新語時事用語辞典とは?

2022年3月22日火曜日

《良かったです》の敬語

「良かったです」の敬語表現

「良かったです」は、「良い」の過去形である「良かった」と丁寧語の「です」から構成されており、敬語表現としてそのまま使うことができます。「良かったです」のより丁寧な敬語表現は、「よろしゅうございます」や「ようございます」となります。また、「よろしかった」に丁寧語の「ですね」をつけた「よろしかったですね」も、「良かったです」の敬語表現です。「よろしかったですね」は相手の状態を一緒に喜んでいることを表現できる言い回しで、目上の人に良いことがあった時などに「それはよろしかったですね」と伝えます。

「良かったです」の敬語の最上級の表現

「良かったです」の敬語の最上級の表現は、「よろしゅうございます」になります。しかし、日常生活・ビジネスどちらにおいてもほとんど使われないため、「良かったです」を言い換えた最上級の敬語表現を使うのが適切です。「良かったです」の言い換え表現の中で最も丁寧なのは、「喜ばしい限りです」になります。「この上なく」という強調表現をつけて「この上なく喜ばしい限りでございます」にすると、さらに丁寧な敬語表現となります。また、「ありがとうございます」も「良かったです」の言い換え表現であるため、強調表現の「誠に」をつけた「誠にありがとうございます」も最上級の敬語表現となります。

「良かったです」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメール・手紙においては、直接的な表現を避けるのがビジネスマナーとされています。また、「良かったです」は文章として書くにはカジュアルな表現であり、「よろしゅうございます」や「ようございます」も慇懃無礼な印象を与える言い回しであるため、別の表現に言い換えるのがよいでしょう。

例文:平素より大変お世話になっております。先日は、セミナーでお会い出来て光栄でした。よろしければ、今後の方針について打ち合わせさせていただきたく存じます。ご検討ください。

例文:お世話になっております。この度は、御社のプロジェクトのお役に立てたようで誠に喜ばしい限りでございます。今後ともよろしくお願いいたします。

例文:このたびの台風被害に際し、心よりお見舞いを申し上げます。幸い社屋に被害はなかったとお聞きし、安堵いたしました。一日も早い復旧をお祈りしています。

「良かったです」を上司に伝える際の敬語表現

「良かったです」を上司に伝える際の敬語表現は、上司との関係性や状況によって異なります。親しい間柄の上司であれば、「良かったです」を使っても構いません。ただし、直属ではない上司や高い地位の上司に対して「良かったです」を使うと失礼に当たります。状況に合わせた「良かったです」の言い換え表現を使うのが適切です。上司の昇進や栄転などに対する喜びを伝える場合は、「昇進されて良かったですね」ではなく「昇進おめでとうございます」と言い換えられます。

また、上司と一緒に仕事ができて嬉しかった気持ちを伝える場合は、「一緒にお仕事ができて良かったです」ではなく、「一緒にお仕事ができて光栄です」と言い換えることができます。直属ではない上司や高い地位の上司の場合は、語尾を「ございます」に変えて「一緒にお仕事ができて光栄でございます」と伝える方が適切です。状況に合わせて適切な敬語表現が使えるように、「良かったです」の言い換え表現を把握しておく必要があります。

「良かったです」の敬語での誤用表現・注意事項

「良かったです」の疑問形の敬語表現として、「よろしかったでしょうか?」というフレーズが用いられることがあります。語尾が丁寧語表現の「でしょうか」であるため文章的に間違っていないように感じますが、正しい表現ではありません。例えば、「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」という表現では、現在のことを「よろしかった」という過去形でたずねている形となります。正しい表現は、「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」です。

また、「良かったです」は敬語ではありますがカジュアルな表現であるため、友達や同僚など親しい間柄の人に対して使うのが適切です。目上の人に使うのは不適切とされているので、注意が必要です。「よろしゅうございます」や「ようございます」も「良かったです」の敬語表現ではありますが、日常会話で使われることもほとんどなく、ビジネスシーンではネガティブな印象を与えることもあります。そのため、特にビジネスシーンにおいては、「喜ばしい限りです」や「何よりです」など状況に合わせた言い換えをするのが無難です。

「良かったです」の敬語での言い換え表現

・よろしゅうございます
・よろしゅうございました
・ようございました
・よろしかったですね
・嬉しく思います
・嬉しい限りです
・嬉しい限りでございます
・この上なく嬉しい限りでございます
・嬉しく存じます
・喜ばしい限りです
・喜ばしい限りでございます
・この上なく喜ばしい限りでございます
・喜ばしく存じます
・何よりです
・何よりでございます
・安心しました
・安心いたしました
・ありがとうございます
・誠にありがとうございます
・光栄です
・大変光栄です
・お役に立てて光栄です
・安堵しました
・安堵いたしました
・大変安堵いたしました

《了解》の敬語

「了解」の敬語表現

「了解」の敬語表現は「承知」です。「了解」には相手の事情を理解するという意味があり、同様の意味合いでより丁寧な表現が「承知」になります。目上の人に対して使える言葉であるため、「了解しました」の代わりに「承知しました」が使われています。また、「承知しました」は「承知いたしました」や「承りました」と言い換えることもできます。そして、「わかりました」も「了解」の敬語表現です。目上の人に対して使っても問題のない表現ですが、少しフランクな印象を与えるため親しい間柄の上司に対してのみ使うのが適切です。

そのほかの「了解」の敬語表現には、「かしこまりました」があります。「かしこまりました」は依頼や指示を理解するという意味があり、「承知しました」よりもへりくだった表現です。クライアントからの依頼や、立場がかなり上の上司に対して使うのに適した表現です。ビジネス文書では、「了解」の敬語表現として「拝承しました」や「承引しました」という表現が使われることもあります。

「了解」の敬語の最上級の表現

敬語の最上級の表現は、謙譲語+丁寧語になります。そのため、「了解」の敬語の最上級の表現は「承知いたしました」、もしくは「かしこまりました」になるでしょう。「承知いたしました」は「承知」+謙譲語の「いたす」+丁寧語の「ました(ます)」から構成されているため、最上級の敬語表現になります。「承知いたしました」は、二重敬語ではないかと指摘されることもあります。「承知」には「承」の字が含まれているため「承知」自体が謙譲語であると誤解されがちですが、単に知る・許可するという意味を持つ単語で敬語表現ではありません。そのため、謙譲語の「いたす」と一緒に使っても二重敬語にはなりません。

「かしこまりました」も、謙譲語の「かしこまる」+丁寧語の「ました(ます)」から構成されているため、最上級の敬語表現です。

「了解」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメール・手紙においては、「了解」の敬語表現として「承知しました」や「承知いたしました」を使うのが一般的です。

取引先へのメール例文:お世話になっております。発注内容のご変更の件、承知いたしました。準備でき次第、配送いたします。今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

また、クライアントや立場の高い上司へのメールや手紙は、「かしこまりました」を使うこともあります。

取引先へのメール例文:いつもお世話になりまして誠にありがとうございます。お打ち合わせの件、かしこまりました。当日は宜しくお願いします。
上司へのメール例文:システムエラーの件、かしこまりました。至急対処いたします。

「了解」を上司に伝える際の敬語表現

上司に「了解」を伝える際の敬語表現は、上司との関係性によって使い分ける必要があります。親しい間柄の上司であれば、「わかりました」のようなフランクな敬語表現でも問題ありません。また、年の近い先輩に「承知しました」を使うと他人行儀に捉えられることもあり、「了解です」や「了解しました」が好まれることもあります。上司との関係性に関わらず使える敬語表現としては、「承知しました」、「承知いたしました」があげられます。また、関係性が薄い上司や立場が高い上司に対しては、「かしこまりました」と伝える方が適切です。

「了解」の敬語での誤用表現・注意事項

「了解です」は「了解」+丁寧表現の「です」によって構成される丁寧な言い回しであるため、ビジネスメールにおいても使えると思われがちです。しかし、ビジネスシーンにおいて「了解です」は敬語表現として使うのは避けた方が良い表現です。「了解いたしました」は文法的には敬語になりますが、やはりビジネスシーンでは不適切な表現と認識されています。なぜなら「了解」という言葉が「目下の人に対して許可を与える」意味に捉えられており、目上の人に対して使うと失礼にあたるからです。「いたします」という敬語をつけたとしても、「了解」自体が上から目線の単語であるため敬語表現には不適切とされています。敬語表現であるとはいえ、ビジネスマナーとして「了解いたしました」という表現を避けるのが賢明です。

ただし、同僚や部下に使うぶんには問題ありません。また、「了承いたしました」も、敬語表現でありながらもビジネスシーンでは不適切とされています。「了解」と同様に、「了承」にも目下の人に対して許可を与える意味があるとされているからです。そのため、「了解いたしました」の代わりに「了承いたしました」と表現するのもビジネスマナー違反になります。「承知いたしました」、「かしこまりました」が適切です。

「了解」の敬語での言い換え表現

・了解しました
・了解いたしました
・了承しました
・了承いたしました
・わかりました
・承知しました
・承知いたしました
・承りました
・かしこまりました
・承諾しました
・承諾いたしました
・承引しました
・承引いたしました
・拝承しました
・拝承いたしました
・理解しました
・理解いたしました
・納得しました
・納得いたしました
・御意にございます

《了解です》の敬語

「了解です」の敬語表現

「了解」は、「ある物事の内容や状況を理解して、承認する」という意味の単語です。この言葉を含んだ「了解です」は、周囲からの依頼に答える返事として、ふだんのコミュニケーションの場でもよく耳にする表現のひとつでしょう。「了解です」を文法のうえからみると、名詞の「了解」と断定の助動詞「です」に分解できます。「です」は敬語表現のひとつである丁寧語に分類されているものですので、「了解です」はこのままで完結した敬語表現であるということができます。

「了解です」の敬語の最上級の表現

「了解です」は丁寧語です。丁寧語は、聞き手や文章の読み手全般に対して敬意を表すものですが、最上級の敬語表現であれば、一対一の関係の中で敬意を払う相手を明確に設定する必要があります。「了解です」の場合、了解する行為の主体は自分、了解を求める客体は相手になりますので、ここは自分がへりくだって相手を立てる謙譲表現を用いることが適当です。

謙譲表現のなかでも最上級の敬語表現としては、つつしんで承諾するという意味の「かしこまりました」がこれに相当します。「かしこまる」には「畏まる」の漢字を当てますが、「畏」を用いた表現に「畏くも」という最高敬語があります。これは「恐れ多くも、もったいなくも」という意味となり、皇室や外国の国王などに対してのみ使用できる言葉とされているものですが、この「畏」を含んでいる点からみても、「かしこまりました」という表現が「了解です」の最上級の表現であるということができるのです。

「了解です」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「了解です」は敬語表現ですので、ビジネスメールや手紙の中でも基本的にはこのままの形で使用することができますが、差し出す相手によっては失礼にあたる場合もありますので使い分けが必要になります。同僚や部下あてに送る際は「了解です」をそのまま用いることができますので、「先ほど連絡いただきました日程変更の件、了解です」「スポンサーへのプレゼン同行の件、もちろん了解です」などと使います。了解するの連用形「了解し」に丁寧の助動詞「ます」の連用形「まし」と完了の助動詞「た」で「了解しました」としても敬語表現となります。「プロジェクトチームの人選の件、了解しました」などと使うことができます。

一方で、たとえ敬語表現だとしても「了解です」は目上の人や会社の取引先には使いません。それは了解という言葉自体に目上に使っては失礼にあたる意義が含まれているからです。目上の人に使う場合は「承知しました」「承りました」等の表現に言い換えたうえで「品質管理の周知徹底の件、承知いたしました」「改善報告書提出の件、承りました」などというように使います。

「了解です」を上司に伝える際の敬語表現

「了解です」は目上の人には使いませんので、上司には基本的にメールや手紙で使用する言葉遣いで対応します。「かしこまりました」「承知しました」「承りました」は文語としてだけでなく、口語で使用しても違和感がない表現ですから、対面して口頭で話す場合でもそのまま使うことができます。

日常会話の中で「了解です」に内容が似た言葉として「わかりました」があります。対面でのコミュニケーションの場で使われがちな用語ですが、これも目上の人には使いません。「わかりました」は「判る、解る」などの意味を持ち、その事態が判断できるかできないかといった、理解能力に重点を置いた表現に用いられるケースが多くあります。常に高度な状況判断が求められるビジネスシーンでは非常に稚拙な言葉として捉えられがちですので、丁寧の助動詞「ます」を含んだ敬語表現であるとはいえ使わない方が無難です。

「了解です」の敬語での誤用表現・注意事項

「了解です」は丁寧語を含んだ敬語表現ですが、目上の人には使えない言葉ですので、その点に注意が必要です。「了解」には、理解する以外にも承認するという意味があります。承認とは本来、目上の権限者が許可を与えることを言いますので、目下の立場で「了解する」といえば、目上の人に指示をするのと同様の振る舞いを行おうとすることになるわけです。「おっしゃることはわかりました。そのとおりにやってもいいですよ」と目下の人から言われれば、上司としてはいい気持ちはしません。

要するに、目上に対して「了解です」がNGなのは、敬語の表現方法以前に「了解」という言葉自体がふさわしくないということです。「了解です」を「了解でございます」などと、よりいっそう丁寧な表現に言い換えたとしても、目上の人にとっては失礼にあたることに何ら変わりはないのだという点に留意しなければなりません。

「了解です」の敬語での言い換え表現

「了解です」の敬語での言い換え表現としては「心得ました」があります。これは「おっしゃることを理解して、そのように行動します」というような意味を持ち「先日部長から頂戴したご指摘、しかと心得ました」などと使います。このほか、目上の人の意見を受け入れる意味の「御意」などがありますが、言葉使いとしては古く、今ではドラマなどで耳にするだけで実際にはあまり使いません。

《了解しました》の敬語

「了解しました」の敬語表現

「了解しました」を敬語で表現する場合、「かしこまりました」を使用すると良いでしょう。「了解」は、一般的に上から目線だというイメージを持たれることが多いです。そのため、丁寧語と組み合わせて「了解しました」という表現にしても、受け取った側は快く思わない可能性があります。したがって、「了解しました」を敬語表現にする場合は、近い意味を持つ「わかりました」を謙譲語にした「かしこまりました」の使用が好ましいです。

「かしこまりました」は、状況を理解したり、相手からの依頼を引き受けたりしたことを示せる表現です。ただ、「了解」は、状況を理解するという意味のみを持つ言葉で、依頼を引き受けるという意味はありません。しかし、現代では、相手からの依頼を引き受けるという意味合いで、「了解しました」が使用されることが多いです。そのため、依頼を引き受けるという意味でも、「かしこまりました」が「了解しました」の敬語として適しています。そして、ある程度砕けた敬語表現をするのであれば、「わかりました」を使用しても良いです。「わかりました」は一般的に、「了解しました」のような、上から目線だというイメージは持たれていません。

また、「承りました」という表現も、「了解しました」の敬語表現として適しています。「承りました」は、「了解しました」と同じ、状況の理解や何かを引き受けたことを示す謙譲語です。そして、「かしこまりました」と同様に使用することができます。同じ謙譲語であるため、尊敬の度合いも特に大差ありません。さらに、「承知しました」という表現が、「了解しました」の敬語として使用されることも多いです。あくまでも丁寧語ですが、「承」という字が入っているため、謙譲語のようにへりくだった印象があります。

「了解しました」の敬語の最上級の表現

「了解しました」を最上級の敬語にする場合、「承知いたしました」という表現が適しています。「承知しました」の「しました」の部分を謙譲語の「いたしました」という表現に変えたものです。「承知しました」がすでに、丁寧語でありながら、「承」という字が入っているため、へりくだった印象を与える表現です。そこに謙譲語の「いたしました」が加わることで、より自分を下げる表現になります。そのため、相対的に相手を高めることができます。

「了解しました」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「了解しました」の敬語として「かしこまりました」を使用する場合、ビジネスメールや手紙での例文は「かしこまりました。それでは、その作業はこちらで済ませておきます」となります。

「承知しました」「承知いたしました」を用いるのであれば、例文は「先ほどご連絡いただきました件、承知しました」「承知いたしました。それでは、こちらの仕事が終わり次第、そちらの仕事に移ります」などです。「かしこまりました」や「承知しました」を、依頼を引き受けるという意味合いで使用する場合、文頭に置くことが多いです。そして、「承りました」を使用した場合の例文は「お客様は翌日いらっしゃるとのこと、承りました」「今回のイベント欠席の旨、承りました」のような形になります。

「了解しました」を上司に伝える際の敬語表現

上司に対して「了解しました」を敬語で表現する場合、「承知しました」あるいは「かしこまりました」が適しています。「承知しました」は丁寧語ですが、へりくだった印象を与えるため、目上である上司に対しても問題なく使用できます。ただ、立場が離れている上司に対しては、謙譲語である「承知いたしました」を使用した方が良いです。そして、「かしこまりました」は謙譲語なので、目上の人相手であれば誰にでも使用することができます。それでいて、堅苦しい表現ではないため、身近な上司に対して使用しても、他人行儀のような悪い印象は与えないでしょう。

「了解しました」の敬語での誤用表現・注意事項

「了解しました」をそのまま謙譲語表現にする場合、「しました」の部分を変えて「了解いたしました」となります。「了解いたしました」という表現自体は、謙譲語として何も間違ってはいません。しかし、「了解」という言葉そのものが、上から目線ということで、敬語に用いるのが好ましくありません。そのため、たとえ謙譲語である「いたしました」を使用したとしても、「了解」の方が悪目立ちをする恐れがあります。したがって、「了解いたしました」という表現も、「了解しました」と同様に使わないようにし、「承知しました」や「かしこまりました」などを用いた方が無難です。

「了解しました」の敬語での言い換え表現

状況を理解したという意味での「了解しました」は、「理解しました」「得心しました」といった敬語表現にすることも可能です。「理解」はそのまま相手の言っている内容がわかったり、それまでわからなかったことが、相手の言葉によってわかるようになったりした時に使える言葉です。そして、「得心」は、「納得」を丁寧な形にした言葉です。それまで状況がわからずに腑に落ちなかったことが、納得できた時に使用します。

「納得」は「了解」と同じように、上から目線の印象を与える恐れがあるため、丁寧な表現の「得心」を使用することが好ましいです。そして、「理解」と「得心」はいずれも、「理解しました」「得心しました」という風に丁寧な敬語にするだけでも、失礼にはなりません。ただ、強い敬意を示す場合は、「理解いたしました」「得心いたしました」という風に謙譲語表現にした方が良いです。

また、引き受けたという意味合いでの「了解しました」は、「承諾いたしました」という敬語に言い換えることができます。「承諾」は何かを快く引き受けるという意味を持った言葉で、「承知」と同じように「承」という字が入っています。そのため、「承諾いたしました」は、相手の依頼を引き受ける際に、強い敬意を示すために使用できる表現です。

《了解いたしました》の敬語

「了解いたしました」の敬語表現

「了解いたしました」は、「物事の事情を理解して承認する」という意味を持つ「了解」に、謙譲語の「いたす」を組み合わせた丁寧な言い回しです。しかし、「了解です」や「了解しました」が、同等か目下に対しての受け答えとして定着していることから、「了解」を含む表現を目上の相手に使うのは不適切とされています。そのため、「了解いたしました」と目上の人に伝えたい時には、念のため、別の敬語表現に置き換えるのが無難です。

「了解いたしました」の目上の相手に対する敬語表現としては、「承りました」が一般的です。「承りました」は、「聞く・受ける」の謙譲語「承る」を丁寧にした言い回しで、「しっかりと聞きました」「引き受けました」という意味合いでビジネスシーンでも多用されています。自分をへりくだって敬意を表すと同時に、「責任を持って任務を果たします」という強い意志も示すことができ、相手に安心感を与える受け答えです。

また、「承知しました」も、目上の相手に対して誠実な印象が伝わる敬語表現です。謙譲語を組み合わせて「承知いたしました」とするとさらに丁寧になり、「ご意向をたしかに理解しました」という謙虚な気持ちを表すことができます。似たような表現としては、「承諾いたしました」「受諾いたしました」などもあり、いずれも「了解いたしました」に置き換えて使うことができる適切な敬語表現と言えるでしょう。

「了解いたしました」の敬語の最上級の表現

「了解いたしました」の敬語には、「かしこまりました」という特別な言い回しもあります。謙譲語である「かしこまる」には、「目上の人の指示や依頼に謹んで従う」という意味があり、「かしこまりました」と答えるだけで高い敬意を表すことが可能です。フォーマルな場面にも相応しく、取引先や身分の高い人に対しても安心して使えるため、「了解いたしました」の最上級の敬語表現と言えるでしょう。

また、「了解いたしました」には、「拝承しました」という改まった表現もあります。「かしこまる」と同じく、「拝承」も謙譲語にあたり、「謹んで承知する」「謹んで人の言うことを聞く」という意味合いを持ちます。相手を十分に立てることができる最上級の敬語表現で、ビジネスメールや手紙などの書き言葉にも最適です。

「了解いたしました」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「ご注文をたしかに承りました。本日中に発送いたします。」
「打ち合わせの日程変更の件、承知しました」
「承知いたしました。今週末までに見積書をお送りします」
「納期前倒しのご要望について、たしかに承諾いたしました。ご指定の日時で納品できますよう尽力いたします」
「ご依頼の件、受諾いたしました。すぐに手配をいたしますのでお待ちくださいませ」
「かしこまりました。明後日の午前9時に御社に伺います」
「業務の進捗につきまして、拝承しました。ひき続きよろしくお願いいたします」

「了解いたしました」を上司に伝える際の敬語表現

上司に対して「了解いたしました」と言いたい時には、「承りました」「承知しました」といった敬語表現を用いるのが妥当です。日頃からやりとりの多い直属の上司であれば、会話の流れに合わせて、「承りました。一生懸命がんばります」「承知しました。すぐにお持ちします」など、受け答えの後に言葉を補足することで、堅苦しくなりすぎずにやわらかいニュアンスで伝わります。

また、他部署の上司であったり、会社内でも高い役職に就いている上司に対しては、「かしこまりました」など、最上級の敬語表現を用いても不自然ではありません。上司との関係性や立場などを考慮した上で、最適な敬語表現を選ぶことで、相手に好印象を与えることのできる円滑なコミュニケーションにつながるでしょう。

「了解いたしました」の敬語での誤用表現・注意事項

「了解いたしました」の敬語として、目上の人に「了承いたしました」を使うのはNGです。「了承」は「了解」と同様に、目上から目下に対して使う言葉としてビジネスシーンで認識されています。そのため、人によっては、「了承いたしました」という受け答えを不快に感じる可能性もあるので注意が必要です。「丁寧な言い回しだから大丈夫そう」といった安易な使用は控えるようにしましょう。

また、「拝承しました」をさらに丁寧に言おうとして「拝承いたしました」と表現するのは、文法的に間違いです。「拝承」と「いたす」はどちらも謙譲語で、二重敬語となってしまいます。一方で、「承知いたしました」や「承諾いたしました」は、二重敬語にはあたりません。「承知」と「承諾」は謙譲語ではないため、「いたしました」のみが謙譲語となり、問題なく使うことができます。二重敬語の受け止め方は人によって異なりますが、中にはくどい表現が不愉快だという人もいるので、正しい敬語表現を心掛けましょう。

「了解いたしました」の敬語での言い換え表現

承知しました
承知しましたので
承知しましたが
たしかに承知しました
重々承知しています
承知いたしました
承知いたしましたので
承知いたしましたが
たしかに承知いたしました
承りました
承りましたので
承りましたが
承ります
承りますので
承りますが
承りましょう
承りましょうか
たしかに承りました
たしかに承ります
たしかに承っています
たしかに承りますので
たしかに承りましたので
承諾しました
承諾いたしました
たしかに承諾いたしました
受諾しました
受諾いたしました
たしかに受諾いたしました
かしこまりました
拝承しました
拝承しましたので
たしかに拝承しました

《来る》の敬語

「来る」の敬語表現

「来る」の敬語表現としては、語尾に尊敬語である「られる」をつけた「来られる」が挙げられます。動詞の未然形「来(こ)」に、尊敬表現の接尾辞「れる・られる」を付け足した形です。さらに丁寧語の接尾辞である「ます」を付与して「来られます」と変化させれば、相手に丁寧に伝えることができます。なお「来られる」の他に、「お越しになる・お見えになる」なども「来る」の尊敬表現として用いられます。語尾に「れる・られる」を付け足した「来られる」よりも、敬意を増した表現として広く用いられる言葉です。

一方で自分自身をへりくだらせる敬語表現である、謙譲語では「参る」に丁寧表現「ます」を加えた「参ります」が該当します。同様に謙譲の意味を含む「伺う」に丁寧表現を加えた、「伺います」も自身を下げて相手を高める敬語表現の一種です。敬意とは別に丁寧に伝えることを中心に据えた表現方法としては、「来る」の連用形に丁寧表現の「ます」を加えた「来ます」が挙げられます。

「来る」の敬語の最上級の表現

一般動詞の未然形に尊敬表現である「れる・られる」を加えて変化させた、「来られる」よりも上位の敬語にあたるのが「お見えになる」や「いらっしゃる・お越しになる」です。特に「お見えになる」は、目上の人がこちらにやって来るという意味を持つ尊敬表現として用いられます。「来られる」に関しては「お見えになる」や「いらっしゃる」よりもやや砕けた表現となり、親しい先輩や同僚など近しい間柄に対して使える表現になります。

ちなみに現代ではほとんど使われていない「来る」の最上級敬語として挙げられるのが、「おはします」です。使用されていた時期は江戸時代にまでさかのぼり、当時の天皇・皇族といった身分の高い人々に対して使う表現でした。「おはす」は「来る」の他に、「(その場に)いる」の尊敬表現にもあたる言葉です。尊敬語の動詞「おはす」を連用形に変化させて、丁寧語の接尾辞「ます」を加えて敬意を表しつつ丁寧に伝える表現になります。ただし古文や歴史小説の中などに用いられることが大半であり、現代の口語・文語においては「お見えになる」や「いらっしゃる」などの表現を使うのが望ましいでしょう。

