2023年2月8日水曜日

ダイナミック入店

読み方:だいなみっくにゅうてん
「ダイナミック入店」とは、コンビニエンスストア等の店舗に誤って車ごと突っ込んでしまうことを揶揄した表現。コンビニエンスストアのほか、レストランや喫茶店でのダイナミック入店もある。主にアクセルとブレーキを踏み間違えてしまい、停車しようと思っているにもかかわらず事故を起こしてしまうことが多い。そのほかに飲酒運転に起因するパターンもある。当然公共物や店舗の一部を破壊してしまっているので、多額の損害賠償が請求される。

忖度

読み方:そんたく

「忖度」とは、「人の気持ちを察すること」であり、とりわけ「人の内心を察してうまく取り計らい対処すること」を意味する表現である。「忖度」の読み方は「そんたく」である。

「忖度」の「忖」の字には「推し量る・思量する」という意味がある。「忖」の字を使った熟語としては「忖度」の他に「思忖」「忖量」などが一応あるが、現代日本語では「忖度」以外の例に接する機会はほぼない。

「忖度」の「度(タク)」は、音読みであり、「ト」と共に漢音の読みの一種である。主に「量る・見積もる」という意味合いの熟語で用いられる読み方である。「度」を「タク」と読む熟語の例としては「支度(したく)」が挙げられる。


「忖度」は、2017年に、いわゆるモリカケ問題(森友・加計学園問題)における疑惑の所在を匂わせるキーワードとして、マスメディアに用いられた。直接に口利きしたわけではないが、口利きと言っても差し支えないようなやりとりが暗にあったのだろう、というような推測を表現する語として用いられる傾向があった。

ユーキャン新語流行語大賞は「忖度」を「インスタ映え」と並ぶ2017年の年間大賞に選出している。

感銘を受ける

読み方:かんめいをうける

「感銘を受ける」の意味、表記、成り立ち

感銘を受ける(かんめいをうける)とは、心に深く刻まれるような強い感動を抱くことを意味する慣用的な表現。「感銘」は「肝銘」とも表記する。ただし、現代では「感銘」と書くことが普通である。

「感」は心が動くこと、「銘」は心に刻むことの意で、「感銘」は物事に触れて心が動き、その気持ちが心に刻まれることを意味する。また、「肝銘」の「肝」は心を意味する。

「感銘を受ける」の使い方

「感銘を受ける」は、文章や改まった会話で用いる、やや硬い表現である。

「感銘を受ける」は、慣用句というほど熟してはおらず、コロケーションであると解される。したがって、「感銘を深く受ける」のような部分修飾や、「感銘をお受けになる」のような敬語化も可能である。

「感銘を受ける」は、「~に」に、その感銘を生じさせる物事をとる(例文、「教師の言葉に感銘を受ける」)。この、感銘を生じさせる物事は、他者の言動や思想、小説や絵画などの作品であることが多く、自分自身の行為や、自然の風景などに心を動かされる場合には、「感銘を受ける」は用いにくい。

「感銘を受ける」の言い換え

「感銘を受ける」と言い換えられる表現として、「感銘」のコロケーションでは、「感銘を覚える」「感銘を味わう」などが挙げられる。「感銘を受ける」は、心を動かす物事からの強い働きかけが感じられるのに対し、「感銘を覚える」は自然とそうなるという感じが、「感銘を味わう」はしみじみとそう感じるという意味合いがある。また、感銘を受ける意で単に「感銘する」とも言う。

この他、「感銘を受ける」と言い換えうる表現には、「感銘」の類義語(類語)である「感動」「感激」を用いた「感動する」「感激する」、また「琴線に触れる」などがある。

「感動」と「感銘」の違いには以下のようなものがある。第一に、「感動」は「感銘」よりも日常語的であり、口頭でも普通に用いられる。第二に、「感銘」は後々まで覚えているような感情をいうのに対し、「感動」は一時的な心の動きをいう。第三に、「感動」は自然の風景などに心を動かされたときにも用いられる一方、「感銘」はそのような場合には用いにくい。

「感激する」は、「病気が治ったことに感激する」のように、自分自身の身に起こったことにも用いることができるが、「感銘を受ける」は自分自身の身に起こったことには用いにくい。また、「感激する」には、自らの気持ちが奮い立つというニュアンスがあるが、「肝銘を受ける」にはそのような積極的な感じはない。

「琴線に触れる」は、物事に感銘を受ける気持ちを、物事が弦楽器の糸に触れる様子にたとえた表現であり、「感銘を受ける」と違ってその物事を「~に」にではなく「~が」にとる(例文、「詩の言葉が心の琴線に触れた」)。

この他に、「感銘を受ける」と言い換えうる表現には「心を打たれる」「胸を打たれる」「胸に響く」などが、「感銘」の類義語(類語)には「感慨」「感心」「感嘆」などがある。

