新語時事用語辞典とは?

2023年1月30日月曜日

公金チューチュー

「公金チューチュー」とは、俗に、NPO法人や一般社団法人などが補助金・活動助成金の名目で国や地方公共団体から必要以上の金銭(公金)を巧妙にせしめること、ないしは、そのための仕組みや枠組みなどを指す意味で用いられる表現である。

2022年後半からTwitterを中心に論議や指摘が活発化している、いわゆる「某NPO法人の不正会計疑惑」が、単に当該法人や国や自治体の会計監査が杜撰であるという問題にとどまらず、特定の団体やグループが公金をせしめやすい仕組み(公金チューチュースキーム)に作り変えつつあるのではという疑惑に発展している。公の根強い隠蔽体質も改めて露わになりつつある。

2023年1月27日金曜日

エモい

「エモい」とは、「感情が揺さぶられるような、または感動がこみ上げてくるような、何とも表現しがたい気持ち」の意味で用いられる若者言葉である。 

基本的には「感動的」「胸を打つ」「心にしみる」「趣深い」「アツい」「琴線に触れる」「ぐっとくる」というような、複雑で抽象的な感動を表現する。 あるいは、単に「スゴい」「ヤバい」くらいの意味で用いられることもある。全面的にポジティブ(肯定的)な表現である。

「エモい」の意味を端的に分かりやすくいえば、「うまく言葉にできないが心が動かされるようだ」ということである。 「エモい」とは「えもいわれぬ感覚」である、という説明も、言い得て妙ではある。

「エモい」はさまざまな感情をひっくるめた抽象的な表現である。その意味では「趣がある」「しみじみする」「えも言われぬ」「もののあはれ」のような表現に近い。 古語の「あはれ」や「をかし」にも通じるものがある、「エモい」は現代の「あはれ」である、といった指摘もある。

「エモい」はポジティブな表現ではあるが、単に嬉しい、ハッピー、感動的で泣ける、といったシンプルな気持ちの表現として用いられることは多くない。むしろ、郷愁、哀愁、切なさ、甘美な物悲しさ、もの寂しさ、感傷、ノスタルジー、センチメンタル、アンニュイ、といった「どこか悲哀にも似た感情」を伴う感動こそが「エモい」と表現されやすい。

若者言葉としての「エモい」は、2000年代後半にはすでに使われ始めていたとされる(使用例がある)が、一般にも浸透してよく使われるようになったのは2010年代半ば頃からである。 とりわけ2016年に三省堂が選ぶ「今年の新語」で「エモい」が第2位となったことは、広い層に知られるきっかけになった。

「エモい」の語源

「エモい」の語源は、「英語のエモーショナルが語源である」「音楽用語の Emo に由来する」という2通りの説明が可能である。

基本的には「エモーショナル」を日本語化した表現である

「エモい」は、英語の形容詞 emotional(エモーショナル)を語源とする表現といえる。

 「エモーショナル」のような外来語が日本語の中で用いられる場合、言葉は省略されやすく、かつ、日本語の活用語尾がつく。形容詞なら「-い」をつけて形容詞化される。

こうした日本語化の流れに従えば、自ずと「エモい」という表現になる(これは「エロい」「グロい」「チルい」「テクい」などと同じ要領である)。

音楽ジャンルの「emo」が最初の主な使用例である

「エモい」という表現は、ポピュラー音楽のジャンルである「emo」に関する話題を通じて広く使われるようになったとされる。その意味では「emo」を「エモい」の語源とすることもできる。

音楽ジャンルとしての「emo」は、おおむね1990年代~2000年代に人気を博した、ハードコア・パンクの系譜につらなる音楽である。 心の叫びを率直につづった歌詞や哀調を帯びた旋律(いわゆる「泣きのメロディ」)を特徴とする。

ジャンルとしての「Emo」は「イーモ」または「エモ」と読まれるが、Emo の曲を評して「エモい」と表現することも多々あった。

ちなみに「Emo」というジャンル名そのものは英語圏で成立した呼び名である。「emotional hardcore」が略して「emocore」となり、さらに略されて「emo」となった。

