2013年12月5日木曜日

8-ニトロcGMP

読み方:はちニトロサイクリックジーエムピー
別名:8-ニトロサイクリックGMP
英語:8-nitro-cGMP

細胞内シグナル伝達に関わる分子の一つ、cGMP(サイクリックGMP)の8位の炭素に結合した水素がニトロ基に置換された分子。2007年に熊本大学(当時)の赤池孝章と東北大学の有本博一らによって発見された。

8-ニトロcGMPは、生体内で発生した一酸化窒素がcGMPに結合することにより生じる。8-ニトロcGMPは特定の構造を持つタンパク質と「S-グアニル化」と呼ばれる反応を起こし、強固に結合することが知られている。タンパク質のS-グアニル化は、8-ニトロcGMPの発見以前は知られていなかったタンパク質の翻訳後修飾であり、8-ニトロcGMPがS-グアニル化を介して細菌感染への免疫反応や活性酸素への応答など、生体内で様々な役割を果たしていることが明らかになった。

2013年8月に東北大学や東京医科歯科大学などからなる研究グループは、生体内に感染した細菌を排除する免疫作用の一つ、オートファジー(自食作用)に、細菌の細胞表面に8-ニトロcGMPが付着することが関係していることを発表した。従来、細菌の細胞表面にはタンパク質の一種であるユビキチンが鎖状に付着し、それがオートファジーの「目印」になることが知られていたが、この研究により、ユビキチン鎖に先立って8-ニトロcGMPが付着することが明らかになった。また、細胞外から8-ニトロcGMPを付与してもオートファジーの誘導が確認されたことから、この発見が生体本来の免疫作用の増強によるパーキンソン病やアルツハイマー病などの治療に繋がることが期待されている。

関連サイト:
Endogenous Nitrated Nucleotide Is a Key Mediator of Autophagy and Innate Defense against Bacteria - Molecular Cell
細胞から細菌を排除するための鍵分子を発見 - 東北大学