また、「感銘を受ける」と似た形の表現に「共感を受ける」があり、「曲の歌詞に共感を受けました」のように、「共感する」の意で「感銘を受ける」と同様の使い方で用いられることがある。しかし、「共感を受ける」は通常、「~が共感を受ける」の形で、共感を得られる意で用いられるものである(例文、「党の方針が国民の共感を受けている」)。

「感銘を受ける」と対になる表現

「感銘を受ける」に対し、他者に深い感動を及ぼすことをいう表現に「感銘を与える」「感銘をもたらす」などがある。

「感銘を受ける」の英語での表現

「~に感銘を受ける」は、英語ではbe impressed with ~、be impressed by ~、be moved by ~、be touched by ~などと訳すことができる。

「感銘を受ける」の例文


  • 先生の言葉に心から感銘を受けた
  • 彼女の作品に感銘を受けたことが契機となった
  • これまでに最も深い感銘を受けた本は司馬遼太郎の「坂の上の雲」です
  • 〔就活における履歴書の志望動機で〕御社の企業理念に感銘を受けて志望しました

(執筆:稲川智樹)


コンプライアンス

「コンプライアンス」とは、企業が法令を遵守したうえで適切な企業倫理観や社会的な道徳規範に照らし合わせステークホルダーの利益も踏まえつつ公平で公正な企業活動を行うことを意味する表現。「企業コンプライアンス」や「ビジネスコンプライアンス」などと呼ばれることもある。

コンプライアンスという言葉は名詞として用いられ、多くの場合「守る」「遵守する」「徹底する」あるいは「違反する」といった動詞と共に用いられる。「コンプライアンス違反」「コンプライアンス研修」のような表現もよく使われる。

コンプライアンスの語源

コンプライアンスという言葉は英語の compliance をカタカナ表記にしたものであり、英語のcomplianceは動詞「comply」を名詞化した語彙である。complyは自動詞であり、主に「要求に応じる」「規則に従う」という意味で用いられる。たとえば「comply with one's request」は「(人)の要求を受け入れる」といった意味の言い回しである。compliance も英語では「応じること」「従うこと」に相当する意味合いで比較的幅広く用いられる語である。

日本語における「コンプライアンス」は、たいていビジネス・経営の分野、もしくは医療の分野において用いられる。ビジネスの分野におけるコンプライアンスは「法令遵守」と訳されることが多く、医療の分野におけるコンプライアンスは「服薬遵守」と訳されることが多い。「企業コンプライアンス」「服薬コンプライアンス」と呼び分けられることもある。

コンプライアンスの意義と目的

企業経営におけるコンプライアンスの最も肝要な要素は「法令の遵守」である。つまり、「事業を遂行するにあたって各種の法令を遵守する(法に抵触しない)ということ」といえる。また、法律により禁止されている事項ばかりでなく、社会の倫理的・道徳的な通念に基づくルール(社会規範)を遵守するという要素も、今日の企業コンプライアンスにおいては重要かつ不可欠な要素と位置づけられている。この「社会規範を遵守する」という事項は、「企業倫理」および「CSR」(企業の社会的責任)とも密接に結びつく要素ででもある。企業コンプライアンスはCSRと不可分の考え方といえる。

コンプライアンスの意義・目的は、ひとえに、コンプライアンスが徹底されなかった(法や規範から逸脱した)場合に生じ得る不利益・損失・責任を回避することである。

企業活動は商法をはじめ民法、刑法、証券取引法、その他諸々の法令において規範が定められている。もし経営者や従業員が、何らかの法に抵触するような行為に及んだ場合、法的責任を問われ、罰せられる。科料や損害賠償請求などによる直接的な不利益だけでなく、不祥事を起こした企業という汚名が着せられることによる社会的な信用の失墜やイメージの悪化も避けがたく、事業の継続が困難になるほど致命的な打撃となり得る。違法行為には該当しないとしても、社会一般から反感を買うようなモラルに反する振る舞いを行った場合、やはり同様の打撃を被る可能性が高い。

コンプライアンスは、それ従い遵守すること自体が成し遂げがたい偉業であるというわけでない。むしろ真っ当に事業を営んでいればおおむねコンプライアンスに則った業務遂行が可能である。しかしながら、法的知識に関する無知や、ふとした出来心などによって、コンプライアンスに抵触する行いに及んでしまう者が出てくるかもしれない。理由はどうあれ、コンプライアンスを遵守せず逸脱するようなことは、万が一にもあってはならない。そのため、万が一にもコンプライアンス違反が発生することのないように、従業員にコンプライアンス教育(コンプライアンス研修)の機会を与えたり、社内規定により行動を制限したり、といった意識付けの取組みが各社において行われている。