 「エロくてキモい → エモい」は別系統の表現である

すでに廃れた表現であるが、かつて(2000年代前半あたり)「ギャル語」として「エモい」という言い方が用いられたことがある。

この場合の「エモい」は「エロい」と「キモい」の合成語である。つまり「エモーショナルな感じだ」という今日の「エモい」の意味合いとは別種の語義である。 同音異義語の類といってもよい。

この「エロキモい」という意味の「エモい」を、今日における「エモい」の語源として捉えるのは無理がある。

「えもいわれぬ → エモい」ではない

「エモい」は「えもいわれぬ(得も言われぬ)」ような感覚のことである、と説明されることがある。

これはとんちの効いた上手い洒落ではある。しかしながら「えもいわれぬ」を「エモい」の語源とする言説には無理がある。

「エモいの語源は《得も言われぬ》である説」は、いわゆる民間語源(語源俗解)である。もっともらしく聞こえはするが十分な根拠がない。

「エモいを流行らせた人は落合陽一」が定説

「エモい」という表現を考案した人はもはや特定が困難であるが、世間一般に「エモい」という表現を浸透させた立役者としては、落合陽一氏の名が挙げられることが多い。

コラムニストの荒川和久が、自身のブログでこのことを明言しており、このブログの発言が実質的に「落合陽一がエモいを広めたインフルエンサーである」説の証言となっている。

 「エモい」の使い方

「エモい」は若者言葉らしくさまざまな語形に活用される。

文法的な使い方

「エモい」は形容詞として扱われ、形容詞として活用される。
  • 冬の夜の空はさぞエモかろう(未然形) 
  • 90年代のドラゴンボールはエモかった(連用形) 
  • セーラームーンのアニメは今みてもエモい(終止形)
  • おしゃれでエモいイラストの壁紙をください(連体形)
  • エモければアイコンでも何でもいいです(仮定)
  • スターバタフライのエモさを布教したい
  • CUBE JUICE の MV とか超エモくない?
  • ジブリとか80年代アニメはエモに満ちてる
  • 特に「耳をすませば」とかはエモすぎる
  • うわっ!エモっ! エッッモ! 
  • これ超エミぃくね?

「エモい」の使いどころ

「エモい」の主な使いどころは、「うまく言葉にできない感動」を表現したい場面である。 「エモい」は、郷愁、哀愁、悲壮感、懐かしさ、愛しさ、切なさ、心強さ、高揚感、胸がときめく感覚、などを表現する言い方として特に用いられやすい。

「エモいもの」の例

  • 自然の風景や花鳥風月(空、風、雲、桜、紅葉、海辺、等々)
  • 夜や薄暮の雰囲気(夜空、茜色の空、夜道の灯り、工場夜景、等々)
  • 青春ぽいもの(集合写真、高校3年の大会・学園祭、制服で踊ってみた動画、学園モノの物語)
  • レトロなもの、遠い昔を偲ばせるもの(昭和レトロ家具、平成レトロファッション、チェキ、写ルンです、廃墟、廃線、コケやツタに覆われた人工物、腐海の森)
  • 切ない物語、甘酸っぱい恋物語、友情がアツい物語
「エモい」か「エモくない」かという判断の基準は人それぞれである。 たとえば「工場夜景」や「蒸気機関車」などは、エモいと思う人にはかなり刺さるが、特段これをエモいとは思わない人もそれなりにいる。

「無限列車編」における煉獄さんの最期は、おそらく誰が観てもエモいが、そもそも劇場版鬼滅の刃に興味がない人にはエモさを理解されまい。

「BTSはエモい」と評されやすい。曲がエモい(エモい曲が多い)、ライブアクトもエモい、アナログ写真風のスナップショットもエモい。

BTSと同様にヒゲダンもクリープハイプもAdoの歌声もエモい。ドルヲタにとっては自担のすべてがエモい。

「エモい」の言い換え表現

「エモい」は具体的に表現できる

「エモい」は「名状しがたい(うまく言い表せない)感動」を形容する抽象的な表現である。たいていの場合、より具体的な表現で言い表せる。
  • 切ない
  • 泣ける
  • 愛おしい
  • 温かみがある
  • 郷愁を感じる
  • 懐かしい気持ちになる
  • 哀愁がある
  • 感傷的になる
  • ノスタルジックだ
  • 風情がある
  • 情緒豊かな

