表す「収入」と「所得」。どちらも同じ意味だと思って、日常生活の中でなにげなく使っている人も多いはずです。ところが、「収入」と「所得」にはそれぞれ明確な定義があって、取り違えると税金の計算などに支障をきたしてしまいます。「収入」と「所得」を正しく使い分けられるように、2つの言葉の意味や違いについて詳しく解説していきましょう。

「収入」「所得」の違い・概要

「収入」と「所得」はどちらも所得税法の用語ですが、似て非なるものなのできちんと区別して考えないといけません。「収入」は、給与や賞与などの入ってきたお金を単純に合計した金額を示している用語であるのに対して、「所得」は「収入」から必要経費を差し引いた金額を示す用語となります。そのため、通常は2つの用語が指し示す金額は異なり、「収入」よりも「所得」が少ない金額となるのが正しい認識であると言えるでしょう。

「収入」「所得」の意味・読み方は?

「収入」は「しゅうにゅう」と読み、意味は金銭や物品を収め入れて自分の所有とすることです。一般的に自営業の場合には売上金額のこと、会社員やパート・アルバイトの場合には給与や賞与の合計金額のことを表しています。よく使われる「年収」という言葉は所得税法の用語ではありませんが、「収入」と全く同じ意味です。また、お金として受け取るもの以外にも、会社の商品を無償で受け取った場合、会社が所有する土地や建物を低価格で借りた場合、会社から金銭を無利息で借りた場合など、現物支給や経済的な利益につながるものも広義で「収入」に含まれることがあります。

一方「所得」は「しょとく」と読み、得たもの、入ってきた金品や物品という意味です。所得税法上では「収入」を得るために必要となったさまざまな経費を取り除いた金額を示します。企業に雇われている会社員の場合は必要経費の特定が難しいことから、あらかじめ「収入」に応じた必要経費として「給与所得控除」が決められていて、「収入」から「給与所得控除」を差し引いて導かれるのが「所得」となります。つまり、「所得」は俗にいう「手取り」の意味なのです。

「収入」「所得」の使い方、使い分けは?

ここまで述べてきたとおり「収入」と「所得」は所得税法上の用語ですが、2つの用語を使い分ける上で1番重要なのは、課税対象となるのが「所得」の方であるという点です。もしも国が単純に「収入」に対して課税を行ってしまうと、国民の多くが現状よりもさらに高額な税金を支払わなくてはいけなくなり、国民の生活レベルは大きく低下してしまいます。そのため、さまざまな必要経費を「収入」から差し引くことを認めて、本当の意味で手元に入ってきたお金を表す「所得」に対して課税を行っているのです。毎年多くの人が行う「確定申告」でも、納税者は「収入」を申告するのではなく、「所得」を申告することになっています。すなわち「収入」と「所得」の使い方を正しく理解しておくことは、税額の計算や節税などにつなげる意味においても、大いに役立つと言えるでしょう。

もしも「収入」と「所得」の使い分けで迷ってしまった場合には、会社員であれば年末にもらう源泉徴収票を見るのが簡単です。源泉徴収票の「支払い金額」欄に記載されているのが「収入」で、「収入はいくらなのか?」と問われた場合にはこの金額を伝えれば間違いありません。一方「所得」は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄に記載されています。所得税や住民税などの税金は、全てこの「給与所得控除後の金額」を元に算出されているので、役所から「所得」を問われた時などにも活用できます。

そのほかに「収入」と「所得」を使う対象としては、事業者としての売上、株や投資信託からの利益、退職金や厚生年金などの一時金、資産の譲渡、年金の受け取りなど、多くの場面があげられます。いずれの場合でも必要経費や控除額が発生している時には「収入」と「所得」の金額は異なるので、注意が必要です。日頃から「収入」と「所得」の違いを意識して、一緒くたに扱わないように気を付けましょう。