「コンプライアンス・オフィサー」とは

企業のコンプライアンス管理において「コンプライアンスオフィサー」と呼ばれる役職が配置される場合がある。

コンプライアンスオフィサーは、組織内でコンプライアンスが適切に管理・運用・徹底されているかどうかを監督する責任者である。特に日本コンプライアンス・オフィサー協会が実施している認定試験に合格した有資格者を指す場合が多い。協会では組織の専門性に応じて試験内容を特化させ「金融コンプライアンス・オフィサー/保険コンプライアンス・オフィサー認定試験」「JAコンプライアンス試験」「金融個人情報保護オフィサー認定試験」「AMLオフィサー認定試験」といった複数種類の試験を実施している。

「コンプライアンス」と「アドヒアランス」の違い

コンプライアンスと類似した概念に「アドヒアランス」が挙げられる。アドヒアランスは特に医療分野の、薬の服用について用いられるキーワードであり、企業コンプライアンス(法令遵守)よりも「服薬コンプライアンス」(服薬遵守)と対比されるキーワードであるといえる。

アドヒアランス(adherence)はもともと「固守」「堅守」あるいは「執着」を意味する英語である。医療分野における「コンプライアンス」は「患者が医師の指示に従い正しく服薬する」ことを指すが、「アドヒアランス」は「患者が医師の治療活動に能動的・積極的・主体的に協力し、医師に従い、治療に向けて努力する」という姿勢を指す。

スパダリ

「スパダリ」とは、BL(ボーイズ・ラブ)系の創作ものに登場する「完璧な男性恋人キャラクター」のことを意味する表現である。「スーパーダーリン」の略。容姿もよく、頭もよく、若いのに仕事がデキて社会的地位もあってお金持ち、といった「理想の男性像」の権化のような男性キャラクターのこと。有り体にいえば「万能イケメン」である。

BL作品の読者は、完璧な人類としてのスパダリが大人の余裕と包容力で甘く優しく包み込んでくれる描写にトキめいたり、万事に隙のないスパダリがこと恋愛に関しては不器用で赤面したり可愛い声を出したりしつつ受け手に回るさまにドキドキしたりするわけである。

どのような要素が「理想の完璧さ」に必要と感じるかは人によって異なる部分もあり、そのためスパダリの定義はある程度あいまいである。同じキャラクターが人によってスパダリ認定されたりされなかったりする場合もある。

デフォルト

読み方:default

「デフォルト」とは、政治経済の分野では「債務不履行」、IT分野では「初期設定」、その他一般の文脈では「標準」「いつもの」のことを意味する表現表現である。

  • 政治・経済・金融の分野における「デフォルト」は、主に「債務不履行」や「財政破綻」の意味で用いられる。
  • IT(パソコン・スマホ・SNSなど)の分野における「デフォルト」は、「初期設定」や「初期状態」の意味で用いられる。
  • ビジネスシーンや日常会話の文脈では、「デフォルト」は「標準」あるいは「いつもの」くらいの意味で用いられることが多い。
  • インスタの「デフォルト順」は、「並び替えていない状態」の並び順のことである。

「デフォルト」を英語で言うと

「デフォルト」は英語の「default」に由来する外来語。英語の default も、主に「債務不履行」「初期状態」といった意味で用いられる。

ただし英語の default は、「債務の滞納」や「欠席・欠場」といった意味でも用いられる。また、名詞の用法だけでなく動詞(自動詞・他動詞)の用法もある。

「デフォルト」の語源

日本語の「デフォルト」の直接の語源は英語の default である。

英語の default は、古フランス語に由来しており、もっと遡ればラテン語の「fallere」に起源が見いだせるという。

経済・金融の「デフォルト」とは 簡単に解説

経済や金融の分野における「デフォルト」は、「債務者が債権者に対して負っている義務を果たさないこと」を意味する表現。簡単にいえば、借りた金を返さなかったり、返す期日が遅れたり、売買契約した商品を引き渡さなかったり、という状況のことである。

国家(政府)が債務不履行に陥ることを、特に「財政破綻」という。国債の利払いが不能になることを指してデフォルトと呼ぶ場合が多く、「国債がデフォルト(する)」のような言い回しが用いられることも多い。

「デフォルト」は必ずしも国家の財政破綻だけを指す用語ではない。たとえば金融機関が債務不履行に陥ることなどもデフォルトと表現される。

国がデフォルトするとどうなる?

国家がデフォルトした場合、国際通貨基金(IMF)が介入して国家財政の立て直しが図られることになる。IMFは融資を行いつつ財政の緊縮を促す。

国家は財政の健全化を図る間、なかば倹約を強いられる。中長期にわたる景気の低迷や政権交代などのリスクは高まる。

とはいえ、デフォルト(財政破綻)した国家は速やかに滅亡する、というわけではない。

ギリシアは2010年のいわゆる「ギリシャ危機」において深刻なデフォルトの危機に直面した。その後の分析により、同国は「デフォルトの常習者」あるいは「常にデフォルト状態である」国家とみなされるようになっている。

ロシアはデフォルトするか?(デフォルトしたのか?)

