2020年3月19日木曜日

コンプライアンス

 コンプライアンスとは、一般的には、企業や組織が法令や倫理といった社会的な規範から逸脱することなく適切に事業を遂行することを意味する言葉である。「法令遵守」と訳されることが多い。「企業コンプライアンス」や「ビジネスコンプライアンス」などと呼ばれることもある。

コンプライアンスという言葉は名詞として用いられ、多くの場合「守る」「遵守する」「徹底する」あるいは「違反する」といった動詞と共に用いられる。「コンプライアンス違反」「コンプライアンス研修」のような表現もよく使われる。

コンプライアンスの語源

コンプライアンスという言葉は英語の compliance をカタカナ表記したものであり、英語のcomplianceは動詞「comply」を名詞化した語彙である。complyは自動詞であり、主に「要求に応じる」「規則に従う」という意味で用いられる。たとえば「comply with one's request」は「(人)の要求を受け入れる」といった意味の言い回しである。compliance も英語では「応じること」「従うこと」に相当する意味合いで比較的幅広く用いられる語である。

日本語における「コンプライアンス」は、たいていビジネス・経営の分野、もしくは医療の分野において用いられる。ビジネスの分野におけるコンプライアンスは「法令遵守」と訳されることが多く、医療の分野におけるコンプライアンスは「服薬遵守」と訳されることが多い。「企業コンプライアンス」「服薬コンプライアンス」と呼び分けられることもある。

コンプライアンスの意義と目的

企業経営におけるコンプライアンスの最も肝要な要素は「法令の遵守」であり、事業を遂行するにあたって各種の法令を遵守する(法に抵触しない)ということである。といえる。また、法律により禁止されている事項ばかりでなく、社会の倫理的・道徳的な通念に基づくルール(社会規範)を遵守するという要素も、今日の企業コンプライアンスにおいては重要かつ不可欠な要素と位置づけられている。この「社会規範を遵守する」という事項は、「企業倫理」および「CSR」(企業の社会的責任)とも密接に結びつく要素ででもある。企業コンプライアンスはCSRと不可分の考え方といえる。

コンプライアンスの意義・目的は、ひとえに、コンプライアンスが徹底されなかった(法や規範から逸脱した)場合に生じ得る不利益・損失・責任を回避することである。

企業活動は商法をはじめ民法、刑法、証券取引法、その他諸々の法令において規範が定められている。もし経営者や従業員が、何らかの法に抵触するような行為に及んだ場合、法的責任を問われ、罰せられる。科料や損害賠償請求などによる直接的な不利益だけでなく、不祥事を起こした企業という汚名が着せられることによる社会的な信用の失墜やイメージの悪化も避けがたく、事業の継続が困難になるほど致命的な打撃となり得る。違法行為には該当しないとしても、社会一般から反感を買うようなモラルに反する振る舞いを行った場合、やはり同様の打撃を被る可能性が高い。

コンプライアンスは、それ従い遵守すること自体が成し遂げがたい偉業であるというわけでない。むしろ真っ当に事業を営んでいればおおむねコンプライアンスに則った業務遂行が可能である。しかしながら、法的知識に関する無知や、ふとした出来心などによって、コンプライアンスに抵触する行いに及んでしまう者が出てくるかもしれない。理由はどうあれ、コンプライアンスを遵守せず逸脱するようなことは、万が一にもあってはならない。そのため、万が一にもコンプライアンス違反が発生することのないように、従業員にコンプライアンス教育(コンプライアンス研修)の機会を与えたり、社内規定により行動を制限したり、といった意識付けの取組みが各社において行われている。

「コンプライアンス・オフィサー」とは

企業のコンプライアンス管理において「コンプライアンスオフィサー」と呼ばれる役職が配置される場合がある。

コンプライアンスオフィサーは、組織内でコンプライアンスが適切に管理・運用・徹底されているかどうかを監督する責任者である。特に日本コンプライアンス・オフィサー協会が実施している認定試験に合格した有資格者を指す場合が多い。協会では組織の専門性に応じて試験内容を特化させ「金融コンプライアンス・オフィサー/保険コンプライアンス・オフィサー認定試験」「JAコンプライアンス試験」「金融個人情報保護オフィサー認定試験」「AMLオフィサー認定試験」といった複数種類の試験を実施している。

「コンプライアンス」と「アドヒアランス」の違い

コンプライアンスと類似した概念に「アドヒアランス」が挙げられる。アドヒアランスは特に医療分野の、薬の服用について用いられるキーワードであり、企業コンプライアンス(法令遵守)よりも「服薬コンプライアンス」(服薬遵守)と対比されるキーワードであるといえる。

アドヒアランス(adherence)はもともと「固守」「堅守」あるいは「執着」を意味する英語である。医療分野における「コンプライアンス」は「患者が医師の指示に従い正しく服薬する」ことを指すが、「アドヒアランス」は「患者が医師の治療活動に能動的・積極的・主体的に協力し、医師に従い、治療に向けて努力する」という姿勢を指す。