「来る」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメールや手紙の文中で「来る」を敬語で表現する際、「お越しになる」が最適です。「来られる」はフランクな表現でビジネスシーンには向かない点、「いらっしゃる・お見えになる」に関しては既にその場に訪れていることを示す傾向が強い点が、それぞれが文中に用いられにくい理由として挙げられます。文例としては「先日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございました」といったように、「もらう」の謙譲語「いただく」を組み合わせて用いられることが多いです。また「大阪にお越しの際は、ぜひお声掛けください」といったように、連用形の名詞化表現「お越し」を使うこともあります。

「来る」を上司に伝える際の敬語表現

直属の上司に対して、社長などその上司よりも上の立場の人物の来訪を伝える場合の敬語表現は「お見えになる・いらっしゃる」です。社長の他にも、取引先の担当者や顧客が来訪した際にも、「お見えになる」を用います。一方で顧客に対して、自分の会社の上司の来訪を伝える際には尊敬語は使いません。へりくだる表現である謙譲語を用いて、相手すなわち顧客への敬意を示します。謙譲の意味を持つ「参る」や「伺う」を未然形に変化させて、丁寧語の接尾辞である「ます」を語尾に足しましょう。

「来る」の敬語での誤用表現・注意事項

「来る」の敬語表現に「来られる」を用いる際の注意点として挙げられるのが、人によって敬意を感じる度合いが異なる点です。一般的にはやや砕けた表現として捉えられるケースも少なくないため、より上位の表現である「お見えになる」や「お越しになる」を使った方が無難でしょう。また「お越しになられる」などのように、敬意を示す接尾辞「れる・られる」を付与すると誤用となるため注意が必要です。「お越し」や「お見え」には、既に尊敬の意味が含まれているためそこに「られる」を付け足すことで、二重敬語になってしまいます。

「来る」の敬語での言い換え表現

「来る」の敬語である「来られる」や「いらっしゃる」、「お見えになる」などの言い換え表現として挙げられるのが「おいでになる」です。「来る」だけでなく「居る」の尊敬語にあたるのが「おいでになる」であり、「いらっしゃる」と同義の言葉になります。なお尊敬表現としての使い方の幅は広く、動詞や形容詞を連用形にした上で、助詞「て」と併用して動作に敬意を示すことも可能です。語尾を尊敬表現の接尾辞である「なさる」に変化させた、「おいでなさる」も言い換え表現として用いることができます。

会話内で用いる際には、丁寧な表現となる「ます」を語尾に加えて表現するのが一般的です。「いらっしゃる」と同じ意味を持つ言葉であるため、既に来訪していたりまもなくやって来る際に用いられます。また同じく丁寧表現である「です」を語尾に加えて、「おいでです」と表現することも可能です。こちらは「お越し」と同様に、連用形に変えて名詞化させた上で丁寧語の接尾辞を加える形になります。

《問題ない》の敬語

「問題ない」の敬語表現

「問題ない」の敬語表現は「問題ありません」です。また、「問題ないです」という言い方も可能です。ただし、「問題ないです」はややくだけた表現なので、使える相手は限られるでしょう。公の場で使用する際は「問題ありません」を選ぶのが無難です。

「問題ない」の敬語の最上級の表現

「問題ない」を最上級の敬語にするのであれば、「問題ございません」が正しい形です。「ない」の丁寧語であり、より強く敬意をこめられる表現だからです。

「問題ない」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「問題ありません」という敬語はビジネスシーンでも普通に使われてきました。メールや手紙を書くときに、「問題ありません」を用いてもかまいません。以下、「問題ありません」を使った例文を挙げていきます。

「お世話になっております。ご提案いただいた資料ですが、確認しましたところ問題ありません」 「ご報告いたします。プロジェクトは今のところ、問題ありません。若干の誤差はあるものの、想定の範囲内です」

なお、「問題ありません」を使うときは断定的なニュアンスになることも少なくありません。相手によっては強すぎる表現に感じられてしまうので、「大きな問題はありません」「特に問題ありません」といった書き方にする方法もあります。以下、例文を挙げておきます。

「お問い合わせの件、会場側に大きな問題はありません。主催には私から申し伝えておきます」 「お客様はシステムの操作性を気にされていましたが、特に問題ありませんでした」 「研修自体の人手はそれほど問題ありません。ただ、準備に時間がかかるので、明日の午前に予定が空いている方は至急ご返信ください」

「問題ない」を上司に伝える際の敬語表現

上司との関係性によって、「問題ない」の敬語表現は変わってきます。関係性が親しく、気軽にやりとりできる上司なら「問題ありません」で通用するでしょう。あるいは、「問題ないです」というくだけた表現も可能です。ただ、相手が重役や社長など、かなり目上の人物であれば「問題ございません」と最上級の敬語を使うようにしましょう。

「問題ない」の敬語での誤用表現・注意事項

「問題ありません」と似た言葉として「大丈夫です」「かまいません」などが挙げられます。これらはある物事について、「気にするほどの影響が生まれていない」と示す表現です。そのため、おおまかな意味は共通しているといえるでしょう。

ただし、明らかな目上の人と話すときは「問題ありません」を使うのが無難です。なぜなら、「大丈夫です」「かまいません」といった言葉の主語は自分自身になるからです。自分の主観で話を進めることで、相手が不愉快になる可能性も出てくるでしょう。それに対して、「問題ありません」は物事が「滞りなく進んでいる」状態を意味します。「大丈夫です」「かまいません」よりも客観的な表現であり、公の場に適しています。同じ理由で「私は問題ありません」といった言い方も、主観が入ってしまうので要注意です。「(相手が伝えた内容は)問題ありません」と解釈してもらえるような言い方を意識しましょう。

「まったく問題ありません」「完全に問題ございません」などの言い回しも、場合によっては望ましくありません。なぜなら、何の迷いもなく「問題ない」と言い切れるような状況は非常に珍しいからです。いくら敬語であったとしても、「まったく問題ありません」といった表現は自信過剰に聞こえます。「問題ありません」を使うときは、強い断定口調にならないことが肝心です。

そのほか、ビジネスシーンでよくある誤用が「問題ありません」の疑問形です。リアルタイムの物事について話をしているにもかかわらず、「問題ありませんでしたか」と過去形で質問してしまうのは間違いだといえます。現在形で「問題ありませんか」と伝えるようにしましょう。もちろん、過去の出来事について質問するときは「問題ありませんでしたか」と表現することも可能です。

「問題ない」の敬語での言い換え表現

「問題ありません」とほぼ同じ意味で使えるのは「差し支えありません」「支障ありません」などのフレーズです。これらの敬語の最上級は、「差し支えございません」「支障ございません」です。いずれも「問題ありません(問題ございません)」と同じく、客観的に物事の進捗、成果を説明している言葉だといえます。「問題ありません」の言い換えとして、「差し支えありません」や「支障ありません」を使うことは十分に可能です。

そのほか、よく似た意味の言葉に「異常ありません」「心配ありません」があります。これらの言葉も、状況次第では「問題ありません」の言い換え表現として成立するでしょう。ただし、「異常ありません」には点検や確認の結果を、誰かに報告しているというニュアンスが含まれています。

また、「心配ありません」は相手の気を休めようとする意図が込められています。その場合、「結果から話をそらし、相手の平穏を守ろうとする」という文脈にもなりかねません。事実として「トラブルが生じていない」という意味の「問題ありません」とは微妙にニュアンスが異なります。「問題ありません」を「異常ありません」や「心配ありません」に言い換えるのは間違いにならないものの、最適な表現かどうかはしっかり考えましょう。

《目を通す》の敬語

「目を通す」の敬語表現

「目を通す」とは、「ひととおりざっと見る」という意味で、この言葉自体には敬意は含まれていません。「目を通す」を敬語表現にする場合は、行為の主体が誰なのかによって表現のしかたが変わってきます。たとえば行為を行うのが目上の人であれば、尊敬語を用いて「ご覧になる」「お目通しになる」などと敬意を込めて言い表します。行為者が自分であれば、自分を低めて相手を立てる謙譲表現を用います。この場合「見る」の謙譲語を使って「拝見する」などとするのが適切です。聞き手や読み手に対して丁寧に表現するのであれば、丁寧語の「です・ます」を用いて「目を通します」などという敬語表現にします。

「目を通す」の敬語の最上級の表現

「目を通す」の敬語としての最上級の表現は、行為を行うのが相手の場合、あるいは行為を行うのが自分の場合の二通りが考えられます。「目を通す」のが相手であれば、これは最上級の尊敬表現である最高敬語の中で、「天皇が見る」という行為を表す言葉として定められている「御天覧」と、「天皇がする」という行為を表す言葉として定められている「遊ばされる」を組み合わせた「御天覧遊ばされる」という言い方が最上級の表現となります。また、「目を通す」のが自分の場合は、見るの謙譲語である「拝見」に丁重語の「いたす」と丁寧語の「ます」を加えた「拝見いたします」が、最もへりくだった言い方として相手を立てる表現となります。

「目を通す」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「目を通す」はビジネスシーンにおいて、資料や文書を見る際などによく使用される言葉です。しかしこのままでは敬語表現ではありませんので、メールや手紙などの文書では敬意を込めた表現に言い換えて用います。「来週の会議の資料をお送りしましたので、お時間がおありの際にでもご覧ください」「見積書は担当者が持参いたしますので、そちらをご覧いただければと存じます」などと使用します。また、他人が見ることを敬って言う「高覧」などを用いて「詳細は弊社のパンフレットにございますので、ご高覧いただければ幸いです」などとすることもできます。

「目を通す」を自分の行為として伝える場合は「お送りいただきました会議資料を拝見しました」「ご教示いただきました参考書籍、拝読いたしました」などと謙譲語を用いて使用します。このほか、文書のあて先が同僚や部下であれば、丁寧語「ください」を使った敬語表現を用いて「先日のミーティングで気づいた点をまとめましたので、一度目を通しておいてください」「企画案には、なるべく部署全員が目を通すようにしてください」などと使用することもできます。

「目を通す」を上司に伝える際の敬語表現

ビジネスの現場では、上司に対して「書類に目を通してほしい」といった依頼や「資料に目を通した」といった報告などを行うことが日常茶飯事です。その際も、各シーンに応じた適切な敬語表現を用いることが必要になります。たとえば書類チェックなど上司に依頼事をする際は、「目を通してください」ではなく、「ご覧いただけますか」「ご高覧願えますか」などという表現にします。少しかたすぎると感じるのであれば、話し言葉にふさわしい表現を使い「お読みいただけますか」などとすることもできます。また自分が目を通したことを上司に報告する場合は「拝見いたしました」「拝読いたしました」などと使うこともできますが、「読ませていただきました」「確認いたしました」などとすれば、かたさのないスムーズな会話のやり取りを行うことができるでしょう。

「目を通す」の敬語での誤用表現・注意事項

「目を通す」の敬語表現を、取引先や上司との関係性の中で使う場合は十分な注意が必要です。というのも「目を通す」が「ひととおりざっと見る」というかりそめの意味を持つ言葉だからです。「ざっと見る」相手の行為に尊敬語を使い「目を通される」「お目通しになる」などと敬って表現することは可能です。しかし、目を通してほしいと依頼する場合は「目を通す」という言葉をそのまま使用することはできません。なぜかというと「目を通してください」と頼めば、「かりそめに、ひととおりざっと見ておいてください」と言っているのと同じになり、これは目上の人に対して仕事を適当に行ってくれと依頼するにも等しい、たいへん失礼な表現になるからです。

たとえ「目を通していただけませんか」「お目を通していただければ幸いです」などと尊敬語で飾っても、「目を通す」という言葉を使った時点で礼を失するという点は再確認しておかなくてはなりません。相手に見てもらうことを依頼する際は、「ご覧」「ご高覧」といった相手を敬う言葉を用いて、軽薄な印象をもたれないよう表現に注意することが必要です。

「目を通す」の敬語での言い換え表現

「目を通す」の敬語での言い換え表現としては、一度読むという意味の「一読」を用いた「ご一読になる」、初めから終わりまでひととおり読みとおすという意味の「通読」を用いた「通読なさる」、手紙文などで、相手が見ることを敬っていう言葉の「清覧」を用いた「ご清覧になる」などをあげることができます。

《目を通してください》の敬語

「目を通してください」の敬語表現

「目を通してください」を敬語で表現する場合、「ご覧ください」と言う形にするのが無難です。「目を通す」という言葉は、「ざっと見る」「簡単に確認する」といった、比較的軽い意味を持ちます。そのため、「目を通してください」では、軽い行為を相手に促す形になってしまい、敬語として不適切です。したがって、「目を通す」から「見る」という部分だけを抜き出し、それを敬語の「ご覧ください」という形にすると良いです。

また、「目を通してください」を使用するのは、資料やメールなどで、文章を読むことを促す場合が多いです。その際には、「ご一読ください」という敬語表現にもできます。「一読」は「ひと通り読む」という意味の言葉で、「目を通す」と大差はありません。しかし、相手から失礼だと捉えられることが少ないため、「目を通す」を丁寧な敬語表現にしたい時に用いられる場合が多いです。

「目を通してください」の敬語の最上級の表現

「目を通してください」を最上級の敬語で表現するのであれば、「ご高覧ください」という形になります。「高覧」は相手を敬う時のみに使用する言葉で、相手に見たり読んだりすることを促す際に使える、最上級の敬語表現です。丁寧に「ご高覧くださいませ」とすれば、目上の人相手でも問題なく使用することができます。ただ、あまり一般的ではない言葉なので、相手によっては意味が通じない恐れがあります。したがって、場面に応じて使用するかどうかを決定することが大切です。

もし、「ご高覧ください」が伝わりにくそうであれば、「ご覧ください」や「ご一読ください」に、より強い敬語表現を組み合わせると良いです。「ご覧いただきたく存じます」「ご一読いただければ幸いでございます」といった形にすれば、「ご高覧くださいませ」と同程度の尊敬の意図を伝えられるでしょう。

「目を通してください」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「目を通してください」の敬語表現をビジネスメールや手紙で使用する場合、「先日のイベントの報告書をご確認ください」「添付した資料をご一読ください」といった形になります。また、「見積もり書の内容をご確認いただければ幸いです」「招待状を郵送いたしましたので、ご高覧いただけますでしょうか」という風に、「ください」では締めくくらなかったり、疑問形にする場合も多いです。

「目を通してください」を上司に伝える際の敬語表現

「目を通してください」の敬語表現に当たる「ご覧ください」や「ご一読ください」は、主にビジネスのクライアントなど、関係が遠い相手に使用することが多いです。そのため、身近な上司相手に使用してしまうと、よそよそしい印象を与えかねません。したがって、砕け過ぎず、堅苦しくもならない、「ご確認ください」という表現にすると良いでしょう。添削が必要な報告書や、許可を求める書類など、上司に目を通してもらいたい場合は、「ご確認ください」でひと通り対応可能です。

また、よほど高い地位の上司が相手ではない限り、「ご高覧ください」を使用することはありません。「高覧」は「ご覧ください」や「ご一読ください」と同様に、関係が遠い相手に使用することがほとんどで、身近な上司だと堅苦しすぎる表現になりかねないからです。

「目を通してください」の敬語での誤用表現・注意事項

「目を通してください」を敬語表現にした「ご確認ください」や「ご一読ください」は、あくまでも敬語ですが、「ください」という形で締めくくっても問題はありません。しかし、「ください」には、相手に命令をするような意味合いが含まれ、失礼な印象を与えるおそれがあります。そのため、強い尊敬を示さなければならない相手に対しては、「ご確認くださいませ」「ご一読願いたく存じます」と言う風に、丁寧な言い回しにした方が良いです。また、「ご一読ください」は、見てもらいたいものが文章である場合にのみ使用できます。デザイン画や写真だけを見てもらう際には、ふさわしくないので注意しましょう。

「目を通してください」の敬語での言い換え表現

「目を通してください」には、じっくりと確認するのではなく、軽く読む程度という意味合いが含まれます。そのため、「ご笑覧ください」という敬語表現にもできます。「笑覧」は「高覧」よりも少し尊敬の度合いが低い言葉で、文字通り「笑いながら見る」という意味を持ちます。したがって、深刻な内容ではない書類や手紙に、気軽な気持ちで目を通して欲しい場合に使用するのがふさわしいです。

そして、状況次第では、「ご査収ください」という表現にもできます。「よく確認してください」という意味を持つ表現で、「目を通してください」よりも強めに、相手に確認を促します。そのため、書類などの内容に、間違いがないかどうかを確認する際によく用いられます。使用できる場面は限られますが、意味合いが大きく違ってさえいなければ、「目を通してください」の代わりになります。

また、「ご清覧ください」という表現も代表的で、「ご高覧ください」と同じく、強い尊敬の意味合いがあります。そして、「高覧」に対して「清覧」は、見てもらう対象の範囲が狭いです。そのため、相手に見てもらいたいものがひとつの場合は「清覧」、複数ある場合は「高覧」と使い分けるようにすると良いです。

《聞きました》の敬語

「聞きました」の敬語表現

「聞きました」の敬語表現には様々なものがあり、相手によって使い分ける必要があります。「聞きました」は、「聞いた」を丁寧語表現にした敬語です。自分が聞いた場合に使用し、同等の丁寧語表現である「聞いています」に言い換えることもできます。丁寧語表現は友人や同僚など同じ立場の人に対して使う丁寧な表現です。敬語の中でもカジュアルで、堅苦しくなりすぎない表現です。「新しい職場で活躍していると聞いています」、「もうお越しになったと聞きました」のように使います。

「聞きました」の尊敬語は、「お聞きになりました」や「聞かれました」、「お耳に入りました」です。目上の人に対し敬意を示す表現となり、「講演の内容をお聞きになりましたか?」や「入札の結果はもうお耳に入りましたか?」のように使います。そして、「聞いた」の謙譲語表現は、「伺いました」や「拝聴しました」です。目上の人から話や意見を聞く際に使う表現で、「部長からお話を伺いました」、「社長のスピーチを拝聴しました」のような言い回しとなります。

「聞きました」の敬語の最上級の表現

謙譲語表現は敬語の中でも最も相手を高める表現となるため、「聞きました」の謙譲語表現が最上級の敬語表現になります。「聞きました」の謙譲語表現には「伺いました」や「拝聴しました」がありますが、「拝聴しました」の方がより丁寧な表現です。最上級敬語表現である「拝聴しました」は、かなり堅苦しい表現になります。立場が上の人に対して使う表現となり、ビジネスシーンでは頻繁に使用されるものの日常会話ではほとんど使いません。

「聞きました」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメール・手紙では、口語表現よりも堅苦しい表現を使うのが通例です。「拝聴する」や「拝聞する」は口語表現としては社外の人やかなり高い立場の人にしか使いませんが、ビジネスメール・手紙では頻繁に使われています。また、「伺う」という表現もビジネスメール・手紙で使用されます。

拝聴するを使ったメール例文:お世話になっております。先日はご講演いただきありがとうございました。ご高話を拝聴し、社員一同士気が高まりました。
拝聞するを使ったメール例文:先程は貴重なお時間を頂戴し、誠にありがとうございました。忠告を拝聞したものの、結果を出すことができず申し訳ございませんでした。
伺うを使ったメール例文:〇〇様からお伺いした件ですが、調査が完了次第お返事いたします。今後ともよろしくお願いいたします。

「聞きました」を上司に伝える際の敬語表現

上司に「聞きました」を伝える敬語表現では、「伺いました」と「お聞きしました」が最も汎用性があります。自分が上司に聞く(上司が答える側)場合は、「新規プロジェクトの件お伺いしてもよろしいですか?」のように「伺う」を使います。上司が自分に聞く(自分が答える側)である場合には、「書類に関してご不明なことがあればお聞きください」のような「お聞きする」という表現になります。また、立場が上の上司には、「拝聴しました」や「拝聞しました」という敬語表現を使うことができます。

「聞きました」の敬語での誤用表現・注意事項

「聞きました」の敬語で誤用しやすいのは、丁寧な表現にすべき対象を間違えるというものです。誤用される表現の例としては「受付に伺ってください」があげられます。受付に「聞く」のは相手であるため、「伺う」という謙譲語ではなく、相手の動作に対して敬意を表す尊敬語表現を使わねばなりません。正しい表現は、「受付でお聞きください」となります。同様に、「もう聞きましたか?」という意味合いで「もう拝聴されましたか?」も敬語の誤用となります。「拝聴」は謙譲語であるため、へりくだった表現です。「もうお聞きになりましたか?」と、尊敬語表現を使うのが適切です。

「聞きました」の敬語表現での注意事項は、身内・社内の人から聞いたことを他者に伝える場合に敬語表現を使わないことです。「父から聞きました」と他人に話す場合、「父から伺いました」と言うのは間違いです。「父から聞いております」という表現が適切です。また、上司から聞いたことであっても、社外の人には「部長の〇〇からそのように伺っています」ではなく「部長の〇〇がそのように申しておりました」と表現するのが正解です。

また、「聞きました」の敬語表現の「拝聴しました」を、さらに丁寧な表現にしようとして「ご拝聴しました」とするのは間違いです。「拝聴」自体が謙譲語であるため、「ご」をつけて「ご拝聴」にすると二重敬語になってしまいます。そのほか、「拝聴いたしました」は二重敬語ではないかという説もありますが、こちらは正しい敬語です。

「聞きました」の敬語での言い換え表現

・お聞きになった
・お聞きになりました
・お聞きになられました
・お聞きしました
・お聞きしています
・聞かれました
・聞いています
・聞いていました
・お耳に入りました
・伺った
・伺いました
・伺っております
・拝聴した
・拝聴しました
・拝聴いたしました
・拝聴しております
・拝聞した
・拝聞しました
・拝聞いたしました
・拝聞しております

《聞いた》の敬語

「聞いた」の敬語表現

「聞いた」の尊敬語は「お聞きになった」、謙譲語は「伺った」「拝聴した」、丁寧語は「聞きました」です。「お聞きになった」は、「おききになった」と読みます。「聞く」の尊敬語「お聞きになる」の連用形「お聞きになり」が促音便化して、助動詞の「た」がついた形です。「た」は、過去や完了、存続や確認を表します。意味は「音や声を耳に感じ取られた」「耳を傾けられた」「尋ねられた」などです。

謙譲語の「伺った」は、「うかがった」と読みます。動詞「伺う」の連用形「伺い」が促音便化して、助動詞の「た」がついています。意味は「お聞きした」「問うた」などです。「拝聴した」は、名詞「拝聴」に動詞「する」の連用形「し」が続き、助動詞「た」がついています。意味は「つつしんで聞いた」です。

丁寧語の「聞きました」は、「ききました」と読みます。動詞「聞く」の連用形「聞き」に丁寧の助動詞「ます」の過去形「ました」がついています。意味は、「音や声を耳に感じ取った」です。

「聞いた」の敬語の最上級の表現

敬語の最上級の表現は、最高敬語です。最高敬語は、天皇や皇族、王や王族に対してのみ使うことができる尊敬語になります。 「お聞きになった」の最上級の表現は、二重敬語の「お聞きになられた」です。「お聞きになった」という尊敬語に、軽い尊敬の意を表す助動詞「られる」の過去形などを意味する「られた」が重なっています。二重敬語は、同じ種類の敬語が1つの言葉の中に2つある敬語です。

「聞いた」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「聞いた」の尊敬語である「お聞きになった」を使ったビジネスメールや手紙では、次のような使い方ができます。肯定文では「お客様がお聞きになったことには、できるだけ早く返信してください」、疑問文では「お客様から、なにをお聞きになったのでしょうか」、否定文では「課長は来週の定例会議のことについて、お聞きになっていないそうです」のようになります。

謙譲語である「拝聴した」を使うときは、次のように使います。肯定文では「社長の御高説を拝聴したことがあります」、疑問文は「社長の御高説を拝聴したことがありますか」、否定文では「社長の御高説は拝聴しなかったので、内容は存じません」となります。

丁寧語である「聞きました」を使った例文は、次の通りです。肯定文では「社長の話を聞きました」、疑問文では「社長の話を聞きましたか」、否定文では「社長の話は聞いていません」のように使います。丁寧語が配慮しているのは人ではなく、場や聞き手、読み手です。フォーマルな場で人やもの、場などに使うことができるとされていますが、取り引き先など改まった関係性の場合は尊敬語や謙譲語を使う方が無難です。

「聞いた」を上司に伝える際の敬語表現

「聞いた」を上司に伝える際も、基本的にはメールや手紙と同じような使い方になります。尊敬語「お聞きになった」を使う場合は、次の通りです。肯定文では「社長はお客様の意見を、直接お聞きになりました」、疑問文では「社長はお客様の意見を、直接お聞きになりましたか」、否定文では「社長はお客様の意見を、直接お聞きになっていません」となります。

謙譲語には「伺う」もあるので、ここでは「伺った」の例文を示します。肯定文では「社長の出身地を伺ったことがあります」、疑問文は「社長の出身地を伺ったことがありますか」、否定文は「社長の出身地を伺ったことはありません」となります。

丁寧語の「聞きました」を使う場合は、次のように言います。肯定文は「社長は、風邪で欠席だと聞きました」疑問文は「社長の欠席理由を聞きましたか」、否定文では「社長の欠席理由は聞いていません」となります。口頭の場合も、丁寧語は上司との関係性によって使い分けましょう。

「聞いた」の敬語での誤用表現・注意事項

「聞いた」の謙譲語には「拝聴した」「伺った」がありますが、意味が多少異なるので使い方には注意が必要です。「耳を傾ける」という意味で「聞く」を使う場合は、特に「聴く」という漢字を使います。「伺った」は単に「聞いた」場合にも使えますが、「拝聴した」は「耳を傾けた」場合にのみ使います。従って「社長は欠席すると拝聴したので、昼食を手配しませんでした」は、そぐわない表現です。

「聞いた」の敬語での言い換え表現

「聞いた」の言い換えには、「知った」があります。「知った」の場合には尊敬語の特別な動詞があるので、尊敬語は「ご存知だ」になります。謙譲語は「存じています」、丁寧語は「知っています」です。「知った」の謙譲語の普通体は「存じている」ですが、「存じている」は現在の日本では使えません。そのため、必ず丁寧体の「存じています」の形になります。