2022年にロシアがウクライナに軍事侵攻し、欧米などから外貨凍結などの経済制裁が加えられ、その影響で貿易上の債務履行が著しく困難な状況に陥った。

2022年6月の時点で、ロシアは外貨建てのロシア国債の利子を期限通りに支払えず、これによって実質デフォルトしていると判断された。

パソコンやスマホの「デフォルト」とは わかりやすく解説

コンピュータ関連の文脈で用いられる「デフォルト」は、「初期状態」や「初期設定」のこと、要するに「特に設定を変更したり値を指定したりしていない状態」を指す。

たとえば、パソコンやスマホの「工場出荷時の状態」で設定されている通知音や壁紙などは、「デフォルトの通知音」などのように表現できる。

いわゆる「デフォルトの設定」は、変更(カスタマイズ)可能である場合も多い。ただしデフォルトの状態から変更できないようになっている設定も少なくない。

「デフォルトの通知音」とは

スマホの着信音やメール受信を知らせる通知音などは、特に指定しなくても最初から設定されている。このような「初期状態として設定されている通知音」が「デフォルトの通知音」である。

「デフォルトのブラウザ」とは

ウェブブラウザやメディアプレーヤーなどのアプリケーションは、複数種類インストールして使い分けられる場合がままある。そして、その中で「標準アプリ」として設定されているアプリを、「デフォルト(の)アプリ」という。

たとえば、メールやPDFファイルのリンクをクリックした場合に立ち上がるブラウザは「デフォルトブラウザ」という。パソコン内に保存してある音声ファイルや動画ファイルをダブルクリックした場合に立ち上がるメディアプレーヤーは「デフォルトプレイヤー」という。

「デフォルトにする」「デフォルトとして設定」とは

デフォルトブラウザやデフォルトプレイヤーは、任意に変更することもできる。デフォルトのブラウザとは異なるブラウザをデフォルトブラウザに設定する、といった操作が、「(このブラウザ)をデフォルトにする」「(このブラウザ)をデフォルトとして設定する」のように表現される。

デフォルト設定とは、デフォルトとして設定とは

「デフォルト設定」は主に「デフォルト状態における設定」を意味する表現。ただし「デフォルトとして設定する」の意味で用いられる場合もあり得る。

インスタなどの「デフォルト表示」とは

「デフォルト表示」は、表示設定をカスタマイズできる場合の、未カスタマイズ状態のこと。

特にインスタ(Instagram)における「フォロー中」アカウント一覧の並び順に関する「デフォルト」は、インスタにおけるデフォルト設定の並び順のことであり、要するに「初期状態で設定されている並び順(特に並び順を指定しない場合の並び順)」である。インスタの「デフォルト」の並び順の基準は、公表されていない。少なくとも時系列ではない。

デフォルトゲートウェイとは

デフォルトゲートウェイ(default gateway)は、TCP/IPネットワークにおいて、内部ネットワークと外部ネットワークの接続地点に位置するノード(装置など)のこと。「既定値(default)として設定されている、信号の出入り口(gateway)」という意味である。

デフォルトアカウントとは

デフォルトアカウント(default account)は、コンピュータやウェブブラウザなどが複数のアカウント(利用者)による使い分けに対応している場合に、最初に立ち上げた段階で設定されているアカウントのこと。アカウントの追加・変更を特に行わなければ、デフォルトアカウントが用いられることになる。

Windowsやブラウザの「Chrome」は、複数アカウントによる運用が行われやすく、デフォルトアカウントも意識されやすい。後から追加したアカウントをデフォルトアカウントに指定しておくこともできる。

デフォルトモードネットワークとは

デフォルトモードネットワーク(default mode network)は、認知神経科学の分野の用語である。コンピュータ用語ではない。

デフォルトモードネットワークは、漫然とした状態で活発化する脳の領域のこと。何かを熟考していたり、何かを注視していたり、といった「物事に意識を向けている状態」ではなく、ボンヤリ安静にしている状態において、複数の脳の領域が活発に動き、しかもそれらの領域が神経細胞を通じて互いに連絡し合っていることが分かっている。

デフォルトモードネットワークは、たとえば「難問に挑み、頑張って考えても解けなかったが、休憩中リラックスした状態で、ふと解法をひらめく」といった状況を生み出すとされている。

エビデンス

英語:evidence
「エビデンス」とは、医学においては効果に関する科学的な根拠や検証結果といった意味でビジネスにおいては主張の裏付けや議事録としての証拠などのことを意味する表現。