「エモい」を抽象的なまま言い換えることもできる

「エモい」と同じく抽象的であり「エモい」の言い換えに使える表現も多々ある。
  • 胸が熱くなる
  • こみ上げるものがある
  • 琴線に触れる
  • ぐっとくる
  • キュンってなる
  • 感動的だ
  • しみじみする
  • 趣深い
  • チルい
  • ヤバい
  • いとをかし
  • いとあはれ
具体的な言葉に置き換えるにせよ、抽象的な表現に言い換えるにせよ、現代の若者言葉としての独特のニュアンスは多かれ少なかれ損なわれる。たとえば「琴線に触れる」は文語的であり若者の普段遣いの言葉の中には放り込みにくい。

「エモい」は「エモい」としか表現できない場合がある

「エモい」の代用となり得る言い換え表現は多々あるが、あえてそれらの表現を使わず「エモい」と表現するのは、「陳腐化した表現を避ける」ような意図や効果があるとも解釈できる。

あるいは、あまり具体的な表現で述べてしまうとしっくり来ない感情を、できるだけ生々しい状態に保つために、あえて「エモい」という抽象的な(ある意味で漠然とした)表現が好んで用いられている、という解釈も可能かもしれない。

「エモい」を「エモい」としか表現しない傾向には危うさもある

「エモい」ものは「エモい」としか表現できないとしても、何でもかんでも「エモい」と形容してしまう傾向が行き過ぎると、語彙力の貧困を招くのではないか、と危惧する声もある。

「エモい」という表現は幅広く使えて便利である。その分、より詳細で具体的な、状況に適した表現を用いる能力の停滞を助長する可能性はある。

「エモい」を英語でいうと

「エモい」を英語で表現するなら、「moving(心が動かされる)」「stirring(感動的な)」のような表現がおそらく最も幅広い文脈でうまく対応する。

より具体的に表現するならば「sentimental(感傷的な)」「nostalgic(郷愁を感じる)」「melancholic(愁いを帯びた)」などの表現も使える。
  • moving(心が動かされる
  • subtle(言葉に表せない)
  • stirring(感動的な)
  • touching(琴線に触れる)
  • nostalgic(郷愁を感じさせる)
  • melancholic(愁いを帯びた)
  • sentimental(感傷的な)

「emotional(エモーショナルな)」は対応する場合もしない場合もある

「エモい」の語源である英語の形容詞「emotional」には、「感動的な」「感情に訴えかけるものがある」といった意味がある。

たとえば「泣ける本」や「感情を揺さぶる曲」といった表現には「emotional」が使える。

「emotional」には「感情的な」「情緒的な」および「情にもろい」「感情に流されやすい」といった意味もある。この点は必ずしも日本語の「エモい」には対応しない。

2023年1月26日木曜日

R.I.P.

「R.I.P.」は、「Rest In Peace(安らかに眠れ)」の略であり、亡くなった人の「冥福を祈る」という意味で用いられる省略表現である。インターネット上では訃報に接した際の「合掌」「ご冥福を」といった意味合いのメッセージとしてよく用いられる。

英語圏では「R.I.P.」は墓碑によく刻まれる。この場合の「R.I.P.」は日本語でいう「ここに眠る」のニュアンスと解釈される。

「R.I.P.」の語源はラテン語であり、そもそもは「Requiescat In Pace」の略である。もっとも、意味は「Rest In Peace」と同じである。「Rest In Peace」は、後付け的に「RIP」の略前の文言として当てはめられた字句(いわゆる逆頭字語、バクロニム)である。

