2014年3月6日木曜日

脂肪滴

読み方:しぼうてき
別名:脂質滴
別名:油滴
別名:アディポソーム
英語:fat droplet
英語:lipid droplet
英語:lipid body
英語:oil body
英語:adiposome

細胞中に存在する、脂質やタンパク質などを含む球形の液滴のこと。ヒトを含む様々な真核生物に広く見られる。脂肪滴は細胞内小器官(オルガネラ)の一種であり、リン脂質からなる単層の膜で包まれている。脂肪細胞では、脂肪滴が細胞質の大部分を占めている。

脂肪滴には、生体のエネルギー源となる脂質を蓄積するという役割がある。自然界では、栄養分が必ずしも十分に、あるいは継続的に得られないことがしばしばあることから、脂肪滴の形成による栄養分の蓄積は、生存において極めて重要なメカニズムといえる。しかし、栄養過多の環境に置かれているヒトにおいては、脂肪が脂肪滴に過剰に蓄積されることが、肥満、ひいては様々な生活習慣病をもたらすことが問題視されている。

抗肥満薬(痩せ薬)の開発にあたっては、脂肪滴の形成に繋がる生体内でのシグナル伝達を阻害するという手法が目指されることがある。2013年に東京大学の佐藤隆一郎教授らの研究グループは、脂肪滴の形成がさらなる脂肪滴の形成を促すという循環を明らかにし、その循環を遮断することが肥満の抑制に繋がることを示唆した。2014年現在、脂肪滴形成のメカニズムは完全には明らかになっておらず、生化学的手法、分子生物学的手法など、様々なアプローチで研究が進められている。

2010年に東京大学の宮崎徹教授らの研究グループは、従来アポトーシス抑制因子として知られていたAIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)が、脂肪細胞に作用した場合、細胞中の脂肪滴を融解し、脂肪細胞の大きさを著しく減少させる効果を持つことを明らかにした。脂肪細胞の縮小は肥満の改善に繋がることから、AIMを抗肥満薬として応用する研究が行われている。

参考リンク:
脂肪細胞中にたまった脂肪滴を溶かし、肥満を抑制するタンパク質AIMの発見-画期的な痩せ薬開発の可能性 - 東京大学
脂肪細胞における「肥満へのサイクル」の存在が明らかに -脂肪滴形成がさらなる脂肪蓄積を促す- - 東京大学