「聞いた」の言い換えとして「耳にした」を使うと、尊敬語は「お耳にされた」です。謙譲語は「伺った」、丁寧語は「耳にしました」となります。

「聴いた」という意味での言い換えには、「傾聴した」があります。尊敬語は「ご傾聴になった」です。謙譲語は「拝聴した」、丁寧語は「傾聴しました」となります。

「お尋ねになった」は、「聞いた」を「尋ねた」の意味で言い換えたときの尊敬語です。謙譲語は「お伺いした」、丁寧語は「お尋ねしました」になります。

《分かりました》の敬語

「分かりました」の敬語表現

「分かりました」は、理解していることを相手に伝えるための日常的な言い回しです。動詞の「分かる」に丁寧語の「ます」をつなげた言葉で、同じ立場の人には問題なく使えますが、目上の人に対して使う敬語としては不適切となります。そのため、ビジネスシーンなどで相手にしっかりと敬意を示すためには、「分かりました」を別の敬語表現に置き換えることが必要です。

目上の人に「分かりました」と言いたい時には、「承知しました」を使うのが一般的です。「承知」には、「理解できている」「相手からの要求を受け入れる」という意味があり、「分かりました」よりも丁寧でかしこまった印象を与えることができます。さらに、謙譲語を組み合わせて「承知いたしました」「承知しております」とすると、自分の行為をへりくだることで相手を立てることができ、敬意を強く表すことが可能です。

また、「承りました」という表現も、「分かりました」の代わりに目上の人に使うことができる適切な敬語です。「承る」は、「引き受ける」「伝え聞く」などの謙譲語で、「承りました」には、相手の命令や要望をしっかりと聞き取って受け止めているというニュアンスが含まれます。正しく対応できますという意思表示にもなり、相手に安心感を与えることができるフレーズです。

「分かりました」の敬語の最上級の表現

「分かりました」の敬語には、「かしこまりました」という特別な言い回しもあります。謙譲語の「かしこまる」に丁寧語の「ます」を付けて過去形にした言葉で、「かしこまる」自体に「目上の人の依頼や指示を慎んで承る」という意味があります。「承知しました」や「承りました」よりもさらに丁寧で、身分の高い人に対しても安心して使える敬語表現です。

また、「分かりました」には、「拝承しました」という堅い言い回しの敬語もあります。謙譲語である「拝承」は、「謹んで承ります」という意味合いを持つため、改まった場面や格式高い場にも相応しい最上級の表現と言えるでしょう。

「分かりました」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「明日の打ち合わせの件、承知しました。よろしくお願いいたします」
「ご指示いただきました日時と場所で、承知いたしました」
「ご依頼の件、たしかに承知しております。メールをいただきありがとうございました」
「お名前とご住所をたしかに承りました」
「ご注文を承りました。明日発送いたしますのでしばらくお待ちくださいませ」
「提案書の修正につきまして、たしかに承りました。大変申し訳ございません」
「かしこまりました。来週の金曜日までには納品いたします」
「日程変更の件かしこまりました。ご指定の日に必ずお届けいたしますのでご安心ください」
「お知らせいただいた件につきまして拝承しました。のちほどご連絡いたします」
「契約内容変更の件、たしかに拝承しました。早速手続きに入りますのでよろしくお願いいたします」

「分かりました」を上司に伝える際の敬語表現

上司に対して「分かりました」と言いたい時には、「承知しました」「承りました」といった表現を使うのが妥当です。上司を尊重する気持ちが伝わり、円滑で良好な関係を保つことにつながります。たとえ、日頃からフレンドリーに接してくれる上司であっても、ビジネスの場で「分かりました」を用いるのはやめておきましょう。

また、社内でも地位の高い上司であったり、年齢が離れている上司に対しては、「かしこまりました」を使っても不自然ではありません。一方で、普段から親しくやりとりをしている上司に対して「かしこまりました」を使うと、かえって堅苦しすぎる印象を与えたり、距離感を感じさせてしまう場合もあります。上司との関係性やシチュエーションを考慮して、表現を上手に使い分けるとよいでしょう。

「分かりました」の敬語での誤用表現・注意事項

「分かりました」の言い換え表現として、「了解しました」「了承しました」というフレーズをよく耳にします。しかし、「了解」と「了承」は、いずれも「上の立場から理解を示す」という意味合いの言葉であるため、「分かりました」と同様に、目上の人に対して不適切な言い回しであるとされています。受け取る側によって判断が分かれますが、「了解しました」「了承しました」と言われることを失礼だと感じる人も少なくありません。ビジネスシーンなどでは、別の敬語表現に置き換えて伝えるように注意しましょう。

また、「拝承しました」をさらに丁寧にするために「拝承いたしました」とするのは、謙譲語の「拝承」と謙譲語の「いたす」が組み合わさって二重敬語となり、文法的には誤りです。気にならないという人もいますが、敬語表現に見識がある人にとっては不快に感じることもあります。念のため、使わないようにしておくのが無難でしょう。

「分かりました」の敬語での言い換え表現

承知しました
承知しているのですが
承知しましたが
承知しましたので
たしかに承知しました
承知いたしました
承知いたしましたが
承知いたしましたので
たしかに承知いたしました
承知しております
承知しておりますが
承知しておりますので
すでに承知しております
重々承知しております
たしかに承知しております
承りました
承ります
承りましょう
承りましたので
承っています
承りますので
承りましょうか
たしかに承ります
たしかに承っています
たしかに承りました
たしかに承りましたので
かしこまりました
拝承しました
拝承しましたが
拝承しましたので
たしかに拝承しました

《分からない》の敬語

「分からない」の敬語表現

理解できないときに「分からない」と表現しますが、これを「分かりません」にすれば丁寧語となります。「分かりません」は「分かる」という動詞を連用形にし、助動詞「ます」を未然形「ませ」にして付け、最後に打ち消しの意味がある助動詞「ん」を付けたものです。一方「分からない」を尊敬語で表現すると、「ご存じありません」になります。「ご存じありません」の「ご存じ」は、「知っている」と言う意味の「存じ」に尊敬の意味を含む「ご」を付けたものです。

そこに動詞「ある」を連用形にして、助動詞「ます」の連用形「ませ」と否定の助動詞「ん」を付けています。また、目上の人に自分は分からないということを伝えたい時には、「分からない」の謙譲語である「存じません」を使いましょう。「存じません」の「存じる」は、分かるという意味の謙譲語です。「存じる」を連用形にし、助動詞「ます」を未然形「ませ」に変えて付けて、最後に否定の助動詞「ん」を付けたものが「存じません」になります。

「分からない」の敬語の最上級の表現

「分からない」の尊敬語「ご存じありません」は、これ以上に敬意を表す表現はありません。そのため、どのような立場の目上の人にも「ご存じありません」を使えば良いのです。一方「分からない」の謙譲語「存じません」は、「存じ上げません」とすれば最上級の謙譲表現となります。

「存じる」を連用形「存じ」にし、そこにへりくだった意味を表す「上げる」を付けることでより謙譲の意味が強くなっています。「存じ上げる」に助動詞「ます」と「ん」を付けて否定の形「存じ上げません」になります。他には「存じておりません」も、最上級の謙譲表現です。「存じておりません」は動詞「存じる」を連用形にして、接続助詞「て」を付け、さらに「いる」の謙譲語「おる」を付けています。そして最後に「ません」を付けて、否定の形にしているのです。

「分からない」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「分からない」をビジネスメールや手紙で使う場合、相手から何か質問されてその返答をする際に謙譲語にするというパターンが多いでしょう。例えば「弊社の企画部のAをご存じですか」と聞かれた際に、「存じません」と答えることができます。取引先の人とのメールのやり取りなど、特に敬意を表す必要がある場合には「存じません」よりも「存じ上げません」を使った方が良いでしょう。さらに「申し訳ございませんが存じ上げません」と表現すれば、より丁寧な印象になります。

「分からない」を上司に伝える際の敬語表現

上司に対して分かるか分からないか確認したい時には、尊敬語「ご存じありません」を使いましょう。例えば「明日の会議で使う資料の保管場所をご存じありませんか」といった使い方があります。一方上司に質問されたことが分からない場合には、謙譲語「存じ上げません」を使いましょう。例えば上司に商品の在庫があるかどうか聞かれ、分からないと答える時は「申し訳ございませんが存じ上げません」と表現します。また、上司に分からない事柄を教えてもらいたい場合にも「分からない」の謙譲語を使いましょう。例えば、「A社の企画について存じませんので教えていただけませんか」といった使い方があります。

「分からない」の敬語での誤用表現・注意事項

「分からない」の謙譲語「存じません」や「存じ上げません」は、分かったかどうか聞かれた場合の返答としては使うことができません。例えば「この企画の内容は分かりましたか」と上司に聞かれたとしましょう。この場合、分からないということを謙譲表現で答えたいからといって、「存じ上げません」と言うのは間違いです。「分からない」の丁寧語「分かりません」を使うのが適切になります。また、ある人や物を知っているかどうか聞かれた場合、「存じ上げません」を使うのは人物が分からない場合のみにした方が無難です。

商品などに「存じ上げません」を使うと違和感を感じる人もいるため、この場合は「存じません」や「存じておりません」を使いましょう。他にも「分からない」の丁寧な表現である「分かりかねる」を使う際にも注意が必要です。「分かりかねる」の「かねる」は、「〜できない」という不可能の意味を遠回しに表現している言葉になります。そのため分かるか分からないか聞かれた際に「分かりかねる」を使うと、何か事情があって分からないという意味に捉えられてしまうおそれがあるのです。誤解を招く場合もあるため、使用するのは避けた方が無難でしょう。

「分からない」の敬語での言い換え表現

聞かれたことに対して自分では分からず、答えることができない場合には「ご返答いたしかねます」と表現できます。「ご返答いたしかねます」は、返答に謙譲の意味を含む「ご」を付けて謙譲表現にしています。そして「する」の謙譲語「いたす」を連用形にし、不可能を意味する「かねる」を付けているのです。例えば取引先の人からメールで商品の詳しい仕様を聞かれた際に、「商品の詳細につきましては私からはご返答いたしかねます」と答えることができます。

さらに「申し訳ございませんが商品の詳細につきましては私からはご返答いたしかねます」とすれば、より丁寧な印象になるでしょう。詳しい問い合わせができる連絡先などを添えても、印象がよくなります。また、自分に知識がなくて分からないことを謙譲語で表現したい時には、「存じ上げません」を「あいにく知見がございません」と言い換えられます。

《拝見しました》の敬語

「拝見しました」の敬語表現

「拝見しました」は、「見た」という自分の行為をへりくだって丁寧に述べた表現です。「拝見する」という動詞に丁寧の助動詞「ます」と完了の「た」を続けて、「すでに見終わりました」という事実を伝えています。「拝見する」は文法上、「見る」の謙譲語として特殊形に分類されているもので、自分を低めて相手を立てる言葉として、これ自体ですでに敬語表現として成立しています。

「拝見しました」の敬語の最上級の表現

「拝見しました」は、謙譲語と丁寧語を組み合わせた言葉遣いで、これ自体で敬語表現となっていますが、さらにこれ以上敬意を含めるのであれば、「しました」を「いたしました」に言い換えて「拝見いたしました」と表します。「いたす」は自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁寧に述べる丁重語の一般形で、サ行変格活用の動詞だけに用いることができる言葉遣いです。このように「いたしました」とすることで、相手に対してより敬意を示す丁寧な表現にすることができます。

また、「拝見」という言葉を、さらにへりくだった意味を持つ他の言葉に置き換えることで敬意を高めることもできます。その場合は「拝覧」という熟語を使って「拝覧いたしました」とします。「拝見」にはそもそも、これ自体に「おがみ見る」というへりくだった気持ちが表れていますが、「拝覧」には「頭を下げて謹んで見る」という意味が込められており、「拝見」よりもさらにかしこまった言葉として、相手への敬意を高めることができます。

「拝見しました」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「拝見しました」は「見る」の謙譲語としてビジネスシーンでのあらゆる文章表現に用いることができます。たとえば「概要は添付資料にて拝見しました」「メールを拝見しました。早速のご対応ありがとうございます」「送ってもらった企画書を拝見しました。この方向で進めて問題ないと思います」などとすると、同僚や後輩、部下へ送る丁寧な言葉遣いになります。「久方ぶりにお姿を拝見いたしました。お元気そうでたいへんうれしく存じます」「ご注文書を拝見いたしましたが、恐れながらすでに生産終了の商品がございます」などとすれば取引先や目上の人へのかしこまった丁寧な表現として使うことができます。

「拝見しました」を上司に伝える際の敬語表現

「拝見しました」は文章表現だけでなく、対面の場での口語表現としても違和感なく使用できる言葉です。目上にあたる上司にも、そのままで使える言葉ですが、シチュエーションによって言い方を換えたほうが適切な場合もあります。たとえば、会議用の資料について事前に目を通しておくよう指示されていた場合には、「事前に見ておくよう仰せつかっておりました資料、拝見しました」というより「事前に目を通すようご指示いただいていた資料、確認いたしました」と言い換える方が自然な会話になるでしょう。さらに「拝読いたしました」などと使えば、ただ単に資料に目を通しただけでなく、内容も含めてしっかりと読み込んだという熱意も伝わります。

このほかビジネスシーンでは「拝見しました」を許可を得る形で使うケースもあるでしょう。「見ていいか」という内容を敬語で表す場合には、「拝見してもよろしいでしょうか」などとしますが、「拝見」を使わなければ、「見せていただいてよろしいでしょうか」「見させていただいてよろしいでしょうか」などと言葉を換えて表すこともできます。

「拝見しました」の敬語での誤用表現・注意事項

「拝見しました」の敬語では、二重敬語に注意することが必要です。二重敬語とは一つの語について、同じ種類の敬語を重ねて用いることで、慇懃無礼な表現として文法上は禁止されている敬語の使い方です。「拝見」はこの言葉自体が謙譲語として成り立っているものです。そのため、さらに謙譲表現を加えることは二重敬語のタブーを犯してしまうことになります。これらの誤用表現として「拝見させていただきました」というものがありますが、「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語ですので、「拝見」とともに、敬語を重ねてしまっていることになります。そもそも「させていただく」は相手の許可を取って行為をさせてもらう意味であり、許可を求める文脈で使用する以外は不適切な言葉遣いとなるものですから、文法だけでなく意味の上からも適切な表現とはいえないものなのです。

「拝見」を相手の行為として使う表現も誤用になります。たとえば「ご覧になる」とすべきところを「拝見なさる」などと誤って使い「お送りした書類は拝見していただけましたか」などと質問してしまうのはたいへんな失礼に当たります。「拝見」はあくまで自分を低めるのに用いる謙譲語であることをしっかりと確認しておかなくてはなりません。

「拝見しました」の敬語での言い換え表現

「拝見しました」の敬語での言いかえ表現としては、「受け取る」や「申し受ける」という意味を持つ「拝受しました」、神社・仏閣、あるいはその宝物などを謹んで見るという意味の「拝観しました」、目上の人に会うことをへりくだっていう意味の「拝眉しました」「拝謁しました」などがあります。

《念のため》の敬語

「念のため」の敬語表現

「念のため」という言葉自体には、敬語表現は存在しません。「念のため」は「念のため~~する」というように、後ろに続く動作に関係する言葉です。そのため「念のため」を敬語表現の中で使う場合は、その後に続く言葉を敬語で表すことになります。

(例)
・こちらの商品仕様について、念のためご確認をお願いいたします。
・明日の予定を念のため再度お伝えします。
・天気は曇りですが、念のため傘を持参してください。
・風が強くて砂埃が舞いますので、念のためこちらのゴーグルを装着なさってください。
・念のため本人確認書類を提出していただけますか。
・工場を見学なさる際は、念のため帽子とマスクとエプロンのご着用をお願いします。

「念のため」の敬語の最上級の表現

前述のとおり、「念のため」には敬語表現がないため、その後に続く言葉を最上級の敬語で表現します。

(例)
・本日は冷えますので、念のためコートをお召しになってください。(着る→お召しになる)
・お引っ越しの際は、念のため現地をお訪ねになることをお勧めいたします。(訪れる→お訪ねになる)
・こちらの仕事内容について、念のためお尋ねしたいことがあります。(訊く、尋ねる→お尋ねする)

「念のため」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

・先ほど電話でお伝えした件ですが、念のためメールでもご連絡いたします。
・市役所までお越しになる場合は、念のため印鑑を持参なさってください。
・念のためにお尋ねしますが、ご来場の際は公共交通機関をご利用になりますか。
・製品の品質には万全のチェックを施していますが、念のため〇〇様の方でもご確認をいただければ幸いです。
・展示会当日は道路の混雑が予想されるので、念のためお早めのご来館をお勧めいたします。
・念のためご確認したいのですが、ご同伴の方はいらっしゃいますか。

「念のため」を上司に伝える際の敬語表現

「念のため」を上司との関係で使う場合、それは報告書や成果物などをチェックしてもらう場面が多いでしょう。そして、そこには「本来は自分ひとりで完結させるべき仕事を、自分だけでは不安が残るのでチェックしてほしい」という文脈があります。上司の指導が必要な仕事内容であれば、いずれにせよ確認してもらわなければいけないので、わざわざ「念のため」を付ける必要もありません。そのため上司に「念のため」を使う場合は、上司に時間を取らせてしまっているという意識を持って、そこに対する配慮も伝えるようにしましょう。

(例)
・お忙しいところ恐縮ですが、こちらの報告書について、念のため確認していただけますか。
・記事内容に誤りがないか、念のためご一読をいただけると大変ありがたく存じます。

「念のため」の敬語での誤用表現・注意事項

「念のため」は、主にビジネスにおいて「誤用表現」と受け取られる場合があります。

「念のため」は、文脈によって2つの意味で使われます。ひとつは「万が一に備えて」「万一のために」などの「念を押す」という意味。こちらが「念のため」の本来の意味です。もうひとつは「一応」や「多分」といった、曖昧さを表現する意味です。後者の意味で使う場合は、「念のため」を「一応」に置き換えても同じ意味となります。例えば「念のためお伝えします」を「一応お伝えします」と言い換えても、言葉の意味においては問題ありません。

しかしここで注意しなければいけないことがあります。一般的に、ビジネスシーンで「一応~~します」といった表現を使うことは不適切とされています。「多分」も同様です。ビジネスでは明瞭かつ簡潔なやり取りをすることが求められるので、こうした曖昧な表現は好ましくないからです。ただし、そうは言っても「まだ確定していないけれど伝えておきたい」というニュアンスで報告する場面もあるでしょう。その場合は「一応」ではなく「念のため」で表現しましょう。

また「念のため」には「為念(ねんのため、ためねん)」という言い換え表現があります。意味は全く同じなのですが、「一応」と同じく使わない方がいいでしょう。あまり一般的ではない言葉であり、この表現を知らない人からすれば、奇妙な略語を使われていると感じて失礼な印象となる可能性があるからです。

「万が一のため」と「一応」の、どちらの意味で使うにせよ、それらが指し示すことは、「この後に続く言葉(行動)に注目してください」ということです。その文章で伝えたいこと(文意)は、あくまで「念のため」の後ろに続く言葉なので、その言葉についての敬語表現を押さえるようにしましょう。

「念のため」の敬語での言い換え表現

「念のため」という言葉には敬語表現が無いため、言い換え表現も、その後に続く言葉で行います。また、「念のため」を「万が一のため」に言い換えることもできます。

(例)
・念のため休んでください。(「休む」の敬語表現を言い換える)

・念のためお休みになってください。
・念のためお休みなさってください。
・万が一のことがあってはいけませんので、お休みになってください。

・念のため確認します。(「確認する」の敬語表現を言い換える」)

・念のためご確認いたします。
・万が一の場合に備えて、こちらでも確認いたします。

・念のため待機してください。(「待機する」の敬語表現を言い換える)

・念のため待機していただきたく存じます。
・万が一の際にはお力が必要となりますので、こちらで待機なさってください。

《渡す》の敬語

「渡す」の敬語表現

自分から相手に物や権利を与える際に使う「渡す」という言葉は、「渡します」にすれば丁寧語となります。これは動詞である「渡す」を連用形「渡し」に変え、丁寧の助動詞「ます」を付けた形です。同僚や部下などに使う場合は丁寧語「渡します」で問題ありません。しかし、上司など目上の人に自分から何かを与える際には、謙譲語を使う必要があります。「渡す」を謙譲語にするためには、まずは連用形「渡し」に変え、謙譲の意味を含む接頭語「お」を付けましょう。

そしてさらに謙譲の意味を含む助動詞「する」を付けて「お渡しする」という形にすれば、「渡す」の謙譲語となるのです。「お渡しする」は基本的に「する」を連用形にし、丁寧の助動詞「ます」を付けて「お渡しします」という形で使います。一方目上の人が誰かに何かを与えることを表現する場合は、「渡す」を尊敬語にしなければなりません。「渡す」の尊敬語は「渡される」で、こちらは「渡す」を未然形「渡さ」に変え、尊敬の意味を含む助動詞「れる」を付けた形となります。

「渡す」の敬語の最上級の表現

「渡す」の謙譲語「お渡しする」よりも、さらに謙譲の意味が強くなる表現もあります。それは「お渡しいたす」です。「お渡しいたす」は「お渡しする」の「する」を、謙譲語の一種である丁重語「いたす」に変えた形となります。丁重語は改まった場で使うものなので、「お渡しいたす」は「渡す」の謙譲語としての最上級の表現と言えるのです。「お渡しいたす」は基本的に「いたす」を連用形「いたし」にし、丁寧の助動詞「ます」を付けた「お渡しいたします」という形で使います。

他にも「お渡し申し上げる」も、「渡す」の最上級の謙譲表現です。「お渡し申し上げる」の「申し上げる」は、「する」という意味の補助動詞になります。また、「渡す」の尊敬語「渡される」よりも「お渡しになる」と表現した方が尊敬の意味が強いです。「お渡しになる」は、尊敬の意味を含む「お」と「なる」を付けているため、「渡す」の最上級の尊敬表現となります。

「渡す」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「渡す」をビジネスメールや手紙で使う際は、同僚や部下宛てならば丁寧語「渡します」にしましょう。例えば「明日の会議の資料は午後に渡します」という使い方ができます。取引先など特に敬意を表す必要がある人に、自分が何かを渡すことをビジネスメールで伝えたい場合は最上級の謙譲語「お渡しいたす」を使いましょう。例えば「商品の詳細についての資料は来週までにお渡しいたします」といった使い方があります。

「お渡し申し上げる」を使い、「明日の会議後に新商品のサンプルをお渡し申し上げます」と表現しても良いでしょう。一方取引先の方が何かを渡すことをビジネスメールで表現したい時は、尊敬語を使う必要があります。この場合、最上級の尊敬表現「お渡しになる」を使うのが最適です。例えば「昨日のイベントの来場者にお渡しになった資料の在庫はまだございますか」という使い方ができます。

「渡す」を上司に伝える際の敬語表現

上司に自分が何かを渡す時には、謙譲語「お渡しする」を使いましょう。例えば「必要な書類は私が準備して部長にお渡しします」といったように使います。また、社長など特に敬意を表す必要がある上司の場合、最上級の謙譲表現「お渡しいたす」を使った方が無難です。例えば「新商品についての資料は社長に昨日お渡しいたしました」という使い方があります。一方上司が誰かに何かを渡すことを表現したい時には、「渡す」の尊敬語「渡される」を使いましょう。

「部長が昨日Aさんに渡された書類は私が預かっています」「必要な資料はすでに社員全員に渡されましたか」というように使います。尊敬語の場合もやはり、特に敬意を表す必要のある上司の場合は、最上級の尊敬表現「お渡しになる」を使った方が良いです。上記例文は、「部長が昨日Aさんにお渡しになった書類は私が預かっています」「必要な資料はすでに社員全員にお渡しになりましたか」と言い換えられます。

「渡す」の敬語での誤用表現・注意事項

「渡す」の尊敬語「渡される」は、受身や可能の意味を表す場合もあります。そのため尊敬語として「渡される」を使っても、相手に上手く伝わらず誤解を招いてしまうおそれもあるのです。トラブルを避けたい場合、「お渡しになる」の方を使いましょう。また、「渡す」の謙譲語として「お渡しさせていただく」と表現するのは間違いです。「お渡しする」という謙譲語に、さらに謙譲の意味を含む「いただく」を付けると二重敬語になってしまいます。

「渡す」の敬語での言い換え表現

「渡す」は「提出する」に言い換えられます。謙譲語は「提出いたす」、尊敬語は「ご提出くださる」です。例えば「新しい案件についての書類は明日提出いたします」「昨日部長がご提出くださった資料を確認いたしました」などといった使い方があります。他にも「送る」も「渡す」の言い換え表現です。謙譲語は「お送りする」、尊敬語は「お送りになる」と表現します。

また、「届ける」を「渡す」の言い換えとして使う場合もあるでしょう。「届ける」の謙譲語は「お届けする」、尊敬語は「お届けなさる」です。特に取引先に郵送で資料などを渡す場合には、「資料は郵送にてお届けします」というように使った方が分かりやすいでしょう。この際、「お届けします」を「お届けいたします」に変えると、より謙譲の意味が強くなります。

《伝える》の敬語

「伝える」の敬語表現

言葉を使い相手に知らせるという意味のある「伝える」の丁寧語は、語尾に助動詞「ます」を付けて「伝えます」と表します。丁寧語である「伝えます」は、相手と自分との関係性などを考慮することなくあらゆる場面で使用可能です。一方「伝える」の尊敬語は、動詞を受身形に変えて「伝えられる」と表現します。こうすることで、目上の人の「伝える」という行為に敬意を表せます。

そのため尊敬語「伝えられる」は、自分が伝える立場の場合には使用できません。また、「伝える」は「言う」の謙譲語にあたる「申す」を付けて「申し伝える」と表現すれば謙譲語になります。他にも謙譲の意味がある「お」を付けて「お伝えする」と表す場合も、「伝える」の謙譲語です。

「伝える」の敬語の最上級の表現

「伝える」の尊敬語は「伝えられる」ですが、実はこれよりもさらに相手への敬意を表せる尊敬語もあります。「伝える」に尊敬の意味を含む「お」を付けて「お伝え」という名詞の形にし、さらに助詞「に」と動詞の「なる」を接続して、「お伝えになる」と表します。これが、「伝える」の最上級の尊敬語です。

