誹謗中傷とは、根拠のない悪口を言いふらして他人の名誉を損なう行いのことである。「誹謗」は「人の悪口を言う」ことであり、「中傷」は「根拠のない内容で人を貶める」ことである。厳密な意味は異なるが、どちらも悪意を持って他人を攻撃する行為である点は共通しており、類語の関係に位置づけられる。
日本では誹謗中傷の行為は名誉棄損の罪に該当する可能性がある。
誹謗中傷に直接に対応するような英語表現は見出しがたいが、「中傷」を意味する slander 、あるいは「名誉棄損」を意味する defamation が訳語として用いられる場合が多い。
誹謗中傷と類似した言葉に「批判」が挙げられるが、「批判」は善悪や正誤を見定めた上で指摘することであり、必ずしも悪意が含まれるとは限らない。他方、「誹謗中傷」は相手を貶めるという悪意が先行し、悪意によって行われる所業である。
誹謗中傷は匿名性の高い環境で飛び交いやすい。口伝ての噂話、あるいは投書、そして最近ではインターネット上のSNSなどが誹謗中傷の場となりやすい。なおウェブ上で発信した誹謗中傷が名誉棄損の罪に該当し得る場合、匿名の投稿だったとしてもプロバイダ(ISP)への開示請求を経て容易に発信者が特定される。名誉棄損は刑事罰になるため逮捕される可能性があり、被害者は民事で慰謝料請求に踏み切ることもできる。
もし自分が誹謗中傷を受ける側の立場に立たされた場合、そうした分野に明るい法律の専門家に相談することが推奨される。
誹謗中傷は、その内容が完全に事実無根のデマであっても、対象や周囲に少なからず影を落とす場合がある。かつてウェブ上の匿名掲示板で、あるお笑いタレントを殺人事件の犯人と決め付け、長期にわたり誹謗中傷を続けていた匿名ユーザーがいた。書き込みは10年近く続き、ウェブ上で誹謗中傷に加担した者を一斉検挙する事態にまで発展した。そして17歳から47歳まで19名が検挙されるに至った。