エビデンスとは? エビデンスって何? エビデンスの意味

エビデンス(evidence)は、主に「証拠」「裏付け」「科学的な根拠」「検証結果」などの意味で用いられる語。英語の evidence をカタカナ表記した外来語である。ビジネスシーンをはじめ、政治・医療・介護など、幅広い分野において用いられている。

より簡単に、わかりやすくいうと

エビデンスとは、要するに「提案・主張・判断などの確かさの根拠・証拠となるもの」のことである。

「エビデンスのある物事」は、そのエビデンスが「実はエビデンスとして有効でない」ことを示す以外には、否定する余地がない。あるいは理不尽な理由で否定するしかない。

エビデンスの対極にある要素(なかば対義語)としては、「勘」「好み」「憶測」「思いつき」「迷信」「主観に基づく判断」「経験則」などが挙げられる。

「エビデンスがある」とは具体的にどういうことか

「エビデンス」は、「エビデンスがある」「エビデンスがない」といった言い方で用いられることが多い。

「エビデンスがある」とは、基本的には「ちゃんとした根拠に基づいている」「合理的な裏付けがある」という意味合いの表現である。文脈によっては「言質を取ってある」とか「証明できるもの(メールや証憑など)を残しておいてある」という意味で用いられることもある。

「エビデンス」の使い方の例

エビデンスに基づく医療
エビデンスがない感染症対策は無駄でしかない
エビデンスがあるのか?が口癖の有能堅物上司
・電話の内容をメールで送ってエビデンスを残す
・半年間の実証実験によりエビデンスが得られた
・予算を獲得するには相応のエビデンスが必要だ

英語における「エビデンス(evidence)」の意味

「エビデンス」は英語の名詞 evidence をカタカナ表記した語であり、外来語である。英語の evidence も主に「証拠」や「裏付け」を意味する語であり、日本語における「エビデンス」の意味・用法と大体一致する。

英語の evidence は日本語より幅広い文脈で用いられ、文脈によっては「証言」「形跡」「痕跡」「兆候」などと訳される。いずれも「証拠となるもの」という意味合いを含んでいる。


There's no evidence that ~
その事の根拠(証拠)など何もない

どうして英語を使うのか

エビデンスは日本語では「証拠」や「根拠」と言い換えられるのに、なぜわざわざ英語由来のカタカナ語を好んで用いるのか。これは「エビデンス」に限らずカタカナ語全般に言えることだが、複数の理由があると考えられる。

第一に「伝統的日本語の不本意なニュアンスを排除する」ため。たとえば「証拠」や「根拠」には、相手を問い詰めるようなニュアンスが伴いがちだったり、「裏付け」には「科学的・合理的な情報」のニュアンスが希薄だったりする。そのような語弊を防ぐ意味では、手垢のついていない語彙を用いることは有効である。

第二に「その言葉が含んでいる意味の範囲が手頃である」ため。エビデンスは単なる「証拠」の意味だけでなく「合理的な理由」「科学的な根拠」あるいは「言質」や「証憑」といった意味で用いられる。こうした事柄を一括で扱える「エビデンス」という言葉は、使い勝手がよいわけである。

第三に、カタカナ語はジャーゴンとして好まれやすいという理由もあるだろう。「裏付け」よりも「エビデンス」と言った方が、ビジネスマン的にカッコいいのである。

世間にはカタカナ語の濫用を好ましく思わない者もいる。多用はほどほどに、普通の日本語の語彙と使い分ける姿勢が望まれる。

ビジネスシーンにおける「エビデンス」の具体的な意味

ビジネスシーンにおいては、会議の議事録や契約書、覚え書きなどを指して「エビデンス」と表現することがある。これは後になって話の食い違いが生じることを防ぐために残される証拠・裏付け・形跡という意味合いが強い表現といえる。また、新規の取引先を訪問した際に名刺を渡したり訪問履歴を記録したりといった行動は「エビデンスを残す」と表現されることがある。この場合のエビデンスは「証拠」というよりも、自分が訪問したという「形跡」の意味合いが強い。

IT業界における「エビデンス」の具体的な意味

IT業界においては、システム開発の最終段階においてエビデンスという語がよく用いられる。ここでのエビデンスも「証拠」の意味合いが強いが、特にシステムが稼働中の画面を記録したスクリーンショット(ハードコピー)や、システム稼働時に使用したデータファイル、各種ログなどを指すことが多い。

行政分野における「エビデンス」の具体的な意味

行政の分野においては、エビデンスに基づき政策を立案する「EBPM(evidence-based policy making)」という考え方がある。EBPMは欧米で確立され、近年では日本でも導入が進みつつある。

