2019年4月1日月曜日

トランスジェンダー

別名:transgender

身体上の性別と自己の性自認が一致しない、性同一性に齟齬を抱えている人を指す意味で用いられる語。典型的には「体は男で心は女」あるいは「体は女で心は男」という内面的境遇の人がトランスジェンダーであるといえる。性自認が男女どちらか一方に帰属する場合に限らず、中間的、流動的、超越的な性自認を抱いている人もトランスジェンダーに該当する。

身体的・解剖学的な性別と自己の性認識とが一致している人は、トランスジェンダーに対して「シスジェンダー」と呼ばれる。

トランスジェンダーの「ジェンダー」(gender)は、「性」を意味する英語表現であるが、もともとは文法における「性」を指す語であり、身体的な雌雄(sex)よりも、むしろ「社会的・文化的な意味・役割としての性別」を指す意味合いが強い。つまり「男たるもの」とか「女はかくあるべし」という風に背負わされる内面的性である。ちなみに「トランス」(trans-)は「向こう側へ」「超えて行く」という意味合いで用いられる英語の接頭辞である(恍惚・トランス状態のtranceではない)。

トランスジェンダーと「性同一性障害」は、自己の心身の性が食い違うという点において共通しているが、同義ではない。性同一障害は、心身の性別の不一致ないしは乖離に強い違和感を抱き、身体を性自認と一致させる(いわゆる性転換)を望む、精神障害の一種と位置づけられる状況である。トランスジェンダーは性自認に対する齟齬・不一致を感じている状況を広く包含する。性同一性障害もトランスジェンダーに包含され得る。


近年、欧米を中心に、トランスジェンダーを理解し受容するための社会制度の変革が進みつつある。日本では2003年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立し翌年に施行された。同法により、性同一性障害を抱えており特定条件を満たす者は戸籍上の性別記載の変更が認められるようになった。同法は文脈によっては「特例法」と略される場合が多い。