2013年12月5日木曜日

ヘリウム3

読み方:ヘリウムさん
読み方:ヘリウムスリー
英語:Helium-3

ヘリウムの同位体の一つで、2つの陽子と1つの中性子を含む安定同位体。ヘリウムの同位体の中で最も多いヘリウム4よりも、中性子の数が1つ少ない。

地球の大気中に含まれるヘリウム3の量は、ヘリウム4の100万分の1程度である。そのため、自然界からは十分な量のヘリウム3を得ることができず、リチウム6に対する中性子照射により人工的につくられたものが用いられている。ヘリウム3は研究機関において、実験機器の冷却に利用されるほか、中性子検出器でも用いられている。中性子検出器は、核兵器によるテロを防ぐ目的で、主に空港や港などに配備されている機器である。また、将来的には、ヘリウム3と重水素の「D-3He反応」を用いて核融合を行うことが検討されており、理論的には放射性廃棄物をほとんど出さずに、膨大なエネルギーを効率よく得ることができるといわれている。

ヘリウム3は近年入手が困難になっており、価格が2000年代の数年間で20倍以上も高騰し、1キログラムあたりの値段が10億円を超えるまでになった。それは、水素爆弾製造の際の副産物として生じるヘリウム3の供給量が、冷戦後の核軍縮に伴って減少したことが主な理由である。2013年現在、ヘリウム3の不足により、米国ではテロ対策に重要な中性子検出器を十分に配備することができない状況であり、ヘリウム3の供給量減少に対して危機感が持たれている。また、核融合の実現という観点からも、ヘリウム3の供給手段の開発が望まれている。

ヘリウム3は、太陽から噴出する太陽風に微量含まれていることから、太陽風に長期間晒されてきた小惑星などには、地球上と比べて桁違いの量のヘリウム3が蓄積していることが知られている。ヘリウム3の採掘対象として、月が最も有望視されている。アメリカ航空宇宙局(NASA)が公表している構想の中には、月面基地に核融合炉を建設し、採掘したヘリウム3をその場でエネルギーに変換するというものもある。

関連サイト:
Energy from the Moon - NASA