2013年12月12日木曜日

imERYPC

別名:不死化赤血球前駆細胞
英語:immortalized mouse erythroid progenitor cell

試験管内でほぼ無限に増殖させることが可能な赤血球前駆細胞のこと。京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授らの研究グループが作製、命名した。imERYPC作製の成果は、2013年12月に「Stem Cell Reports」誌電子版で発表された。

imERYPCは、ES細胞またはiPS細胞にc-MYCおよびBCL-XLという2つの遺伝子を導入し、それらの遺伝子の過剰発現を誘導することで作製される。発現誘導を停止すると、imERYPCは赤血球の前駆細胞である赤芽球に分化し、この際に酸素運搬に必要なヘムも合成される。imERYPC由来の細胞は酸素運搬能力を持つとともに、マウスに注射すると、通常の赤血球と同様に体内での循環が見られたと報告されている。

細胞の増殖には核が必要だが、赤血球は分化の過程で核を失っているため、自己増殖することができない。そのため従来は、輸血用血液を大量に得るために細胞培養の手法を用いることはできず、輸血用血液の確保手段はドナーによる献血や自己血輸血にほぼ限られてきた。将来的には、imERYPCを用いた赤血球作製の効率性を高めることで、輸血用血液の安定確保が実現できる可能性があるという。

関連サイト:
増殖能の盛んな赤血球前駆細胞による赤血球を大量生産するための方法確立 - 京都大学
Immortalization of Erythroblasts by c-MYC and BCL-XL Enables Large-Scale Erythrocyte Production from Human Pluripotent Stem Cells - Stem Cell Reports