医療における「エビデンス」の具体的な意味

医療の分野においては、ある治療法や薬が特定の病気・症状に効果があると研究結果から結論づけられた結果や科学的根拠のことをエビデンスという。

今日の医療分野では、「EBM」(evidence-based medicine)と呼ばれる考え方が重視されている。EBMは日本語では「科学的根拠に基づく医療」と訳されている。EBMでは、医者の経験則的な知見に頼らず、最新の医学研究の成果や臨床試験データによって確認された有効性を根拠(エビデンス)として参照することを重視する。これに加えて、自分の望む状態や治療にかけられる時間や費用なども考慮した上で、最善の意思決定をするという要素もEBMでは重視される。看護の分野においても、EBMと同様「エビデンスに基づくナーシング」という考え方があり、EBN(evidence-based nursing)と呼ばれている。

また、医療の現場で用いられるガイドラインなどでは、治療方法などを見定める際に、科学的根拠の信用度合いをわかりやすく表した「エビデンス・レベル(エビデンス・ヒエラルキー)」が使われる。一般的に、エビデンス・レベルでレベルが最も高い(信用度が高い)とされるのは、研究対象などがランダムに選ばれて行われるランダム化比較試験(英: randomized controlled trial, RCT)で、逆に単独の観察研究や専門家の意見はレベルが最も低い(信用度が低い)とされるが、エビデンス・レベルだけを基準に判断せず、エビデンスの確実性や推奨度なども加味して総合的に判断が下されることも多い。

エビデンスの類義語

エビデンスの類義語としては、「プルーフ(proof)」「ソース(source)」「ファクト(fact)」などが挙げられる。エビデンスとよく混同される語としては「プルーフ」「ソース」が挙げられる。

「プルーフ」はエビデンス同様「証拠」の意味を持つが、「証言」「形跡」といった意味合いは持たない点がエビデンスとは異なる。

「ソース」は「源泉」「情報源」など情報の出所を表す語であり、明確な根拠を表す「証拠」の意味は持たない。

エビデンスとファクトの違い

「ファクト」は「事実」「確実」を意味し、エビデンスが持つ「証拠」「根拠」などの意味はない。

リテラシー

 英語:literacy

「リテラシー」とは、「その分野に関する十分な知識や情報を収集し、かつ有効活用できる能力」のことを意味する表現である。「情報リテラシー」・「メディアリテラシー」・「ITリテラシー」のように複合語の形をとることが多い。

「リテラシー」の元の意味

「リテラシー」は英語の literacy に由来する表現であり、もともとは「読み書きの能力」あるいは「識字能力」を意味する言葉である。転じて「情報を活用する能力」のような意味合いで用いられるようになった。今日では、「リテラシー(literacy)」は英語でも日本語でも主に「情報を活用する能力」の意味で用いられる。

日本語では「リテラシー」の語だけ単独で用いられることは少なく、むしろ「情報リテラシー」や「メディアリテラシー」や「ITリテラシー」のように、特定の分野を明示する語と共に用いられることが多い。これは英語でも同様で、information literacy(情報リテラシー)や media literacy(メディアリテラシー)のような複合語の表現がよく使われる。

リテラシーはつまり日本語の意味とだいたい同じである。ちなみに、literacy の対義語は「illiteracy」である。illiteracy は、否定を意味する接頭辞「il-」が付いた語であり、意味は「読み書きができない」「無学」。閑話休題。英語の literacy は、形容詞「literate」(読み書きできる)の名詞形である。literate の語源はラテン語の「littera」および「litteratus」に遡り、これは letter(文字・手紙・学識)と同語源とされる。

「リテラシー」の語を用いて叙述する場合、動詞には「高い・低い」「ある・ない」「持っている・欠如している」といった表現が用いられる。基本的には「高める」「育てる」「養う」「向上させる」といった指向の下に用いられる語であり、「低下する」とか「失う」といった方向で言及される場合は(皆無ではないが)めったにない。

リテラシーを使った例文

  • 情報リテラシーが高い
  • メディアリテラシーを強化しなくてはならない
  • メディアリテラシー教育に力を入れるべきだ
  • 若者がみんな充分なコンピュータリテラシーがあるとは限らない

情報リテラシーとは

情報リテラシーとは、膨大な情報源にアクセスし、その中から自分の得たい情報を効率的に探し出し、適切に活用できる、そのような能力といえる。典型的には図書館やインターネットを活用した調べ物の可否・質・迅速さなどにおいて情報リテラシーが問われる。

メディアリテラシーとは

メディアリテラシーとは、情報を伝達する媒体(メディア)の機能・役割・性質を正しく認識し、正しく活用できる能力であるといえる。情報を収集し、選択し、活用する、という点において「情報リテラシー」と共通するが、メディアリテラシーはメディアを通じて得られる情報に特に焦点を当てている。ニュース情報に特に焦点を絞る意味で「ニュースリテラシー」という表現が用いられる場合もある。

