別名:ヒミコ
天体ヒミコの発見当初、その正体はまるきり不明だった。命名にあたり、同様に謎に包まれている古代日本の伝説的女王・卑弥呼に因んで「ヒミコ」(Himiko)と名付けられた。2013年現在、天体ヒミコは原始銀河ではないかと見られている。
天体ヒミコはくじら座の方向にある。現在の技術で観測可能な天体の中でも最も遠い場所にある天体の一つである。距離から見て、地球で観測されたヒミコはビッグバンによって宇宙が誕生してからおよそ8億年ほど経過した頃の姿であることになる。現在の宇宙はビッグバンから138億年ほど経過しているという計算上、天体ヒミコはきわめて若い天体である。
従来の通説では、天体は若ければ若いほど小さい。しかしながら天体ヒミコは、極めて若い天体であるにもかかわらず、天の川銀河の半径程度の大きな広がりを持ち、太陽の数百億倍程度の質量を持つなど、通説を覆す特徴を持っていた。
2013年、東大宇宙線研究所などの研究グループは、ヒミコの内部構造を解明し、ヒミコがごく近傍に存在する3つの星団からなる天体だとする研究成果を発表した。ヒミコの大きさや質量、全体を包む巨大な水素ガス雲などの謎はこれによって明らかになり、ヒミコが盛んにエネルギーを放つ明るい天体であることも、3つの星団が衝突しつつあることから説明できるという。
2013年の研究では、ヒミコの内部で星が盛んに形成されていることが確認されたものの、「爆発的星生成銀河(スターバースト銀河)」に特徴的な電波は検出されなかった。このことから、ヒミコが銀河形成のごく初期の段階にあることが示唆され、銀河の生成過程の解明に繋がることが期待されている。
関連サイト:
An Intensely Star-Forming Galaxy at z~7 with Low Dust and Metal Content Revealed by Deep ALMA and HST Observations - The Astrophysical Journal
アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で迫る宇宙初期の巨大天体ヒミコ - 自然科学研究機構 国立天文台