2022年11月28日月曜日

ニッチ

英語:niche
「ニッチ」とは、ビジネスシーンで大手の企業が参入していない小さい市場や商品のことをニッチ市場・ニッチ商品などと表現する際に用いられる隙間のことを意味する表現。

ニッチとは、ニッチの意味

ニッチ(niche)とは「隙間」を意味する言葉であり、とりわけ「大手が狙わないような小規模で見逃されやすい事業領域」を指す意味で用いられることの多い語。いわゆるスキマ産業。「ニッチ産業」「ニッチな商品」「ニッチな趣味」といった表現で用いられることも多い。

ニッチの語源は英語の niche である。英語の niche に複数の語義がある。日本語の「ニッチ」の意味も文脈によって大きく異なる。一般的な文脈では「人の能力に応じた適所や得意分野」を意味することもある。建築用語では「壁のくぼみ(壁龕)」、地学用語としては「岩などのくぼみ」、生物学の用語としては「生態的地位」といった意味で用いられる。

ニッチの語源と根本的な意味

「ニッチ」の語源は英語の niche である。英語の発音は「ニッチ」あるいは「ニッチェ」に近い。英語の niche の語源はフランス語である。

英語の niche(ニッチ)も、建築用語においては「花瓶や彫刻などを設置する目的で作られた壁のくぼみ」、地学用語では「岩のくぼみや割れ目」、生物学用語では「生態系の中におけるある生物の生態的地位」という意味で用いられる。

ニッチのそもそもの意味は、西洋建築における壁のくぼみ、である。壁や柱を円形もしくは四角くくりぬき、その部分に花瓶や彫刻などを置いて飾れるようにした飾り棚を指す意味が「ニッチ」の根本的な語意である。

20世紀前半に、生物学の分野で、いわゆる「生態的地位」を指す意味で「ニッチ」という表現が用いられるようになった。生態的地位とは、生存競争によって適応する特有の生息場所のことである。つまり、狭いが競争者のいない領域である。

そして「ニッチ」は経済分野における「隙間産業」の意味や、いわゆる「マニアックな分野」を指す意味でも用いられる語となっている。

一般的な文脈で「ニッチな趣味」という場合の「ニッチ」のニュアンス

一般的に「ニッチな~」と叙述する文脈では、「ニッチ」は「広く認知されていない」とか「一部の人にのみ興味を抱かれる」といった意味ニュアンスで用いられる。

たとえば「ニッチな趣味」は、おおむね良い意味で「風変わりな趣味」「マニアックな趣味」という意味で用いられる。「ニッチな人」といえば「風変わりな人」「マニアックな人」という意味になる。基本的に「良い意味で個性的」というニュアンスで使われることが多い。

「ニッチ」の語は経済用語、マーケティング用語として用いられている

経済・マーケティングの分野で用いられる「ニッチ」とは、おおむね「大資本が手につけなかったような隙間市場」を意味する。つまり「ニッチ市場」である。ちなみに英語でもニッチ市場(niche market)という表現は用いられる。

ニッチ市場は、市場の中において一般的ではなく、客層や需要が特定の方面に限られている小規模な市場である。市場規模がどうしても小さく、収益性は低い。潜在的な需要を開拓する必要もあり、それでも需要の規模の拡大には限りがある。こうしたニッチ分野には大企業は参入したがらない。

大企業は資本力に物を言わせて収益性の大きい大規模な市場で事業を行おうとする。 顧客の需要(ニーズ)は多種多様であるが、小規模な需要をひとつひとつ拾い上げて対応しようとする方針では、投資に見合った収益が得られるとは限らない。大企業は、小規模な市場への参入は消極的にならざるを得ない。

市場シェアが最も多い企業(マーケットリーダー)は、大多数に受け入れられ必要とされるニーズを狙う。2番手、3番手の企業も大多数のニーズに応えるために競争をする。その結果、小規模のニーズは取り残されることになる。そのため、潜在的に需要はあるものの大企業が手をつけてこなかった「市場のスキマ」が生まれる。そうしたスキマに中小企業が生き残りをかけて参入する。

ニッチな産業分野には、規模こそ少ないものの需要が高い(待ち望まれている)場合もある。価格が相対的に高くなっても対価を払う顧客がいる、という場合は珍しくない。

大企業が手をつけなかった分野や需要の開拓がなされていない分野に着目して戦略的に狙うことを「ニッチ戦略」もしくは「ニッチマーケティング」という。こうした隙間市場に目をつけていち早く参入した企業は、他社の競争による体力の消耗もなく、円滑な事業の展開を図りやすい。

ニッチ戦略によって提供されるサービスや商品は「ニッチ商品」「ニッチサービス」と呼ばれる。また、こうした商品やサービスを提供するビジネスが「ニッチ産業」「ニッチビジネス」などと呼ばれる。

ニッチ戦略によって成功を収めている企業は多い。たとえばコンビニエンスストアも「営業時間の長さ」や「立地条件」といった要素において潜在的需要を喚起し、つまりニッチを突くことによって、スーパーマーケットや既存の小売店よりも高めの価格設定ながら、他を出し抜く成長を遂げたわけである。