「収入」「所得」の用例・例文

「収入」「所得」の用例・例文には次のようなものがあります。

・君は何しろ月給のほかに原稿料もはいるんだから、莫大の収入を占めているんでしょう。(芥川龍之介 『十円札』)
・昔は将棋指しには一定の収入などなく、高利貸には責められ、米を買う金もなく、賭将棋には負けて裸かになる。(織田作之助 『可能性の文学』)
・数理に関する彼の所得は学校の教程などとは無関係に驚くべき速度で増大した。(寺田寅彦 『アインシュタイン』)
・各著作者の所得をなるべく平均にするために、一割二分の約束の印税の中から社預かりの分を差し引いても、およそ二万円あまりの金が私の手にはいるはずであった。(島崎藤村 『分配』)

・彼は株の利益で莫大な収入を得ているはずだ
・結婚相手の学歴や収入を気にしている女性が多い
・自分の収入に釣り合った生活をすることが大切である

・個人の所得に対して課されるのが国税である
・同じ職種においても待遇によって所得の格差が甚だしい
・所得税の計算の時に所得から除外されるのが所得控除である

趣旨と主旨の違い

「しゅし」という熟語は、漢字で表すと「趣旨」と「主旨」の2通りが存在します。いずれも日常生活の中でよく使われる熟語ですが、いざとなると、どのように使い分ければよいのか迷ってしまう人も多いはずです。そこで、「趣旨」と「主旨」の違いを知ることで、どのような場面においても正しく使い分けができるように、言葉の意味や用法などについて詳しく解説していきましょう。

「趣旨」「主旨」の違い・概要

「趣旨」と「主旨」の違いは、それぞれの熟語の1文字目に使われている漢字の意味を考えれば明確です。「趣旨」の「趣」には心の向かうところ、考え、意向といった意味があり、熟語全体としては「物事を行う理由や目的」を表します。一方、「主旨」の「主」には1番大切なこと、中心になっていることなどの意味があり、熟語全体としては「文章や話の中心となる事柄」を表します。つまり、「趣旨」は複数存在する多様性が認められるのに対し、「主旨」はただ一つの事柄を指していることに大きな違いがあるのです。

「趣旨」「主旨」の意味・読み方は?

では、「趣旨」と「主旨」のそれぞれの意味について、もう少し深く掘り下げていきましょう。

「趣旨」は「しゅし」と読み、ある事を行う中での基になっている考えや狙いを意味しています。例えば、文章の「趣旨」であれば、筆者が文章全体の中で書き表そうとしている内容や、書くに至った考えのことなどを指します。また、話の「趣旨」であれば、話をしていることの目的や真意を表していて、何のための話であるのか、言おうとしていることはどんなことかという意味合いを含んだ言葉となるのです。「趣旨」に置き換えることができる類語には「論旨」「趣意」「作意」「目的」などがあげられ、相手にわかってほしいという伝える側の気持ちも込められた熟語であると言えるでしょう。

「主旨」も「趣旨」と同じく「しゅし」と読み、文章や話の中で内容の中心となるもののことを表します。一見「趣旨」と似かよっているようにも思われますが、重要なのは「主旨」には目的の意味が含まれないという点です。つまり、「主旨」は「要点」や「主題」と同じような意味で使われる熟語で、あくまでも物事の核となる部分となる一つの事柄を指していると言えます。

「趣旨」「主旨」の使い方、使い分けは?

「趣旨」と「主旨」は読み方が全く同じである上に、2つの熟語は類語として位置づけられていて、それぞれが表している意味もそう遠くはありません。その証拠に英語表現においては「趣旨」と「主旨」を分ける英単語は存在せず、「meaninng」や「signification」などでひとくくりに表すことができます。しかし、日本の文化では、「趣旨」と「主旨」の微妙な意味の違いやニュアンスを考えて、日常生活やビジネスシーンにおいても適切に使い分けることが必要です。

「趣旨」と「主旨」を正しく使い分けるためのポイントとしては、まず「しゅし」が複数あるのか、それとも1つなのかを見極めることです。「趣旨」は理由や目的に該当するので、1つの文章や話の中に同時にいくつか存在していている場合もあります。しかし、「主旨」はあくまでも中心のものであり、1番大切なことに限られているので、1つの事柄であることが一般的です。次にポイントとなるのは、「しゅし」が目的や狙いといった物事の本質を深く表しているかどうかという点です。考えや計画の中で何を言おうとしているのか、なにが目的なのかといった理念や理想などを含むのであれば「趣旨」、含まないのであれば「主旨」となるので覚えておくとよいでしょう。

