2014年6月4日水曜日

STAP細胞

別名:刺激惹起性多能性獲得細胞
英語:Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cell
英語:STAP cell

特定の物理的・化学的刺激を受けることによって初期化し、多能性を獲得したとされた体細胞。2014年1月に「Nature」誌に掲載された、理化学研究所の小保方晴子を筆頭著者とする論文で発表された。

STAP細胞は、従来のES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞と異なり、クローン技術や遺伝子導入を伴わず、約30分間の低pH刺激という、簡便かつ迅速な方法で作製可能であるとされた。細胞の多能性獲得の指標となるOct4遺伝子などの発現は、iPS細胞では培養開始の2-3週間後に初めて確認されるのに対して、STAP細胞では2-3日後には確認された。

STAP細胞は作製時の条件ではほとんど増殖能を持たないが、副腎刺激ホルモン(ACTH)や白血球遊走阻止因子(LIF)を含む培養液で培養すると、STAP幹細胞と呼ばれる状態になり、高い自己複製能を得るとされた。そこから、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞と同様に、様々な組織に分化させることが可能となるとされた。また、STAP細胞は、ES細胞やiPS細胞がほとんど分化できないとされていた、胎盤や卵黄膜などにも分化可能であることも示されており、より「全能細胞」に近い細胞だともいわれた。

STAP細胞創製の研究において、外的刺激により体細胞の初期化が起こることや、哺乳類の体細胞の初期化が可能であることなどは、従来の定説を覆す発見として特に注目された。外的刺激を利用した新規メカニズムによる細胞操作技術は、将来的にはがんや老化などの幅広い研究に役立つ可能性があると考えられた。また、STAP細胞を発表した論文では、材料としてマウスの体細胞が用いられたが、ヒトの細胞でも作製可能であることが確かめられれば、再生医療の発展に大きく貢献するものと考えられた。

STAP細胞の発表当時、ノーベル賞級の発見としてマスメディアが大きく報じるなどし、高い注目が集められた。程なくして、論文の一部データや画像に論旨を覆すレベルの誤りや盗用が含まれる可能性が指摘され、マスメディアが大きく報じるなどして、さらに注目が集まった。2014年3月時点でSTAP細胞自体の存在にも疑義が呈され、理研は論文取り下げが妥当との意向を示した他、該当論文は捏造を含むと断定するなどの見解を表明している。2014年4月初旬の時点では一連の騒動に決着は見出されていない。

ハーバード大学医学大学院教授チャールズ・バカンティ(Charles Vacanti)は、一貫してSTAP細胞および小保方氏を擁護する姿勢を見せている。

2014年6月初頭、理化学研究所は、小保方ユニットリーダーがSTAP細胞の主論文の取り下げに同意したと発表した。論文取り下げにより、STAP細胞の研究成果は、いったん白紙に戻ることになる。

関連サイト:
Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency - Nature
体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見 - 理化学研究所
細胞外からの強いストレスが多能性幹細胞を生み出す - 理化学研究所