2021年8月26日木曜日

阿鼻叫喚

読み方:あびきょうかん

阿鼻叫喚とは、阿鼻叫喚の意味

阿鼻叫喚とは、その状況に置かれた人々が苦しみ泣き叫ぶような、筆舌に尽くしがたい酷い状況のこと、および、その人々が苦しみ泣き叫ぶさまのことである。人々が興奮してパニック状態になり怒号が飛び交うような混乱した状況を阿鼻叫喚と表現する場合もある。

阿鼻叫喚の語の由来・語源

阿鼻叫喚は、もともとは仏教の「地獄」の概念に由来する用語である。「阿鼻」も「叫喚」も、どちらも罪人が死後に落ちる地獄(八大地獄)のひとつである。つまり阿鼻叫喚は「阿鼻地獄」と「叫喚地獄」の総称である。

「阿鼻」は「無間(むけん)」ともいうが、これはサンスクリット語の「avici」を音写した漢訳語である。「叫喚」は 大声でわめきさけぶことを意味する。これもサンスクリット語の「raurava」を漢訳した語である。

八大地獄は、等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、灼熱地獄、大灼熱地獄、阿鼻地獄、以上8種の地獄の総称である。等活~阿鼻の順にしたがい罪と責め苦が重くなる。

「叫喚地獄」は殺生や飲酒の罪を犯した者が落ちる地獄で、地獄の鬼に鉗子で口を開けられ溶けた鉄を流し込まれるという罰を受ける。「阿鼻地獄」は、親殺しや謗法(仏法を蔑ろにする)罪を犯した者が落ちる地獄である。手足から炎が吹き出し、その苦しみが八万劫という途方もないあいだ続くとされる。

阿鼻叫喚の語の使い方(用法)、例文

「阿鼻叫喚」は、災害・戦争・事故などが発生した現場の凄惨さを表現する場面で用いられやすい。たとえば、「テロ攻撃によって平和な町は一瞬にして阿鼻叫喚の様相を呈した」というような言い方で用いられることが多い。

阿鼻叫喚は「阿鼻叫喚の巷(ちまた)」という言い回しで用いられることも多い。

阿鼻叫喚の類義語・対義語

阿鼻叫喚の類語としては「地獄絵図」が挙げられる。「地獄絵図」は、地獄さながらの酸鼻を極める(非常にむごたらしい)状況という意味である。つまり「地獄絵図」と「阿鼻叫喚」は実質ほぼ同義語といえる。ただし、字面上「地獄絵図」は視覚的な情報のニュアンスを含み、「阿鼻叫喚」は聴覚的なニュアンスを含む、という点で使い分けられるかもしれない。

「阿鼻叫喚」は仏教的地獄に由来する語であるから、その対義語としては「極楽」「極楽浄土」が挙げられるかもしれない。「極楽」は、苦しみの無い安楽な世界の喩えとしてもよく用いられる。

阿鼻叫喚は英語でどう言うか

阿鼻叫喚は、英語では pandemonium または agonizing cries と訳されることが多い。pandemonium(パンデモニウム)は「大混乱の場所」を指す語で、もともとはミルトンの叙事詩「失楽園」に出てくる悪魔の住む都市の名前である。「伏魔殿」と訳されることもある。agonizing cries は「苦悩の叫び」という意味の表現である。

文例。
  • Pandemonium reigned in the town the moment the news reached them.
    その知らせに町中はたちまち阿鼻叫喚の地獄と化した