「伝える」の謙譲語「お伝えする」にも、より敬意を表すことのできる謙譲語があります。「お伝えする」の「する」を謙譲語「いたす」に変換し「お伝えいたす」と表現すると、「伝える」の最上級の謙譲語となるのです。基本的に丁寧語を使って「お伝えいたします」と表現します。さらに「言う」の謙譲語「申し上げる」を使い「お伝え申し上げる」とした場合も、「伝える」の最上級の謙譲表現です。

「伝える」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「伝える」をビジネスメールや手紙で使う場合、謙譲語にする場面が多いでしょう。特にメールの相手から自分の社内の人に、何か伝言を頼まれた際の返事としてよく使われます。例えば取引先とのメールで、「こちらの件につきましては弊社の営業担当Aに申し伝えます」と表現することがあるでしょう。この例文では、取引先に敬意を表すために謙譲語「申し伝える」を使用しています。他にも取引先とのメールで、「打ち合わせの件については責任者に申し伝えます」という使い方をする場合もあります。この場合、責任者が自分の上司であっても敬意を表すのは取引先であるため、「申し伝える」を使います。取引先とのメールでは、例え上司であっても社内の人間に対しては敬語表現を使う必要はありません。

「伝える」を上司に伝える際の敬語表現

「伝える」を上司との会話で使用する場合、謙譲語と尊敬語の両方を使う場面があるでしょう。例えば上司に対して、自分が取引先に伝えておくという旨を敬語表現を用いて言いたいとします。この場合「打ち合わせの件は私が取引先にお伝えします」といったように、「伝える」の謙譲語「お伝えする」を使いましょう。この表現では敬意を表す先は上司ではなく、取引先になるのです。

「納期変更については私が取引先にお伝えいたします」というように、「伝える」の最上級の謙譲表現「お伝えいたす」を使えばより丁寧な印象になります。また、上司が何かを伝えるということを表現したい場面もあるでしょう。そのような場合は、「出張の件はAさんにお伝えになりましたか」といったように、「伝える」の尊敬語「お伝えになる」を使います。「取引先にお伝えになりましたか」のように伝える先が取引先であっても、この場合敬意を表すのは上司に対してなので尊敬語を使います。

「伝える」の敬語での誤用表現・注意事項

「伝える」の尊敬語は「伝えられる」ですが、この表現を使う際には注意が必要となります。それは「〜られる」を付けると、受身や可能といった意味になる場合もあるからです。例えば「母親にこうするように伝えられた」と表すと受身の表現になります。「ずっと思っていたことを伝えられた」と言えば、可能の意味を含む表現になるのです。そのため「伝える」を尊敬語にしたい場合は、「お伝えになる」を使用した方が無難でしょう。

また、同じ謙譲語でも「申し伝える」と「お伝えする」は使う場面が違うので、その点にも注意が必要です。「申し伝える」はメール相手や話相手などの聞き手に敬意を表す謙譲語で、伝える先に敬意を表しているわけではありません。一方「お伝えする」は行為がおよぶ先、つまり伝える相手に対して敬意を表す謙譲語です。例えば取引先とのメールでは、「上司にお伝えします」といったような使い方はできないので注意しましょう。この場合メールの相手である取引先に敬意を示す必要があるため、「上司に申し伝えます」と表現するのが適切です。

「伝える」の敬語での言い換え表現

「伝える」の丁寧語「伝えます」は、「知らせます」と言い換えることができます。尊敬語「お伝えになる」は、「知らせる」に尊敬の意味を含む「お」を付け、さらに助詞の「に」と動詞「なる」を接続して「お知らせになる」と言い換え可能です。謙譲語「お伝えする」は、「知らせる」に謙譲の意味を含む「お」を付けて、「お知らせする」と言い換えられます。また、「伝える」の類義語に「連絡する」もあるため、尊敬語「お伝えになる」を「連絡なさる」と言い換えたり、謙譲語「お伝えいたす」を「ご連絡いたす」と言い換えたりすることもできます。

《知らない》の敬語

「知らない」の敬語表現

「知らない」の敬語は、丁寧語である「知りません」です。また、謙譲語の「存じません」も広く使われています。

「知らない」の敬語の最上級の表現

「知らない」の敬語の最上級は「存じ上げません」です。これは「存じません」をより丁寧に言い換えた形です。相手の社会的地位が高かったり、強い敬意を込めるべき相手だったりする場合には、「存じ上げません」を使うようにしましょう。

「知らない」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

顧客や取引先とのやり取りでは特に、「存じません」や「存じ上げません」を使うのが礼儀です。以下、「存じません」や「存じ上げません」を使った例文を挙げます。

「先方から言われた商品を私は存じませんでした。次の商談までにリサーチしておくつもりです。以上、よろしくお願いいたします」 「たいへん申し訳ないのですが、私は当時の担当者を存じ上げません。ご希望であれば別の人間をご紹介いたしますが、いかがでしょうか」

同僚への手紙、簡潔なメールでは「知りません」を使うことも可能です。「存じません」では堅苦しい印象になりそうなときは、「知りません」と書いても間違いにはなりません。ただ、目上の人に「知りません」と書くのは失礼になりかねないので、相手を選びましょう。以下、「知りません」を使った例文です。

「私は進捗をまったく知りませんでした。教えていただき感謝しています」 「取り急ぎ返信ですが、私はトラブルの経緯を知りません。至急、電話で報告してください」

ビジネスメールや手紙では、クッション言葉を使うこともひとつの方法です。文章や会話が断定的にならないようにすれば、受け手が感じる印象もやわらぐでしょう。顧客や上司とのやりとりでは特に、表現をやわらげることが大切だといえます。以下、クッション言葉を使った、「知らない」の敬語表現の例です。

「たいへん申し訳ないのですが、私はその場所を存じません」 「失礼ながら、私は課長を存じ上げませんでした。すみません。この機会に、二度と失礼がないよう努めます」

そのほか、ビジネスシーンでは何かを「知らない」原因が、自分自身にあるという伝え方をするのがマナーです。少しでも、「知らなくて当然」「言われなかったから知らなかった」などのニュアンスが含まれてしまうと、失礼にあたります。自分の非を強調するために使われるクッション言葉としては、「不勉強ながら」「お恥ずかしい話ですが」などが挙げられます。以下、例文です。

「不勉強ながら、送っていただいた内容を存じませんでした。お手数ですがもう一度、ご説明いただけますか」 「お恥ずかしい話ですが、お客様の詳しい業務内容を存じませんでした。この機会に、教えていただければ幸いです」

「知らない」を上司に伝える際の敬語表現

上司に何かを「知らない」と伝える際には、「知りません」とはいいません。必ず「存じません」か「存じ上げません」を使うようにしましょう。「知りません」はややカジュアルな言い回しであり、強い敬意が含まれていないといえます。目上の相手に用いると、不愉快にさせるリスクがあります。

「知らない」の敬語での誤用表現・注意事項

物や出来事を知らないときには「存じません」を使っても大きな問題にはなりません。ただし、人を知らないと伝える際には、できるだけ失礼にならないよう「存じ上げません」を用いるのがマナーです。また、「存じません」や「存じ上げません」は謙譲語なので、主語は自分か身内の人間です。つまり、身内以外や目上の人間を主語にするのは間違いです。「お客さまは暗証番号を存じ上げません」といった文章は、敬語の誤用になるので注意しましょう。主語が目上の人間であるときの敬語には、尊敬語の「ご存じない」を使います。たとえば、「お客様は暗証番号をご存じないでしょうか」とするのが正解です。

さらに、「知らない」の敬語表現では前後の語句も意識しましょう。なぜなら敬語に直したとしても、何かを「知らない」と断言するのはかなり強い否定になってしまうからです。ビジネスシーンにおいては、「知らない」と言い切ってしまうことで商談が途切れてしまう可能性もあります。そうならないよう、「知らないけれども、こうした対応ならできる」という点を示しましょう。使用例としては、「私はその生産管理システムを存じません。ただ、弊社と長く取引をしている企業のシステムならご提案できます」といった形になります。

「知らない」の敬語での言い換え表現

「知らない」の敬語表現の代表的な類語には、「分かりかねます」「面識がございません」などが挙げられます。「知識がない」「互いに顔を見知っているのではない」という意味であり、「知らない」の敬語の言い換えに使うことも可能です。ただし、それぞれニュアンスが異なるので注意しましょう。まず、「分かりかねます」には「知っていれば教えられるのだが、あいにく知識を持っていない」との意味が含まれています。「知りません」や「存じません」よりも、相手にやや寄り添っている表現だといえるでしょう。「知らなくて申し訳ない」という気持ちを込めたい際に便利です。

一方、「面識がございません」は「存じ上げません」とほとんど似た意味です。強いて違いを挙げるなら、「面識がございません」には「認識はしている」というニュアンスがあります。つまり、「その方と面識はございません」というときは、「会ったことがないだけで、誰なのかは分かっている」状態です。それに対し、「存じ上げません」は「誰なのかも知らない」との意味です。

《断る》の敬語

「断る」の敬語表現

「断る」の敬語表現は「お断りします」です。これは美化語の「お」をつけたうえで、丁寧語の「します」を加えた形です。なお、謙譲語の「いたす」を加える、「お断りいたします」という表現も広く使われてきました。

「断る」の敬語の最上級の表現

「断る」の敬語の最上級には「お断り申し上げます」「お断りさせていただきます」などがあります。ただし、これらの言い回しでは「相手の申し出を拒否する」というニュアンスが強く含まれているので、敬意を欠いてしまうこともありえます。そのような際には、「~いたしかねます」や「遠慮させていただきます」といった言葉が使われてきました。これらの表現では、拒否の意図が遠回しになっています。すなわち、相手を不愉快にさせないための工夫がこらされており、敬意が強まっているといえるのです。

なお、「遠慮させていただきます」を「ご遠慮させていただきます」にするべきかどうかという点については、諸説があります。結論からいえば、いずれも間違いではありません。「ご遠慮」の「ご」は自分の行為を美化しているわけではなく、相手に向けた行為を美化しているからです。ただ、「ご遠慮」という表現にどうしても違和感があるなら、「遠慮」でも大きな問題にはならないでしょう。

「断る」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「お断りします」や「お断りいたします」は、ビジネスシーンで好ましい表現とはいえません。直接的に、「受け入れられない」という気持ちを示しすぎているからです。ただ、ときにははっきりと意思を表明しなければならないケースもあります。身内へのメール、手紙の場合は、「お断りします」や「お断りいたします」を用いてもマナー違反にはならないでしょう。以下、例文です。

「せっかくのお誘いですが、お断りします。その日は打ち合わせと重なっています」 「ご提案について、お断りいたします。もう少しだけ、今の方法で進めてみるつもりです」

身内以外とのメール、手紙では「お断り申し上げます」や「遠慮させていただきます」などの表現を使いましょう。はっきりと否定の気持ちを伝えることで、失礼になる可能性が高いからです。丁寧な言い回しで、少しでも否定的なニュアンスをやわらげるのが礼儀です。以下、例文を挙げていきます。

「ご来場の件ですが、たいへん恐縮ながらお断り申し上げます。その日は会員様だけの催しとなっております」 「パーティーの出席ですが、遠慮させていただきます。その日は出張で都内にはおりません。またの機会にご一緒できたらと願っています」

「断る」を上司に伝える際の敬語表現

上司をはじめとする、目上の人間には「断る」という言葉を使うのが好ましくないといえます。代わりに「~いたしかねます」や「遠慮させていただきます」といった表現を使いましょう。上司の願望を断る際は「~いたしかねます」とするのが一般的です。それに対して、上司の誘いを断る際には「遠慮させていただきます」を用います。

「断る」の敬語での誤用表現・注意事項

「断る」は拒絶の意味を持つ言葉であり、敬語にしてもニュアンスは変わりません。そのため、「お断り申し上げます」「遠慮させていただきます」と丁寧な言い回しを使っていても、相手を不愉快にさせる恐れがあります。そうならないよう、使用する際にはクッション言葉を使いましょう。「断る」の敬語と一緒に使われることの多いクッション言葉は、「不本意ながら」「まことに遺憾ながら」「せっかく~していただいたにもかかわらず」などです。「不本意ながら、お誘いを遠慮させていただきます」といった書き方にすれば、「本当は受け入れたいが、事情があって仕方ない」との意思を込められます。

次に、理由と謝罪も一緒に並べるのが理想です。単に「お断りします」と告げるだけでは、主観的な判断で拒絶している雰囲気になりかねません。こうした失敗を避けるには、理由も添えておくことが大事です。ただし、詳細な理由を述べるとかえって失礼になります。理由は簡潔に短くまとめましょう。そのうえで、断ってしまったことに対する謝罪を付け加えるのがマナーです。可能なら、次回以降の提案も付け加え、相手の心情をフォローしましょう。例文を挙げるとすれば、

「せっかくのお申し出ではございますが、弊社ではすでに人数は確保できております。たいへん恐縮ながら、遠慮させていただきます。申し訳ございません。ただ今後、このような場面があれば御社にご相談させてくださいませ」

といった形です。

「断る」の敬語での言い換え表現

「断る」の敬語に似た言葉としては、「拒否します」「拒絶します」などが挙げられます。いずれも意味は「断る」の敬語と変わらないものの、やや強い否定のニュアンスを含みます。目上の相手に対して使うのは、控えるべき言い回しだといえるでしょう。なお、目上の人からの申し出を断るときの敬語としては、「ご辞退申し上げます」や「拝辞させていただきます」が定型化しています。これらの言葉は「恐縮ながら」「申し訳ございませんが」などのクッション言葉と一緒に使われるのが一般的です。さらに、「断る」の敬語の言い換え表現として、目上の相手にも用いることができます。

《大丈夫》の敬語

「大丈夫」の敬語表現

「大丈夫」の敬語表現としては、丁寧語を付け加えた「大丈夫です」が広く使われています。ただし、「大丈夫です」はややカジュアルな言葉なので、公の場での使用には向きません。より丁寧な敬語に直すなら、「問題ありません」「ご心配には及びません」などの形にしましょう。なお、提案を否定する意味での「大丈夫」の敬語は「結構です」「必要ありません」です。

「大丈夫」の敬語の最上級の表現

「大丈夫」の敬語の最上級は「問題ございません」「結構でございます」「必要ございません」などです。「(~で)ございます」は「(~で)ある」の丁寧語であり、「です」よりも敬意が込められた言葉です。「(~で)ございます」を使うことで、「問題ありません」よりも強い敬意を示せます。

「大丈夫」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「大丈夫」の敬語はシチュエーションによって変わってきます。どのような相手に、何を伝えるのか意識しながら使い分けましょう。まずは、「滞りなく進んでいる」という意味での「大丈夫」のメールや手紙における例文です。

「ご提案いただいた資料を拝見いたしました。こちらからは特に問題ありません。引き続きよろしくお願いいたします」 「お客様の反応は問題ありませんでした。以下、商談の記録を添付しております」 「最後になりますが、課長からご指摘いただいた件について、ご心配には及びませんでした。新しい担当者様もこれまでの経緯はご存じでした」

次に、提案や誘いなどを断る際に使う「大丈夫」の敬語の例文です。

「最後になりますが、当日はご足労いただかなくて結構です。弊社からお迎えに上がりますので、よろしくお願いいたします」 「プロジェクターのご用意は必要ありません。会場にて準備しておきますので、弊社にお任せいただければ幸いです」

「大丈夫」を上司に伝える際の敬語表現

「大丈夫」を上司に伝える際には、「問題ありません」「ご心配には及びません」でも通用します。これらの語句はビジネスシーンの定型句であり、気軽に使えるからです。ただし、重役や社長など、かなり地位の高い相手とやりとりするなら最大級の敬語を用いましょう。「問題ございません」や「必要ございません」としておくのが無難です。

「大丈夫」の敬語での誤用表現・注意事項

「問題ありません」や「問題ございません」でよくある誤用が、疑問形の際に二重敬語となってしまうことです。たとえば、「問題ありませんでしょうか」「問題ございませんでしょうか」といった形は間違いです。丁寧語である「ありません」や「ございません」の後に、同じ丁寧語の「でしょうか」が続いているので、文法的に不自然だといえます。この場合は、「問題ありませんか」「問題ございませんか」と書きましょう。

次に、相手から何らかの伝達をされたとき、「理解した」という意味で「問題ありません」と返すのも考えるべきです。この場合の「問題ありません」は決して間違いとはいえません。ただ、「理解した」という意味の敬語では「かしこまりました」や「承知いたしました」などのほうが浸透しています。大きな理由がなければ、「問題ありません」よりこれらの語句で返す方が無難です。

なお、親しい相手とのやりとりに限り、「大丈夫です」という敬語表現も使用可能です。そのかわり、「大丈夫でございます」という言い回しはしないようにしましょう。文法的には、「大丈夫でございます」も間違っているわけではありません。しかし、「大丈夫」にはくだけたニュアンスがあり、その後に丁寧な敬語である「ございます」が続くのは不自然です。「大丈夫です」が相応しくないような相手、場面では「問題ありません」や「問題ございません」と伝えましょう。

そのほか、「まったく問題ありません」「何も問題ございません」といった言い回しにも要注意です。これらの語句には「完璧にうまくいっている」との意味があります。目上の相手を安心させる意図で、これらの表現を使う人もいるでしょう。ただし、自信過剰な印象を相手に与えるのが好ましくない場合もあります。「まったく」や「何も」を付け足すなら、それらに見合った望ましい状況が起きているときだけにしておきましょう。

「大丈夫」の敬語での言い換え表現

「大丈夫」の敬語の類語には、「差し支えありません」「支障ありません」などがあります。これらは「問題ありません」とほとんど同じ意味です。「問題」という単語はビジネスシーンで多用されるので、文章が読みにくくなると感じたなら「差し支え」や「支障」に置き換えてみましょう。もしも「物事が上手くいっている」という意味を強調したいのであれば、「申し分ありません」「非の打ちどころがありません」といった表現も可能です。ただし、これらの語句は身内のことで使うと自画自賛の印象を与えかねません。相手の意見や提案などについて、賞賛する文脈で使うのが理想的です。

そのほか、「かまいません」「気になりません」「平気です」といった言い回しも、「大丈夫」の敬語と似た意味だといえます。そのかわり、これらのフレーズではカジュアルなニュアンスが強くなります。そのため、ビジネスシーンでの使用は避けましょう。

《送る》の敬語

「送る」の敬語表現

「送る」の敬語表現のうち、尊敬語は「お送りになる」「送られる」です。自分よりも立場が上の人や目上の人に対して使用し、自分に対しては使用しません。「送る」の謙譲語は、「送らせていただく」「お送りいたします」「お送りする」です。これらの言葉は自分の立場を下げることによって、相手を高める言葉ですので、正しく使用するとより謙虚に見え、相手方に好印象を与えることが出来ます。「送る」の丁寧語は「送ります」となります。どのような立場の人にでも使用できますので、謙譲語を使う場面なのか、尊敬語を使う場面なのか分からない場合は、この言葉を使うとよいでしょう。ただし、丁寧語である「送ります」は尊敬語に比べて、相手に対する敬意は薄まります。従って、どのような場面で尊敬語や謙譲語を使うべきかは、早めに修得しておきましょう。

「送る」の敬語の最上級の表現

「送る」の敬語の最上級表現として「お送りいただく」と「お送りくださる」があります。「お送りいただく」は「送ってもらう」という意味があり、敬語表現としては謙譲語にあたります。通常の謙譲語を使用する時よりも、相手の「送る」という行為に感謝の気持ちをより強く表した表現となります。一方「お送りくださる」には「送ってくれる」という意味があり、敬語表現としては尊敬語にあたります。この「お送りくださる」も通常の尊敬語を使用する時よりも、感謝の気持ちをより強く表した表現となります。

「送る」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「送る」の尊敬語をビジネスメール・手紙で使用する際の例文は次のようになります。「この度は、たいそう高価な品物をお送りくださって誠にありがとうございます。」「お送りになる前に添付書類が同封されているか、チェックシートでご確認ください。」「先日は、駅までお送りくださり、誠にありがとうございました。」「お忙しいところ、大変恐縮ではございますが、下記書類を〇月〇日までにお送りくださるようお願い申し上げます。」「昨日お送りくださった書類ですが、有効期限が切れておりますので、再度有効期限内のものをお送りください。」

一方「送る」の謙譲語をビジネスメール・手紙で使用する際の例文は次のようになります。「先日、お送りいただいた書類に記入漏れがございましたので、ご連絡差し上げました。」「お送りいただいた商品ですが、調査したところ、ご指摘のとおりの欠陥がございましたので、本日返金の手続きをさせていただきます。」「本日、資料を送らせていただきました。3日以内に資料がお手元に届かない場合は、ご一報ください。」「本日、お送りする書類は以下の通りです。」「セミナー終了後、ご希望の方は最寄りの駅までお送りしますので、受付時に係の者にお伝えください。」「お送りした書類は、一度紛失されますと再発行できませんので、大切に保管してください。」「返品をご希望の場合は、商品を当社にお送りいただくようお願いします。なお送料はお客様負担となります。」「突然メールをお送りする無礼をお許しください。」「日ごろからお世話になっている感謝の気持ちとして、粗品をお送りしました。」「先日、ご注文の品とは違う商品をお送りしましたことを、お詫び申し上げます。」

「送る」を上司に伝える際の敬語表現

「送る」を上司に伝える際の敬語表現は、状況に応じて尊敬語・謙譲語・丁寧語を使用する必要があります。上司よりも立場が上の人が「送る」という行為をしたことを上司に伝える場合は、尊敬語である「お送りになる」「送られる」を使用することになります。一方自分自身が「送る」という行為をしたことを上司に伝える場合は、謙譲語である「送らせていただく」「お送りする」「お送りいたします」や、丁寧語の「送ります」を使用することになります。

「送る」の敬語での誤用表現・注意事項

「送る」の敬語表現として「お送りいたします。」という言葉があります。この言葉自体は謙譲語+丁重語+丁寧語となっており、正しい使用方法ですが、「お送り致します。」と漢字表記することは誤りです。「いたす」という言葉には、補助動詞として使用する場合は平仮名、動詞として使用する時は漢字表記とするというルールがあります。「お送りいたします。」の「いたす」は補助動詞として使用されているため、平仮名で表記することになります。

また「送らせていただきます」とするところ「送らさせていただきます」と表現することも誤用です。「送らさせていただきます」は典型的な「さ入れ言葉」です。「さ入れ言葉」は「送る」のような五段活用(動詞を未然形にして「ない」を加えると、「ない」の直前の母音がア段の音となる活用形)の動詞と「する」の間に「さ」を入れることをいい、文法上誤りとされています。

「送る」の敬語での言い換え表現

「送る」の言い換え表現としては、「発送する」「送付する」という言葉があります。これらの言葉の敬語表現は荷物・商品・書類等を相手に送る場合に、「本日、商品を発送いたしました。」「書類を送付いたします。」等と使用されます。この「発送する」「送付する」はビジネスにおいて多用されます。また人を目的地まで「送る」ことを言い換える表現として「送迎する」という言葉があり、敬語表現としては「駅まで送迎いたします。」等と使用されます。

《早い対応》の敬語

「早い対応」の敬語表現

「早い対応」の敬語表現は「迅速なご対応」、もしくは「早速のご対応」です。「迅速」や「早速」自体は敬語に該当しないものの、日本語では難しい表現を使うことで、文章に特別感を持たせる形式があります。その形にあてはめれば、「早い」の難しい表現にあたる、「迅速」や「早速」は、敬意が込められた語句だといえるでしょう。さらに、対応に美化語の「ご」が付け加えられ、より丁寧な表現となっています。

「早い対応」の敬語の最上級の表現

「迅速なご対応」や「早速のご対応」には、十分な敬意が込められています。あえてそれ以上の敬語表現に直すなら、「迅速なご対応をしていただき~」といった形で、その後の語句を工夫しましょう。謙譲語や尊敬語と併せて使うことで、文章の敬意は強くなります。さらに、「恐縮ながら迅速なご対応をいただき」「お忙しいところ、早速のご対応をいただき」など、クッション言葉と一緒に使うのもひとつの方法です。

「早い対応」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「迅速なご対応」や「早速のご対応」は、ビジネスシーンでも多用されている表現です。主に感謝を示す文脈で使われてきました。以下、例文を挙げていきます。

「この度は、御社の迅速なご対応にお礼申し上げます。おかげさまで無事、開店に間に合わせることができました」
「早速のご対応、まことにありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます」

なお、ビジネスシーンでは相手にお願いをするときにも「迅速なご対応」「早速のご対応」といった表現をします。これらの表現が用いられるのは、時間的余裕があまりない状況です。以下、例文を挙げます。

「すでに納期は来週まで迫っております。ご多忙とは存じますが、迅速なご対応をお願いいたします」
「お客様は、誠意ある態度をお求めになられています。恐縮ながら、早速のご対応をお願いできないでしょうか」

「早い対応」を上司に伝える際の敬語表現

一般的に、目上の人物に「早い対応」を求めるのは失礼にあたります。それでも、ビジネスシーンではしかたなく、上司にお願いをしなければならないこともあります。そのようなときは、上司が不愉快に思わないよう、「迅速なご対応」や「早速のご対応」の前後の文章、文脈に注意しましょう。クッション言葉やほかの敬語をしっかり挟みつつ、早い対応が必要な理由もはっきりさせておきます。以下、例文です。

「先方は、あと2日だけ待っていただけるとのことです。まことに申し訳ございませんが、迅速なご対応をしていただけるよう、何卒お願い申し上げます」

「早い対応」の敬語での誤用表現・注意事項

「迅速なご対応」や「早速のご対応」は、目上の人間が主語のときに用いる言葉です。そのため、自分や身内が主語のときには、これらの表現を使いません。「当店ではスタッフが早速のご対応をします」といった文章は間違いです。その際は「早速の対応をします」あるいは「早速の対応をさせていただきます」としましょう。