また、どうしても「趣旨」と「主旨」のどちらを使ったらいいのか迷って決められないという場面においては、「趣旨」を選択しておくのが無難です。先に述べたとおり、「趣旨」と「主旨」は類語の関係にありますが、「趣旨」の方がより幅広く多様な意味を含んでいる熟語となります。そのため、「主旨」のかわりに「趣旨」が使われても日本語の間違いにはなりません。そのため、「しゅし」の表記を「趣旨」で統一しているメディアも多く、「主旨」より「趣旨」の方が熟語として使われる頻度も高くなっています。

「趣旨」「主旨」の用例・例文

「趣旨」「主旨」の用例・例文には次のようなものがあります。

・以上は私が国策研究会の求に応じて、世界新秩序の問題について話した所の趣旨である。( 西田幾多郎 『世界新秩序の原理』)
・十二月五日『東京新聞』に総司令部の人権擁護班長ガートスタイナー氏が人権宣言の趣旨について語っていた。( 宮本百合子 『世界は求めている、平和を!』)
・朝倉先生は、塾生たちが広間に集まると、簡単に「探検」の主旨を説明しただけで、さっそくそれにとりかからせた。(下村湖人『次郎物語』)
・私の書いているその評論の全主旨はプロレタリア文学の存在否定でない。( 宮本百合子 『プロレタリア文学の存在』)

・この会議を行う趣旨は、担当者同士の顔合わせにあります。
・この度の会社設立についての趣旨について、文書でご説明しています。
・質問の趣旨はよくわかりましたので、お答えしましょう。

・長時間に及ぶプレゼンテーションだったが、結局、主旨があまり伝わらなかった。
・このスピーチの主旨は環境問題です。
・話の主旨を忘れないようにメモに書きとめておくとよいでしょう。

社会人と学生の違い

社会人と学生は、まるで反義語のように使われている言葉です。ただし、それぞれの細かい定義を明確に説明できる人は少ないでしょう。「社会人として」「学生気分」のような言い回しについても、しっかり意味を理解しておきたいところです。この記事では、社会人と学生の意味や使い方、用例や例文などについて解説していきます。

「社会人」「学生」の違い・概要

まず、「社会人」と「学生」の最大の違いは、一般社会で役割を担っているかどうかです。企業に就職したり、自分で事業を立ち上げたりしている人間は社会人に該当します。一方で、学校に通っている段階の人は学生と形容されます。なお、社会人と学生は年齢によって定義されるわけではありません。年齢が若くても、自分で働いて生計を立てている人は社会人と呼ばれます。それに対して、年齢を重ねていても学校に在籍している人は学生にあてはまります。

「社会人」「学生」の意味・読み方は?

社会人は「しゃかいじん」と読みます。その意味は、「社会で役割を担いながら自立している人」とされることが多いでしょう。一般的には会社員や個人事業主、フリーランスとして生計を立てている人を社会人とみなしています。ただし、アルバイトやパートなどの非正規雇用者であっても、それで生活をしているなら社会人と呼ぶことがあります。社会人の定義は「何を本分としているか」であり、労働に重きを置いているなら職業、職種に関係なく、その人は社会人でしょう。

なお、何らかの理由があって、一時的に仕事から離れている人間も社会人に含まれます。たとえば、転職活動中の人、休職期間中の人などはまだ社会人です。それでも、本人に働く気がなく、家族の庇護を受けながら暮らしているような場合には社会人とみなされなくなっていきます。

一方、学生は「がくせい」と読みます。学生は「教育機関に籍を置いて学業に集中している段階の人」です。単に、勉強をしているだけの人は学生と呼びません。学校に通いつつ、それを本分としている人が学生です。すなわち、会社員をしながら学校に通っている人は、学生と呼ばれることは少ないでしょう。その場合の本分は会社員、あるいは社会人だとみなされるからです。

「社会人」「学生」の使い方、使い分けは?