英語の基本動詞の rip の意味

「rip」は「引き裂く」という意味の、英語の基礎的な動詞でもある。

「引き裂く」という意味の動詞としては「tear」もあるが、「rip」の方が暴力的・力任せといったニュアンスが強い。

「rip off」は「騙し取る」「詐取する」「法外な額の金銭を要求する」という意味の句動詞である。

その他の略称としての「RIP」の意味

  • Radically Invasive Projectile:G2リサーチ社が開発した銃弾の名称。直訳すれば「劇的侵襲弾」。他の「RIP」と区別するために「RIP弾(RIP bullet)」と呼ばれることが多い。
  • Reactor Internal Pump:原子力発電の用語で、圧力容器の中に設置して冷却水を循環させる装置のことである。日本語では「インターナルポンプ」と呼ばれる。改良型沸騰軽水冷却水炉(ABWR)において実現した設計である。
  • Raster Image Processor:ラスターイメージプロセッサ。ベクタデータをラスタデータに変換するシステムのこと。印刷・出版の分野で用いられる。
日本のヒップホップグループ「RIP SLYME(リップスライム)」の「RIP」は、結成当初のメンバーの活動名の頭文字を取ったものであり、特に「冥福を祈る」的な含意はない。

2023年1月25日水曜日

サブスク

別名:サブスクリプション
別名:subscription

「サブスク」とは、一定の利用料を支払うことで一定の期間だけ商品やサービスが提供される(利用できる)という方式のサービスまたはビジネスモデルのことである。

「サブスク」は「サブスクリプション(subscription)」の略である。「定額制」と訳されることもある。

「サブスク」を分かりやすくいえば「定額で使い放題の月額制サービス」のような形態である。サブスクは、商品を個別に購入する「買い切り」方式、ならびに、利用状況に応じて料金が加算される「従量制」方式などと対比される。

サブスクリプションの方式で販売される内容は、製品やサービスそのものではなく利用権である。つまり、消費者は対価を支払って製品やサービスを購入し、自分の所有物にするというわけではなく、対価を支払って製品やサービスを利用できる権利を取得して使う、というものである。

「サブスクリプション」の言葉の意味

サブスクリプション(subscription)は、英語の動詞「サブスクライブ」(subscribe)の名詞形である。サブスクライブは「購読」「予約購読」などと訳されることの多い名詞である。IT・Web上のサービスの関連では、「RSSフィードの購読」や「YouTubeのチャンネル登録」、あるいは、ゲーム配信プラットフォームの「Steam」におけるユーザーが作成した追加コンテンツ(MOD)を適用する、といったアクションを指す意味で用いられている。

サブスクリプションと定額制の違いは?

サブスクリプションの方式は、基本的には「定額制で使い放題になるサービス」と表現してもあながち間違いではない。しかし、従来の「定額制・使い放題」とは別種の概念として理解しなければならない。

「定額制」は、基本的には「従量制(従量課金制)」と対比される概念である。例えば、通信・通話のサービスでは、従量制の場合は利用したデータ量や通話時間の分だけ料金が加算される。サービスを全く利用しなければ対価(料金)は最小限に抑えられるものの、使い続けると料金は際限なく嵩んでいく。他方、定額制の場合は、サービスを全く使用しなくても所定の料金を支払う必要があるが、どれだけ使い続けても料金は変わらない。

「サブスクリプション」は、定額で使い放題という意味ではいわゆる「定額制」と同様だが、基本的には「買い取り」方式と対比される概念である。従来は販売されていた(購入し所有した上で使ってた)ものを、もの自体を販売せずに一定期間に限り自由に使える権利を販売することがサブスクリプションである。

サブスクリプション方式で提供されるサービスの例

サブスクリプションはデジタルコンテンツの提供と相性のよいビジネスモデルである。例えば、音楽や映画・映像、電子書籍、ソフトウェア、ゲームといったコンテンツは、既にサブスクリプションによる提供方式が一般的な選択肢の1つになっている。

動画配信サービス大手の「YouTube」や、音楽配信サービス大手の「Spotify」は、広告を挿入し利用にわずかな制限を加えつつ無料で視聴可能にするビジネスモデルと、有償で広告その他の制限を撤廃するサブスクリプション型のビジネスモデルを併存させている。

EC(ネット通販)大手のAmazonが提供している「Amazon Prime(Amazonプライム)」の場合、音楽や映画・ドラマ、雑誌・書籍、さらに購入商品の「お急ぎ便」等々が使い放題である。ある意味サブスクのスイートとでも言うべきサービスである。

