2014年9月5日金曜日

ファビピラビル

別名:アビガン
別名:アビガン錠
別名:T-705
英語:favipiravir

富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬。エボラ出血熱(EVD)の治療薬としても期待されている。

日本国内では、2014年3月にファビピラビルを有効成分とする「アビガン錠」が厚生労働省から承認されている。ただし使用は「他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分なものに限る」という特殊な条件下に限る。

既存の比較的よく知られているインフルエンザ治療薬、「オセルタミビル」(タミフル)や「ザナミビル」(リレンザ)といった製品は、「ノイラミニダーゼ阻害薬」に区分される。これら薬剤はウィルスが感染細胞から放出されるのを防ぐ作用を持つ。そのため感染して間もない時期の投与では効果が期待できるが、症状が進みウィルスが体内に拡散してしまった段階ではほとんど効果が期待できない。他方、ファビピラビルは「ウィルスのRNAポリメラーゼを阻害する」という薬理作用を持つ。つまり、ウィルスの増殖を直接に阻害する作用がある。このため、ノイラミニダーゼ阻害薬とは異なり、比較的遅い時期に投与しても効果が期待できる。

ただし、ファビピラビルを妊娠中の女性が服用すると胎児に重篤な副作用を及ぼす危険のあることが知られている。厚生労働省がファビピラビル(アビガン錠)を承認するに当たっては、同薬をパンデミックの発生まで商品を厳格に管理し、流通させないこと、および、投与中や投与後の避妊措置を徹底させることなども条件に挙げている。

ファビピラビルは、オセルタミビル(タミフル)の耐性を持つウィルスや、H5N1亜型などの鳥インフルエンザAウィルスに対しても有効とされる。実際、2013年に中国を中心に流行した新型ウィルス、H7N9亜型に対しては、既存の薬剤の有効性は低く、ファビピラビルのみ効果が見られたと報告されている。

2014年前半に西アフリカでエボラ出血熱(EVD)が大流行(アウトブレイク)し、医療関係者にも感染が広がるなどして、8月現在、世界的流行(パンデミック)が危惧されている。米国メディアのブルームバーグは8月7日、米国政府機関がエボラ出血熱の治療薬として利用可能とするためファビピラビルの承認手続きを急いでいると報じた。ナイジェリアでもファビピラビルは未承認であるが、エボラ出血熱患者に対するの使用を本格的に検討していることが9月初頭に報じられた。

関連サイト:
ファビピラビル製剤の使用に当たっての留意事項 - 厚生労働省
富士フイルムのインフル治験薬、エボラ出血熱治療に有望か - ブルームバーグ 日本語版 2014年8月7日