通常、社会人と学生の使い方が混同されることは珍しいといえます。なぜなら、「学校に通っているかどうか」で判断できるからです。もしも学校に通うことが生活の中心になっているなら、その人は学生です。それに対し、社会の中での仕事が中心であれば、その人は社会人でしょう。使い分けが難しいのは、社会人でありながら学校に通っている人もいるからです。こうした場合は、自己申告で社会人と学生を使い分けているときも少なくありません。正社員として企業に勤めていたとしても、本人が学校に重きを置いているなら学生と名乗ることはあります。

また、何らかの仕事はしていても、自力で生計を立てられていない人もいるでしょう。たとえば、給料が少なすぎる人や、公的機関や家族の支援があってようやく生活できている人などです。こうした人々も、本人が「社会に貢献している」と思っていれば、社会人を自称することがあります。ただし、第三者からは社会人と認められない可能性も出てきます。

かつての日本社会においては、社会人の立場が強く学生が揶揄されることもありました。なぜなら、ある程度の年齢になれば就職し、自立して働くのが普通の価値観だったからです。そのため、20代半ば以上で学業を続けることは「恥ずかしい」「親に迷惑をかけている」と批判されがちでした。その時代には、「学生」という言葉に侮蔑が含まれていたといえます。誰かを批判したいときにあえて、学生と呼ぶような使い方がなされていました。しかし、時代が変わって多様な生き方が世間で受け入れられ始めています。年齢を重ねても学生を続けるのは珍しいことではなく、学生から蔑称としてのニュアンスが薄まってきました。

「社会人」「学生」の用例・例文

非常に多い言い回しは、「社会人として」「社会人なら」といった、個人の責任を問いかけるような用法です。社会人には「自立している人間」という意味が含まれているので、規律を守る精神が求められます。そのため、相手の自覚を促すような文脈で、社会人という言葉を使う人が多いのです。例文としては、「社会人としての振る舞いができないようなら、自分を見つめ直した方がいい」といったものが挙げられます。そのほかにも、「模範的な社会人」「立派な社会人」など、称賛の文脈で使われることもあります。

それに対し、学生は「学生気分」「学生の分際」など、ややネガティブな使われ方をするケースが少なくありません。なぜなら、学生は社会人と比べて、責任感が弱い立場だと世間にみなされているからです。社会人に向けて「学生気分がいつまで経っても抜けていないようだな」と、説教のために学生という言葉を用いることもあります。その一方で、学生は社会的責任が少ない分、堂々と他人の庇護を受けられる存在です。「学生旅行」「学生割引」といった、メリットを強調する言葉も生まれています。

実印と認印の違い

実印と認印の意味の違いは、その印鑑を押印する書類が重要であるかそうでないかの違いです。実印とは自治体の役所にて印鑑登録手続きを行った印鑑のことであり、法的効力が強いため需要な契約の際に使われます。認印とは確認や承認の意思を示す際に用いる印鑑のことであり、法的効力が弱いため日常生活で頻繁に使われます。

「実印」「認印」の意味・読み方は?

「実印」の読み方は「じついん」、「認印」の読み方は「みとめいん」または「にんいん」です。実印は、自治体の役所にて印鑑登録手続きを実施し本人の印鑑であることを証明する印鑑登録証を取得した印鑑を指します。認印は、日常生活において了承の意思を示すために用いられる個人を証明する力が弱い印鑑を指します。つまり、定義上は実印を認印として使用する事が可能ですが、防犯上これら二つには別の印鑑を使用する事が推奨されています。

印鑑の証明力が強い実印には、偽造を防ぐため一般的に個人で注文した一点物の高価な印鑑を用います。各自治体によって、印鑑を押したときの朱肉の跡である印影の大きさ、輪郭の形状や有無、刻印内容など登録できる印鑑に規定が設けられている場合があり、家族間でも同じ印鑑を実印として登録する事は出来ない事が殆どです。そのため、実印には劣化や変形が起きづらい木材や動物の角や牙、金属や石などの素材を使用したり、刻印する文字には吉相体や篆書体など偽造のされにくさを考慮した崩れた書体が選択されます。

