2014年9月29日月曜日

マルチフェロイック物質

読み方:マルチフェロイックぶっしつ
別名:マルチフェロイズムを示す物質
別名:マルチフェロイック性を示す物質
別名:マルチフェロイックな物質
別名:マルチフェロイックマテリアル
別名:マルチフェロイックス
英語:magnetoelectric materials
英語:multiferroics

同時に複数の強的秩序状態を備える物質の総称。特に強磁性と強誘電性を併せ持った物質を指すことが多い。

いくつかの物質は、粒子や結晶格子の秩序化によって強磁性、強誘電性、強弾性、といった特性(フェロイック)を持つことがある。とりわけ強磁性や強誘電性は電子デバイスの記憶媒体(メモリ)などに応用されており、産業デバイスの分野などにおいて重要な素材となっている。

従来のフェロイック物質は、単一の特性を持つのみだったが、これらの特性を複数同時に持つマルチフェロイック物質が実現されれば、より高度なデバイスの開発につながると期待されている。

科学技術振興機構(JST)によれば、強磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイック物質は、「電場(電圧)により磁石の強度を制御でき、また、磁場によっても電気分極の強度を制御できるとい画期的な機能を持った物質」になるという。(JSTトピックスより)

米国メリーランド大学の研究チームは2000年代前半の研究においてマルチフェロイック物質をいち早く発見している。ただし、このとき発見されたマルチフェロイック物質はマイナス130度という極端な環境でのみマルチフェロイックの特性を示した。

2008年に科学技術振興機構(JST)は室温で強磁性と強誘電性の特性を同時に示すマルチフェロイック物質を開発したと発表している。JSTはこの発見によって1つのセルに複数の値を記憶できる多値メモリ、あるいはさらに画期的なデバイスの開発が期待できるとしている。

日本の物理学者・十倉好紀もマルチフェロイック物質の代表的な研究者の一人として知られている。十倉好紀は2014年に論文「新しいマルチフェロイック物質に関する先駆的研究」によってトムソン・ロイター引用栄誉賞に選出され、これによってノーベル賞候補と目されることになった。

関連サイト:
室温で働く強磁性・強誘電性物質を開発 - 科学技術振興機構報 第570号(科学技術振興機構) 2008年9月30日
2014年の「トムソン・ロイター引用栄誉賞」(ノーベル賞受賞者予測)を発表。理化学研究所の十倉好紀氏が再受賞 - トムソン・ロイター プレスリリース 2014年9月25日(日本時間)
十倉好紀 博士にトムソン・ロイター引用栄誉賞 - JSTトピックス 2014年9月25日