インバウンドの意味、語源
インバウンド(英: inbound)とは、主に日本の観光業界において「外国人の日本旅行(訪日旅行)」あるいは「訪日外国人観光客」などの意味で用いられる語。インバウンドは、英語のinboundに由来する語である。英語のinboundは「内側」を意味する接頭辞in-と「~行き」を意味する語boundから成り立つ形容詞で、「本国行きの」「市内に向かう」といった意味がある。日本におけるインバウンドの推移
インバウンド(日本を訪れた外国人観光客)の数は2000年代初め頃までは500万人程度だった。2003年に始まったビジット・ジャパン・キャンペーン、2007年の観光立国推進基本法施行、2008年の観光庁設置といったさまざまな施策により、インバウンドは2013年頃から急増し始めた。日本政府観光客(JNTO)によれば、訪日外客(=インバウンド)数は2017年には約2869万人、2018年には約3119万人、2019年には約3188万人となっている。国籍・地域別では、韓国、中国、台湾、タイなどの東アジア・東南アジアからの観光客が多数を占めている。インバウンド増加に伴う問題点
インバウンド増加は経済振興をはじめとする好ましい影響をもたらすが、その一方で問題点もある。インバウンド増加の問題点としては、オーバーツーリズムや文化の違いによるマナー問題などが挙げられる。オーバーツーリズムとは、特定の観光地に大勢の観光客が集中し、許容限度を超えてしまっている状態のことである。オーバーツーリズムが発生すると、観光施設や宿泊施設がパンク状態に陥り、観光客の満足度が低下しやすくなる他、騒音や混雑などによる地域住民の生活環境の悪化なども懸念される。オーバーツーリズムが常態化している都市としてはロンドン、ベネチア、バルセロナなどがよく挙げられるが、インバウンドが急増している日本においても、京都、沖縄、岐阜の白川郷などでオーバーツーリズムによる問題が発生しており、早急な対策を講じることが望まれている。文化の違いなどによる観光客のマナー違反の問題は、観光客に事前にマナーを周知する取り組みが求められる。そうした取り組みの実例としては、京都府が旅行口コミサイトのTripAdvisor(トリップアドバイザー)と連携しマナーに関するリーフレットを頒布した事例が挙げられる。
インバウンド消費・インバウンド需要、インバウンドビジネス
旅行で日本を訪れた外国人による宿泊・飲食・買い物などの消費行動は「インバウンド消費」あるいは「インバウンド需要」と呼ばれる。観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、2019年の訪日外国人旅行消費額は4兆8,113億円で7年連続で過去最高を更新した。同調査によると、一般の訪日外国人1人あたりの支出は15万8千円で、国籍・地域別ではオーストラリアが最も多く24万9千円、次いでイギリス(24万2千円)、フランス(23万8千円)となっている。外国人観光客をターゲットとしたビジネス全般は「インバウンドビジネス」と呼ばれる。インバウンドビジネスに該当する分野は広範に及び、宿泊業や飲食業、観光施設事業などはもちろんのこと、外国人観光客が日本滞在中に購入する商品や利用するサービスなどはすべてインバウンドビジネスに該当すると言い得る。
インバウンドビジネスにおいては、いわゆる「インバウンド対策」をいかに講じるかが重要な課題となる。インバウンド対策とは、外国人観光客の消費体験の向上に特化した各種の施策の総称である。インバウンド対策の主な例としては、公共交通機関やデパートなどにおける通訳の配置、施設の案内表示や飲食店のメニューの多言語表記、免税レジの設置、Wi-Fi環境の整備、イスラム教徒向けのハラルフードの提供などが挙げられる。
インバウンド需要が期待できる業界
- 百貨店・デパート・モール、家電量販店、ディスカウントストア、コンビニエンスストアなどの小売業
- 食堂・レストラン、すし店、そば・うどん店、バー、料亭、居酒屋、ビヤホールなどの飲食業
- 旅館、ホテル、簡易宿泊所などの宿泊業
- 博物館、動物園、水族館、テーマパークなどのレジャー・サービス業
- 鉄道、バス、タクシー、航空、船舶などの運輸交通業
インバウンドの対義語
インバウンドの対義語としては、アウトバウンド(英: outbound)が挙げられる。アウトバウンドは「日本人が諸外国を旅行すること」という意味で使われる用語である。インバウンドは官民による積極的な推進が成果を上げ、数字を伸ばし続けているが、アウトバウンドは2000年頃をピークにあまり大きな変化は見られない。しかし、近年はLCC(ローコストキャリア、格安航空会社)の路線拡大なども影響してかアウトバウンドも増加傾向にあり、2019年には統計開始以来初の2,000万人を突破した。インバウンドを使った例文
- インバウンドは近年増加傾向にある。
- オリンピックに向けてインバウンド対策を講じる必要がある。
- インバウンド向けに古民家をリノベーションする。