日常生活において頻繁に使用される認印はその気軽さから三文判と呼ばれる事があり、その言葉が意味する様に大量生産された安価で簡単に入手できる印鑑を用いる事が一般的です。実印に比べて印鑑の証明力が弱いため登録などの手続きは不要で、印影について特に規定が設けられていない場合が多く、浸透印というシャチハタやネーム印などのインクが内蔵された朱肉が不要な印鑑も認められる場合が多いです。そのため、認印にはゴムやプラスチックなど加工が容易で安価な樹脂製の素材を使用したり、刻印する文字には古印体や隷書体などの読みやすさを重視した書体が選択されます。

「実印」「認印」の使い方、使い分けは?

実印と認印の区別は、届け出の有無とその印鑑を使用する書類とその内容の法的効力によって使い分けます。実印は届け出が必要な印鑑で主に法的効力の強い重要な書類に押印を求められ、認印は届け出が不要で主に法的効力が弱い日常的なやり取りで押印を求められます。ただし、何かしら効力を持つ場合が多いので、例え認印であっても押印する際には書類の内容に対する理解と同意が必要です。

実印は、具体的に不動産や車などの売却・購入・譲渡取引や法人登記や遺産相続などの法的手続き、保険の加入や保険金の受取など高額な金銭のやり取りや慎重な判断を伴う書類に対して用います。契約者の人生において大きな意味を持つ重要な場面に使用される場合が多く、実印の押印によってその書類の内容や効力を理解して確な本人が同意した事が証明されます。居住地の移転、結婚や離婚等による氏名の変更など実印の変更が必要になった際には変更前の印鑑を押印した相手にもその旨を連絡し手続きを行う必要があります。

認印は、具体的に荷物の受取、会社内の書類や地域の回覧など所属する組織内での確認など金銭のやり取りが発生しない、または少額である書類に対して用います。日常生活で比較的頻繁に起こる簡易的な場面に使用される場合が多く、確認または同意した事を示す場合や目を通した事を示す場合など要求されている内容によって認印が示す意味が異なることがあります。会社用、自宅用など押印する相手や用途によって複数の印鑑を使い分ける事も可能ですが、どの印鑑を使ったかを把握している必要があります。また、直筆のサインやインクをつけた指先を書類に押し指紋を残す拇印など別の方法によって代用が可能な事もあります。

「実印」「認印」の用例・例文

実印・認印の用例・例文には次のようなものがあります。
実印の用例
新しくこの街に転入したので、登録する実印について自治体の規定について知りたいのですが。
実印の例文
二十三日には筒井から四度目の呼出が来た。口書清書に実印、爪印をさせられた。(森鴎外『護持院原の敵討』)
「実印だってまだ僕の自由にはならないんですよ」(横光利一『家族会議)
認印の用例
私の苗字はかなり珍しくて、近所で認印を購入できる店を見つけるのに苦労したよ。
認印の例文
そして明日出すべき欠席届にはいかにしてまた母の認印を盗むべきかを考えた。(永井荷風『すみだ川』)
「あい」お妻は、奥へ認印をとりに行った。(海野十三『空襲葬送曲』)

辞職と退職の違い

辞職は「自分の意思で仕事を辞めること」を指します。退職は、仕事を辞めること全般を指します。「退職」の概念の中に「辞職」も含まれているようなイメージで捉えるとよいでしょう。

自己都合や勧告、定年や懲戒など、いかなる理由であれ、企業や組織から離れる際には退職という言葉を使います。

辞職についても「辞める理由」は特に問われません。本人に問題があってもなくても、自ら仕事を離れるときは辞職といいます。

ちなみに「辞任」は、「任務(役職)を辞する」ことを意味します。仕事そのものを辞めて職場から去る「辞職」とは意味合いが異なります。

「辞職」「退職」の意味・読み方は?

