2020年10月26日月曜日

中二病【ちゅうにびょう】

中二病(厨二病)とは、思春期の格好つけたい年頃の少年少女にありがちな、空想や自己愛や全能感が生み出す、奇矯で珍妙な言動や嗜好のこと。揶揄または自虐の意味を込めて用いられるスラング。

「中二病」という呼称には、この「病状」が中学2年生の頃に典型的に見られるものである、という含意がある。中学2年生は第二次性徴のただ中であり、心身ともに子供から大人へと移行しはじめる時期であり、下級生(子供)と上級生(大人)を見ながら過ごす時期でもある。大人に憧れつつ、子供っぽさが抜けず、年相応に世間知らずである。

あらためて言うまでもないが「中二病」は病名ではない。(ある意味「病的」ではあるかもしれないが)。中二病の何たるかを説明するに当たっては「症状」「症例」「予後」「治療」といった医療用語がよく用いられるが、もちろんこれは遊んでいるだけ、もしくは病気の症状になぞらえて扱っているだけである。まじめに医学的な見地に立って語っているわけではない。

中二病の根底には自己顕示欲や承認欲求、自らを特別な存在と思いこむ自己陶酔、といった要素がおおむね共通して見て取れる。これに幻想・空想・夢想・妄想が加わり、「光と闇」「神聖と邪悪」「選ばれし者と凡愚凡俗」「天才と暗愚」「支配する側と支配される側」といった世界観も加わり、個人の趣味嗜好と相まって、具体的な言動として発出される。

中二病は往々にして「己は唯一無二の存在」という意識を抱くものであるが、その意識も含めて、中二病の行動はとかくありがちというか、類型化しやすい。中二病にあちがちな言動は「中二病あるある」「中二病発言」などと呼ばれる。

中二病という言葉は、1990年代末に世間的に初めて使われ始めたとされる。明瞭に今般の意味で使われるようになったのは2000年代半ばの「中二病総合スレ」というスレッド(スレ)であろう。同スレを立ち上げた者が「この他の中二病・小六病の症例・背伸びグッズ・中二病のヤツが聞く音楽などを語っていけww」と記し、「症例」と称して体験談や周囲の人物の見聞を連ねた。なお、当時のスレで参考にされた中二病の定義ははてなブログの中二病の解説である。

中二病という言葉は、当初は、もっぱら自虐的な意味で使われていた。次第に他人の幼稚さを揶揄する言葉として使われる傾向が色濃くなっていった。2008年にはライトノベル作家の塞神雹夜が「中二病取扱説明書」を著し、中二病の〈病状〉を整理した。この頃にはネットスラングの域を超えて「中二病」という言葉が広く一般に知られるようになる。そして「中二病」は人を形容する言葉にとどまらず、キザったらしいファッションの意匠や創作コンテンツの作風を形容する表現としても用いられるようになっている。

マンガやアニメにおける「中二病」的な要素の例としては、たとえばキャラクターデザインに関しては「黒装束を身に纏う」「銀髪さらさらストレート超ロングヘアー」「虹彩の色が左右非対称(オッドアイ)」「超然とした物腰で達観した物言いをする」「難解な言葉や概念を多用する」といった要素が挙げられる。

中二病は「厨二病」と表記される場合もあるが、この「厨」の字は「中坊」が転じた「厨房」の略であり、すなわちインターネットスラングとしての「中」の異表記である。この「厨房」という表記は、1990年代にはすでにネットスラングとして使われている。昨今では中学生か否かを問わず、大人に対しても、おおむね「幼稚なガキ」くらいの意味合いで用いられることがある。「厨」の字そのものがすでに侮蔑的なニュアンスを含む語として用いられている。


中二病の同種の言葉あるいは概念として、「高二病」「小二病」「大二病」、および、「中年病」「45歳病」「小六病」なども見いだせる。いずれも、その年頃に特有の傾向として発現しやすく、多くの人が共感でき、ちょっと恥ずかしい、黒歴史的な、あるあるネタである。

