2014年5月7日水曜日

積極的平和主義

読み方:せっきょくてきへいわしゅぎ
英語:proactive contribution to peace

自国のみならず、地域および国際社会の平和の実現のために、能動的・積極的に行動を起こすことに価値を求める思想。2013年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」において、日本の安全保障戦略の基本理念として掲げられた。

積極的平和主義が目指す具体的内容としては、専守防衛や軍縮などのような平和国家としての原則を維持しつつ、PKOなど国連の安全保障措置に積極的に参加することなどであるといえる。国家安全保障戦略においては、「積極的平和主義」の語は「国際協調主義に基づく積極的平和主義」の形で用いられており、国際協調を基礎に置くことが前提条件となっている。

安倍晋三首相は2013年の首相就任以後、積極的平和主義の語を度々用いて、その実現を推進している。2013年9月の国連総会での演説で積極的平和主義を強調したほか、2014年1月の所信表明演説でも積極的平和主義に触れ、「わが国が背負うべき21世紀の看板」という表現を用いた。

積極的平和主義という語は、第二次安倍内閣の発足以前から存在した語であり、2009年には保守系識者からなる日本国際フォーラムが、「積極的平和主義と日米同盟のあり方」と題した提言を行っていた。この提言では、日本が日米同盟において主体性を持つ上で、積極的平和主義の導入が必要だとされた。なお、安倍晋三は2009年当時から、日本国際フォーラムの参与に名を連ねている。

安倍晋三首相は、積極的平和主義の実現のためには、集団的自衛権と集団的安全保障に関する憲法解釈の変更が必要だとしている。また、武器輸出三原則や非核三原則についても、安全保障環境の変化に合わせるための再検討が必要だとしている。武器輸出三原則に関しては、慎重な対処のもと、2013年12月に「防衛装備品等の海外移転に関する基準」を策定するなどして、積極的な国際協力の推進に向けた取り組みを行っている。

積極的平和主義に対しては、憲法の三大原則の一つである平和主義に反するものであるという意見があるほか、憲法で認められた自衛権の逸脱に向かうのではないかとする懸念もある。

積極的平和主義は、政治学者のヨハン・ガルトゥング(Johan Galtung)が提唱した「積極的平和」(positive peace)と字面が似ているが、内容上の共通点は少ない。ガルトゥングの積極的平和における「積極的」は「positive」の訳であるが、積極的平和主義の「積極的」は、安倍首相の英語演説や外務省の英文Webページでは「proactive」の語が充てられている。

関連サイト:
日本の安全保障政策 - 外務省