「いる」の敬語表現
「いる」の尊敬語は、「いらっしゃる」「おいでになる」です。「人や物がじっと動かないでいる、低い姿勢で静かにしている」という原義の動詞「いる」に、「れる」「られる」の助動詞を付け加えて尊敬語化した言葉です。「いらす」という語はないため、「いらっしゃる」が直接「いる」の尊敬語として使用されます。「いらす」を使用するのは誤りです。また、相手との関係から敬意が強すぎる場合に、不自然とならないよう「お……になる」との形式を取ることがあります。左記のことから、「おいでになる」は少し敬意を弱くしたいときに使われる尊敬語としても用いられます。「おいでになる」は、漢字では「御出でになる」と書きます。「いらっしゃる」「おいでになる」以外にも、「おられる」という言葉も「いる」の尊敬語として使用出来ます。しかし、「おる」という言葉は、関東では謙譲語として扱われ、関西では一般の動詞として扱われるなど、地方により「おる」という言葉の解釈が異なっています。そのため、人による「おる」の受け方が異なり違和感を招く場合があります。使用自体は間違っていませんが、「いらっしゃる」や「おいでになる」を使用する方が自然なコミュニケーションに繋がります。
「いる」の敬語の最上級の表現
「いる」の最上級敬語としては、「あらせられる」「いらせられる」という言葉が使用されます。「あらせられる」「いらせられる」は、漢字では「有らせられる」「入らせられる」と書きます。これは二重敬語で出来ています。二重敬語は、相手の動作を持ち上げる表現(尊敬語)に加えて、さらに「せる」や「られる」といった尊敬の助動詞を接続させた言葉です。この場合は、「あられる」「入られる」といった尊敬語に、「せる」「られる」の助動詞を接続した二重敬語となっており、「いらっしゃる」の意として使用されます。「いる」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「いらっしゃる」は、例えば手紙の中で「先日の出張の際はお世話になりました。その際には、〇〇にいらっしゃっており、お会い出来て嬉しく存じました。」という「居る」ことに対して尊敬の言葉を使って伝える時に使われます。また、その他にも手紙の前半の挨拶文の「初冬の候、貴社におかれましては益々ご清栄の事と心よりお慶び申し上げます。◯◯様におかれましてもお元気でいらっしゃいますでしょうか。」といった、手紙の相手自身の「状態・状況」に対して使用されることもあります。「おいでになる」は、例えば手紙の文中では「以前の出張の際に、現場に貴社の◯◯社長がおいでになっており、大変お世話になりました。」といった、手紙の相手の目上の人に対して使用する場合が多いです。この場合は「いらっしゃる」も使用できます。「おいでになる」は、目上の相手に対して直接使うのではなく、別の目上の人の「居る」ことを尊敬の言葉を使って訊ねたり伝える時に使用されます。
「いらっしゃる」は、目上の相手自身に対してだけではなく、別の目上の人について話をする時にも使用されます。
「いる」を上司に伝える際の敬語表現
上司に対して「いらっしゃる」「おいでになる」といった言葉を使う場合、「◯◯部長、先日の会議にはいらっしゃいましたか?」「◯◯部長、先ほど◯◯会社の◯◯様が1Fの受付にいらっしゃっていました。」「◯◯部長、今◯◯会社の◯◯様が我が社においでになっているようです。」「〇〇部長、今度のゴルフコンペの練習はされていらっしゃいますか?」などの表現で使用されます。「おいでになる」は、目上の人が「居る」状況を表す時に使われます。「いらっしゃる」は目上の人が「居る」状況だけでなく「何かをして居る」状況も含めて訊ねたり伝える時に使用されます。
「いる」の敬語での誤用表現・注意事項
「いる」の尊敬語である「いらっしゃる」と「おいでになる」は、いずれも「いる」以外に「行く」「来る」の意味の尊敬語としてもよく使用されます。「いる」「行く」「来る」といったいずれの使用でも、大きな誤用や違和感はないですが、「行く」や「来る」の意味合いで使用している場合は「いらっしゃる」や「おいでになる」よりも丁寧な尊敬語が存在します。「いらっしゃる」や「おいでになる」は、色んな意味で捉えられる使いやすい言葉ですが、その反面状況によっては丁寧さに欠ける言葉になってしまうこともあります。「いる」という意味合いで使用できているか気を付けておく必要があります。「いらっしゃる」をメールや手紙などの文書で使用する場合、漢字表記に注意が必要です。「いらっしゃる」は「居る」「行く」「来る」の意味を持った尊敬語ですが、語源は「入ってくる」を表す「入らせらる(いらせらる)」という尊敬語です。漢字で「居らっしゃる」と書くと間違いですので注意が必要です。また、「入らっしゃる」という漢字表記は正しいですが、見慣れない表現となるのでひらがな表記の使用が望ましいです。