さらにサブスクリプションは、クラウドベースのコンテンツ提供方式(SaaS)との相性が抜群である。アドビシステムズ(Adobe Systems)は、クリエイター向けのソフトウェアスイートを開発・提供している企業として知られているが、2010年代前半にいち早く従来型の「販売」方式を終了し、サブスクリプションサービスとしての提供に完全移行したことで話題になった。2020年時点ではオフィスソフトから日本語入力ソフトまで多種多様なソフトウェアをクラウド化し、かつサブスクリプションサービスとして提供している。

昨今では、デジタルコンテンツに限らず、現実社会におけるサービスのサブスクリプション化も進んでいる。事業分野によって形態は異なるが、おおむね「定額で利用し放題」「レンタル(リース)」あるいは「定期便」に類するビジネスモデルとして分類される。

例えば、契約期間中なら何度でも通える美容室やカフェ、ワークスペース(作業場)などが挙げられる。契約期間が過ぎたら返却する前提で使える服、あるいはブランド物のバッグ、家電製品。定期的に届けてくれる絵本やオモチャ、食品、化粧品、などなども挙げられる。2019年にはトヨタ自動車が、日本国内で自動車をサブスクリプション方式で提供するサービスを開始している。

サブスクリプションのメリットとデメリット

サブスクリプションにはさまざまな利点(メリット)がある。他方で難点(デメリット)がないわけでもない。

消費者が享受できるサブスクリプション方式の最大の利点は「定額で使い放題」という点である。所定の金額を払えば思う存分に使い倒すことができる。とりわけ音楽・映画・書籍について膨大な種類の作品を物色する場合、いちいち購入・レンタルする方法とは比較にならないほど安価、かつ手軽に利用できるようになる。

サブスクリプション方式のサービスでは「購入や処分に付随する雑事から解放され」「商品が常に最新に保たれる」という点も見逃せない大きな利点である。デジタルコンテンツのサブスクの場合、コンテンツ自体は提供する側(事業者)によって管理される。そのため、常に最新版、あるいは最良の状態に維持される。ソフトウェアは随時、改良・アップデートが施され、最新に保たれる。音楽・映画・雑誌などのコンテンツは続々と新規タイトルが追加される。音質や画質が向上される場合もあるだろう。車のサブスク(Kinto)の場合は保険加入、自動車税の支払い、車検・法定点検、乗り換え時の査定・処分などのような手続きの手間が大幅に削減できる。

現物を扱うサブスクリプションサービスの場合、配送サービスが付帯していたり、膨大な種類がある商品の中から手頃なものを選んでくれたりすることも多く、店頭に赴く手間や自分で選ぶ手間が省ける。

サブスクリプションサービスの難点になるかもしれない部分としては、「商品そのものを所有できない」という点が挙げられる。いま利用しているサービスが今後も永続的に続いていくとは限らず、提供者側の業績不振などによってサービスが終了する可能性は多かれ少なかれ必ず残る。もしサービスが終了してしまった場合、手元には何も残らない。終了時点でCDが廃盤になっていたり、小説が絶版になっていたりした場合、改めて入手することは困難である。

また、サービスをほとんど利用しなくなっても、まったく利用しなくなっても、利用契約を終了させない限りは延々と一定額を支払い続けることになる、という懸念も難点となり得る。徐々に利用しなくなっていって契約終了の手続きをすっかり忘れ去るという場合もあり得る。場合によっては、このような無用な支払いを発生させることを狙った悪質な事業者の被害に遭うかもしれない。実際、「無料お試し期間」を謳ってスマホアプリ(スマートフォン向けアプリ)をインストールさせ、試用期間の終了後から高額な利用料金が課されてしまうという悪質なアプリの存在が報告されている。契約の解除を忘れてアプリをアンインストールしてしまった場合、契約の解除が必要だったと気づくことも困難になる。

2023年1月24日火曜日

ストイック

英語:stoic

「ストイック」とは、「(目標への到達のために)自分を厳しく律する」という禁欲的で求道的な姿勢や生き方を指す意味で用いられる表現である。主に「ストイックな人」「ストイックな性格」「ストイックに鍛錬に励む」といった言い回しで用いられる。

ストイックの語源

ストイック(stoic)という言葉は、そもそもは、古代ギリシア哲学における「ストア派」という学派の思想(「ストイシズム」)のことである。つまり元々は「ストア派の~」という意味の形容詞である。

