2014年2月7日金曜日

ヒストン

英語:histone

真核生物の細胞に含まれるクロマチン(染色体)の構成単位、「ヌクレオソーム」をDNAとともに形成するタンパク質のこと。ヌクレオソームとは、4種類、8個のヒストン分子が結合し、その周囲にDNAが巻きついたものを指す。ヒストンが「糸巻き」のような役割を持つことによって、非常に長い鎖状のDNAが、クロマチン(染色体)の内部にコンパクトに収納される仕組みになっている。

ヒストンは球形に近い形をしており、「ヒストンテール」と呼ばれる部分が尾のように突出している。ヒストンテールがアセチル化、メチル化、ユビキチン化などの化学修飾(翻訳後修飾)を受けることで、ヒストン自体の性質が変化し、さらにはクロマチンの構造も変化することが知られている。

例えば、ユークロマチンと呼ばれる領域では、ヒストンのアセチル化に伴いDNAが緩み、転写活性が高くなることが知られている。一方、ヘテロクロマチンと呼ばれる領域では、ヒストンが脱アセチル化しており、DNAが凝集して転写活性が低くなっている。メチル化などの他の化学修飾も、それぞれ特異的な機能をヒストンに付与するといわれており、複数の化学修飾の組み合わせが遺伝子発現を制御しているという「ヒストンコード仮説」も提唱されている。ヒストンの化学修飾による遺伝子発現の変化は、塩基配列の変化を伴わないため、「エピジェネティック」な現象の一つに数えられる。

なお、ヒストンはタンパク質の一種であり、多数のアミノ酸が連なって構成されているが、その配列の一部が異なっているヒストンの存在が知られており、ヒストンバリアント(異型ヒストン)と呼ばれている。2014年2月に理化学研究所の研究グループは、iPS細胞の作製にあたって、ヤマナカファクター(山中因子)とヒストンバリアントを組み合わせて添加することで、作製効率が20倍になることを報告した。

関連サイト:
卵子の「異型ヒストン」がiPS細胞の作製を促す - 理化学研究所