2014年3月6日木曜日

CAR細胞

読み方:シーエーアールさいぼう
別名:CXCL12を高発現する細網細胞
別名:CXCL12を高発現する突起を持った細胞
英語:CXCL12-abundant reticular cell
英語:CAR cell

骨髄の内部に分布し、CXCL12というケモカイン(タンパク質の一種)を盛んに産生することで特徴づけられる細網細胞の一種。2010年に、京都大学再生医科学研究所の長澤丘司教授らの研究グループが発見、命名した。CAR細胞の「CAR」は、「CXCL12-abundant reticular」の略語である。

CAR細胞は、造血幹細胞の分化、あるいは未分化性の維持に関わる微小環境(造血幹細胞ニッチ)の主要な構成要素として、造血の制御に深く関与していると考えられている。「Nature Japan」の2010年の特集記事では、「司令塔細胞」と表現された。

CAR細胞は長い突起を持ち、その突起に接着した造血幹細胞に対して、白血球、赤血球などへの分化を促す性質を持つことが知られている。CAR細胞で産生されるCXCL12やSCFなどの分子が造血幹細胞前駆細胞(HSPC)に作用することで、分化が起こると考えられている。

2014年に「Nature」誌に掲載された論文では、CAR細胞で産生される転写因子の一種「Foxc1」が、CXCL12やSCFなどの発現促進と、CAR細胞自身の維持に関与していることが示唆された。CAR細胞自身は、骨芽細胞や脂肪細胞に分化することが明らかにされているが、Foxc1を欠損するマウスでは、CAR細胞が維持されず、多くが脂肪細胞に分化し、骨髄内が脂肪細胞で満たされるとともに、造血幹細胞や血液細胞の産生も著しく減少した。

iPS細胞などを用いてCAR細胞を人工的に創出することにより、造血幹細胞の増殖促進や、骨髄移植の手法の改良が実現できる可能性があるとされている。また、従来の薬剤が血液細胞を主標的としてきたのに対して、CAR細胞が関与する造血幹細胞ニッチに作用する薬剤を開発することで、白血病などの疾患の新たな治療法の開発に繋がる可能性があるともされている。

関連サイト:
Foxc1 is a critical regulator of haematopoietic stem/progenitor cell niche formation - Nature
生体システム制御学分野長澤研究室 - 京都大学再生医科学研究所
造血幹細胞と造血を制御する司令塔である骨髄のニッチの形成に必須の転写因子を発見 - 京都大学
造血幹細胞の維持と分化を支える「司令塔細胞」を特定! - Nature Japan