「意思」は「行動や選択をする際の元となる内的な心の動き」を意味する語である。「意志」は「目標を定めた心の様子」を意味する語である。 「意思」も「意志」も、どちらも「気持ち・考え」を意味する言葉である。そして「意思」は特に「どう思っているのか」を意味し、同じく「意志」は特に「どうしたいと思っているのか」を意味する。
「意思疎通」は「互いの気持ちや考え方が通じ合っていること」であるから、主に「意思」の語が用いられる。
「意思表示」も「自分の気持ち・考え・思っていることを相手に明確に示すこと」であるから、主に「意思」の語が用いられる。
ただし、場合によっては敢えて「意志」の語を使って「意志疎通」や「意志表示」と表現されることもある。
「意志薄弱」は「成し遂げようとする気持ちが弱い」もしくは「積極的に決断しようとする気持ちが弱い」ということであるから、もっぱら「意志」の語が用いられる。
「意志」には、気持ちの有無や強弱を問うニュアンスがある。「意思」には気持ちの有無を問うニュアンスはあるが、強弱のニュアンスは特にない。
「意思」も「意志」も、読み方は同じ「いし」である。
「意」は「心・気持ち・考え」を意味する字である。「思」は心や心の中の様子。「志」は「何かに向けられる気持ち」を意味する字である。
「意思」は「あらゆる可能な行動や選択をする出発点になる心の動き」を意味し、その気持ちの方向(何に向けられた気持ちであるのか)については関与しない。
「意志」は「行動の方向を定めた心の様子」を意味し、意欲・決意・強い動機を伴った決断などを指す。そのため、その心の強弱や確かさを問われることも多い。
「意思」「意志」の主ない方・使い分け方
法律の分野では「意思」の語が主に用いられる。心理学や哲学では「意志」の語が用いられることが多い。たとえば、金融商品やサービスを購入する行動には「意思」が用いられる。契約する際の「この内容でいいですか?」というやり取りは法律用語で「意思確認」と呼ばれる。後のトラブル防止のために契約内容に同意し契約する意思の有無を明らかにする手順である。後の結果までを踏まえて判断する能力は「意思能力」という。刑法では、犯罪を犯した人が自分の行動に対してどういう認識をしていたのかを問う文脈で「意思」が問われる。「意志」の語は用いられない。
哲学の分野では「意志」が用いられる。意志は古来より大きな哲学上の議題として扱われてきた。何の制約も外的影響も受けずに本人が自発的に心のありようを決定できるような意志を「自由意志」というが、この「自由意志」は果たして存在しうるか?という問いは、いわば永遠のテーマである。