次に、「迅速なご対応」「早速のご対応」を使う状況にも要注意です。これらの言葉には「予定よりも早く対応してもらった」「予想よりも早くお願いを聞き入れてもらえた」といったニュアンスが含まれています。逆をいえば、予定通りに物事が進行したときには、「迅速」や「早速」といった言葉を使いません。物事が遅れてしまったときは、なおさら避けるべき表現です。予定が遅れている状況下で「迅速なご対応」と伝えてしまうと、皮肉めいた意味合いになってしまいます。そのようなケースでは、単に「ご対応」とだけ書くようにしましょう。

なお、ビジネスシーンで注意したいのは「迅速なご対応に感謝いたします」「早速のご対応、ありがとうございます」といった、似た表現ばかり使い続けないことです。これらの文章は決して間違いではありません。しかし、ビジネスシーンでは定型化しており、感謝の気持ちが伝わりにくくなってしまう可能性もあります。ときには「迅速なご対応のおかげで、非常に助かりました」「いつもながら、早速のご対応に支えられています」など、違ったパターンの文言も用意するようにしましょう。

「早い対応」の敬語での言い換え表現

「迅速なご対応」「早速のご対応」ほど浸透はしていないものの、「早急なご対応」という言い回しもあります。この言葉も「早い対応」の敬語表現だといえます。一方で、ほかのフレーズと比べると、相手に早い対応を強制しているようなニュアンスが含まれかねません。状況が切羽詰まっており、どうしても相手に急いでほしいとき以外は使用を避けるのが無難です。

ビジネスシーンでは「至急」という言葉も多用されてきました。これは「できる限り素早く」「今すぐにでも」という意味です。「至急、ご対応をお願いします」といった形で、敬語と一緒に使うことも可能です。ただし、「至急」も「早急」と同じく、強制的な意味が含まれてきます。顧客や上司に対して使うのは控えましょう。

そのほか、「速やかなご対応」「いち早くのご対応」といった表現もあります。これらは「迅速なご対応」「早速のご対応」とほとんど同じ意味です。「迅速」や「早速」を使いすぎていると感じたときには、これらの語句に言い換えてみましょう。

《食べる》の敬語

「食べる」の敬語表現

「食べる」の尊敬語は「召し上がる」「お食べになる」「食べられる」などです。「食べる」の謙譲語は「いただく」となります。また、丁寧語は「食べます」「食べました」などとなります。

「食べる」の最上級の敬語

「お召し上がりになる」は二重敬語ですが、広く使われて定着している尊敬語です。宮内庁による新嘗祭の説明の中でも「天皇陛下が、…陛下自らもお召し上がりになる祭典」と説明しているように、天皇陛下をはじめとする皇族方が食べ物を召し上がる場面で使用されています。

また過去には「参る」「奉る」「召す」「きこしめす」が皇族や貴族の食べる動作に対し使われていて、『古事記』や『竹取物語』などにも説明が残されています。これらの言葉は明治期以降も文書などで使われてきましたが、現代では使われていません。

「食べる」の敬語を使ったビジネスメール・手紙の例文

#「食べる」の尊敬語を使った例文
件名:夏期休暇の御礼

○○部の皆様

お疲れ様です。○○部の△△です。

このたびは夏期休暇をいただき、誠にありがとうございました。
夏期休暇中はお忙しい中、担当業務を代わるなどのご配慮をいただき、感謝申し上げます。
感謝の気持ちとして少しばかりですがお土産のお菓子をお届けいたします。ぜひ召し上がってください。

本日より気持ちも新たに、お仕事に励んでいく所存です。
まずは、取り急ぎメールで御礼申し上げます。

署名

#「食べる」の謙譲語を使ったビジネスメールの例文(取引先へのお礼)
件名:お土産の御礼

○○株式会社代表取締役△△様

平素よりお世話になっております。株式会社○△の△○です。
本日はお忙しい中、弊社まで起こしくださりありがとうございます。

またお土産まで頂戴して、△△様の温かい心遣いに感謝しております。
頂戴したクッキーはさっそく課の皆でおいしくいただきました。

今後とも代わらぬご厚誼を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

署名

#「食べる」の尊敬語を使った手紙の例文
暑い日が続いていますが、お変わりなくお過ごしのことと思います。
先日、夏休みを利用して子どもと帰省してまいりました。
その際、地元で人気のある和菓子店に立ち寄りました。
○○様が和菓子がお好きだと伺っていたのでささやかですが、よろしければ召し上がってください。
またお会いできる日を楽しみにしております。

#「食べる」の謙譲語を使った手紙の例文
秋風が身にしみる頃となりましたが、お元気でご活躍のことと存じます。
先日は心温まるお土産を頂戴し、ありがとうございました。
季節の移り変わりを感じながら、家族みんなでおいしくいただきました。
これからさらに寒くなると思いますので、どうかご自愛くださいませ。
末筆ではありますが、まずは御礼申し上げます。

「食べる」を上司に伝える際の敬語表現

「食べる」の尊敬語を用いて上司に対して何かを伝える際には「召し上がる」を使うのが一般的です。例えば「ぜひ、召し上がってください」「お酒を召し上がると聞いたので」というように使います。「お食べになる」は敬語表現としては合っていますが、「召し上がる」のほうがよく使用されています。「食べられる」は可能や受身の意味を持っているため、言葉の意味が正確に伝わらないおそれがあります。

上司から食べ物をもらったときには、謙譲語である「いただく」を使います。例えば「先日いただいた○○がとてもおいしかったです」というように使います。「昨日は何を食べましたか?」と問われたときには「昨日はハンバーグを食べました」というように丁寧語を用います。

「食べる」の敬語の誤用表現と注意事項

#目の前の人と関係ないものを食べたときは「食べました」を使う
「昨日は何を食べましたか?」と聞かれたときに「昨日はハンバーグをいただきました」というのは間違いです。目の前にいる相手と関係のないものを「食べた」というときは、謙譲語ではなく丁寧語を使用します。なお、食事の前に「いただきます」というのは、食材に感謝を述べているため、間違いではありません。

#三重敬語は間違い/二重敬語は気にする人もいる
「お召し上がりになられました」は、「お……になる」と「召し上がる」「られる」と、3つの敬語が混在しているため、誤用です。「お召し上がりになる」や「お召し上がりください」は一般的に定着した二重敬語で、間違いとまでは言いにくいのですが、中には二重敬語であることを注意する方もいます。そのためビジネスや公の場面では使わず、「召し上がる」あるいは「召し上がってください」を使うのが無難です。

「食べる」の敬語の言い換え表現

「食べる」の尊敬語の言い換え表現は「おあがりになる」「お食事になさる」「おつまみになる」などがあります。また、おかゆや汁物に対して「おすすりになる」を、食事を残すことに対して「お残しになる」と言うこともあります。

「食べる」の謙譲語の代表的な言い換え表現は「ごちそうになる」です。食事の後に使う「ごちそうさまでした」は食材に対する敬意を示した謙譲語です。食事に呼んでもらうことに対しては「お招きいただく」などと言い換えることができます。地域によっては食事に招いてもらうことを「呼ばれる」と表現するところもあります。

《承知致しました》の敬語

「承知致しました」の敬語表現

「承知致しました」の正しい敬語表現は、「承知しました」です。「承知」と「致しました」にはそれぞれ謙譲の意味が含まれているため、どちらかだけを謙譲語にする形にするのが正しいです。そのため、「致しました」を丁寧語の「しました」に変え、「承知しました」にすると良いです。そして、「致しました」ではなく「承知」の部分を、謙譲語から丁寧な形の「了解」にした「了解致しました」という表現も可能です。

また、「かしこまりました」という表現も、「承知致しました」の代わりとして使用されることが多いです。「承知致しました」は、「わかりました」を敬語にした表現です。そして、「かしこまりました」も同様に、「わかりました」の敬語表現です。「わかる」が謙譲語の「かしこまる」になった形です。そのため、「承知致しました」と置き換えても意味は変わりません。

「承知致しました」の敬語の最上級の表現

「承知致しました」を最上級の敬語として表現する場合、「承知しました」「かしこまりました」のどちらかを使用します。両方とも尊敬の度合いは高く、強い敬意を示すことができます。基本的には、格式張った表現をする際に「承知しました」を用い、物腰の柔らかい雰囲気を演出する場合に「かしこまりました」を使います。また、「承知しました」は社内など身内に対しての敬語、「かしこまりました」はビジネスのクライアントなど、外に向けた敬語として使用される傾向があります。ただ、厳密な使い分けのルールがあるわけではないため、意味が通じるのであれば、どちらを使用しても問題はありません。

「了解致しました」も、文法上は「承知しました」「かしこまりました」と同等の敬意を示せる表現です。

「承知致しました」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「承知致しました」の正しい敬語として「承知しました」を使用する場合、例文は「先日ご連絡くださった件について、承知しました」「契約内容を変更したいとの旨、承知しました」となります。「かしこまりました」を使用する場合の例文は、「商品に問題があったということですね。かしこまりました。担当者にお繋ぎいたします」「ご都合が合わないとのこと、かしこまりました。それでは、予定を再調整致します」などです。

また、「承知しました。それでは、こちらで手続きを進めさせていただきます」「かしこまりました。早速お届けに上がります」という風に、文頭に置いて使用することも多いです。その際には、「はい、承知しました」「はい、かしこまりました」のように、「はい」と組み合わせると、より丁寧な表現となります。

「承知致しました」を上司に伝える際の敬語表現

「承知致しました」を上司に伝える際には、「かしこまりました」を使用することが望ましいです。「かしこまりました」は強い敬意を示せる上に、堅い印象を与えない表現であるため、身近な上司に対して使用しても問題はありません。ただ、「承知しました」が好ましくないというわけではありません。格式張った表現を好意的に受け入れる上司に対しては、「かしこまりました」と「承知しました」のどちらを使用しても良いでしょう。

また、上司から何らかの命令を受けた時に、返事として「かしこまりました」あるいは「承知しました」を使用することもあります。その際、何度も返事をする必要があれば、「かしこまりました」と「承知しました」を交互に使用することで、単調な対応になってしまうのを防げます。

「承知致しました」の敬語での誤用表現・注意事項

「承知致しました」には謙譲語が含まれていますが、文法として誤りです。日本語では原則として、謙譲語を2つ以上組み合わせたら、過剰な敬意を示す二重敬語の表現となってしまいます。ただ、「承知しました」を用いて、より強い敬意を示そうとする場合、「承知致しました」という表現になりかねません。しかし、間違った表現であるため、使用しないように注意しましょう。

また、「承知」の代わりに「了解」を用いる場合、「了解しました」という表現をしないように注意が必要です。「了解」には、「承知」のような謙譲の要素は含まれていません。そのため、「了解しました」は丁寧な敬語表現となります。そして、「了解」自体が失礼な印象を与える恐れがあるため、丁寧な表現にするだけでは、目上に対する敬語としては好ましくないです。そのため、「了解」を使用するのであれば、謙譲の意味合いをもった「致しました」と組みわせて、「了解致しました」という形にするのを忘れてはいけません。

ただ、「了解」という言葉自体が、一般的に失礼なものだというイメージを持たれやすいです。そのため、「了解致しました」を使用するのは避け、他の表現を用いた方が無難です。

「承知致しました」の敬語での言い換え表現

「承知致しました」の言い換えには、「承りました」という表現があります。「承る」は「承知」と同じ意味を持つ謙譲語表現で、「承知致しました」と置き換えることができます。ただ、「承知致しました」は、「理解しました」という意味で使用されることがあります。しかし、「承りました」にはそのような意味はなく、ただ依頼を引き受けるという意味合いとなります。そのため、使用できる場面は限られるので、状況に応じて使い分けることが大切です。

《召し上がる》の敬語

「召し上がる」の敬語表現

「召し上がる」は、「めしあがる」と読みます。「食う」「飲む」の尊敬語で、敬語表現です。この場合の「食う」の意味は、「食べる」「噛んで飲み込む」です。「飲む」は、「液体などを口から体内にとり込む」という意味です。

敬語表現には尊敬語の他に謙譲語と丁寧語がありますが、「召し上がる」はすでに述べた通り敬語表現の尊敬語なので謙譲語と丁寧語はありません。丁寧形は、丁寧を表す助動詞の「ます」をつけた「召し上がります」です。

「召し上がる」の敬語の最上級の表現

敬語の最上級の表現は、最高敬語です。最高敬語は天皇や皇族、王や王族のみに使う尊敬語になります。最高敬語がない場合には、天皇や皇族に対してはわざと1つの言葉に同種の敬語を重ねた二重敬語を使って敬意を表します。 従って「召し上がる」の最上級の表現は二重敬語となり、尊敬の表現を2つ重ねた「お召し上がりになる」です。構造としては「食う」の尊敬語「召し上がる」に、規則的に変化して敬語になる動詞に用いる「お~になる」がついています。

「召し上がる」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「召し上がる」は尊敬語なので、ビジネスメールや手紙でもそのまま使うことができます。「社長は、昼食を社長室で召し上がるので用意してください」と書いても失礼には当たりません。疑問形は「お食事は、何時に召し上がりますか」、否定形は「時間がないので、社長は昼食を召し上がりません」などとなります。 「召し上がる」は、「飲む」の尊敬語でもあります。従って、「社長は、常に決まったメーカーのお茶を召し上がります」「お茶を召し上がりますか」「健康のために、社長はお酒を召し上がりません」などのような使い方も可能です。

「召し上がる」を上司に伝える際の敬語表現

「召し上がる」は、敬意の度合いの高い尊敬の表現です。社長に直接「先日社長が召し上がったお菓子は、A社の〇〇様からいただいたものです」などのように言うことができます。社員から課長に対して「社長は、昼食を召し上がりました」といった使い方も可能です。

しかし、社員から社長に対して「課長は、昼食を召し上がりました」という言い方は失礼に当たるという考え方もあります。社長は、課長よりも目上だからです。自身が課員であれば、課長は身内だから外部の人に対しては敬語を使わないという考え方もできます。社長に対して課長のことを言う場合など、目下の人のことを目上の人に言う場合は謙譲語を使って「課長は、昼食をいただきました」というのが一般的です。

一方、目下を立てることが目上をさらに立てることになるという考え方もあります。気になる場合は「食べられる」を使って、「課長は、昼食を食べられました」と言うとよいでしょう。「食べられる」は「食べる」という動詞の未然形に、助動詞の「られる」がついた形です。助動詞の「られる」は軽い尊敬を表すので、尊敬の度合いが「召し上がる」よりも低くなります。

「召し上がる」の敬語での誤用表現・注意事項

テレビで芸能人が、料理を人にすすめるときなどに見られる誤用が「いただいてください」です。「いただく」は謙譲語なので、自分を低めて相手を立てるときに使います。謙譲語は、自分の動作にしか使えません。料理を食べる相手に敬意を表する場合は、尊敬語を使います。料理を人にすすめたい場合は、「どうぞ、料理をいただいてください」ではなく「どうぞ、料理を召し上がってください」と言うのが適切です。

「召し上がる」の誤用には、「お召し上がりください」もあります。「お召し上がりください」は食品のパッケージなどでもよく見られる表現ですが、尊敬を表す「お」と尊敬語の「召し上がる」が重なっており、一般の人に使う場合には二重敬語となり間違いです。人に食事をすすめるときは「どうぞ、お召し上がりください」ではなく、「どうぞ、召し上がってください」というのが正しい言い方です。

しかし「お召し上がりください」は現在すでに違和感なく使われている表現なので、使ったとしてもそれほど気にする人はいないでしょう。言葉は使われる頻度が上がると正しい使い方となることも多いですが、いまのところは敬語としては正しい表現ではないことを頭に入れておきましょう。

「召し上がる」は、尊敬語独自の動詞です。一般的に尊敬語独自の動詞がある場合には、「お~になる」の形で尊敬語にすることはありません。尊敬の程度も、尊敬語独自の動詞、「お~になる」の順で低くなります。「お食べになる」や「お飲みになる」は、間違いとまでは言えませんが敬語としては使わない方がよい表現です。

「召し上がる」の敬語での言い換え表現

「召し上がる」は、「召す」「上がる」と言う形でも尊敬語として使うことができます。「召す」は「食事を召しますか」などという使い方ができますが、「食う」「飲む」以外にも「着る」「買う」などの意味があるため、状況や文脈から意味を理解する必要があります。

「上がる」は「低い場所から高い場所へ移動する」という使い方が一般的ですが、「食う」「飲む」の尊敬語でもあります。そのため「先生は、書斎で昼食を上がりました」といった使い方ができます。

《助かる》の敬語

「助かる」の敬語表現

「助かる」には色々な敬語表現があり、相手や状況によって使い分ける必要があります。「助かる」に丁寧語の「ます」をつけた「助かります」も丁寧語表現の敬語であるため、文法的に問題はありません。しかし、「助かる」には「自分にかかる負担が少なくて済む」というニュアンスが含まれているため、目上の人に使う表現として不適切とされています。プライベートで同等の立場の人に使うのは構いませんが、ビジネスシーンでは避けた方が良い表現です。

ビジネスシーンで使える「助かる」の敬語表現には、「ありがとうざいます」、「幸いです」などがあります。また、上司から「助かる」と言われた場合は、「とんでもございません」、「お役に立て嬉しく存じます」などと返すことができます。

「助かる」の敬語の最上級の表現

「助かる」の最上級の敬語表現は、「助かる」という表現を使う意味合いによって異なります。感謝・お礼を込めた「助かる」の最上級の敬語表現は、「誠にありがとうございます」や「心より感謝申し上げます」、「厚くお礼申し上げます」になります。「誠に」や「心より」、「厚く」などの強調表現をつけることで、丁寧さを高めています。また、依頼の意味を込めた「助かる」の最上級の敬語表現は、「幸いです」よりも丁寧な表現である「幸甚です」を、一層丁寧にした「幸甚に存じます」や「幸甚の至りです」となります。

「助かる」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメール・手紙では、口語表現よりも丁寧な言い回しにするのがマナーです。「助かります」などのカジュアルな敬語は失礼にあたるため、適切な表現を使う必要があります。

感謝・お礼を伝えるメール例文:お世話になっております。この度は納品手続きに迅速に対応していただき、誠にありがとうございます。
感謝・お礼を伝えるメール例文:いつもお心遣いをいただき、誠にありがとうございます。感謝の一端としまして、弊社の設立10週年の記念品をお送りしましたので、ご笑納いただければ幸いでございます。

依頼のメール例文:平素よりお世話になっております。見積書を添付しておりますのでご査収ください。お忙しいところ申し訳ございませんが、本日中にご確認いただけると幸甚に存じます。
依頼のメール例文:いつもお世話になっております。先日お話ししたプロジェクトの件で打ち合わせをさせていただきたくお願い申し上げます。ご都合の良い日時をお伝えいただけると幸いでございます。

「助かる」を上司に伝える際の敬語表現

「助かる」を丁寧表現にした「助かります」は、「力を貸してほしい」や「力を貸してくれたことに感謝する」という意味の敬語です。しかし、力添えしてくれた上司に対して「助かります」と言うのは失礼だと認識されているため、親しい間柄の上司であっても使わないのが無難です。親しい間柄の上司であれば、「~していただけますか」や「ありがとうございます」という表現を使うのが適切です。「お手数ですが、本日中に見積書に目を通していただけますか」や、「新規プロジェクトの件、お力添えいただきありがとうございます」のように伝えることができます。

また、立場がかなり上の上司に「助かる」と伝える場合は、より丁寧な表現である「幸いです」や「お礼申し上げます」を使うのが適切です。「企画書にご賛同いただけると幸いです」や、「このプロジェクトの成功のために協力いただけましたこと、厚くお礼申し上げます」のように伝えられます。

「助かる」の敬語での誤用表現・注意事項

「助かる」の敬語表現として、「お願いできますでしょうか」という表現が一般的に使用されています。ビジネスシーンにおいても使われることが多い表現ですが、こちらは誤用表現です。1つの敬語表現の中に「ます」と「でしょうか」という2つの丁寧語が含まれており、二重敬語になっているからです。言葉遣いに敏感な人に使った場合、ネガティブな印象を与えることもあるため、リスクを避けるためにも使わないのが無難です。

また、「助かる」の言い換え表現の敬語として「幸甚に存じます」がありますが、話し言葉ではほとんど使われていません。上司に使う表現としては、仰々しすぎて相手に気まずさを感じさせることもあります。大切な取引先との商談で使用することもできますが、頻発しすぎると言葉の重みが低減してしまいます。「幸甚に存じます」は、メールや手紙など文書で使用するのが適切です。

「助かる」の敬語での言い換え表現

・助かります
・助かりました
・ありがとうございます
・誠にありがとうございます
・ありがとうございました
・お礼申し上げます
・心よりお礼申し上げます
・厚くお礼申し上げます
・感謝申し上げます
・心より感謝申し上げます
・厚く感謝申し上げます
・幸いです
・幸いでございます
・幸いに存じます
・~いただけますと幸いです
・お願いできますでしょうか
・お願いいたします
・お願いできますか
・~していただけますか
・~してくださいますか
・~していただけないでしょうか
・幸甚です
・幸甚に存じます
・幸甚でございます
・幸甚の至りに存じます
・~いただけますと幸甚です

《助かります》の敬語

「助かります」の敬語表現

相手からの援助や力添えに対して使う「助かります」は、日常でも頻繁に登場する丁寧な言い回しです。しかし、「助かります」には、自分が主体であるというニュアンスや、相手を労う意味合いが含まれていることから、上から目線の言葉として捉えられてしまうことがあります。そのため、目上の人に対して「助かります」と言いたい場合には、しっかりと敬意が伝わる別の敬語表現に置き換えることが必要です。

そもそも「助かります」には、「〜してくれて助かります」のように感謝を伝える目的で使う場合と、「〜してくれると助かります」のように依頼をする目的で使う場合の2パターンがあります。感謝を伝える「助かります」の敬語表現としては、「ありがとうございます」「感謝いたします」「御礼申しあげます」などがあり、いずれも目上の相手を敬う気持ちと御礼の気持ちが丁寧に伝わる表現です。

一方、依頼をする「助かります」の敬語表現には、「幸いです」という言い回しがあります。威圧感のないやわらかいフレーズになり、目上の相手に行為を強要するような悪い印象がなくなります。「幸いでございます」「幸いに存じます」などの改まった言い回しでも用いられ、立場をわきまえた謙虚な姿勢を示すことができるでしょう。

「助かります」の敬語の最上級の表現

感謝を伝える「助かります」の最上級の表現には、「痛み入ります」「恐れ入ります」といったかしこまった言葉もあります。どちらも、相手の厚意や親切が自分にはもったいないという謙遜の気持ちが込められていて、感謝を伝える「助かります」の最上級の敬語にあたります。「誠に痛み入ります」「たいへん恐れ入ります」など、フォーマルな場面にも相応しい堅い言い回しもでき、身分の高い人に対しても安心して使える敬語表現です。

また、依頼をする「助かります」の最上級の表現では、「幸いです」をさらに改まった言い方にした「幸甚に存じます」という特別なフレーズがあります。「幸甚」には「この上ない幸せ」「大変ありがたい」という意味があり、お願いをする目上の相手に最大級の敬意を払える言葉です。ただし、日常生活ではあまり耳にしない表現なので、会話の中ではなく、ビジネスメールや手紙などの書き言葉として用いるとよいでしょう。

「助かります」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「お忙しい中、ご協力いただきまして、誠にありがとうございます」
「プロジェクトの成功にあたり、ご助力に深く感謝いたします」
「展示会の開催にお力添えをいただき、厚く御礼申しあげます」
「長きにわたる弊社へのご高配、痛み入ります」
「多大なご支援をいただき、たいへん恐れ入ります」
「ご多忙のところ申し訳ございませんが、本日中にご回答いただけましたら幸いです」
「事前にご連絡をいただけますと、幸いでございます」
「ご都合のよい日程を、いくつか教えていただければ幸いに存じます」
「今回の企画にご賛同いただけましたこと、幸甚に存じます」

「助かります」を上司に伝える際の敬語表現

上司に「助かります」と言いたい場合には、「ありがとうございます」や「〜していただけませんか」を用いるのが妥当です。特に依頼の目的で「助かります」を言い換えるケースでは、「お手数をおかけしますが」「お忙しいところ申し訳ありませんが」とクッション言葉を添えることによって、相手を尊重するやわらかい言い回しとなり、上司を気遣う気持ちも伝わるでしょう。

一方で、普段からやりとりの多い直属の上司などに、「御礼申しあげます」「幸いでございます」といった堅い表現を用いると、かえって不自然になることもあります。上司の人柄や距離感を考えて、「助かります」を適切な表現に言い換えることにより、良好な関係を築ける円滑なコミュニケーションを心掛けましょう。

「助かります」の敬語での誤用表現・注意事項

感謝の目的で「助かります」を言い換える場面で、目上の人に「ありがたいです」と伝えるのは不適切です。意味合いや文法に間違いはありませんが、「〜です」という言い回しは、ややカジュアルで稚拙な印象を与えてしまうことがあるため、目上の人に使うのは失礼だと考えられています。

また、「ご苦労様です」という表現も、目上の人に対して用いるのはタブーです。「助かります」と同様に、相手を労う意味合いが強いため、ビジネスシーンでは同じ立場や目下に対して使うのが無難だとされています。感謝の気持ちを込めて発したつもりの自分の言葉で、目上の相手を不愉快にさせてしまうことがないよう、言葉選びには十分に注意しましょう。

「助かります」の敬語での言い換え表現

ありがとうございます
誠にありがとうございます
感謝いたします
深く感謝いたします
感謝しております
たいへん感謝しております
感謝申しあげます
心より感謝申しあげます
御礼申しあげます
厚く御礼申しあげます
心より御礼申しあげます
痛み入ります
恐れ入ります
たいへん恐れ入ります
誠に恐れ入ります
恐縮です
たいへん恐縮です
かたじけなく存じます
幸いです
幸いでございます
幸いに存じます
幸甚です
幸甚でございます
幸甚に存じます
幸甚の至りです
幸甚の至りでございます

