2014年3月12日水曜日

実質的個人識別性

読み方:じっしつてきこじんしきべつせい

本来は個人を識別する目的を持たないデータに付随することがある、実質的に個人の識別を可能にする性質のこと。具体的には、端末のIDやパスワード、商品の購入履歴、位置情報などが、実質的個人識別性を持つデータとして挙げられることがある。

例えば、パソコンやスマートフォンなどのIDやパスワード、あるいはIPアドレスやクッキーなどは、本来はネットワーク上の機器を識別するための符号である。しかし、そのような符号の中には、特定の個人と継続的に結びついていたり、他のデータと組み合わせることによって個人の特定ができる、すなわち「再識別化」が可能になる符号もあることから、実質的個人識別性を持つ場合があるとされている。

実質的個人識別性の重要性は、企業などによる近年のビッグデータの利用機会増加とともに注目されている。ビッグデータには、「個人の特定には使用しない」と断った上で収集された統計データも含まれるが、それが実質的個人識別性を持つ場合、プライバシー保護上の懸念が生じることもあるとされる。そのことから、実質的個人識別性を持っているデータは、住所、氏名、生年月日などと同様に、パーソナルデータの範疇に含められるべきとする意見もある。

総務省は、実質的個人識別性の有無は、「プライバシー保護という基本理念を踏まえて実質的に判断することが必要」としている。また、潜在的に再識別化が可能なデータについても、取扱者が再識別化を行わないことを約束したり、提供先との契約に再識別化の禁止を盛り込むことで、自由に利用することを認めるとしている。2014年3月現在、総務省の「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」は、現況に対応するために、個人情報保護法に実質的個人識別性の概念を盛り込むことも検討している。

関連サイト:
パーソナルデータに関する総務省における取り組みについて(PDF) - 総務省