2023年2月8日水曜日

失念

読み方:しつねん

「失念」とは、主にビジネスシーンやフォーマルな文脈において「うっかり忘れること」の意味で用いられる文語的な表現である。「申し訳ありません、失念していました」のように言えば「すみません、ど忘れしてました」という趣旨を真摯なニュアンスで表現できる。

「失念」は「忘れる」と言い換え可能であるが、「忘れる」はビジネスメールや公文書などで用いるには表現が軽い。やや硬い表現である「失念」を用いた方がしっくり来る。
  • お約束を失念していました
  • パスワードを失念した場合
「失念」の「失」の字は「なくす・失う」という意味の字であり、同じく「念」は「覚えておく・心に留めておく」という意味の字である。つまり「失念」は「心に留めておくべきことを失った(=忘れた)」ということである。

「忘れる」は「物をどこかに置き去りにしてしまう」という意味で用いられることもあるが、「失念」にはそのような意味合いの用法はない。

失念の類語と使い分け

失念の類語には「ど忘れ」や「忘却」「忘失」などがある。「ど忘れ」は「本当はよく知っていること(覚えておくべきこと)をウッカリ思い出せなくなっている」という意味合いで用いられる。「忘却」や「忘失」は、「すっかり忘れ去る」「頭から記憶が消失している」「忘れてしまって思い出せない」ようなさまを意味する。また「忘失」は、「記憶を失くす」以外に「物を紛失する(どこに置いたか忘れてしまう)」状況にも使える。

失念の語源

失念は仏教用語が語源である。「正念(正気・本気)を失う」という意味があり、「心を錯乱させる煩悩」のひとつを指す。「物忘れや気づきを失った心であり、仏法の教え、または仏法の言葉を忘れてしまうこと。心が入り乱れて混乱すること」を意味する。「心にあった大切なことを失う」という意味が、「忘れる」という意味に転じたとされる。

失念のよくある間違い

失念は、覚えていたり知っていたことをうっかりど忘れしてしまった時に使う言葉なので、もともと知らないことに対しては使わない。また忘れ物をしたり、物を無くしてしまったときにも使用しない。あくまでも自分が「失念」した時に使用する言葉なので、第三者に対して使用する言葉でははない。もしも第三者や目上の人が「失念」したことを表現する場合には、「失念なさる」「失念される」といった尊敬語を用いる。