テセウスの船の意味
テセウスの船とは、「物の構成要素すべてを一つ残らず新しい部品へ置き換えた場合、それは以前のものと同一物といえるだろうか、あるいは全くの別物というべきだろうか」という問題のこと。ギリシア神話に題を取る。「テセウス」は神話に登場する伝説的人物の名。テセウスの船の語源・由来
神話に登場する「テセウスの船」は、クレタ島のラビュリントスに住まう怪物ミノタウロスを征伐するためにテセウスが乗り込んだ船を意味する。(ミノタウロスはアテナイから生贄を捧げさせており、テセウスはアテナイの王でありながら自らミノタウロスを退治するためラビュリントスに向かったのである)。テセウスの船は大いなる記念として後世へ受け継がれていった。しかし建材の老朽化に伴い、古くなった箇所が段々とが新しい部品へ置き換えられていった。――さて、すべての部品が更新されてしまった船は、テセウスがクレタ島へ向かった船と同一の船であろうか? もはやオリジナルの部品が全くない以上、もはや全く別個の個体と言ってしかるべきではないのか?テセウスの船と類似する考え方は古今東西に見られる。方丈記の「行く川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず」というくだりも、同じに見えて別物であるという点においてテセウスの船と同じパラドックスを提起しているともいえる。人間をはじめ動物は新陳代謝によって全身の細胞が更新されているが、すべての細胞が更新される前と後では何をもって同一人物とみなすべきか一考の余地がある。
2020年にTBSテレビが日曜劇場の枠で放送したテレビドラマ「テセウスの船」は、東元俊哉による同名のマンガ作品を原作としている。同作品は「主人公が過去へタイムスリップして殺人事件の真相に迫る」という大筋のミステリー作品である。