辞職は「じしょく」と読みます。決められた手続きを踏まえ、その人が就いていた職を辞めようとすることが辞職です。仮に雇い主が合意していなくても、従業員が自分から辞めようとする場合は辞職と表現します。ちなみに、雇い主と本人が合意のうえで辞めるのは「自己都合退職」であり、辞職とはいいません。なお、役職の高い人間が組織を離れるときは、どのような理由でも辞職ということがあります。辞職をするためには「辞表」が提出され、上司に受け入れられてようやく手続きが成立する仕組みです。

一方、退職は「たいしょく」と読みます。退職は、ある人が職場を離れることです。単に、役職が変わったり、転勤したりするだけでは退職と呼びません。組織から名前がなくなり、居場所を失うことが退職です。有名な例としては、「定年退職」が挙げられるでしょう。これは定年を迎えて、自動的に退職へと向かうことです。仮に本人の意思とは関係なく仕事を辞めた場合でも、現場から離れた以上は退職と表現されます。そのほか、リストラで解雇に追い込まれたような状況でも、退職という形容がふさわしいでしょう。

「辞職」「退職」の使い方、使い分けは?

使い分けの重要なポイントは、「あらかじめ想定された辞め方をしているかどうか」です。辞職の場合、契約条件や社則で決まっていた流れではありません。本人の気持ちが変わったり、問題が起こったりして、辞めざるをえなくなるのが辞職です。ただし、本人の意思とは関係なく、周囲から辞めるように仕向けられるのは辞職といいません。その場合は「退職勧告」「解雇」といった表現がなされるでしょう。辞職に対し、退職は最初から想定された事態です。定年や契約満了は、労働条件の中に組み込まれていた事項だといえるでしょう。こうした規則に従い、時期を迎えた人が職場を去っていくのは退職と呼ばれます。

次に、「形式的に、自ら職を辞するとき」も辞職が使われてきました。たとえば、社長や幹部などの目上の人間が問題を起こしたとします。そのことで本人が辞めなければならなくなったとしても、堂々と理由を述べるのは屈辱的だといえます。組織の面子を保つためにも、「上の人間に見逃せない問題があって辞めてもらった」という事実はぼかさなくてはなりません。このようなときにはあえて辞職という形をとり、真相が後世に伝わりにくくします。もしも辞めさせられる理由がはっきりしており、本人が強制的に追い出されたのなら退職と表現されます。

「本人の立場」もまた、辞職と退職の基準になるでしょう。原則的に、辞職とは課長以上の地位がある人について使われてきました。もちろん、本人の意思で職場を離れることが大前提です。つまり、辞職とは「責任の大きい立場の人が、自ら職を辞する」ときに使う言葉だといえます。一方、役職や肩書のない人が組織を離れる際には、辞表と呼ばれません。本人の意思の有無とは無関係に、退職と呼ばれます。

「辞職」「退職」の用例・例文

辞職も退職も、それぞれ「辞職する」「退職する」といった形で、動詞にもなります。たとえば、「あの課長は相次ぐプライベートの問題により辞職した」「そろそろ退職する年齢が近づき、少しずつ引き継ぎ作業を進めている」といった使われ方をされてきました。なお、退職を使った有名な用例に「退職金」があります。これは、退職にともない、勤め先から支払われる金銭のことです。ただし、「辞職金」という言葉は使われていません。なぜなら、辞職とは自分の意思で職場を離れることなので、所得保障である退職金は支払われないからです。

辞職を願う書類が「辞表」と呼ばれるのに対し、退職の場合は「退職願い」といわれてきました。辞表と退職願いは、どのような役職の人間か提出するかで使い分けられています。多くの企業では、課長以上なら辞表、それよりも下の役職は退職願いと形容されています。辞職は役職が高い人だけにあてはまる言葉であり、「政策の失敗を受けて内閣総辞職が決まった」といった場合に使われてきました。

自動詞と他動詞の違い

簡単に言うと、自動詞は「自分だけで成立する動作」を表す動詞で、他動詞は「対象(他のもの)がないと成立しない動作」あるいは「対象(他のもの)になにかしらの影響を与える動作」です。

一見すると反対の意味をもつ自動詞と他動詞ですが、日常会話ではどちらを使っても同じ意味が伝わる場合があります。そのため両者の違いがわかりにくい、気にしたことがないという人も多くいます。しかし、自動詞と他動詞には簡単な見分け方があります。意味や用法が異なる両者ですが、文中での形でも区別が付く場合があります。

「自動詞」「他動詞」の意味・読み方は?

