2014年3月14日金曜日

海洋酸性化

読み方:かいようさんせいか
英語:ocean acidification

長期間にわたって海洋のpH(水素イオン濃度)が低下する、すなわち酸性に近づく現象のこと。

海洋酸性化は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇と密接な関係があるとされている。海水に溶け込んだ二酸化炭素は、化学反応によって炭酸水素イオンや重炭酸イオンを経て炭酸に変化するが、その際に水素イオン(H+)の解離が起こる。これにより、海洋の水素イオン濃度の増加、すなわちpHの低下が起こることとなる。

海洋酸性化は、様々な海洋生物に影響をもたらすことが知られており、特に炭酸カルシウムが生存に不可欠なサンゴ類、貝類などに深刻な影響を与えるとされている。海洋酸性化に伴い重炭酸イオンが増加すると、炭酸カルシウムの生成反応の効率が低下することから、貝類は貝殻を、サンゴ類は骨格を形成することが困難になる。2014年には、海洋酸性化の影響により、カナダで1千万匹以上のホタテガイが死滅したと報告された。

また、円石藻や有孔虫など、石灰質の殻を形成するプランクトンにも、海洋酸性化の影響に対して敏感なものがある。海洋酸性化が起こり、それらのプランクトンが死滅することで、漁業生産量が低下することが懸念されている。また、2014年に千葉工業大学の研究グループは、白亜紀末に起こった生物の大量絶滅に、隕石落下に伴って海洋酸性化が起こり、ナノプランクトンが死滅したことが強く影響したことを示唆する研究成果を発表した。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2007年の報告書では、世界的に海洋酸性化が進行していることが明記されている。産業革命以前の海洋の平均pHが8.17程度だったのに対して、2007年の時点では8.06程度にまで減少しているとされた。海洋酸性化の傾向は、地球温暖化の傾向よりも明確に証拠づけられているとされているが、海洋酸性化が生態系に与える影響に関する知見は断片的であり、早急な解明が必要とされている。

関連サイト:
海洋酸性化 - 気象庁
海洋酸性化の影響 - 国立環境研究所地球環境研究センター
Production of sulphate-rich vapour during the Chicxulub impact and implications for ocean acidification - Nature Geoscience