《助かりました》の敬語

「助かりました」の敬語表現

「助かりました」という言葉からは、おかげで本当に助かりました、という安堵と感謝の気持ちが率直に伝わってきます。文法上この表現は、動詞の「助かる」と助動詞の「ました」に分解できますが、このうち「ました」は、敬語表現の一形式である丁寧語「ます」の連用形に、過去・完了の意味を表す助動詞「た」がついたものです。丁寧な言葉使いをすることで、聞き手や読み手に対する敬意を示す丁寧語「ます」を含んでいる点で、「助かりました」はこれ自体が敬語表現として成立しています。

「助かりました」の敬語の最上級の表現

「助かりました」は丁寧語を含む敬語表現ですが、この場合、「助かった」という恩恵を受けた主体は自分の側です。最上級の表現に言い換えるとすれば、恩恵を与えてくれた相手を想定し、恩恵を受けた自分を低めて相手を立てる謙譲表現を使うことで、丁寧語を使った敬語表現よりいっそう敬意を強くすることができます。たとえば、謙譲語の一般形「お(ご)…いただく」を使って、「お力添えいただき、感謝申し上げます」などとすれば「助かりました」の最上級の表現とすることができます。

「助かりました」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「助かりました」の敬語をビジネスメールや手紙で使用する際は、差し出す相手によって使い分けに注意する必要があります。たとえば相手が自分の同僚や目下の人であれば丁寧表現である「助かりました」をそのまま使ってもかまいません。「すぐにメールを返してくれたおかげで助かりました」「先日はシフトを代わってくれてありがとう。おかげで助かりました」「先日はプレゼンお疲れ様。君がしっかり資料をまとめてくれていて助かりました」などと使います。

一方で、差し出す相手が目上の人であったり、取引先であったりする場合は、丁寧表現ではなく謙譲表現を使って自分がへりくだり相手に対する敬意を強めなくてはなりません。「厚く御礼申し上げます」「ありがたく御礼申し上げます」「心より感謝申し上げます」などがよく用いられる表現です。たとえば「この度は格段のご支援をたまわり、厚く御礼申し上げます」「先日はお忙しい中ご臨席たまわり、ありがたく御礼申し上げます」「前回の会議で頂戴しました貴重なご指摘、心より感謝申し上げます」「日頃はひとかたならぬご愛顧を頂戴し、衷心より御礼申し上げます」などと使います。

「助かりました」を上司に伝える際の敬語表現

目上の存在である上司に「助かりました」という気持ちを伝える場合にも、ビジネスメールや手紙という手段を使うのであれば、謙譲表現で自分がへりくだり相手への敬意を強めます。一方で直接口頭で伝えるというケースでは、どちらかといえば書き言葉である「厚く御礼申し上げます」や「心より感謝申し上げます」などではその場にそぐわないため、やはり話し言葉になじむ表現を選ぶべきでしょう。この場合、最も適当な言葉はストレートに感謝の気持ちを述べる「ありがとうございました」です。「誠にありがとうございました」のように程度の副詞「誠に」などを冒頭に付ければさらに強く思いが伝わります。

「助かりました」の敬語での誤用表現・注意事項

「助かりました」は丁寧語を含んでいるため、それ自体が敬語表現ではありますが、目上の人や会社の取引先に使う言葉としては適当なものではありません。そもそも「助かる」とは、「危険な状態から逃れる・災難にあわなくてすむ」といった他にも「負担感が少なく楽になる」というような意味がある言葉です。すなわち「あなたのおかげで楽になった」という意味にも取ることができ、恩恵を受ける自分中心の表現ともいえるものです。

たとえばこれが自分の同僚や部下であれば、手助けをしてくれてありがとうという親しみがこもった表現となり、使用するのには何ら問題はありません。しかし対象が目上の人である場合は、敬意を払うべき相手に対して一段上の立ち位置から「動いてくれてご苦労様」と言い放つような失礼な表現として捉えられかねないのです。もともと「助かる」という言葉には主従の力関係を連想させる意味合いがあります。助かるのは「主」、助けるのは「従者」です。目上の人を従者扱いする言葉使いになっていないか、「助かりました」を使う際は、くれぐれもそのシチュエーションに注意することが必要だといえます。

「助かりました」の敬語での言い換え表現

「助かりました」は恩恵を受ける主体が自分の側であることから、謙譲語を使って自分を低める表現に言い換えて「厚く御礼申し上げます」「心より感謝いたします」などとするのが一般的ですが、感謝の気持ちにより強く焦点を当てた場合は「痛み入ります」「幸甚至極でございます」などという表現に言い換えることもできます。

「痛み入ります」は、「心が痛いほど相手の好意が身に染みてありがたい」という意味です。謙遜の気持ちを持って相手への感謝を示す言葉として用いられます。「課長から頂戴した温かいお言葉、痛み入ります」などと使います。「幸甚至極」とは「非常にありがたい、とても嬉しい」という意味で、へりくだって相手への感謝の気持ちを表す場合に用いられます。「先日はお気遣いをいただき幸甚至極でございました」などと使うことができます。

《受け取る》の敬語

「受け取る」の敬語表現

「受け取る」の敬語表現は相手が「受け取る」のか自分が「受け取る」のか、またシチュエーションによっても表現が異なります。そのため、状況に合わせて使い分ける必要があります。友人や同僚など同じような立場の人に対して使う場合は、「受け取る」の丁寧語である「受け取ります」、「受け取りました」という表現を使います。目上の人が「受け取る」場合は、尊敬語である「お受け取りください」や「お納めください」を使います。また、目上の人から自分が「受け取る」場合は、謙譲語の「いただきます」や「頂戴します」を使うのが一般的です。そのほか、自分が「受け取る」際の敬語表現として、「拝受する」や「受領する」、「賜る」などがあります。

「受け取る」の敬語の最上級の表現

「受け取る」の敬語の最上級の表現は、謙譲語の「賜る」や「拝受する」です。敬語には丁寧語と尊敬語と謙譲語があり、謙譲語は相手にへりくだった表現であるため他の敬語よりも丁寧な表現になります。その中でも、「賜る」や「拝受」するは最も丁寧な言い回しであるため、「受け取る」の敬語の最上級の表現となります。日常生活で使うことはほとんどありませんが、ビジネスシーンにおいては頻繁に使われています。「拝受する」はメールの受け取りの際に使用されることが多く、「拝見する」や「拝読する」なども同様に使われます。

「受け取る」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

文語表現は口語表現よりも丁寧にするのが通例なので、ビジネスメール・手紙においては丁寧な敬語表現を使うのがマナーです。そのため、丁寧語ではなく、尊敬語もしくは謙譲語の敬語表現を使うのが適切です。

尊敬語のメール例文:お世話になっております。先日のコンペの参加賞を皆様にご用意させていただきました。どうぞお納めください。
謙譲語のメール例文:平素からお世話になっております。プロジェクトの企画案を拝受いたしました。早々にご対応いただき誠にありがとうございます。

また、ビジネスメール・手紙においては同じ言葉を繰り返すのではなく、「受け取る」という意味の敬語表現を使い分け読みやすく書くことも大切です。

メールの例文:見積書をお送りいたしました。ご査収のほどよろしくお願いいたします。
メールの例文:先ほど、注文書を拝受いたしました。早速納品の準備に取り掛かり、発送させていただきます。
メールの例文:本日納品いただいた商品は、全て検収しました。誠にありがとうございます。

「受け取る」を上司に伝える際の敬語表現

「受け取る」を上司に伝える際の敬語表現は、「お受け取りになる」や「いただく」が適切です。上司に受け取ってもらう場合に、「書類をお受け取り下さい」や、「納品書をお受け取りいただけましたか?」のような表現で使います。自分が上司から受け取る場合は、「いただく」を使うのが一般的です。「頂戴する」や「賜る」などの表現もありますが、堅苦しい印象になってしまいます。口頭で伝える場合は、「いただきます」や「いただきました」で問題ありません。

ただし、直属ではない上司や社長、会長など立場がかなり上の上司の場合は、「大変喜ばしいお言葉を賜りありがとうございます」や「お時間を頂戴してもよろしいですか?」のように「賜る」や「頂戴する」という敬語表現を使うほうが良いでしょう。

「受け取る」の敬語での誤用表現・注意事項

「受け取る」の敬語表現で注意すべきは、丁寧な言い回しにしようとするあまり二重敬語にしないことです。間違いやすい事例としては、「頂戴いたします」があげられます。「頂戴」という単語自体が謙譲語であるため、謙譲語の「いたします」と合わせ「頂戴いたします」と表現すると二重敬語になってしまうのです。「頂戴します」が適切な敬語表現になります。

また、「お受け取りいたしました」も、賛否両論のある敬語表現になります。自分が受け取る場合、「受け取る」に「お」をつけると「お受け取り」という謙譲語になります。その後に謙譲語の「いたしました」をつけ「お受け取りいたしました」にすると、二重敬語になります。間違いではないという説もありますが、ビジネスシーンでの使用は避けるのが無難でしょう。

そのほか、最上級の敬語表現の「拝受する」ですが、敬意を示す表現とはいえ誰彼構わず頻発して良いというものではありません。取引先など外部の人に使う分には問題はありませんが、社内の近しい上司などに使うと過剰な敬語表現としてネガティブな印象を与えることがあります。社内の上司には、「拝受する」ではなく「受領する」を使うのが適切です。

「受け取る」の敬語での言い換え表現

・受け取ります
・受け取りました
・お受け取りになる
・お受け取りくださる
・お受け取りいただく
・お受け取りいたす
・お受け取りいたします
・お納めになる
・お納めくださる
・いただく
・いただきました
・拝領する
・頂戴する
・頂戴しました
・拝受する
・拝受します
・拝受しました
・玉稿拝受
・賜る
・賜ります
・賜りました
・受領する
・受領します
・受領しました
・受領いたしました
・ご徴収ください
・ご徴収くださいませ
・受理する
・受理します
・受理しました
・ご笑納ください

《受け取り》の敬語

「受け取り」の敬語表現

「受け取り」の敬語表現ではまず、美化語をつけて「お受け取り」の形にします。そのうえで、「お受け取りになる」「お受け取りくださる」「お受け取りいただく」といった敬語に直すのが基本です。

「受け取り」の敬語の最上級の表現

「受け取り」の敬語の最上級では、丁寧語を用いて「お受け取りになられます」「お受け取りくださいませ」「お受け取りいただきます」などの言い回しにします。また、「なにとぞお受け取りになられますよう」「ぜひお受け取りくださいませ」などの形で、敬意を強調する手法もあります。

「受け取り」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「お受け取り」に丁寧語を付け加えた文章は、ビジネスメールや手紙で頻繁に使われている敬語です。特に、お客様や取引先など、社外の人に対して用いられることが多いといえます。以下、例文です。

「失礼ですが念のため、確認のご連絡をさせていただきました。先週に発送した荷物は、お受け取りになられたでしょうか」 「お受け取りになられました資料について、間違いがございました。添付のファイルにて、修正点をご説明させていただきます。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「ご注文の品に加え、特典も同封しております。ぜひともお受け取りくださいませ」
「弊社にて、完成品をひとまず預かっております。明日中にはお受け取りいただきますよう、くれぐれもよろしくお願いいたします」

「受け取り」を上司に伝える際の敬語表現

上司とのやりとりでも、「お受け取り」を使った敬語は普通に使われています。むしろ、「受け取り」のままでは失礼にあたるので注意しましょう。また、「なにとぞ」「くれぐれ」などの強調の語句も効果的です。「お受け取り」とは上司の行動について示している表現なので、丁寧さをはっきりと示すほうが無難です。

「受け取り」の敬語での誤用表現・注意事項

「お受け取り」を用いた敬語は、目上の人が主語のときに使用しましょう。なぜなら、自分の行動に対して美化語の「お」をつけるのは、間違いになる場合が多いからです。「私はお受け取りになりました」といった文章にしてしまうと、自分で自分の行動を美化していることになります。敬語表現は自分がへりくだるか、相手に敬意を込めるかが基本です。仮に自分が「受け取り」をするのであれば、「受け取りをいたしました」「受け取りをさせていただきました」など、謙譲語を用いるようにしましょう。

なお、「お受け取りになる」「お受け取りくださる」「お受け取りいただく」といった3種類の敬語については、使い分けの基準が諸説あります。ただ、ビジネスシーンでは無理に使い分ける必要はありません。なぜなら、これらの言葉は主語が目上の相手である以上、ほとんど意味が変わらないからです。前後の文章で「いただく」が登場していたなら、「お受け取りになる」や「お受け取りくださる」を使うなど、状況に応じて使い分けましょう。

「お受け取りくださる」は結びに相応しいフレーズで、「お受け取りいただく」は感謝の意を示す語句との意見もあります。しかし、これも明確なルールではなく、守らなかったからといって間違いになるわけではありません。重要なのは、主語が目上の相手であり、「お受け取り」と敬語が続いている点です。

「お受け取り」を用いた敬語の注意点は、過剰に丁寧な印象を与えないことです。「お受け取りになる」「お受け取りくださる」「お受け取りいただく」といった表現は、いずれもかなり丁寧なニュアンスを含んでいます。そして、日本語ではあまりにも丁寧さを強調すると、かえって相手を見下しているような雰囲気になってしまいます。相手との関係性を考えつつ、ほどよく丁寧な文章にすることも大切です。

たとえば、親しい相手への文章では「くれぐれもお受け取りになられますようお願い申し上げます」とまで、敬意を示す必然性はありません。「お受け取りしてもらえますか」くらいの言い回しでも、相手が不愉快になる可能性は低いでしょう。敬意の加減が難しいときは、「失礼ながら」「お手数ですが」といったクッション言葉を前置きに使うのもひとつの方法です。

「受け取り」の敬語での言い換え表現

「お受け取り」を用いた敬語に近い語句として、「ご査収いただく」「ご笑納いただく」「受理いただく」「受領いただく」などが挙げられます。いずれもおおまかな意味は「お受け取りになる」「お受け取りくださる」「お受け取りいただく」と変わりません。ただ、より具体的に状況を制限する言い回しです。「ご査収いただく」はビジネスシーンで、「ご笑納いただく」はギフトの贈呈で使います。「受理いただく」は申請について、「受領いただく」は金銭についての言葉です。それぞれのシチュエーションで、「お受け取り」よりもはっきりと行動を示したいなら、これらの言葉に置き換えましょう。

そのほか、贈り物に対しての「お納めいただく」や、文章に対しての「お目通しいただく」などもよく知られている敬語表現です。これらのフレーズはビジネスシーンでも定型化しており、違和感なく使えます。「お受け取り」を言い換えたい場合に用いてみましょう。

《受け取りました》の敬語

「受け取りました」の敬語表現

「受け取りました」を敬語で表現すると、「頂きました」となります。「もらう」の謙譲表現である「頂く」の連用形に、丁寧表現の助動詞「ます」の連用形と完了を示す助動詞「た」を加えた形です。なお謙譲語の助動詞として用いる際は平仮名で「いただく」と表現し、今回のように「もらう」の意味を含む動詞として使用する場合は漢字で「頂く」と表現します。自身を下げることによって相手への敬意を高める謙譲表現により、受け取った事実を敬意を持って伝えることが可能です。

また「受け取りました」は、相手に丁寧に伝えることができる敬語表現の1つでもあります。動詞「受け取る」の連用形に、丁寧表現の助動詞「ます」と完了の助動詞「た」を付与することにより、丁寧語へと変化します。丁寧語は相手への敬意を含まず、文字通り丁寧に伝えるという機能を持っている敬語表現です。目上でありつつも、気心の知れた相手に伝える際に用いられることが多いです。

「受け取りました」の敬語の最上級の表現

「受け取りました」の最上級の敬語表現にあたるのが、「拝受しました」です。「拝」には「おがむ・頭を下げる」に加えて、「謹んで」という意味も含まれています。2つの語を合わせて「拝受」とすることで、「謹んで受け取る」という謙譲表現に変化します。名詞「拝受」に動詞「する」を付け足して動詞化した「拝受する」の連用形に、助動詞の「ます」と「た」を足した形です。「受け取りました・頂きました」よりも敬意が増すため、かしこまった場面でよく用いられます。

なお現代ではあまり使われませんが、「受け取りました」の最高敬語として挙げられるのが「賜りました」です。動詞「賜る」は、「もらう・受け取る」という意味を持つ謙譲語です。同じく「もらう」の意味を持つ謙譲語「頂く」よりも、相手への敬意を高めた表現となります。もともとは天皇や皇族など貴人に対して用いられていた表現であり、会話よりも文章内で用いられることが多い傾向にあります。

「受け取りました」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメール・手紙などの文章内で「受け取りました」を敬語で表現する際、「頂きました」や「拝受しました」を用います。文中では、「先日は、素敵なお花を頂きました」といったように表現します。ビジネスメールで「頂きました」を用いるタイミングは、議事録や書類・添付ファイルなどを受け取った際が多いです。文章内では、「先週に山田様に依頼しておりました、提案書を頂きました」というように用いられます。なお「頂きました」の後に、お礼の言葉を添えるのが通例となっています。

重要な取引先など、かしこまった表現が必要な場合は「拝受しました」が使用されることが多いです。文例としては、「先程、契約書のテンプレートファイルを拝受しました」と表現されます。また受け取ったメールの内容や添付ファイルを確認する暇がない時、受け取った旨だけを連絡する際にも「拝受」の使用が可能です。「拝受」を名詞の状態にして「まずは拝受のご連絡まで」と記述し、「確認した後に、再度ご連絡いたします」と添えるとより印象の良い文章になります。

「受け取りました」を上司に伝える際の敬語表現

上司との会話の中で「受け取りました」を敬語で表現する際、「頂きました」が用いられることが多いです。完了の助動詞「た」が語尾に付いているため、取引先・社外の人物や会話相手の上司よりもさらに上の立場の人物から受け取った際に用います。会話中では、「先程、部長よりこちらの資料を頂きました」というように表現されます。上司から直接受け取った際には、完了・過去の助動詞「た」を使わず「頂きます」と表現しましょう。

「受け取りました」の敬語での誤用表現・注意事項

「受け取りました」を敬語で表現する際に注意したいのが、二重敬語です。特に「拝受しました」に多く見られる誤用表現が、「拝受いたしました」です。「拝受」の「拝」も「いたしました」も謙譲語であり、謙譲表現が重複してしまいます。1つの言葉に対して同じ敬語表現を重ねる二重敬語は、相手によっては不快な印象を与えてしまうため注意が必要です。丁寧表現のみを付け加えた、「拝受しました」が正しい表現となります。「拝受」と同様に「拝見」も、「拝見しました」と表現しましょう。

「受け取りました」の敬語での言い換え表現

「受け取りました」の敬語の「頂きました」の言い換え表現として挙げられるのが、「頂戴しました」です。「頂戴」には、「頭上に物をいただき捧げること」という意味があります。「もらう」の謙譲表現であり、「頂きました」よりもかしこまった敬語表現となります。「拝受」のように、名詞「頂戴」に動詞「する」を加えて動詞化した「頂戴する」を連用形に変えて、助動詞「ます」の連用形と「た」を足した形です。

「受領いたしました」も、「受け取りました」の敬語の言い換え表現として用いられます。「受領」は、「金銭をはじめとした重要な物を受け取る」という意味を持つ言葉です。「拝読・拝見」とは異なり、「受領」には敬語表現が備わっていません。そのため「受領」のあとに、動詞「する」の謙譲語である「いたす」を付け足す必要があります。名詞「受領」に、動詞「する」の謙譲表現「いたす」の連用形と丁寧語の助動詞「ます」を加えた形です。

《手配》の敬語

「手配」の敬語表現

「手配」とは、物事を進めるにあたって、あらかじめ役割や段取りを決めて準備することをいいます。また、指令を出して人員を要所に配置するという意味も持ち、「犯人の指名手配」などと用いられることもあります。名詞の「手配」を敬語で表現する場合は、接頭語の「お」「ご」をつけ「お手配」「ご手配」などとします。「お手配」「ご手配」は、立てるべき人が手配してくれたのであれば尊敬語、立てるべき人に手配をしてあげたのであれば謙譲語となります。また、立てる立てられるの関係性がなく、単に「手配」を美化して述べるのであれば、丁寧語の一つである美化語に分類することができます。

「手配」の敬語の最上級の表現

「手配」を最上級の敬語で表現する場合は、まず前提として尊敬表現、謙譲表現のどちらがよりふさわしいのかを考える必要があります。そもそも「手配」という言葉は、物事を進めるうえでしっかり段取りを行うという、能力や才能の有為性を示す意味を含んでいますので、自分ではなく、相手の行為に用いるのが適当でしょう。

ここで相手の行為に尊敬語を使って「お手配になる」「ご手配なさる」などとすることもできますが、手配したことによって他に利益をもたらす供与性を盛り込めば、手配するという行為の価値をよりいっそう高めることができます。すなわち手配をしてくれたのは相手で、自分は手配をしてもらったという関係性です。この場合、相手を立てて自分を低める謙譲表現を用います。そして謙譲表現の一般形を使って「お手配いただく」「ご手配いただく」としたうえで、「いただく」をさらに丁寧にした「賜る」に言い換え、丁寧語の「ます」も加えて「お手配賜ります」「ご手配賜ります」という言い方にすれば、これが「手配」の最上級の敬語表現となります。

「手配」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

一般的なビジネスシーンでは、「手配」の敬語として「お手配」「ご手配」が使われます。この言葉が用いられるメールや手紙には依頼の内容も多く見られますが、ストレート過ぎる表現は受け取り手に圧迫感を与えますので、伝え方に工夫が必要です。使用例としては「お手数をおかけしますが、至急ご手配いただきますようお願い申し上げます」「ご手配のほど、なにとぞよろしくお願いいたします」「弊社への納品につきましては下記の期日までにご手配いただけますと幸いでございます」などがあげられます。「お手数」「なにとぞ」「幸い」などの言葉をクッションとして、表現を和らげて伝えている点がポイントです。

「手配」を上司に伝える際の敬語表現

「手配」は、依頼、報告、御礼など様々なビジネスシーンで用いられやすい言葉です。目上である上司に伝える際にも、適切な敬語を用いて使用しなくてはなりません。「手配」を「お手配」「ご手配」などに言い換えて用いるのは当然ですが、たとえ言い換えたとしても「課長、例の件早くご手配してください」という言い方をしてしまっては、上司に対して失礼な表現になってしまうという点に注意が必要です。

「ご手配してください」という文章は、「くれる」の尊敬語「くださる」を含んでおり、敬語の表現としては問題ないのですが、「ください」が活用の命令形となっていることから、敬語表現としていくら正しくても、上司に対して使用するには不適切な言い方になってしまうのです。ですからここは「してください」を使うのではなく、「お願いします」などと相手を立てる表現を用いて「例の件、早めにご手配をお願いします」などとしなくてはなりません。

また、自分の手配が終わったことを上司に報告するケースもよくみられます。この場合「例の件なら、もう手配済みです」というような言い方も、丁寧語の「です」によって敬語表現自体は成立してはいますが、「手配」という言葉が行為の有為性を含んでいるために、鼻持ちならない表現だとも捉えられかねません。ここは「手配」を「準備」などに言い換えて「例の件なら、準備完了しています」などとするのが無難でしょう。

「手配」の敬語での誤用表現・注意事項

「手配」を敬語にした際は、「お手配」「ご手配」のどちらを使っても構わないというルールがあります。とはいえ、使い分けに何か基準があれば迷わなくても済むでしょう。一般的に、訓読みする和語の場合は「お」、音読みする漢語の場合は「ご」をつけることになっています。「手紙」は「お手紙」、「活躍」は「ご活躍」とするような使い方です。しかし「手配」は訓読み+音読みでこの決まりに収まらないことから「お手配」「ご手配」両方の言い方が慣例的に認められているというわけです。

ただし、使い分けには一定の傾向が見られます。それは相手の行為を言う場合は「ご」を、自分が行為の主体であれば「お」を付けるというものです。「ご手配いただきありがとうございました」といえば相手の行為、「こちらでお手配しております」であれば自分の行為といったような使い分けのしかたです。自分が主体の行為には敬意の度合いが比較的低い美化語の「お」を付けて区別する、という捉え方もありますが、両者の使い分けに必ずしも固定した法則があるわけではありません。

「手配」の敬語での言い換え表現

「手配」の敬語での言い換えとしては、ほどよく配置したり準備したりすることを意味する「ご按排」、必要を見越して事前に準備を整える意味の「お手回し」、事前に予定されたり計画されたりしている事柄について段取りなどをつける意味の「お手はず」等の表現をあげることができます。

《借りる》の敬語

「借りる」の敬語表現

敬語表現には丁寧語、尊敬語、謙譲語があり、相手や状況によって使い分ける必要があります。「借りる」の丁寧語は「借ります」で、「このボールペンを借ります」のように親しい間柄や目下の人に対して使える敬語表現です。「借りる」の尊敬語は「借りられる」、「お借りになる」などで、目上の人の動作に敬意を払った敬語表現となります。「部長は空港でレンタカーをお借りになり現地に向かわれたそうです」などの使い方ができます。「借りる」の謙譲語は「お借りする」、「借りさせていただく」などで、へりくだり相手を高める敬語表現です。目上の人に対して、「そちらの店舗から、販売経験者を2名ほどお借りしたく存じます」のように使うことができます。

「借りる」の敬語の最上級の表現

敬語の最上級の表現は、謙譲語+丁寧語の表現となります。そのため、「借りる」においては、謙譲語の「お」+「借りる」+丁寧語の「いたす」から成る「お借りいたす」が最上級の敬語表現となります。さらに丁寧度を高めるために、「幸いです」や「存じます」、「幸甚に存じます」などを語尾につけて「お借りただけますと幸いです」や「お借りいただきたく存じます」と表現することも可能です。

「借りる」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメールは口語表現よりも丁寧な表現にするのがマナーであるため、「お借りいただけますか」ではなく「お借りいただきたく存じます」のような表現を使うのが適切です。

メール例文
・お世話になっております。ご依頼いただいたサンプル品ですが、手元に持ち合わせておりません。お手数をおかけしますが、別の方にお借りいただけると幸甚に存じます。何卒宜しくお願いいたします。