「自動詞」は「じどうし」、他動詞は「たどうし」と読みます。どちらも動詞の種類であり、すべての動詞は自動詞か他動詞のどちらかに分けられます。まず、動詞というのは品詞のひとつであり、物事の動作や作用、状態や存在などを表現します。「歩く」や「食べる」など、すべて「う」の音で終わるのが特徴です。

この中で自動詞は、他のものに影響を及ぼすことなく、主体の動作や変化を表す動詞で、対象がなくても成立します。上記の「歩く」は、自分の脚さえあればそれだけでできる動作なので、自動詞となります。「駅まで歩く」といった場合は、「歩く」にも「駅」という対象があるように思えますが、「歩く」という動作自体は駅がなくてもできます。

対して他動詞は、他のものに影響を及ぼす動詞であり、対象となるものがないと成り立ちません。上記の「食べる」は、口や歯や喉があっても、なにかしらの食べ物がないと成立しない動作です。そのため他動詞となります。「食べる」という動作の対象をパンだとすると、「パンを食べる」という文になって初めて他動詞が完結するのです。また、この時の「パン」は目的語という役割を果たします。

また、自動詞にも使役の助動詞を用いることで他動詞的な意味を持たせることができます。例えば、「歩く」に助動詞「せる」を付けると「歩かせる」という言葉になりますが、「歩かせる」は対象がいないと成立しません。このように、自動詞だからといっていつでも対象をもたないとは限りません。助動詞があれば、対象を必要とする単語になる可能性があります。

「自動詞」「他動詞」の使い方・使い分けは?

自動詞と他動詞の意味や用法は異なりますが、ある動詞を提示されて「これは自動詞か他動詞のどちらであるか」と聞かれても即答できない人は多いと思います。また、日常会話ではどちらを使っても意味が伝わることがあります。たとえば、皿を落としてしまった人がいるとします。その人が「皿が割れた」と言ったとしても、「皿を割った」と言ったとしても、意味は同じです。「割れる」という自動詞を使おうが、「割る」という他動詞を使おうが、似たようなことが伝わるのです。

しかし、自動詞と他動詞を混同してしまうと、誤った文法を使ってしまうことがあります。そのため、両者の区別を付けられるようになることが理想です。そこで、自動詞と他動詞の簡単な見分け方として、「を」の有無で判断する方法があります。

例外はありますが、「を」が直前に付いている動詞は他動詞であることが多いです。「パンを食べる」「手紙を書く」「瓦を割る」など、対象を表現する助詞の「を」があれば他動詞となります。しかしこの際、対象以外を表現する「を」には注意しなければなりません。たとえば、「公園を走る」の「を」は対象ではなく場所を表現しています。そのため、「走る」は自動詞です。

また、区別が難しい動詞として「さわる」があります。「さわる」は対象がないと成り立たないため他動詞かと思いがちですが、多くの辞書には自動詞と表記してあります。しかし他動詞と表記する辞書もあるようで、人によって解釈が異なる場合があるようです。ちなみに、「さわる」が強くなって「叩く」「掴む」「握る」となると他動詞になります。

「を」の有無ではなく、対象を必要とするかどうかという意味的な違いで判断する方法もありますが、その場合にも注意すべき動詞が存在します。それは「会う」です。「会う」は対象となる人がいないと成立しないように思いますが、自動詞です。「会う」は「友達と会う」という言い方をしますが、「と」は対象ではなく共同を意味します。そのため、対象がなくても成立する動詞なのです。

「自動詞」「他動詞」の用例・例文

まず、自動詞の例を以下に示します。

・公園を走る。
・大声で叫ぶ。
・ベッドで寝る。
・すっきりと目覚める。
・みんなで踊る。
・パソコンが寿命で壊れる。
・風が吹く。

次に、他動詞の例を以下に示します。
・ボールを投げる。
・本を読む。
・ビールを飲む。
・流行の歌を歌う。
・先生の話を聞く。
・息子を起こす。
・笛を吹く。