2014年1月17日金曜日

エジプト新憲法案

読み方:エジプトしんけんぽうあん

エジプトで2013年7月に起こったクーデターの後に、アドリー・マンスール暫定大統領が行った憲法宣言に基づき、ハーゼム・エル=ベブラーウィー暫定内閣のもとで起草された憲法案。2012年にムハンマド・ムルシー政権下で承認された憲法に対する改正案という位置づけである。

エジプト新憲法案は、従来の憲法よりも軍の権限が強化されており、政権に対する軍の影響力が反映された内容となっている。また、従来の憲法では立法の根源をイスラム法に求めるなど、イスラム色が強かったのに対して、新憲法案では宗教政党が禁止とされた。これに伴い、ムルシー元大統領の出身母体であるムスリム同胞団なども違憲と見なされることから、ムスリム同胞団をはじめとするイスラム勢力は、新憲法案に対して強い反発を示し、新憲法案を「血の憲法」と呼んで非難した。

2014年1月に、エジプト新憲法案に対する国民投票が行われ、約98%という圧倒的多数の賛成票により承認された。クーデター以来、憲法は停止状態となっており、政権も暫定的なものとされていたが、新憲法案の可決に伴い、正式な大統領選挙が行われることとなった。

新憲法案に対する高い賛成率には、2013年7月のエジプトクーデターで解任されたムハンマド・ムルシー大統領の出身母体である、ムスリム同胞団などのボイコットが影響したと見られている。また、国民投票に際してはエジプト各地でイスラム勢力などの反政府派によるデモが相次ぎ、治安部隊との衝突に伴って10名を超える死者が出た。