2014年3月31日月曜日

グレイのパラドックス

別名:グレイのパラドクス
別名:Grayのパラドックス
別名:Grayのパラドクス
英語:Gray's paradox

イルカやカジキ、マグロなどが、筋肉量が他の動物とそれほど変わらないにもかかわらず、時速数十キロメートルにも及ぶ高速で遊泳できるというパラドックス(矛盾)のこと。動物学者のジェイムズ・グレイが指摘したことから、グレイのパラドックスの名で呼ばれるようになった。

ジェイムズ・グレイは1936年に、イルカの遊泳について流体力学的研究を行い、イルカが従来の流体力学における常識では考えられないほどの高速で遊泳できることを見い出した。具体的には、イルカほどのサイズの生物が遊泳した時には、水中で乱流が発生し、抵抗が強くなって遊泳速度が落ちると考えられるが、実際の観測データは乱流の発生を前提として計算した結果と全く一致しなかった。

グレイのパラドックスはその後長らく解明されることはなかったが、それをきっかけとして様々な論争が行われ、水棲生物の推進力に関する生物物理学的研究を急速に発展させる結果をもたらした。有力な説としては、イルカの皮膚が水の抵抗を減少させる構造をとっているという説があった。

2014年に米国のウェストチェスター大学などの研究グループは、粒子画像流速計を用いた研究により、イルカの尾びれが鳥の翼のように強力な推力を生み出す構造をとっていることを明らかにした。研究グループは、この観察結果に基づけば、イルカの比較的少ない筋肉量でも十分に遊泳速度が出せると結論づけた。

グレイのパラドックスの研究で得られた知見は、生体模倣(バイオミミクリー)の分野に応用されつつある。例えば、シャープ株式会社は洗濯機のパルセータにイルカの表皮の皺や尾びれなどを模した形状を取り入れ、「ドルフィンパル」と命名して商品化している。

関連サイト:
抵抗と推進の流体力学 - 海洋政策研究財団