2014年2月14日金曜日

孤児著作物

読み方:こじちょさくぶつ
別名:孤児作品
別名:オーファン・ワークス
別名:権利の所在が不明な著作物
英語:orphan works

著作権で保護された作品のうち、権利者の所在の確認が取れない作品のこと。

孤児著作物が発生する例としては、著者がペンネームなどの変名を用いている場合や、著者の死亡や企業の倒産、法人の解散などに伴い権利譲渡が行われたものの、譲渡先が不明な場合などが挙げられる。著者の没年が明らかでない場合には、著作物がパブリックドメインとなっているか否かも不明となる。

過去の作品のデジタルアーカイブ化や、復刻版の刊行などを行う際には、孤児著作物の存在が特に問題となる。世界的に孤児著作物の数は極めて多く、その数は著作権の保護期間延長などに伴い、増加傾向にあるといわれている。例えば、国立国会図書館で「近代デジタルライブラリー」構築のために明治期の図書が調査されたところ、約70%が孤児著作物であった。また、NHKは「NHKアーカイブス」として過去に放映した番組を公開しているが、連絡がつかない出演者が多かったことなどから、開設後6年間で、公開に至った作品は全体の1%程度に留まった。

著作権法第67条では、「相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができない場合」に、文化庁長官の裁定を受けることと補償金の供託を条件として、その著作物を利用することができると定められていることから、孤児著作物を利用する手段が全く無いわけではない。しかし、「相当な努力」という基準が客観性に乏しいことや、著作物が実際にはパブリックドメインである場合にも補償金を支払わなければならないことなどが問題視されることもある。

また、2014年現在、ベルヌ条約やTRIPS協定などの国際条約では、孤児著作物の権利については規定されていない。各国が孤児著作物の利用可能性を拡大する法制度を整備するにあたっても、それらの国際条約の制限を受ける場合がある。

関連サイト:
著作権法 - 総務省e-gov
EUにおける孤児著作物への対応 - カレントアウェアネス・ポータル