リベラルとは、リベラルの意味
リベラルとは、自由主義に基づいて多様性を重んじる世の中を支持する思想全般を意味する言葉である。わかりやすくいうと、自由主義者ということである。語源は英語の liberal である。なお、リベラルな思想の持ち主をリベラリストと呼ぶ。現代において、リベラルはしばしば政治的な左派と混同して語られている。そのため、保守派の論客からリベラルは仮想的にされることも多い。しかし、リベラルの本当の意味では、左翼思想と直接的な関係がない。あくまでも、個人の活動や信条に、国家が介入することを防ごうとする考え方がリベラルの定義である。リベラリストは伝統主義者と対極をなす思想の持主だといえる。もしも伝統的な価値観、古くからの体制に欠点があった場合、リベラリストは変革を厭わない。むしろ、彼らは停滞したシステムを引きずるよりも、抜本的な部分から再構築したほうが人々の幸福につながると考える。そのため、保守層とリベラル層は対立しやすい傾向にある。また、多様性を支持するリベラル層は、異なる価値観や民族にも寛容な姿勢を示す。基本的にリベラリストは反戦主義であり、日本国憲法の第九条にも肯定的である。結果的に、護憲派と呼ばれる人々の中にはリベラル層が多い。
1930年代以降、リベラリストによって、個人の経済活動の自由を無条件で認めるよう働きかける運動が起こった。これを「ネオリベラリズム(新自由主義)」と呼び、アメリカや日本で広く受け入れられている。ネオリベラリズムは、一般的なリベラリズムと別物である。
日本におけるリベラル派の政党
日本のような政党政治は、「リベラル派」「保守派」の対立構造で語られることも多い。2020年時点では、立憲民主党、日本共産党、社会民主党などが主なリベラル派政党として挙げられている。いずれも増税や外交などへの見解で食い違う部分は多い。ただ、護憲派の立場を貫いたり、社会保障の充実に向けて活動していたりする点は共通している。日本の政党政治でリベラルが果たす役割のひとつは、保守政権の監視である。日本では2012年以来、保守政党である自由民主党(自民党)政権が続いてきた。そうでなくても、政党政治が始まって以来、保守政党の議席数が多くなる傾向は顕著だった。しかし、保守政党だけが主導する国会では、偏った価値観に基づく政策ばかりが施行される危険性を否定できない。そこで、リベラル派は保守政党が暴走しないよう、逆の視点からの意見を国会で提言し続けている。
また、新自由主義への抑止力としてもリベラル派に意義はある。戦後の新自由主義では、国が企業や個人事業主に介入せず、柔軟性の高い経済活動が守られてきた。しかし、新自由主義は成功を収められなかった人間への自己責任論を助長しかねない。失業者や障害者、後期高齢者への保障を削減し、一部の富裕層にのみ有利な社会制度を生み出す可能性を持つ。リベラル派は、新自由主義で振り落とされた人々へのセーフティネットとなる政策を提言する。すなわち、リベラル派は寛容な世の中を維持するために国会での存在意義がある。
リベラルと保守との違い
保守とリベラルは多くの面で違いを表明している。まず、憲法改正について、保守派の多くは肯定的である。近隣諸国から攻め込まれる可能性、海外派遣された自衛隊員の自己防衛などを考慮し、保守派は日本が正式に攻撃力のある軍隊を持つよう望んできた。実際、保守政権のもとでは、憲法改正がたびたび大きな公約として掲げられている。一方、リベラルな考えに基づく人々は、憲法改正について反対の立場を示す。リベラル層は戦後日本で実施されてきた平和教育に、おおむね共感してきた。そのため、戦争放棄の核となる憲法九条の現状維持を望んでいる。日本で保守とリベラルの、戦争観の違いが顕著に表れている事例が靖国参拝である。保守派は、太平洋戦争の戦死者を英霊としてまつっている靖国神社参拝を積極的に行ってきた。しかし、リベラル派は戦争を肯定することにつながるとして、靖国参拝に否定的な態度をとり続けている。
次に、伝統的な慣習に対して、保守派は厳守の立場をとることが多い。夫婦別姓や同性婚について反対する保守層も目立つ。保守層は国体維持を大きな目標としているので、伝統を壊すような考え方には嫌悪感を抱きやすい。逆に、リベラル派は自由主義に基づき、伝統に柔軟な考えを持っている。夫婦別姓、同性婚に対しても、リベラル派は当人たちの幸福を優先的に考える。そのうえで、伝統が邪魔になっていると判断した場合、リベラル派は変革も厭わない。社会制度の撤廃、修正を求めるリベラル派は多い。そのほか、保守が国家の経済介入を最小限に留めるよう主張しているのに対し、リベラルはむしろ、積極的な介入を求める。
リベラルの語の対義語
しばしばリベラルの対義語は「保守」といわれてきた。しかし、実際には「パターナル(権威主義)」のほうが、より逆の意味に近い。パターナルは英語の「paternal」を語源としている。パターナルでは、権威が絶対的な力とみなされてきた。主従関係が肯定され、目上の者が目下の者に介入し、支配することが肯定される。また、パターナルにおける権威は往々にして世襲制であり、本人の能力に関係なく受け継がれているケースも多い。個人の自由を認めるリベラルとパターナルは大きくかけ離れた概念である。パターナルは、実力主義を内包しているネオリベラリズムとも使い分けるべきだといえる。レイシズムもリベラルの対義語のひとつである。レイシズムは英語で「racism」と表記し、人種差別主義を意味する。レイシズムは肌の色や国籍によって人間を差別することを肯定し、社会保障においても優劣をつけようとする。代表例は欧米で蔓延していた奴隷制度であり、現代でも当時の名残によって白人優位社会が形成されてしまった。リベラリズムはレイシズムに反対しており、人種平等の社会を実現させようと働きかけている。
そして、結束主義を意味するファシズム(fascism)もリベラルと反対の意味である。ファシズムでは、国民が国家のために奉仕するよう誘導される。そして、個人主義はファシズムの下で認められない。個人が自由に行動していいとする、リベラル思想とは大きな違いがある。ファシズムの類義語としてトータリタリアニズムやミリタリズムが挙げられる。