2014年6月4日水曜日

論文取り下げ

読み方:ろんぶんとりさげ
別名:論文の取り下げ
別名:論文撤回
別名:論文の撤回
別名:リトラクト
別名:リトラクション
英語:retract
英語:retraction
英語:retraction in science

学術雑誌に一旦発表された論文を、後から無効とすること。論文に重大な誤りが発覚した場合、あるいは剽窃、捏造などの不正行為が発覚したり、疑われたりした場合に行われることがある。

論文取り下げは、論文の著者自らによって申請されることもあれば、学術雑誌の編集者の判断で取り下げが行われることもある。雑誌の規定により、取り下げの方法は異なっている場合があり、複数著者による論文の場合、取り下げには全員の同意が必要とされる場合もある。

科学誌「Nature」は、2011年に「Science publishing: The trouble with retractions」と題する記事の中で、掲載後に取り下げられる論文の数は増加しつつあると述べている。同記事によれば、2000年代初頭頃の論文取り下げの事例は年間30本程度であったが、2011年には400本以上の論文取り下げがあったという。しかも、これはあくまで問題が明るみに出た事例であって、世界中で実際に行われていると推測される捏造、改竄の実態の中では氷山の一角に過ぎないとも指摘されている。

論文の内容に誤りが見つかっても、それが論文取り下げには至らない程度の軽度の誤りだった場合、後の号でエラッタ(erratum)として訂正情報が掲載されることがある。また、いちど取り下げられた論文が、内容の再検討を経て再投稿、再掲載という形で発表され直す場合もある。

サイエンスライターのイヴァン・オランスキーとアダム・マーカスは、論文取り下げの過程を透明化する目的で、2010年から「Retraction Watch」というブログを運営し、論文取り下げの事例を調査・記録している。

2014年1月、「STAP細胞」に関する論文がNatureに掲載され、後にそのデータや写真の一部に誤りあるいは盗用の疑いがあるとの指摘があり、世間で大きく取り沙汰された。しばらく後、筆頭著者・小保方晴子を含む複数の著者が、論文取り下げの意向を示した。2014年3月14日の記者会見で、筆頭著者が所属する理化学研究所の野依良治理事長は、論文取り下げを視野に入れて調査を継続する方針を明らかにした。6月4日に理化学研究所は筆頭著者が主論文の取り下げに同意したと公表した。

関連サイト:
Retraction Watch
Science publishing: The trouble with retractions - Nature