ITリテラシーとは

ITリテラシーとは、情報にアクセスする手段としてコンピュータとネットワークを活用できる能力である、あるいは、コンピュータとネットワークを活用して情報にアクセスできる能力である。情報を収集し、選択し、活用するという点は情報リテラシーやメディアリテラシーと同様であるが、IRそのために利用する手段がPC等の電子器機であり、ハードウェアやソフトウェアの性質・機能・扱い方に関する理解が問われるという部分が「ITリテラシー」の根底にはある。

「情報リテラシー」や「メディアリテラシー」、「ITリテラシー」は、いずれも「情報や情報メディアを扱う能力」というような意味で用いられる表現である。文脈によっては意味合いが重複したり、代替可能だったりする場合がある。

リテラシー教育

情報リテラシーもメディアリテラシーも、ITリテラシーも、現代の情報化社会においては半ば必須の能力といえる。学校教育などにおける、子供の各種リテラシーを高める取り組みは、「リテラシー教育」と呼ばれる。

リテラシーとコンピテンシーとの違い

「リテラシー」と同様、「コンピテンシー」も、「能力」に関連する語という点で共通しているが、必ずしも類語として扱えるとは限らない。コンピテンシーは英語の competency に基づく語であり、英語では「適格性」という意味がある。日本語における「コンピテンシー」は、ビジネス・企業経営・人材マネジメントの分野において「成績優秀者の良好な業績の源となっている行動様式・行動特性」といった意味合いで用いられる、ある種の専門用語である。

ブラッシュアップ

英語:brush up
英語:brushup

「ブラッシュアップ」とは、「磨き上げる・磨きをかける」ことであり「知識や技術を更に向上させる」や「企画や構想をさらに洗練させる」の意味で用いられる表現である。ブラシをかけて磨いて、現状よりも洗練させ、完成度を高める、ということである。

「ブラッシュアップ(brushup / brush up)」はもともと英語で「ブラシをかける(=磨く・身繕いする)」という意味の表現である。これが日本語でも(主にビジネスジャーゴンとして)用いられているわけである。

英語の「ブラッシュアップ」は、「再勉強」「勉強して学力を取り戻す」いう意味であり、「能力を向上させる」という意味合いは特にない。

日本語では、「ブラッシュアップ」は、基本的に「磨き上げる」か「磨きをかける」と言い換え可能な意味で用いられている。「ブラッシュアップする対象」は知識・技能・文章表現・デザイン・アイデア・等々、と幅広い。

ビジネスシーンでのブラッシュアップの使い方

ブラッシュアップはビジネスシーンにおいて使われることが多い言葉である。資料や企画の内容および詳細を詰めていく段階で、さらなる改良の余地がある場合などにブラッシュアップという言葉が用いられ、より高度な企画の立案や業務の効率化に役立てられている。知識や技術に関しても使われるため、語学力・営業スキルといった仕事に必要な様々な能力の向上を目指すことや、専門分野に関するセンスを磨くことなどもブラッシュアップのひとつである。このように、状況によって様々な使い方と意味合いを持つのが、ブラッシュアップという言葉の特徴といえる。

ブラッシュアップの類語・言い換え表現

ブラッシュアップの類語に「スキルアップ」「リファイメント」が挙げられる。スキルアップとは、訓練や学習によって身につけた技術力や能力を高めることを意味する言葉で、特にビジネスシーンではブラッシュアップとほぼ同様の意味合いで使われることが多い。ただし、ブラッシュアップが人の能力だけでなく仕事の内容などを含め幅広く使われるのに対し、スキルアップはその言葉通り技術や能力に関してのみ使われるという違いがある。また、スキルアップには、ブラッシュアップと異なるニュアンスとして、能力の向上のために資格を取得することも含むのが特徴である。

工夫や検討を繰り返してより良いもの洗練にするという意味を持つ「リファイン」という言葉も、ブラッシュアップの類語のひとつである。「洗練」や「リファイン」は、無駄がないことを表現する言葉として使われることもあり、その対象は人やもの、技術など広範囲に及ぶ。洗練が意味するより良いものの定義には、優雅で磨きがかかった、品位のあるものあるいは垢抜けたものという意味合いを含み、その点でブラッシュアップと異なっている。

また、その他「練磨」や「琢磨」は鍛えて磨くことを意味するという点でブラッシュアップの類語といえるが、その対象は主に美術・工芸などの技芸や学問とされている。そのため、技芸や学問の分野で感性や技術力の向上を目指す意味では、ブラッシュアップの言い換えに使うことができるが、ビジネスシーンには適さないため使い分けが必要である。

ブラッシュアップの例文、使い方

ブラッシュアップという言葉の使い方については、次の3つの例文で示すことができる。

ブラッシュアップを使って能力の向上を表す場合は、「仕事で海外に行く機会が増えたので、現地でよりスムーズな交渉ができるよう英語力やコミュニケーション能力をブラッシュアップしたい。」といった文となる。この場合、すでに現在の業務において困らない程度の英語は使えるものの、今後は機会が増え求められる語学力も高くなるため、英語の知識や会話力を向上させたいという意味でブラッシュアップが使われている。

