2020年10月13日火曜日

相対性理論

読み方:そうたいせいりろん

相対性理論とは

相対性理論とは、アルバート・アインシュタインが発表した物理学の理論で、どこかに絶対的な原点を置く座標系ではなく観測者の立場によって互いの時空間が「相対」して変わるものとしてとらえるものである。一言でわかりやすく言うと光の速さは一定であるとし、時空間は歪むものととらえる理論である。重力は時空(時間と空間)のゆがみで表され、より大きい質量による大きなゆがみに他の物体が引き寄せられるとして重力を説明する。相対性理論は「特殊相対性理論」とそれを改良した「一般相対性理論」からなる。特殊相対性理論は1905年発表。一般相対性理論は1915~16年に発表された。特殊相対性理論内では式E=mc2(エネルギー=質量×光の速さの二乗)があり、簡単に言うとエネルギーと質量が変換可能であることを示す。相対性理論によってさまざまな物理現象を説明、予測できる。

アイザック・ニュートンによる万有引力理論をより深く広範囲に適用できる優れた理論として、相対性理論は現代物理学の根幹を成すものとなっている。万有引力は重力を「引く力」と説明するが、天体を観測すると計算上合わない例外があった。相対性理論はこれを説明でき、理論の正確性は天体観測や高速ロケットを用いた実験により証明されている。GPSにもこの理論が使われており、相対性理論を使わなければ実際に誤差が生じる。 英語では、相対性理論は「theory of relativity」。特殊相対性理論は「special theory of relativity」、一般相対性は「general theory of relativity」である。しばしば冠詞「the」をつけ「the theory of relativity」、また「アインシュタインの発表した相対性理論」という意味で「Einstein's theory of relativity」と書く。

特殊相対性理論とは

特殊相対性理論は慣性運動する観測者がどのように観測し、また他の観測者に観測されるのかについて述べた理論である。そこでは「光速度不変の原理」を土台に理論が展開される。これは、真空中では光源がどんなに動こうと光の速さは変わらないことを前提に考えるということである。例えば、電車に乗っている人が電車の床にボールを落とせばI字型に手元に跳ね返ってくる。同時に、静止した状態で電車を外から見ている人にはボールはV字形に移動しているように見え、より移動距離が長く見える。これをボールではなく光で考えると、光の速度は一定で変わらないので、電車の中の人から見える光の移動にかかった時間と、電車の外の人から見たより長い距離の光の移動にかかった時間が異なることになる。光の速さが変わらない代わりに、時間の進み方が観測者によって変わる。

双子のパラドックス(または時計のパラドックス)はこのような時間の流れの違いを問題にした思考実験である。静止している人Aのもとを高速で離れて戻ってきた人Bは、静止していたAより時間の経過が遅くなっていることが特殊相対性理論から予測される。一方同理論から、高速で移動したBを基準とすればAが高速で離れていくように見えるため、Aのほうが時間の経過が遅いように見えるはずだ、というものである。このような二者の同時性を考えるとき時空図を用いそれぞれの座標を落とし込み理解することができる。また、空間も物体と別に存在するものでなく、時間と合わせて4次元時空と考える。物体は高速で動くほどその質量は大きくなり、運動方向に対して収縮する。

一般相対性理論とは

一般相対性理論では、重力を時空間の曲がりで説明し、より広範な状況における物理法則が扱われる。その実際の観測例となるのが「重力レンズ」である。これはブラックホールなど大きな質量によって曲がる空間により、ブラックホールより後方の天体があたかもレンズのように曲がる光となって観測者に届く現象である。1919年にエディントンが皆既日食を利用し太陽の重力によりわずかに曲がる光を観測したと発表し、相対性理論が注目を浴びることとなった。

この理論では等価原理が重要な要素である。これは重力質量と慣性質量が等価であるとする考えである。例えば自由落下するエレベーター空間内部の無重力状態と、無重力空間にあるエレベーター内空間は内部の人間からはどちらも同じと捉えられるというものである。または、無重力空間で急上昇するエレベーター内で慣性の力を受けることと、地上で重力を感じている状態を同等と考える。これにより特殊相対性理論の「特殊」な状況に限定した事象からより一般的な事象を扱えるようになった。

一般相対性理論は物体、時間、空間を個別に扱わず互いに関連し不変ではないものとした。巨大な重力をもつ天体であるブラックホールの解明にも大きく寄与する。中心となる方程式はアインシュタイン方程式で、重力場の力学を記述する。この理論によって予言された重力波(大きな質量によってゆがむ時空が光速で伝播する宇宙物理現象)は、2016年に重力波望遠鏡で観測されたと発表された。

相対性理論と量子力学の概念の違い

量子力学は電子や光子などごく微小な世界から発展した現代物理学の分野である。素粒子の存在と位置を確率で求める。その始まりはプランクの「エネルギー量子仮説」である。非常に小さな値であるプランク定数を用い、ある振動数の光が持つエネルギーは不連続な量をとることを示す。従来の自然科学では自然現象の値は連続するものと考えられていたため、プランクの仮説は非常に画期的であった。

ニールス・ボーアは原子内の電子の軌道半径(不連続な値をとる)について「量子条件」を提唱、原子が放つ光の振動数を「振動数条件」で説明し、量子力学に貢献した。量子力学は「観測」が結果に与える影響が大きく、観測者と観測対象を一元的に捉えなければならない性質がある。コペンハーゲン解釈では、素粒子は観測されていないとき「波」であり、観測によって波が収縮し確率的に一点に「粒子」として存在する性質だと考える。また、位置と運動量は同時に特定できない。このような素粒子の性質を実際観測するために「ダブルスリット透過実験」がある。この結果縞干渉が確認され電子の波の性質が確認された。

シュレーディンガーは波動関数(物質波の状態を示す)を含めたシュレディンガー方程式を発表し、波動力学が発展した。量子力学は発展途上であるがすでにコンピューターや電子機器には量子力学が使われており、量子コンピューターも開発されている。 量子論以前の物理学は相対性理論も含め古典物理学に分類される。アインシュタインは光量子仮説を提唱し量子論に貢献したが、決定論的な物理学に固執し生涯量子論に賛同しなかった。ミクロの世界から発展した量子力学とマクロな世界で重力を扱う相対性理論は相性が悪く、双方の理論の統合が今後の物理学の課題となっている。