ストア派の哲学・思想とは、おおまかに言えば「自律・自制によって道徳的・倫理的な幸福を求めようとする考え方」であるといえる。幸福を追求するにしても、その幸福は欲望・情動に囚われない冷静さの獲得によってこそ実現される、というわけである。

英語のstoicにも、日本語の「ストイック」と同様、「禁欲的な」程度の意味合いで用いられることがある。ちなみに、英語では先頭大文字でStoicと表記すると(固有名的扱いになるため)「ストア派哲学の」という意味合いの語意になる。

ストイックの関連語

古代ギリシアには、ストア派とほど同時代に、ストア派とは対照的に「幸福はむしろ《快》と密接に結びつくものである」と唱えた学派もあった。この快を重視する学派は「エピクロス派」(エピキュロス派)という。エピクロス派の立場は(さまざまな曲解を経て)今日では「快楽主義」「享楽主義」を指す語として用いられるようになっている。

2023年1月23日月曜日

最強寒波

読み方:さいきょうかんぱ
「最強寒波」とは、シベリアで発達した寒気団が南下し冬型の気圧配置が特に強まるタイミングで10年に一度と言われるレベルの大雪や吹雪をもたらす極度に強い寒波のことを意味する表現。なお、特に規模の大きい寒波は「大寒波」と呼ばれる。

MTFBWY

「MTFBWY」は主に「検討を祈る」「幸運を祈ってます」「いっそうの活躍をお祈りしております」のような意味で用いられる表現である。映画「スターウォーズ」シリーズに登場する名台詞「May the force be with you.(フォースと共にあらんことを)」の略。映画の台詞を念頭に置いて日常会話に転用した表現といえる。

プロパガンダ

「プロパガンダ」とは、個人や集団を特定の主義や思想・教義・原理などに誘導したりそれらの行動を広めたりするための計画的で政治的な意図を持った宣伝活動のことを意味する表現。

プロパガンダとは、プロパガンダの意味

プロパガンダ(propaganda)とは、意図をもって、特定の主義や思想に誘導する宣伝戦略のこと。大きな括りでは国家においての思想統制や政治活動、小さな括りでは宣伝広告や広報活動もプロパガンダに含まれる。語源はラテン語で、「繁殖する」「種をまく」「挿し木」「接ぎ木」などの意味がある。

プロパガンダの語の由来

プロパガンダの語は、1622年のカトリック教会の布教において設立された、布教聖省(Sacra Congregatio de Propaganda Fide)に由来している。宗教的な思想を宣伝し、その思想に誘導するための手段として、プロパガンダという概念が出来上がった。プロパガンダという語自体は本来、中立的なものであったが、この宣伝活動は対立するプロテスタント教会には大いに脅威になったため、偏った考え方への誘導、情報操作による洗脳といった意味合いを持つようになり、プロパガンダは軽蔑的に使われる語に変わっていった。

プロパガンダの種類、分類

プロパガンダにはホワイトプロパガンダ、ブラックプロパガンダをはじめいくつかの分類がある。ホワイトプロパガンダとは、事実に基づく、情報の発信源がはっきりしているものである。ブラックプロパガンダとは、虚偽、誇張のある、情報の発信源が不明、または故意に隠されているものである。

プロパガンダと思想統制

思想統制の例は、戦争時に国民の戦意を高めるためにプロパガンダの理念を用いた国で多く見られる。第一次世界大戦時にはイギリス、ドイツ、フランスなどで国内外での宣伝活動が盛んに行われ、第二次世界大戦においては、日本(大日本帝国)でも諸外国で行われた宣伝活動の記録を踏まえ、情報操作・宣伝を行っていた。第二次世界大戦時、日本は中国やビルマにおいて「ブラック・プロパガンダ・ラジオ」を開局し、虚偽の放送で大衆操作を実行した。この事実と効果に注目したアメリカは、日本に対するブラック・プロパガンダの研究を進め、第二次世界大戦末期にはアメリカのラジオを日本軍に傍受させて情報操作を行い、軍上層部の混乱や分裂を招くなど、成果を上げている。