「高二病」や「小二病」は子供が背伸びして格好つける姿、「中年病」や「45歳病」は過去の武勇伝を語って「ちょい悪オヤジ」ぶる姿である。

塞神 雹夜による「中二病取扱説明書」によると、中二病は自己設定を前提として、主に「邪気眼系」「DQN系」「サブカル系」に分類される。

邪気眼系は非現実的な妄想を現実に当てはめる行動を取るパターンであり、最も中二病らしいことからその人物を末期患者と呼ぶこともある。難解な言い回しを好み、「† 漆黒の駄天使 †」みたいなネーミングを好み、魔術的な儀式を模してみたり、自らに秘められたる特殊能力があるかのように振る舞う、というのが典型的な邪気眼系である。邪気眼系のネーミングは、2006年の2ちゃんねるの過去の失態を告白してみんなで奇声を発するスレで邪気眼という設定を持っていた人物の体験談があるため、それに関連してつけられたものである。

「邪気眼系」の典型例。べつにケガしてるわけでもないのに腕に包帯を巻き、その腕を押さえて「っぐわ!……くそ!……また暴れだしやがった……」「奴等がまた近づいて来たみたいだな……」とか独りごち、一体なにをしているのかと問われれば「っふ……邪気眼を持たぬ物にはわからんだろう……」とうそぶく。

「DQN系」は不良行為や反社会的な行動を好む傾向の中二病である。「DQN」はそもそも、軽率そうで不良じみた行動をする人、非常識な行動をするオラついた人を指す侮蔑のこもったインターネットスラングである。DQN系の中二病患者は、「授業をサボる」「未成年ながら飲酒や喫煙をする」「制服を着崩す」といった非行少年くさい行動を取ったり、猟奇的な殺人事件や殺人鬼や生物の血肉に興味を持つというような狂気へ近づいたりする。後者は宗教的な要素が混ざって「邪気眼系」のような振る舞いに似通うこともある。

「サブカル系」は特殊な価値観や高尚な趣味を持ちたがる傾向といえる。洋楽を聞き出す、英字新聞を購読する、政治的なことに意見する、というように、社会派エリートを気取る意識高い系のような行動をとりがちになる。興味の対象が難解であり、往々にして理解が追いつかず、また往々にして自らの意見も確立できていないため、聞きかじりの意見を引用する生半可な態度に陥りやすい。

中二病と「反抗期」の違いは、行動と心理状態の両面に見いだせる。反抗期は、自己主張が暴言や暴力に現れ過激になったものだが、口うるさい親には反抗するが学校の友達や優しい祖母には従順で温和といった、人によって異なる行動をとる。心理的には反抗心から、自分が悪いことを自覚していても説教に対して素直に謝れないことが多い。これ対して、中二病は、自己肯定感を優先するため基本的に誰にでも同じ言動をとり、「弱いものは駆逐されるのが当然だ」という倫理観から外れた思想があれば他者を迫害することもいとわない思いがある。しかし心理的には思い込みで虚栄を張っている場合があるため、大人に叱られれば萎縮したり恥じたりして素直に謝る場合もある。とはいえ中二病と反抗期は同時期に表れる傾向でもあり、混在している場合も多く、明確に分離して扱うこともなかなか容易ではない。

反抗期は年齢を重ねるに伴って鳴りを潜め、やがて消失する。中二病も大抵は一過性の傾向であり、成長するとともに薄れるが、大人になっても維持され続ける場合がある。いい年して中二病的な子供じみた言動が多く、そういう自己を顧みない人は、「慢性中二病」「中二病を拗らせている」などと言われて敬遠されやすい。ただし、趣味や嗜好が子供っぽかったとしても、大人としての品格を十分に備えて振る舞うことができている人は、中二病的と揶揄されることはまずない。

中二病は男性(少年)に多い傾向と言い得るが、女性(少女)も思春期に中二病を患うことはある。大人になっても精神的に未熟な言動をする女は「中二病女」と呼ばれる場合がある。中二病女はいわゆる「メンヘラ」に近づくこともある。メンヘラは、昨今では、他者に依存的で自己主張が激しく自殺願望を口にするような(面倒くさい)人を指す語として用いられている。