まだないものを形作っていくという意味でもブラッシュアップを使うことができる。例えば、「その考え方をブラッシュアップすれば、きっと良い企画ができるはずだ。」といった文の場合、アイデアから企画の内容までを練り上げていくという過程が必要であり、それをブラッシュアップという言葉で表現している。

ビジネスシーンにおいて、取引先との間でこのような会話となった場合は、考え方は良いが企画としては不十分で、もっと具体的かつ現実的にする必要があるといったニュアンスも含んでいるといえる。このように、ブラッシュアップは様々なビジネスの場で使われ、例えば社員に向けた研修などについて「社員全体の営業スキルの向上を図るためブラッシュアップ研修を行う。」といった使い方をすることもある。この場合のブラッシュアップとは、社員個人個人の今ある能力に磨きをかけ営業力アップを目指すことを意味するが、併せて会社で定めた営業手法やマニュアルなどを見直し改良するといったニュアンスを含めることもできる。

ブラッシュアップは英語圏では解釈が異なる

日本で使われるブラッシュアップは英語の「brush up」がもととなった外来語である。しかし、その意味は少し違い日本語のブラッシュアップと比べて限定されているため、同じニュアンスで「brush up」を使うことはできない。英語圏で使われる brush up の意味は3つあり、そのまま動詞として使うと、こすって磨くという意味の「brush」を強調して「しっかり綺麗にする、しっかり掃除する」といった意味を表す。また、「身支度をする、出かける前の身なりを整える」という意味でも日常的に使われている。一方、自動詞として前置詞 on と一緒に使うと「一度習得していたが忘れてしまった知識や技術について勉強し直す、錆びついた能力を磨き直す」という意味となる。あくまでも一度学んだものが目的語となり、初めて勉強することなどには使えない。この使い方については、日本で使われているブラッシュアップと混同されがちだが、日本語のブラッシュアップが今あるものに磨きをかけさらに良くするというニュアンスで使われるのに対し、英語圏の brush up は、持っていたが失ってしまった能力などに限って使われるという違いがあるため、注意が必要である。日本で使われるブラッシュアップと同じニュアンスで使うことのできる言葉としては、「洗練する、改良する」という意味の「refine」や、「手直しする、少し修正して仕上げる」という意味の「touch up」、「練って完成させる、能力を磨く、洗練させる」といった意味を持つ「polish」などが挙げられる。

失念

読み方:しつねん

「失念」とは、主にビジネスシーンやフォーマルな文脈において「うっかり忘れること」の意味で用いられる文語的な表現である。「申し訳ありません、失念していました」のように言えば「すみません、ど忘れしてました」という趣旨を真摯なニュアンスで表現できる。

「失念」は「忘れる」と言い換え可能であるが、「忘れる」はビジネスメールや公文書などで用いるには表現が軽い。やや硬い表現である「失念」を用いた方がしっくり来る。
  • お約束を失念していました
  • パスワードを失念した場合
「失念」の「失」の字は「なくす・失う」という意味の字であり、同じく「念」は「覚えておく・心に留めておく」という意味の字である。つまり「失念」は「心に留めておくべきことを失った(=忘れた)」ということである。

「忘れる」は「物をどこかに置き去りにしてしまう」という意味で用いられることもあるが、「失念」にはそのような意味合いの用法はない。

失念の類語と使い分け

失念の類語には「ど忘れ」や「忘却」「忘失」などがある。「ど忘れ」は「本当はよく知っていること(覚えておくべきこと)をウッカリ思い出せなくなっている」という意味合いで用いられる。「忘却」や「忘失」は、「すっかり忘れ去る」「頭から記憶が消失している」「忘れてしまって思い出せない」ようなさまを意味する。また「忘失」は、「記憶を失くす」以外に「物を紛失する(どこに置いたか忘れてしまう)」状況にも使える。

失念の語源

失念は仏教用語が語源である。「正念(正気・本気)を失う」という意味があり、「心を錯乱させる煩悩」のひとつを指す。「物忘れや気づきを失った心であり、仏法の教え、または仏法の言葉を忘れてしまうこと。心が入り乱れて混乱すること」を意味する。「心にあった大切なことを失う」という意味が、「忘れる」という意味に転じたとされる。

失念のよくある間違い

失念は、覚えていたり知っていたことをうっかりど忘れしてしまった時に使う言葉なので、もともと知らないことに対しては使わない。また忘れ物をしたり、物を無くしてしまったときにも使用しない。あくまでも自分が「失念」した時に使用する言葉なので、第三者に対して使用する言葉でははない。もしも第三者や目上の人が「失念」したことを表現する場合には、「失念なさる」「失念される」といった尊敬語を用いる。