プロパガンダとナチス・ドイツ

ナチス・ドイツでは、情報統制と組み合わせて大々的なプロパガンダで大衆操作を行った。ヒトラーの要請によりナチ党の宣伝全国指導者であったゲッペルスを国民啓蒙宣伝大臣に兼任したことにより、国家全体の宣伝活動が組織的に実施されることになったのである。ナチスのプロパガンダで重要な役割を果たしたのが、書籍、新聞、ポスター、教科書といった旧来のメディアに加え、ラジオや映画といった、新しいメディアの利用である。

ナチ党特性ラジオが大量生産され、従来のラジオの四分の一程度の価格に抑えられたことで、特性ラジオは国民に普及した。映画においては、映画企業を国有化し、ナチの完全管理下に置いた。ニュース映画を本編の前に挿入して戦況の報道をコントロールする一方、コメディー映画を多く制作し、国民の意識を苦境から逸らしたり、ナチの目的であるナチ党への忠誠、ヒトラーへの崇拝、ドイツのナショナリズムを、娯楽を利用して効果的に浸透させることに成功している。政治的主張、内容を単純化し、あらゆる媒体で繰り返し唱え続けることで、宣伝効果を上げたのである。

近年におけるプロパガンダ

近年のプロパガンダは、大量の情報に手軽にアクセスできる環境にあって、情報による方向付けがより容易になっている。最近の例としては、ヘイトスピーチ問題などがある。新聞媒体においては、一方的な政治批判、糾弾が行われているケースや、対立する団体間で偽情報を流し、情報操作を行っている可能性が否定できない可能性について報道されている例もある。このようにプロパガンダにおけるメディアの役割は重要なポイントである。

プロパガンダの語の用例、使い方


  • 政府にプロパガンダ疑惑
  • SNSによるプロパガンダ合戦
  • 党の声明がプロパガンダであることに気づく
  • ジャーナリズムとしてのプロパガンダ



2023年1月12日木曜日

トーンポリシング

英語:tone policing

「トーンポリシング」とは、問題を提起した人の発言に対して、その発言や主張の内容(が妥当かどうか)は度外視して、発言者の態度・論調・ものの言い方を非難・批判するような振る舞いのことである。論調(トーン)という非本質的な部分に難癖をつける論点のすり替え。

「トーンポリシング(tone policing)」は「論調(tone)を取り締まる(police)こと」という意味の英語表現である。英語圏でも用いられる表現であり、和製英語ではない。

「ポリシング」は「polishing(研磨)」ではなく「policing(治安維持に動く)」ということである。いうなれば「トーンポリシング」は通俗的にいえば「論調警察」のような意味合いの表現である。

2023年1月10日火曜日

グリ下

読み方:グリした

「グリ下」は、大阪市中央区ミナミエリアの道頓堀に架かる「戎橋(えびすばし)」の南岸に掲示された江崎グリコの看板「道頓堀グリコサイン」周辺を指す通俗的な呼び名。グリコの看板の下。

「グリ下」という呼び名は、とりわけ「少年少女がたむろする場」という意味合いで用いられることが多い。グリ下では未成年の飲酒・喫煙・喧嘩沙汰などが横行し、更には薬物や性犯罪の温床となっている懸念も指摘されている。

大阪のグリ下のような「居場所のない未成年の溜まり場となり犯罪等につながる懸念が高まっている場所」としては、東京の「トー横」も知られている。

2023年1月6日金曜日

エコテロリスト

英語:eco-terrorist

「エコテロリスト」とは、「環境破壊や動物虐待の阻止を標榜し、公の場で過激なパフォーマンス(示威行為)や破壊・妨害などの活動を行う者ども」を指す意味で用いられる表現である。「エコテロリズム」を実践する者。

「エコテロリスト」は「自然環境を破壊する(それによって自然の恩恵に与っていた者にダメージを与える)者」を指す意味で用いられることもある。

エコテロリストの例としては2000年代半ばに盛んに活動していた「シーシェパード(Sea Shepherd)」などが挙げられる。同団体は海洋生物の保護を訴える自称環境保護団体であり、日本の調査捕鯨船を追跡して船体に体当りするなどの妨害活動を行っていたことが知られている。

2020年代には、美術館に展示されている名画を標的とし、名画にトマト缶などを浴びせたり接着剤で自らの手を貼り付けたりするパフォーマンスに出る者が横行した。