・平素より大変お世話になっております。昨日は、貴重なお時間を拝借させていただき誠にありがとうございました。これからも、引き続きよろしくお願いいたします。

「借りる」を上司に伝える際の敬語表現

親しい間柄の上司であれば、「○○さんのデスクを借ります」のように丁寧語表現で問題はありません。もしくは、「○○さんのデスクをお借りします」のように、謙譲語表現を使うこともできます。親しい間柄では、あまりに丁寧すぎる敬語表現を使うと相手にバツの悪い思いをさせることもあるため、フランクな敬語表現を使うのが適切です。立場の高い上司に対しては、「お借りする」や「拝借する」という表現を使うのが適切です。「部長のお知恵をお借りできますでしょうか」や、「社長のお時間を少し拝借してもよろしいでしょうか」などと表現できます。

「借りる」の敬語での誤用表現・注意事項

「借りる」の敬語表現で気を付けるべきは二重敬語です。「お借りさせていただく」という表現は丁寧な敬語として使われることがありますが、一つの文章に「お」と「させていただく」という2つの謙譲語が含まれているため二重敬語となります。一般的に使われているため受け入れられることも多いですが、言葉遣いに厳しい人には「礼儀を知らない」と思われることもあるので気を付けましょう。「借りさせていただく」が適切な表現です。

同様に誤用されやすいのが、「借りる」の敬語の言い換え表現の「拝借する」です。「拝」がついており「拝借」自体が謙譲語であるため、「社長から書類をご拝借しました」という表現は間違いとなります。「ご」をつけて無駄に丁寧な表現にする必要はなく、「社長から書類を拝借しました」と表現するのが適切です。また、「社長が拝借くださった」などの表現を聞くこともまれにありますが、謙譲語はへりくだった表現であるため目上の人の動作に対して使うのは厳禁です。「社長から○○を拝借しました」と、自分が主語になる表現をするのが正解です。

そのほか、「拝借する」という敬語表現は誤解を生みやすい意味合いがあるため使い方には注意が必要です。「歓送迎会のために部の積立金からお金を拝借しました」という表現は、お金を盗んだというニュアンスに聞こえてしまうこともあります。誤解を与えないように、「歓送迎会のために部の積立金からお金をお借りしました」と表現するのが適切です。特にお金がからむ場合は、借りたという事実をはっきり明言することが重要になります。

「借りる」の敬語での言い換え表現

お借りします
お借りいたす
お借りいたします
お借りしたく存じます
借りさせていただきます
お借りいただければ幸いです
お借りいただければ幸甚に存じます
お借りいただけますと幸いです
お借りいただけましたら幸いです
お借りいただけますと幸甚に存じます
お借りいただけましたら幸甚でございます
お借りいただけましたら幸甚に存じます
拝借する
拝借したく存じます
拝借いただければ幸甚に存じます
拝借いただけますと幸いです
拝借いただけましたら幸いです
拝借いただけますと幸甚に存じます
拝借いただけましたら幸甚でございます
拝借いただけましたら幸甚に存じます
お貸しいただく
お貸しいただきたく存じます
お貸しいただけますと幸いです
お貸しいただけましたら幸いです
お貸しいただけますと幸甚に存じます
お貸しいただけましたら幸甚でございます
お貸しいただけましたら幸甚に存じます

《謝る》の敬語

「謝る」の敬語表現

「謝る」の敬語表現は「お詫びする」です。さらに丁寧な言い回しにするときは、「ます」や「いたします」を最後に付け加えます。実際に、目上の相手に使うなら「お詫びします」や「お詫びいたします」とするのがマナーです。

「謝る」の敬語の最上級の表現

「お詫びする」の最上級は「お詫び申し上げる」です。丁寧語を付け加えて、「お詫び申し上げます」として使われるのが一般的です。さらに、「申し訳ない」という気持ちを強調するのであれば「心よりお詫び申し上げます」「つつしんでお詫び申し上げます」といった形にします。重大な失敗や、相手が非常に怒っている場合は「お詫びする」ではなく、「お詫び申し上げる」を使うのが礼儀です。

「謝る」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメールや手紙でも「お詫びします」「お詫びいたします」といった敬語表現は使われてきました。以下、例文を挙げていきます。

「まずは、昨日の遅刻の件についてお詫びいたします。ご迷惑をおかけしてまことに申し訳ございませんでした」 「先ほどのメールにて、ご担当者様の氏名を取り違えておりました。ここに訂正し、お詫びいたします。申し訳ございませんでした」

また、取引先やお客様へのお詫びは、今後のためにとても重要です。最上級の敬語を使ってしっかり誠意を伝えましょう。以下、例文です。

「商品の不良によって、お客様にご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。今後、このようなことがないように努めます」 「弊社の社員の問題行動について、つつしんでお詫び申し上げます。現在、しかるべき対応を社内で検討しているところです」

「謝る」を上司に伝える際の敬語表現

上司への敬語では、「お詫びします」や「お詫びいたします」が使われる傾向にあります。確かに、最上級の敬語にするなら「お詫び申し上げます」とするのが正しいといえます。ただ、「お詫び申し上げます」はかなり堅苦しい表現なので、文書以外ではあまり使用しません。口頭で上司にお詫びをするなら「お詫びします」や「お詫びいたします」でも通用します。それでも、相手がかなり怒っている際には「お詫び申し上げます」に言い換えるのもひとつのマナーです。

「謝る」の敬語での誤用表現・注意事項

「お詫びします」と似た意味で、「お詫びさせてください」という言い回しもあります。これは日本語として間違っているわけではありません。ただ、敬語表現が求められる場にふさわしくないので、使わないようにしましょう。なぜなら、「~させてください」とお詫びを相手に求めるのは、誠実さに欠ける行為だからです。お詫びとは相手の許可に関係なく、自発的に行うべき礼儀です。許可を求めている時点で本気ではないと思われかねません。なお、どうしても「~ください」という形を使うのであれば、「お詫びさせてください」よりも「許してください」が適切です。

次に、ビジネスシーンで「お詫びします」や「お詫びいたします」を使うのであれば、その後の対応も添えましょう。取引先やお客様は、お詫びの言葉だけ聞けば満足するわけではありません。それからどのような対応をして、反省の意思を示すのかに注目しています。単に「お詫びします」と書かれているメールや手紙では、かえって相手を怒らせてしまうでしょう。「心よりお詫び申し上げます。早急に商品を発送いたしました」というように、具体的な対応まで示すことが大事です。

そのほか、メールや手紙でよくあるトラブルが、「何についてのお詫びか見えづらくなること」です。特に、謝られた側が問題に気づいていないケースでは、急に「お詫びいたします」と伝えられても混乱してしまいます。お詫びすることになった原因まで書かなければ、敬意がしっかり込められているとはいえません。「昨日の会議での失態についてお詫び申し上げます」「資料の間違いについてお詫びいたします」といった形で書くのが正しい文章です。

「謝る」の敬語での言い換え表現

「お詫びします」の類語としては、「謝罪します」が挙げられます。いずれも「間違いを認めて反省の意思を示している」という意味で、かなり似た語句だといえます。ただし、使うべきシチュエーションが微妙に異なるので注意しましょう。基本的に「お詫びします」は、大きな損害や危険がないときに使う言葉です。たとえば、失言で相手を怒らせたり、遅刻で人を待たせたりしただけでは、損害や危険はありません。それでも相手は不愉快になっているので、「お詫びします」と伝える必要があります。

一方、失言によって取引が破談になったり、遅刻で相手が利益を逃したりすれば、損害や危険がある状態です。こうなると、「お詫びします」よりも「謝罪します」のほうが相応しいといえるでしょう。

そのほか、「お詫びします」の類語には「陳謝します」「謝意を表します」などがあります。これらは「お詫びします」ほど頻繁には使われておらず、会話中に登場すると違和感のある語句です。ただ、日本語ではあえて難しい言葉を使って、特別な気持ちを伝える手法もあります。文書で強い反省を示すのであれば、これらの言い換え表現を用いることも可能です。

《持ってきてください》の敬語

「持ってきてください」の敬語表現

「持ってきてください」の敬語表現は、「お持ちください」です。「持つ」に尊敬を表す「お」をつけて尊敬語にしただけのシンプルな敬語表現ですが、口語・文語どちらでも使用できる汎用性の高い表現です。「本日中に書類をお持ちください」などと目上の人に対して使えます。そのほかにも、「お持ちいただけますでしょうか」、「お持ちいただきたく存じます」など、より丁寧な表現もあります。メールやビジネス文書では、口語よりも丁寧な表現をするのがマナーであるため、「お持ちくださいますようお願い申し上げます」や「お持ちいただきますようお願いいたします」などの敬語表現を使うのが一般的です。

「持ってきてください」の敬語の最上級の表現

「持ってきてください」の敬語表現は、語尾につける言葉で敬意の度合いが変わります。最もカジュアルな表現は「お持ちください」で、「いただきたく存じます」や「くださいますようお願い申し上げます」などの表現と合わせ「お持ちいただきたく存じます」や「お持ちくださいますようお願い申し上げます」のように丁寧度を上げることができます。その中でも、最上級の敬語表現が「お持ちいただけましたら幸甚の至りに存じます」となります。「幸甚の至りに存じます」は、感謝を表現する最上級の敬語表現となるため、持ってきてくれたことに対する最大限の敬意を示すことができます。

「持ってきてください」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「持ってきてください」は相手に依頼する表現であるため、敬語表現であっても少し威圧的な印象を与えることがあります。そのため、「恐れ入りますが」や「お手数をかけますが」などのクッション言葉を適切に使用するのがベターです。

メール例文:お世話になっております。〇月〇日に弊社で開催する展示会の招待券をお送りいたしました。お手数をおかけしますが、当日は招待券を忘れずにお持ちくださいますようお願い申し上げます。

メール例文:平素よりお世話になっております。明日の打ち合わせの件ですが、恐れ入りますが事前にお渡しした資料をお持ちいただきたく存じます。何卒宜しくお願いいたします。

メール例文:いつもお世話になっております。お差し支えなければ、添付の申請用紙に必要事項をご記入のうえ、本日中にお持ちいただければと存じます。

「持ってきてください」を上司に伝える際の敬語表現

「持ってきてください」を上司に伝える際には、「お持ちください」という敬語表現を使うのが適切です。親しい間柄の上司から、かなり立場が上の上司まで幅広く使える敬語表現となります。社長や会長など、より敬意を示す敬語表現を使うべき相手には、「お持ちくださいませ」や「お持ちいただけますでしょうか」などの表現が使えます。ただし、敬意を示したいからといって、「お持ちいただけましたら幸甚に存じます」のような最上級の敬語表現を使う必要はありません。文語表現のように丁寧すぎる口調は、敬意を示すどころか相手を馬鹿にしているような印象を与えることがあるので注意しましょう。

「持ってきてください」の敬語での誤用表現・注意事項

「持ってきてください」の敬語の言い換え表現として、「ご持参ください」という表現が広く使われています。しかし、「持参」は「持って参る」という意味であるため、自分の行動をへりくだって表現する謙譲語になります。そのため、本来は相手に「持ってきて下さい」とお願いするのに適切な表現ではありません。言葉に厳しい上司には、「ご持参ください」ではなく「お持ちください」と言うのが無難でしょう。ただし、文化庁の指針において使っても問題ないと解釈されているため、ビジネスシーンで使うことも可能です。また、自分が「持って行く」場合に「持参する」という表現を使うのは、文法的にもビジネスマナー的にも問題ありません。

また、「持ってきてください」の敬語表現である「お持ちいただけますでしょうか?」は、二重敬語のように感じる人もいるでしょう。「いただけますでしょうか」は、敬語表現が重なっているように聞こえますが、謙譲語の「いただく」+丁寧語の「ますでしょうか」から成り立つ敬語度合いを高める丁寧表現です。そのため、「お持ちいただけますでしょうか?」とビジネスシーンで使ってもマナー違反ではなく、むしろ上級の敬語表現となります。

「持ってきてください」の敬語での言い換え表現

・お持ちください
・お持ちくださいませ
・お持ちいただければと存じます
・お持ちいただきたく存じます
・お持ちいただければ幸いです
・お持ちくださいますようお願い申し上げます
・お持ちいただきますようお願いいたします
・お持ちいただけましたら幸甚に存じます
・ご持参ください
・ご持参くださいませ
・ご持参いただきたく存じます
・ご持参いただければと存じます
・ご持参いただけますか?
・ご持参いただけますでしょうか?
・ご持参いただきますようお願い申し上げます
・ご持参くださいますようお願いいたします
・ご持参賜りますようお願い申し上げます
・ご持参のほどお願い申し上げます
・ご持参いただければ幸いです
・ご持参いただけましたら幸甚に存じます
・ご用意ください
・ご用意くださいませ
・ご用意いただきたく存じます
・ご用意いただければと存じます
・ご用意いただければ幸いです

《思います》の敬語

「思います」の敬語表現

「思います」は、「思う」と「ます」が結びついた敬語です。ワ行五段活用の動詞「思う」の連体形である「思い」に、丁寧語の助動詞「ます」が結びついています。敬語の種類は丁寧語です。「思う」の主な意味は、「なんらかのことについて考えを持つ」「(人やものごとについて)心にかける」「(人やものごとを)慕う、愛する」などがあります。

敬語には尊敬語、謙譲語、丁寧語がありますが、「思います」は自身の行為なので敬語を使う場合は謙譲語か丁寧語になります。謙譲語は自分を下げて相手を立てる、敬意を表す表現です。丁寧語は、対等な立場で相手に敬意を表します。 「思います」の謙譲語は「存じます」です。ザ行の上一段活用する動詞「存じる」の連用形に、丁寧語の助動詞「ます」がついた形です。「存じる」は謙譲語「ます」は丁寧語なので、敬語の種類が違うため二重敬語にはあたりません。

「思います」の敬語の最上級の表現

敬語の最上級の表現は、最高敬語で尊敬語の一種です。最高敬語は天皇や皇族、国王や王族に対してのみ使います。「思います」の場合は、自身が思っているので謙譲語のみです。「思います」の謙譲語は「存じます」ですが、天皇や皇族に対してはわざと同じ種類の敬語を一語に重ねた二重敬語にして敬意を表するとされています。そのため「思います」の最上級の表現は二重敬語となり、「存じる」と「奉る」の二重の謙譲語を使った「存じ奉る(ぞんじたてまつる)」です。謙譲の動詞「存じる」の連用形に、謙譲の意味を持つ補助動詞「奉る」がついています。

「思います」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「思います」はもともと敬語なので、ビジネスに使ってもなんの問題もありません。社内メールなどでは「出欠の返信は、15日までにお願いしたいと思います」のような使い方ができます。しかし得意先やあまり接することのない上司など、改まって伝えたいときには謙譲語の「存じます」を使うとより敬意を表することができます。「先日ご提案いただいた日どりの件でございますが、15日で差し支えないと存じます」「創立50周年を迎え、今後もいっそう精進して参りたいと存じます」などのように使うことが可能です。

「存じます」はこちらの意向を伝えるだけでなく、先方に感謝を伝えるときにも使うことができます。「御社からの的確なご提案、大変ありがたく存じます」「弊社のサービスを採用いただき、大変光栄に存じます」といった使い方です。

相手に依頼する場合は、「出欠の返信は、15日までにお願いしたく存じます」「弊社のサービスについて、ご意見をいただけましたら幸いに存じます」などのように使えます。

「思います」を上司に伝える際の敬語表現

「思います」は敬語の丁寧語なので、係長や課長などの身近な上司であれば「子供の熱が下がらないので、今日は休ませていただければと思います」といった使い方も可能です。接することの少ないかしこまった関係の上司であれば、より敬意を表することができる謙譲語の「存じます」が適切でしょう。「A社との業務提携については、慎重に判断した方がよいかと存じます」「会議の締めくくりとして、社長からお言葉をいただきたく存じます」「今回のプロジェクトに加われたことを、光栄に存じます」などのように使えば失礼がありません。

「思います」の敬語での誤用表現・注意事項

「思います」の謙譲語は「存じます」ですが、「存じます」は「丁重語」と呼ばれる特殊な謙譲語です。一般的な謙譲語が自分を下げることで敬意の向かう相手を立て敬意を表すのに対し、丁重語は相手に対する敬意ではなく聞き手や読み手に対して敬意を表しています。つまりフォーマルな場や、聞き手や読み手がいることを前提として使う言葉です。対象が人に限定されず、ものや場所に対しても使えるのがポイントです。 一方、「思います」のもう1つの謙譲語として「存じ上げます」があります。こちらは「存じる」に、複合語を作る動詞の「上げる」がついた言葉です。「上げる」の意味は謙譲です。「上げる」がつくことによって、一般的な謙譲語となり敬意の向かう相手に敬意を表します。

「存じ上げる」が使えるのは、人に対してだけです。

ビジネスを含むフォーマルな場では、「課長のおっしゃることは、ごもっともだと存じます」も「課長のおっしゃることは、ごもっともだと存じ上げます」も間違いではありません。前者の場合はフォーマルな場なので丁重語が使われたと考えられ、課員など他にも聴衆がいる可能性があります。後者は、課長に対して敬意を表した謙譲語です。しかし、対象がものや場所の場合は注意が必要です。「津市は、三重県の県庁所在地だと存じ上げます」は、対象が人ではないので間違いとなります。

「思います」の敬語での言い換え表現

「思います」の敬語での言い換えは、通常の意味では「考えます」「信じます」「判断します」などがあります。「(人やものごとを)思います」という使い方なら、「気にかけています」「心配しています」などのように言い換えることが可能です。「好きです」「慕っています」「愛しています」などという意味の場合もあります。

謙譲語では、「存じ上げます」や「存じます」と言い換えることができます。

《伺う》の敬語

「伺う」の敬語表現

「伺う」は、「聞く」「尋ねる」「訪問する」という三つの意味を持つ言葉で、それぞれ「概要は伺っています」「少々お伺いします」「明日お伺いします」などと使い分けることができます。いずれも相手に対する自分の行為を示していますが、その関係性の中で相手への敬意を表したいときに使うのが「伺う」です。「伺う」は自分を低めて相手を立てる謙譲語に分類され、この言葉単体ですでに敬語表現として成立しています。

「伺う」の敬語の最上級の表現

「伺う」の最上級の敬語表現としては、「伺います」などが考えられます。これは謙譲語の「伺う」に丁寧語の「ます」を加えることで、相手によりいっそうの敬意を表した表現です。一方「伺う」には「聞く」「尋ねる」「訪問する」という複数の意味がありますので、それぞれの意味ごとに最上級の敬語表現へと言い換えることもできます。

「聞く」の場合であれば、頭を低くしてしっかり聞くという意味の「拝聴する」を「拝聴いたす」と謙譲表現に変換し、これに丁寧語の「ます」を加えた「拝聴いたします」が最も敬意のこもった言い方となります。「尋ねる」は、「教えてもらう」という意味なので「ご教示いただく」と謙譲表現にしたうえで、「いただく」をさらに丁寧な謙譲表現「賜る」に言い換えて丁寧語の「ます」を加え、「ご教示賜ります」とするのが適当です。「訪問する」は「行く」の最も丁寧な謙譲語「参上いたす」に変換後、丁寧語の「ます」を加えて「参上いたします」とすれば、最上級の敬語表現とすることができます。

「伺う」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「伺う」をビジネスシーンで使用する場合は「聞く」「尋ねる」「訪問する」の内容ごとに「詳細はご担当者様から伺っております」「次回会議では、生産性の向上をテーマにお考えを伺いたいと存じます」「下記日程で伺いたいと存じます」などと使います。また「伺う」という言葉を使わず、「聞く」「尋ねる」「訪問する」の意味を前面に出して、「詳細はミーティング時にお聞きしますので、まずは概要をお知らせください」「次回プレゼンの実施方法について、何点かお尋ねしたいと存じます」「ご訪問いたします際には、事前にお知らせ申し上げます」などと使用することもできます。

「伺う」を上司に伝える際の敬語表現

目上の人である上司に対して「伺う」を使用すれば、この言葉自体が謙譲語として敬意を込めた表現であるため、問題なくコミュニケーションをはかることができます。また文書でも口頭でも違和感なく使用できる便利な言葉でもあります。ただし「伺う」は複数の意味を持つ敬語ですので、言葉足らずになって誤解を生むようなことがないよう注意しなくてはなりません。たとえば「取引先には、私が伺いますか」と聞かれたとして、上司は、取引先へ訪問することを聞かれているのか、あるいは取引先へ何かを質問することを聞かれているのか、問われている意図がよくつかめないため、混乱してしまうでしょう。

ここは「取引先に出向くとすれば、私が伺うことになりますか」「取引先への問い合わせですが、私が伺うのがよいでしょうか」と質問内容が明確になるよう言葉を選んではっきりと伝えることが求められます。「伺う」の意味を間違いなく理解してもらうためには、前後の説明を充実させることが必要であり、かつ不可欠なのです。

「伺う」の敬語での誤用表現・注意事項

「伺う」はこれ自体が謙譲語ですので、この言葉にこれ以上謙譲語を重ねると「二重敬語」という文法上の誤りとなってしまいます。謙譲語をつくる一般形には「お…する」「お…申し上げる」などがあり、これにあてはめて「お伺いする」「お伺い申し上げる」とする用例を見かけることがありますが、二重敬語のルールからいえばこれは誤用にあたります。しかし現在は、「お伺いする」も「お伺い申し上げる」もさまざまなシーンで広く浸透していることから、慣用表現として使用が認められている言葉遣いとなっています。とはいえこれは二重敬語にほかならず、本来は間違った使い方であるということは知っておくべきでしょう。

「伺う」に関しては「伺っていただく」「伺ってくださる」という誤用も散見されます。「伺う」は謙譲語である以上、立てるべき相手には使うことができません。しかしそれにもかかわらず、「いただく」「くださる」といった尊敬語と混用して文意の通らない表現にしてしまっているのです。たとえば「先生が学生に伺ってくださる」という表現は、先生が自分を低め学生を立てている点が不適切で、結果として敬語がねじれて破綻した表現になっています。「伺う」はへりくだる言葉であることをしっかりと認識しておかなくてはなりません。

「伺う」の敬語での言い換え表現

「伺う」は、意味の上から「聞く」「尋ねる」「訪問する」の三通りに分けられますので、それぞれの内容に沿って言い換えを行います。「聞く」は「お聞きする」「拝聴する」のほかに、つつしんで聞くという意味の「拝聞する」という言い換えが可能です。「尋ねる」という意味の場合は、「お尋ねする」「ご質問する」などとなります。また「訪問する」の意味であれば「ご訪問する」「参上する」のほかにも「参る」「お邪魔する」などの言葉が敬語としての言い換え表現となるものです。

《行ってらっしゃい》の敬語

「行ってらっしゃい」の敬語表現

「行ってらっしゃい」の敬語表現は「行ってらっしゃいませ」となります。「行ってらっしゃい」は「行く」の連用形、その後に言葉を続けるための接続助詞「て」、「来る」の尊敬語「いらっしゃる」の命令形からなる言葉で、「行って来て下さい」という意味です。外出する人に向けた挨拶言葉で、「行って、そしてまた無事に帰って来て下さい」という願いが込められています。

「らっしゃい」の部分が命令形ですが、日本語では丁寧な命令形は目上の人に使っても問題のない敬語に当たります。つまり「行ってらっしゃい」自体が敬語となります。しかし日常に定着しすぎていて、目下の人にも親しい関係の人にも使える挨拶言葉ということもあり、敬語だという印象は薄いかもしれません。目上の人に対して「行ってらっしゃい」とそのまま使うのは失礼に当たると感じる人もいます。

より丁寧に表現したい場合は「行ってらっしゃいませ」とすると良いでしょう。「ませ」は「いる」の丁寧語「ます」の命令形です。語尾が丁寧な命令形となり文法的には「らっしゃい」と変わりませんが、「~ませ」という言い方は店員が接客で用いる言葉遣いとして耳なじみのある人が多く、丁寧な印象が強い言葉です。語感も柔らかくなるので、目上の人に対しても安心して使える表現と言えるでしょう。

「行ってらっしゃい」の敬語の最大級の表現

「~ですので(ですから)、どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ」とすると最も敬意のこもった表現になります。前半の「~ですので(ですから)」には、相手を気遣う言葉が入ります。例えば天候について、「暑いですので、お気をつけていってらっしゃいませ」「午後から風が強くなるそうなので、お気をつけて行ってらっしゃいませ」などです。雨天には「お足元が悪いですから」としても良いでしょう。

「行ってらっしゃい」は本来、相手が無事に帰るように祈る言葉で、心遣いです。ですので相手のことを気遣っている、親身になっているような言葉を添えることでより丁寧に、敬意をこめて表現することができます。

「行ってらっしゃい」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「行ってらっしゃいませ」は一般的にメールや手紙の冒頭では使いませんので、用件を記述した後に締めくくりの言葉として用いるのが良いでしょう。

・3時から外回りでしたね。行ってらっしゃいませ。
・出張のご予定をお知らせいただいてありがとうございます。どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ。

より丁寧にしたい場合に添える気遣いの言葉としては、天候についての事柄が使いやすく無難です。また相手が出張などで長い期間出かける場合は体調を気遣う言葉に替えることもできます。

・ご出張先は、来週は雨の予報でしたね。寒くなりますからお気をつけて行ってらっしゃいませ。
・今回の海外出張は2週間とのことですが、どうぞお体に気をつけて行ってらっしゃいませ。

仕事ではなく旅行やレジャーに出かける旨のメールや手紙などを受け取った場合は、楽しんで下さいという一言を添えて返しても良いでしょう。

・家族でご旅行なんてうらやましいですね。お子様も喜んでいらっしゃるでしょう。お気をつけて行ってらっしゃいませ。楽しんできて下さいね。
・週末はゴルフのご予定でしたね。ハイスコアを期待していますよ。お気をつけて行ってらっしゃいませ。

「行ってらっしゃい」を上司に伝える際の敬語表現

上司に対しては「行ってらっしゃいませ」とするのが適当です。かしこまった関係の上司に対しては「雨ですのでお気をつけて行ってらっしゃいませ」などと表現するとより丁寧です。口頭では気遣いに相当する言葉を長くしすぎないように気を付けましょう。「行ってらっしゃい」はこれから外出しようとしている人にかける言葉です。「雨ですので」「寒いので」「お足元が滑りやすいので」など端的な言葉にして、くどい言い回しは避けるようにしましょう。

