2022年6月15日水曜日

フェミニスト

英語:feminist

フェミニストとは?意味を簡単に解説

フェミニスト(feminist)とは、「フェミニズム(女性解放論)」の考え方に賛同し、男性優位主義を打破するための行動に参画している人のこと。

より単純にわかりやすくいうと、要するにフェミニストとは「男女の不平等をなくしたいと主張する人々」である。

ただ、ひとくちにフェミニストといっても、その考え方は千差万別である。時代によっても、国や地域によっても、個人によっても、理念や主張は違ってくる。各フェミニストが思い描く理想像も、その活動内容も、また千差万別といえる。その意味で「フェミニスト」を一括りにして扱うことは中々に難しい。

「フェミニスト」の対義語

「フェミニストの対義語」は、どういう観点で対比するかによって複数通りの候補が挙げられる。

【1】
「フェミニストを敵視する・敵対関係にある」、という意味では、「フェミニスト」の対義語としては「アンチ・フェミニスト」が挙げられる。アンチ・フェミニストは、特定の理念や主張を掲げているわけではなく、フェミニズムそのものに反対し、フェミニストを敵対視している人々である。

アンチ・フェミニストがフェミニストを敵視する理由や原動力も多種多様であるが、たとえば「男性優位の社会を維持したいという男性の願望(自らの優位性が揺らぐことへの不安)」や、あるいは「過激なフェミニストへの嫌悪感」などの理由が挙げられる。たとえば、一部のフェミニストがフィクション作品や娯楽産業を目の敵として「性的搾取だ」と糾弾することがあるが、そのような動向を過剰(やり過ぎ)と感じて辟易する者もいる。こうした者はアンチ・フェミニストの立場に傾きやすい。

【2】
「女性の権利」に対して否定的立場を取る、という意味における「フェミニスト」の対義語は「ミソジニスト」である。ミソジニストは「女性蔑視(ミソジニー)」の立場を取る人であり、主に男性である。

ミソジニストは女性を嫌悪あるいは蔑視しており、意識的にせよ無意識的にせよ、男性の女性に対する優位性を主張する。企業や組織における根深いセクハラ・パワハラの問題の根底には、旧態依然としたミソジニーが絡んでいることも多い。ミソジニストは、男性らしさが女性らしさよりも勝る(優れている)と考える。そのため、男女平等が思考の根底にあるフェミニストとはおのずと対立する。

【3】
女性の権利を主張するフェミニストに対して「男性の権利を主張する」立場、という意味では「マスキュリスト」がフェミニストの対義語として挙げられる。マスキュリスト(masculist)は、男性主義(マスキュリズム)を肯定する人々のことである。

マスキュリズムはそもそもは「男尊女卑」の立場を指す語だったが、昨今ではマスキュリズムは「男性に対する差別を撤廃するための運動」を指す意味で用いられる場合が少なくない。マスキュリストは、現代社会においては男性こそが差別されているという立場をとる。いわゆる逆差別である。そして、その女性優位の社会構造を再び男女平等へ是正しようと考えるわけである。フェミニストは女性こそ差別の対象になっていると考えているわけであるから、フェミニストとマスキュリストはそもそもの認識が全く食い違っている。

日本人フェミニストの有名人

日本人フェミニストの著名人としては、上野千鶴子(うえのちづこ)や田崎陽子(たじまようこ)が代表的な人物といえる。両名とも学者であり、長年にわたり日本におけるフェミニズム論の第一人者として論壇を牽引してきた人物である。マスメディア等を通じた発信も多い。

21世紀の現代において注目を集めている日本人フェミニストとしては、石川優実(いしかわゆみ)や伊藤詩織(いとうしおり)が挙げられる。石川は芸能界で活動中、女性蔑視的な価値観に何度も遭遇してきた経験をもつ。そして2017年以降、いわゆる「#MeToo運動」に賛同する形で、自身が受けた性差別を告発していく。2019年に石川は#MeTooをもじった「#KuToo」運動を展開し、女性にパンプスを強要する社会を糾弾した。「#KuToo」は国内では「2019年ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン受賞語に選ばれ、また海外でも報じられた。

海外のフェミニストの有名人

海外でフェミニストとして知られる有名人としては、たとえば歌手のビヨンセ(Beyoncé)が挙げられる。ビヨンセはアメリカを中心に世界中で多くのファンを擁するトップアーティストでありつつ、フェミニズムについても積極的に発言して耳目を集めている。2014年にはテレビ番組のステージに「FEMINIST」という言葉を掲げて歌った。2016年に発表したアルバム「レモネード」でビヨンセは夫の不倫問題を告発しながら、抑圧された女性の解放をテーマのひとつに盛り込んでいる。

フェミニストは女性ばかりではない。俳優のダニエル・ラドクリフもフェミニストとして知られる人物である。2014年にラドクリフは、国連でフェミニズムに関するスピーチを行ったエマ・ワトソンを称賛した。ラドクリフは「フェミニストに反対する理由がない」という発言も残している。ラドクリフのように、フェミニストへの理解を示す形で女性の社会活動を支援しようとする男性もいる。

フェミニスト議員連盟と炎上

「フェミニスト議員連盟」は、正式名称を「全国フェミニスト議員連盟」という。通称「フェミ議連」。1992年に結成された。国会議員や地方議会議員を中心とする超党派の組織である。2022年現在は八王子市議会議員・前田佳子が代表を務める。

2021年8月には、千葉県警がVチューバー(=創作キャラクター)を起用して制作したPR動画に対し、フェミ議連が「衣装が性的で不適切」として抗議している。この一連の動向はインターネット上のアンチ・フェミニストを触発し、ちょっとした炎上騒ぎに発展した。

「温泉むすめ」等に見る「フェミニストは害悪」というレッテル

フェミ議連が千葉県警のPR動画に抗議した一件のような、ややもすると過剰な反応とも捉えられ得る活動は、「フェミニストが社会を窮屈にしている」という、いわば「フェミニズム害悪論」のような見解を誘発しやすい。

2021年11月には全国の温泉地を萌えキャラ化した「温泉むすめ」について「性搾取ではないか」と糾弾する声が上がった。これはSNSなどで多くのフェミニストが賛同のコメントを寄せたが、この動向を見て(当事者たる温泉関係者の事情が顧慮されていないかのような振る舞いや謝罪の要求まで行う姿勢に)辟易する者も多く、フェミニストはむしろ害悪なのではというような見解も散見された。

「女の敵は女(フェミニスト)」という皮肉も

千葉県警が起用したVチューバーや「温泉むすめ」は、いずれも現実の女性ではなく架空のキャラクターであるが、一部のフェミニストは実在する女性の活動についても「性差別的」「性的搾取」として問題視することがある。

たとえばミスコン(美人コンテスト)や、モータースポーツにおけるグリッドガール、イベントコンパニオン等は、性的搾取に通じるとして廃止を求める運動が続けてられている。こうした声を受けて実際に廃止されたイベントも多い。

他方、グリッドガールやイベントコンパニオンは基本的に自ら望んでなったのであり、誰からも強いられて(搾取されて)いるわけではない、という反論もある。この論点に立つならば、グリッドガールやイベントコンパニオンはフェミニストによって仕事を奪われたことにもなる。

テレビCMなどでは、男性が家事に携わる内容のCMの割合が増えつつある。これは「家事における夫婦の平等」が意識された結果であり、フェミニストが声を上げ続けた成果ともいえるが、CMでは男性出演者の割合が増え、女性出演者の割合が減り、つまり女性俳優の仕事が奪われているという見方にもつながる。