2014年3月19日水曜日

スポットスキャニング

別名:スポットスキャニング照射法
英語:spot scanning

がんの陽子線治療のうち、陽子線を拡散させず、スポット(点)的に高速で照射する手法のこと。

スポットスキャニングでは、従来行われてきた散乱体法と異なり、腫瘍の三次元的な形状をなぞるように高精度の照射が行われることから、周囲の健全組織への照射が最小限に抑制されている。照射する線量は、事前のX線CTスキャン検査の結果に基づき、スポットごとに最適になるように調整されている。

また、スポットスキャニングでは、余分な中性子線などの放射線の発生を抑制することができるほか、患者ごとに「コリメータ」や「ボーラス」と呼ばれる調節器具を作製する必要がないことから、コリメータとボーラスを放射性廃棄物として処理する手間も省くことができ、安全面でも優れた方法となっている。コリメータとボーラスが不要であることは、治療開始の迅速化にも繋がっている。

陽子線治療装置にスポットスキャニングの機能を搭載するためには、薬事法に基づく別途の製造販売承認が必要である。2011年に国内で初めて、株式会社日立製作所が製作した「陽子線治療システムPROBEAT-III」が承認を受け、名古屋陽子線治療センターで運用された。

2014年には、日立製作所と北海道大学の共同開発による新装置「PROBEAT-RT」を備えた、北海道大学病院陽子線治療センターが設立された。従来、スポットスキャニングは呼吸により位置が変化しない頸部、脊椎、骨盤などへの照射に適した手法とされていたが、「PROBEAT-RT」には動態追跡の技術が用いられ、臓器などの常に位置が変化する部位にある腫瘍に対する照射も行うことができるようになった。

関連サイト:
陽子線治療装置のしくみ - 名古屋陽子線治療センター
日立と北大が共同開発した「陽子線治療装置 PROBEAT-RT」が薬事法に基づく医療機器の製造販売承認を取得 - 株式会社日立製作所