心遣いのひと言ですが、特に上司に対しては「~ですが」ではなく「~ですので(ですから)」という言い方が無難です。「ですが」は否定形となり「雨ですがお気をつけて」とすると「外はあいにくの雨ですが」という意味が加わります。「(私は建物の中にいますけど)外は雨ですがお気をつけて」という皮肉めいたニュアンスが微量ですが含まれるため、上司が言葉に敏感なタイプだと失礼と受け取られる場合があります。どちらの言い方も文法的に間違っているわけではないのですが、言葉から受ける印象が違う場合があるので覚えておきましょう。

「行ってらっしゃい」の敬語での誤用表現・注意事項

「行ってらっしゃい」には「行って、帰って来て下さい」の意味があるため、往復する相手にかける言葉です。一般的に、戻ってくる予定のない相手に対しては使いませんので気をつけましょう。引っ越しをする人や、転勤する上司に「行ってらっしゃいませ」と声をかけるのは不自然な表現となります。ただし、転居や転勤をしても一定期間が過ぎれば戻ってくる予定がある場合は「行ってらっしゃいませ」などの敬語表現で見送ることができます。

「行ってらっしゃい」の敬語での言い換え表現

・行ってらっしゃいませ
・お気をつけて行ってらっしゃいませ
・どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ
・お足元が悪いのでお気をつけて行ってらっしゃいませ
・行ってらっしゃいませ、お気をつけて
・行ってらっしゃいませ、お気をつけになって下さい
・早く帰って来て下さいね
・ご無事でお戻り下さい
・お帰りをお待ちしております
・お帰りをお待ち申し上げております

《行く》の敬語

「行く」の敬語表現

「行く」を丁寧語にしたい時は「行き」という連用形にし、さらに助動詞「ます」を付けて「行きます」という形にします。「行く」を尊敬語にしたい場合は未然形「行か」の形に変えて、そこに尊敬の意味を含む助動詞「れる」を付けて「行かれる」と表しましょう。他にも「おいでになる」や「いらっしゃる」も「行く」の尊敬語です。「行かれる」「おいでになる」「いらっしゃる」のどの尊敬語を使っても、相手の動作を高めて敬意を表すことができます。一方、「行く」の謙譲語は「参る」と「伺う」です。これらは自分の動作に使って、間接的に相手に敬意を表すことができる表現になります。

「行く」の敬語の最上級の表現

「行く」の尊敬語には「行かれる」「おいでになる」「いらっしゃる」がありますが、さらに敬意を表せるのが「お越しになる」です。尊敬語はどれも基本的に目上の人に使いますが、「お越しになる」は特に身分の高い人に使うべきものになります。ビジネスシーンでは、取引先の人に対して使う場合が多いです。「参る」「伺う」よりも敬意を示すことができる謙譲語もあります。出かけるという意味のある名詞「参上」に、助動詞「する」を付け「参上する」と表現すれば「行く」の最上級の謙譲語となるのです。また「する」を謙譲の意味を含む「いたす」にして、「参上いたす」と表現するとより丁寧な印象になります。

「行く」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「行く」の丁寧語「行きます」は、受け取る相手が同僚や部下などの場合にビジネスメールや手紙で使用可能な敬語表現です。例えば「明日の歓迎会には私も行きます」といった使い方をします。一方「行く」の尊敬語は、目上の人宛てのビジネスメールや手紙で使うのが一般的です。例えば取引先へのメールで、「明日の合同会議には貴社の営業担当の方も行かれますか」という使い方ができます。「行かれますか」の部分を、「おいでになりますか」や「いらっしゃいますか」に変えても良いでしょう。

また、行くのが取引先の社長など特に身分の高い人の場合には、「明日の合同会議には貴社のA社長もお越しになりますか」といったように、最上級の尊敬語を使います。ただし目上の人に対するメールや手紙であっても、行くのが自分である場合は謙譲語を使う必要があるのです。例えば取引先に行く時は、「後日貴社に伺います」と表現します。メールや手紙を受け取る人が社長など身分の高い人の場合には、「後日貴社に参上いたします」といったように、最上級の謙譲語を使うようにしましょう。他にも「参上いたす」は、「後日お詫びに参上いたします」のようなお詫びのメールなどにもよく使われます。

「行く」を上司に伝える際の敬語表現

上司に対して、自分が上司のところまで行くことを伝えたい場合、謙譲語「伺う」を使いましょう。メールや電話などでは、「今からそちらに伺います」とします。一方上司に対して、自分が取引先に行くことを伝えたい場合には謙譲語「参る」を使います。例えば「明日私がA社に参ります」という使い方があります。他にもビジネスシーンでは、上司自身が行くのかどうか確認したい場面もよくあるでしょう。

そのような場合には「行く」を尊敬語表現にします。「出張には社長も行かれますか」や「明日の歓迎会には社長もいらっしゃいますか」などといったような使い方があります。「おいでになられますか」を使用しても良いでしょう。最上級の尊敬語を使って、「お越しになりますか」と表現することもできます。

「行く」の敬語での誤用表現・注意事項

「行く」の尊敬語「行かれる」を使う場合には、紛らわしくなる可能性もあるため注意しましょう。理由は「行く」を未然形にして「れる」を付けると、受身や可能を表す動詞にもなるからです。可能動詞として「行かれる」を使うことは少ないのですが、受身として使うことはよくあります。例えば「連れて行かれた」と表現した場合、尊敬ではなく受身です。尊敬語だと分かりやすくするためには、「おいでになる」や「いらっしゃる」を使うようにしましょう。また、「行かれる」は「行く」の尊敬語の中でも敬意の度合いが低いため、目上の人に対して使うのは避けた方が無難とも言えます。

謙譲語「伺う」と「参る」の使い分けにも注意が必要です。「伺う」は自分の行き先にいる相手に敬意を示す謙譲語なので、例えば上司のところに行く時には使えます。しかし取引先に行くことを上司に伝える場面で、「A社に伺います」と使うのは間違いです。これでは上司に対して敬意を表すことができません。この場合に聞き手である上司に対して敬意を表すためには、「参る」を使うのが適切です。他にも「伺う」に「お」を付けて「お伺いする」と表現する場合には注意します。「お」には謙譲の意味があり、二重敬語となるため使うのは避けて下さい。

「行く」の敬語での言い換え表現

「行く」の尊敬語「行かれる」や「いらっしゃる」「おいでになる」「お越しになる」には、他に言い換えられる表現はほとんどありません。謙譲語「伺う」や「参る」は、どこかに訪問することをへりくだって言いたい時に使う言葉「お邪魔いたす」や「お邪魔させていただく」に言い換えできます。「お邪魔する」の「する」を謙譲の意味を含む「いたす」に変えたのが「お邪魔いたす」です。「お邪魔させていただく」は、相手の許可を得て行動する意味を含む「させていただく」を付けることで、へりくだって相手への敬意を表現しています。

《考える》の敬語

「考える」の敬語表現

「考える」は、物事について判断することや、あれこれ思いめぐらすこと、工夫することなどを意味する言葉です。日常生活だけでなく、ビジネスシーンでもよく使われるため、敬語表現はしっかり把握しておきましょう。丁寧語にする時は、語尾に「ます」を加え、「考えます」といった表現にします。最もよく使われる表現ですが、目上の人と話す場合や、その時の状況によっては不向きな場合もあるため、そのような時には謙譲語や尊敬語を選ぶようにしましょう。謙譲語の場合は、「拝察する」「愚考する」などの表現を使います。一方、尊敬語には、「お考えになる」や「ご高察くださる」などの言葉が挙げられます。

また、相手に「考えてほしい」という自分の気持ちを伝えたい時に、「考えてください」とお願いすることがありますが、丁寧語では、相手によっては失礼だと受け取られてしまう心配もあります。目上の人や、お客さまなどに対して使う場合は、気を付けるようにしましょう。このような場合は、「ご検討ください」や「ご高察ください」などの言葉を使う方が望ましいです。

「考える」の敬語の最上級の表現

「考える」を最上級の敬語表現にする場合は、「ご高察いただければと存じます」や「ご高察ください」などの表現を使います。「高察」は、すぐれた推察のことを指し、相手の事を敬って使う褒め言葉です。相手が「考える」時に使い、自分が「考える」時には使いません。また、似た言葉としては、「推察」の尊敬語である「賢察」もあります。「賢察」は、こちらの事情を相手に察してほしい時に使うことが多いです。なお、「ご高察」や「ご賢察」は、「高察」「賢察」自体が敬語のため、しばしば誤用表現と指摘されることがあります。しかし、これらの言葉は慣用的に使われており、例外とされているため、使用しても問題ありません。

一方、自分が「考える」場合には、「考える」の謙譲語である「愚考する」という言葉を使います。「愚考する」は、メールや手紙など、書き言葉として用いられることが多い言葉で、「○○の件につきましては、ご要望に添えるよう愚考いたします」などのように使います。

「考える」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「考える」の敬語を、ビジネスメールや手紙で使った例文は以下の通りです。

「〇〇株式会社○○部○○様

いつもお世話になっております。
この度、弊社では新商品を発表する運びとなりました。
こちらは、御社によくご利用いただいている△△という商品の性能を、さらに向上させたものです。
サイズ変更などにも柔軟に対応可能な商品ですので、ご高察いただければと存じます。
お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

株式会社○○○○部○○」

「○○株式会社○○部○○様

平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
この度は、○○の件についてご検討いただき、誠にありがとうございます。
○○様のご希望に添えるよう、精一杯努めさせていただきます。
早速ですが、詳細の資料を送付させていただきます。
お忙しいところ大変恐れ入りますが、ご査収のほど何卒よろしくお願いいたします。

○○株式会社○○部○○」

「考える」を上司に伝える際の敬語表現

普段から親しくしている上司の場合は、「考えます」という丁寧語の表現を使っても問題ありませんが、目上の人や、厳しい人が上司の場合には、注意が必要です。そのような場合に使える敬語表現としては、「拝察いたします」や「検討させていただきます」などが挙げられるでしょう。これらは、自分が考える時に使う言葉です。上司から「~について、ちょっと考えてほしい」などと要求され、返事する時に使いましょう。

そして、上司が何らかの判断や検討を行い、そのことについて触れたい場合には、「ご高察いただき」や「ご検討いただき」といった言葉を使います。例えば、「ご高察いただき、ありがとうございました」などのように伝えましょう。なお、「拝察」や「高察」は、口語というより、メールや手紙などで使われることの多い書き言葉です。使用するシーンに合わせて最適な言葉を選ぶようにしましょう。また、上司の考えを知りたい場合には、「お考えをお聞かせください」といった表現を使っても良いでしょう。

「考える」の敬語での誤用表現・注意事項

相手に、「どうお考えになられますか」と聞くのは、誤用表現になるため注意が必要です。この場合は、「お考えになる」と「~られる」を組み合わせた、二重表現になってしまうためです。「どうお考えでしょうか」や「どうお考えですか」などの表現を使うようにしましょう。丁寧な表現にしようと思う気持ちばかり募って、結果的に誤用表現となってしまうケースもあるため、注意が必要です。

「考える」の敬語での言い換え表現

「考える」の敬語表現には、以下のようなものが挙げられます。

・考えます
・考えております
・検討します
・拝察します
・拝察いたします
・拝察申し上げます
・愚考します
・愚考いたします
・お考えになる
・お考えください
・お考えでしょうか
・お考えですか
・考えていらっしゃる
・ご高察くださる
・ご高察賜り
・ご高察なさる
・ご高察される
・ご高察になる
・ご検討ください
・ご一考ください
・ご一考いただけますか

《構いません》の敬語

「構いません」の敬語表現

「構いません」は「問題ない」という意味を持つ表現で、「ます」が組み込まれているため、一応は丁寧な敬語に分類されます。しかし、相手に許可を与えたり、許容してあげたりするような表現であるため、目上の人に対する敬語としては相応しくありません。上から目線の言葉として、失礼だと捉えられる恐れがあります。したがって、「構いません」と同様に「問題ない」という意味を持っている、「差し支えありません」という表現を使用するようにしましょう。

「差し支えありません」は、「問題ない」を丁寧にした表現です。「問題」や「支障」を格式張らせた言葉の「差し支え」と、「ない」を丁寧にした「ありません」を組み合わせた形です。尊敬語でも謙譲語でもないただ丁寧なだけの表現ですが、「構いません」とは違い、許可や許容といった意味合いを持たないのが特徴です。また、格式張った表現ということで、ビジネスシーンでも使用される場合が多く、目上の人に使用しても問題はありません。

「構いません」の敬語の最上級の表現

「構いません」を最上級の敬語として表現する場合、「差し支えありません」をより丁寧にした「差し支えございません」を使用すると良いでしょう。基本的な意味や、丁寧語である点は変わりませんが、「ありません」を「ございません」に置き換えると、より強い敬意を示すことができます。そのため、ビジネスシーンで顧客を相手にする場合、「差し支えありません」よりも「差し支えございません」を使用した方が良いです。

「構いません」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

ビジネスメールや手紙で、「構いません」の敬語として「差し支えありません」を使用する場合、例文は「先日ご提案くださった内容で差し支えありませんので、進めていただけますでしょうか」「改めてお見積もりいただく際に、料金が多少上がっても差し支えありません」となります。基本的には相手と対等に近い関係の際に、「差し支えありません」を使用します。相手が顧客のように遥か目上の場合は「差し支えございません」を用い、例文は「結論は急ぎませんので、じっくりお考えいただいても差し支えございません」「気になることがありましたら、お気軽にご連絡くださっても差し支えございません」といった形になります。

「構いません」を上司に伝える際の敬語表現

「構いません」を上司相手に使用する場合は、「差し支えありません」という表現で問題ないです。「構いません」が上から目線の表現になってしまう点は、上司相手でも変わらないため、たとえ上司と親しい間柄であっても使用するのは好ましくありません。「差し支えありません」と「差し支えございません」を、自身と上司との立場の差に応じて使い分けると良いでしょう。ただ、親しい間柄である上司に対して「差し支えありません」を使用すると、少し距離を置く形になってしまう恐れがあります。そのため、上司の人柄次第では、「問題ないです」や「大丈夫です」といった砕けた表現が適している場合もあります。

「構いません」の敬語での誤用表現・注意事項

「構いません」の敬語表現として「差し支えありません」を使用する場合、「お差し支えありません」という形にしないよう注意しましょう。相手に強い敬意を示そうとするあまり、尊敬と謙譲を混同してしまう場合に多いパターンです。「お差し支え」という表現自体は、ビジネスシーンでも使用されることがあります。しかし、「お」が付くのは相手の問題や支障となる「差し支え」に対してのみです。「構いません」の代わりとして使用する「差し支えありません」の「差し支え」は、自身の問題や支障であるため、「お」が付くのは不適切です。もちろん、「お差し支えございません」という表現も間違いです。

「構いません」の敬語での言い換え表現

「構いません」の敬語には、「問題ありません」という表現もあります。一般的に広く使用されている表現で、ビジネスシーンでも使用可能な表現です。「構いません」のように上から目線の意味は含まないため、目上の人に対して使用しても失礼にならずに済みます。そして、「問題ございません」という、より丁寧な形にして、強い敬意を示すことも可能です。さらに、より砕けた表現が必要な場合は、「問題ないです」という形にもできます。

また、「大丈夫です」という表現も、「構いません」の敬語として使用することができます。砕けた印象を与えやすいため、使用できる場面は限られます。けれど、「です」を伴った丁寧語ではあるので、ビジネスシーンで使用されることは多いです。敬語表現が必要な場面では、上から目線の表現になってしまう「構いません」よりは、「大丈夫です」を使用した方が、相手への印象は悪くなりにくいです。

ただ、「問題ございません」や「大丈夫です」よりも、「差し支えございません」の方が丁寧な表現です。そのため、ビジネスシーンで強い敬意を示すのであれば、「差し支えございません」に統一しておいた方が無難です。「問題ありません」や「大丈夫です」は、相手との距離感を縮めたい時など、敢えて少し砕けた表現をする場合に使用すると良いでしょう。

《見る》の尊敬語

「見る」の尊敬語表現

「見る」を尊敬語で表現すると、「ご覧になる」となります。「ご覧」の部分に尊敬語の要素が含まれていて、目上の相手に対しても使用できる表現です。そして、「ご覧なさる」という表現もあり、尊敬の度合いや意味などは「ご覧になる」と大差ありません。ただ、「ご覧なさる」の方が、かしこまった印象を与えやすいです。また、尊敬を意味する助動詞「れる」を用いて、「見られる」という表現にすることも可能です。「ご覧になる」や「ご覧なさる」よりは尊敬の度合いが低めなので、砕けた表現をする時に適しています。

「見る」の尊敬語の最上級の表現

「見る」を最上級の尊敬語にする場合、「ご覧くださる」という表現が適しています。「見る」を「見てくれる」という表現にしてから、「見る」を「ご覧」、「くれる」を「くださる」という風に、それぞれ尊敬語に変える形です。「見る」は、主語を目上の相手にした場合、「見てくれる」に置き換えても、特に問題ないことがほとんどです。そのため、「見る」の直接的な尊敬語として、「ご覧くださる」は使用可能です。そして、「ご覧くださる」は、元の表現が「見てくれる」という相手を立てる形である上に、「ご覧」と「くださる」という2つの尊敬語が含まれています。したがって、相手に対して強い敬意を示すことができる最上級の尊敬語表現です。

「見る」の尊敬語のビジネスメール・手紙での例文

「見る」の尊敬語として「ご覧になる」を使用する場合、例文は「お客様はすでに資料をご覧になっているようです」「過去のデータをお送りすることは可能ですが、ご覧になりますか」となります。「ご覧なさる」を使用する際の例文は「参考画像を添付いたしましたので、ぜひご覧なさいませ」「当日は作業の現場をご覧なさりますでしょうか」といった形です。「ご覧なさる」に「ます」を付け足して、より丁寧な形にした場合、「ご覧なさります」と「ご覧なさいます」の2通りに分かれますが、どちらを使用しても問題はありません。「ご覧なさいます」は本来の表現である「ご覧なさります」が訛った形ですが、一般的に使用されています。

「見られる」を使用するのであれば、「添付した資料がお役に立てると思いますので、ぜひ見られてくださいませ」「先日お送りしたメールは見られましたでしょうか」のような例文となります。「ご覧くださる」を使用した場合の例文は、「後ほど企画書をお送りいたしますので、どうぞご覧くださいませ」「パンフレットを同封いたしましたので、ご覧くださりましたら幸いでございます」といった形です。「ご覧ください」も「ご覧なさる」と同様に、「ます」を付けて丁寧にした際には、「ご覧くださります」と「ご覧くださいます」のどちらを選択しても問題ないです。

「見る」を上司に伝える際の尊敬語表現

上司に対して「見る」を尊敬語にする場合、「ご覧になる」を使用するのが一般的です。「ご覧になる」は目上の人に対して問題なく使用できる尊敬語である上に、堅苦しい印象を与えにくいです。そのため、立場が離れている上司から身近な上司まで、幅広い相手に対して使用可能です。また、親しみを込めて接してくる身近な上司に対してであれば、砕けた表現である「来られる」を使用できる可能性があります。さらに、立場が離れている上司相手だと、最上位の尊敬語である「ご覧くださる」が適している場合もあります。身近な上司に対しては、「ご覧くださる」は他人行儀や慇懃無礼といった印象を与えかねないため、避けておいた方が無難です。

「見る」の尊敬語での誤用表現・注意事項

「見る」を尊敬語の「ご覧になる」にする場合、二重敬語の「ご覧になられる」にならないように注意しましょう。「ご覧になる」は単体で成立している尊敬語であり、そこに尊敬の要素を持った助動詞「れる」が合わさると、過剰な敬語表現になってしまいます。それを二重敬語と呼び、一般的には慇懃無礼な印象を与えたり、冗長な表現になったりするという理由で、好ましくないとされています。

より強い敬意を示そうとした場合、「ご覧になる」ではなく「ご覧になられる」という表現をしてしまう恐れがあります。また、「ご覧になられています」や「ご覧になられましたか」という風に、進行形や疑問形にした際に、意識していなければ、「ご覧になられる」を使用してしまうことは珍しくありません。いずれも文法として好ましくないため、使用しないように心掛けましょう。

「見る」の尊敬語での言い換え表現

「見る」の尊敬語には、「注視なさる」や「展望なさる」といった表現があります。「注視」は「じっと見る」という意味を持っている言葉で、相手がただ漠然と見ているのではなく、対象を細かく調べたり、内容を把握したりしながら見ている様子を指す際に使用します。「展望」は、景色など、遠くにあるものを眺めるという意味合いを持っています。「注視」と「展望」はいずれも、単体では尊敬の要素を持たないため、別の尊敬語と組み合わせる必要があります。そして、どちらも尊敬すべき対象が、見ている様子を客観的に表す言葉であるため、「くださる」ではなく「なさる」を使用するのが一般的です。

《見てください》の敬語

「見てください」の敬語表現

人に何かを見てもらいたい時に使う「見てください」は、日常生活でもよく耳にする丁寧な言い回しです。しかし、相手に十分な敬意を示す表現ではないため、ビジネスシーンなどで目上の人に対して「見てください」と言いたい時には、相手に失礼のないよう、別の敬語に置き換える必要があります。

「見てください」の敬語表現としては、「見る」の尊敬語である「ご覧になる」を用いて、「ご覧ください」とするのが一般的です。語尾を疑問形にかえて「ご覧くださいますか」としたり、自分の動作をへりくだる謙譲語を組み合わせて「ご覧いただけますか」とすると、相手に猶予を与えるやわらかいフレーズとなり、謙虚な気持ちを表すこともできます。

また、「ご覧ください」をさらに丁寧に伝えたい場面では、「ご覧いただけますと幸いに存じます」「ご覧いただけますようお願い申しあげます」というように言葉を付け加えることで、敬意を高めることが可能です。そのほかには、「見る」の類語である「目を通す」の尊敬語を用いて「お目通しください」としても、適切な敬語表現となります。

「見てください」の敬語の最上級の表現

「見てください」の敬語には、目上の相手に対してしっかりとした敬意を表すことができる「ご高覧ください」という特別な表現があります。「高覧」には、他人が何かを見ることを敬う意味合いがあり、「何卒ご高覧くださいませ」「ご高覧賜りたく存じます」といったフレーズで用いると、さらにかしこまった印象を与えることも可能です。フォーマルな場にも相応しく、身分の高い相手にも安心して使える敬語表現と言えます。

また、「ご高覧ください」の類語には、「ご清覧ください」「ご賢覧ください」という表現もあります。いずれも、相手を敬う気持ちが強く伝わる最上級の敬語です。ただし、普段の生活ではあまり耳にしない堅い表現なので、手紙やメールなどの書き言葉として用いるのがよいでしょう。

「見てください」の敬語のビジネスメール・手紙での例文

「添付ファイルでお送りした写真をご覧ください」
「詳細につきましては、お手元にあるパンフレットをご覧になってください」
「商品のサンプルをお持ちしますので、ご覧いただけますと幸いです」
「資料を作成いたしましたので、お目通しくださいますか」
「会議の議事録でございます。ご高覧いただきますようお願い申しあげます」
「本メールに企画書を添付いたしました。ご高覧賜りますようお願いいたします」
「弊社からの提案資料でございます。ご清覧いただければ幸いです」
「お時間のある時にご賢覧くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします」

「見てください」を上司に伝える際の敬語表現

上司に「見てください」と言いたい時には、「ご覧ください」を使うのが妥当です。高い役職の上司や、年齢の離れた上司に対しても問題なく使える敬語表現で、十分に相手を立てることができます。ただし、直属の上司など、日頃からやりとりが多い身近な存在に対しては、定型の敬語ばかり用いていると、かえって不自然になってしまう場合があります。日々の業務の中で、上司と円滑にコミュニケーションをとるためには、会話の流れや目的に合わせて、適切な言い換え表現を選ぶことも大切です。

例えば、「ご覧ください」の代わりに「ご確認ください」を使うと、内容まできちんと見てほしいという気持ちが伝わりやすくなります。逆に、時間をかけずにさっと目を通してもらう程度で構わないのであれば、「お読みください」や「ご一読ください」でも十分です。また、参考にしてもらいたい資料を渡す時などには「ご参照ください」、ビジネス上での重要な確認事項がある時には「ご査収ください」といった言い回しも活用できます。シチュエーションに応じて上手に表現を使い分けることで、上司との良好な関係を築いていくことにもつながるでしょう。

「見てください」の敬語での誤用表現・注意事項

目上の人に「ご覧ください」を用いる時に、丁寧にしたいという気持ちで「ご覧になられてください」「ご覧いただけますでしょうか」と言い換えるのは、文法的に間違いです。どちらも、尊敬語+尊敬語、丁寧語+丁寧語というように、同じ種類の敬語が重なって使われている二重敬語にあたり、ビジネスシーンでは不適切とされています。くどい表現だと不快に感じる人もいるので、言い換える時には正しい敬語表現になるよう心掛けましょう。

また、よくある間違い表現として、「拝見してください」というフレーズがあります。「拝見」は相手を敬う時に使う敬語ではありますが、自分の動作をへりくだるための謙譲語にあたるため、目上の人の行為に使うのは誤りです。人前で緊張している時などに、焦って言い間違えることのないように注意しましょう。

「見てください」の敬語での言い換え表現

ご覧ください
ご覧くださいませ
どうぞご覧ください
ご覧になってください
どうかご覧になってください
ご覧になってくださいませ
ご覧くださいますか
ご覧いただけますか
もしよろしければご覧くださいますか
よろしければご覧いただけますか
ご覧いただけますようお願いいたします
ご覧いただけますようお願い申しあげます
ご覧いただけますと幸いです
ご覧いただけますと幸いに存じます
ご確認ください
ご査収ください
お読みください
ご一読ください
ご高覧ください
ご高覧くださいませ
ご高覧くださいますか
ご高覧いただけますか
ご高覧いただけますと幸いです
ご高覧いただけますと幸いに存じます
ご高覧賜りたく存じます
ご高覧賜りますようお願い申しあげます
ご清覧ください
ご清覧くださいませ
ご清覧くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします
ご賢覧ください
ご賢覧くださいませ
ご賢覧いただけますよう、お願い申しあげます