「見る」の敬語表現
自分より立場が上の人が「何かを見ること」を「見る」という言葉でそのまま伝えるのは、日本語として不適切です。目上の人が動作の主体となっているにも関わらず、「見る」という言葉には相手への敬意が含まれていないため、目上の相手に失礼な表現となってしまいます。そのため、目上の人の「見る」という動作を伝えたい時には、尊敬語を用いた適切な敬語表現に置き換えることが必要です。目上の人の「見る」という行為を表す尊敬語としては、「ご覧になる」が一般的です。相手を上の立場に置いて、十分な敬意を示すことができる丁寧な言い回しで、ビジネスシーンでも頻繁に使われています。「ご覧」だけでも「見る」の尊敬語として成立するので、「ご覧になりましたか」「ご覧になってください」「ご覧いただく」などと言い換えをしても、目上の人に敬意が伝わる適切な敬語表現であることに変わりありません。
一方で、「見る」の尊敬語には、「見る」という言葉に、尊敬の助動詞「られる」を組み合わせた「見られる」という表現もあります。正しい敬語表現ではありますが、受身や可能の目的で使われる「見られる」と間違えやすく、相手を敬う度合いもやや低い言い回しです。そのため、「見る」を尊敬語に置き換える場面では、「見られる」ではなく、「ご覧になる」を選ぶ人が多くなっています。
「見る」の敬語の最上級の表現
「見る」を表す尊敬語には、「ご高覧(こうらん)」「ご賢覧(けんらん)」という特別な表現もあります。そもそも、「高覧」「賢覧」は、「他人が見ることを敬う」という意味を持つ言葉ですが、さらに尊敬を表す接頭辞「ご」が加わっていることで、非常に高い敬意を表すことが可能です。「ご高覧ください」「ご賢覧いただく」のほか、「ご高覧に供する」「ご賢覧に呈す」といった格調高いフレーズでも用いることができ、身分の高い人やご年配の方にも安心して使うことのできる最上級の敬語表現と言えるでしょう。ただし、日常ではあまり耳にしない改まった表現なので、フォーマルな手紙やビジネスメールなどの書き言葉として使うのが最適です。「見る」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「書類を見られて、ご質問などがございましたらお知らせください」「詳しい内容につきましては、添付ファイルでお送りしましたので、お手隙の際にご覧になってください」
「送付させていただいた見積書をご覧くださいますよう、お願い申しあげます」
「ご要望がございましたら、実物をご覧いただくこともできますので、その旨ご連絡くださいませ」
「お忙しいところたいへん恐縮ですが、ご高覧の上、明日までにご返信いただけますようお願いいたします」
「こちらの文書をご高覧に供すると共に、ご活用いただけましたら幸いです」
「先日は弊社の展示会をご賢覧いただきまして、誠にありがとうございました」
「見本の品をご賢覧に呈しますので、よろしくお願いいたします」
「見る」を上司に伝える際の敬語表現
上司が「何かを見ること」を表現する時には、「ご覧になる」などの尊敬語を使うのが妥当です。たとえ上司が目の前にいない時であっても、上司の「見る」という行為を表す時には、しっかりと敬意を払うことができる敬語表現を用いるようにしましょう。また、シチュエーションや目的に応じて、「お目通しいただけますか」「お読みになってください」といった意味の類似する尊敬語を使っても問題ありません。定型の敬語にこだわらず、上手く意思疎通が図れる適切な表現を選ぶことで、上司との円滑なコミュニケーションや、良好な関係を築くことにもつながるでしょう。「見る」の敬語での誤用表現・注意事項
「ご覧になる」をさらに丁寧に言おうとして、「ご覧になられる」と表現するのは文法的に誤りです。尊敬語の「ご覧」と「なられる」が重複して使われている二重敬語にあたり、ビジネスマナーでは不適切な表現とされています。同じく、「ご覧になりましたでしょうか」「ご覧くださいますでしょうか」なども、丁寧語+丁寧語の二重敬語で、敬語表現としては間違いです。二重敬語については、特に気にならないという人も多く、伝える相手によって判断は分かれますが、中には敬語が重なったくどい表現を不快に感じる人もいます。念のため、二重敬語を使うのは避けるようにして、誰からも受け入れられる正しい敬語表現を用いるようにしましょう。「見る」の敬語での言い換え表現
見られる見られた
見られました
見られます
見られましたか
見られますか
見られましたら
見られるのであれば
ご覧になる
ご覧になった
ご覧になって
ご覧になりました
ご覧になります
ご覧になりましたか
ご覧になりますか
ご覧になりましたら
ご覧になるのであれば
ご覧ください
ご覧くださいませ
ご覧くださいますか
ご覧くださいますよう
ご覧くださいましたら
ご覧いただく
ご覧いただいた
ご覧いただけますか
ご覧いただきます
ご覧いただけましたか
ご覧いただけましたら幸いです
ご高覧いただく
ご高覧いただけますよう
ご高覧ください
ご高覧くださいませ
ご高覧くださいますよう
ご高覧に供する
ご賢覧いただく
ご賢覧いただけますよう
ご賢覧ください
ご賢覧くださいませ
ご賢覧くださいますよう
ご賢覧に呈す
「見る」の尊敬語表現
「見る」の尊敬語表現として「ご覧になる」があります。古代の尊敬語「ご覧ず」が「ご覧になる」の由来です。上司や先生など目上の人が「見る」時に使われる表現です。また「見られる」という尊敬語表現もあります。「見る」の未然形「見」に、尊敬の意味を持つ助動詞「られる」が組み合わさってできています。「見られる」も「ご覧になる」と同様に目上の人が「見る」時に使用され、両方の言葉の意味に差異はありません。「見る」の尊敬語の最上級の表現
「見る」の尊敬語の最上級の表現として「ご高覧」があります。物事を高く持ち上げて見てもらうという意味です。「ご覧になる」が直属の上司など自分に近い目上の人に使うのに対し、「ご高覧」は管理職や取引先などさらに敬意を高めたい人に向けて使います。また「ご高覧」は名詞です。したがって単独で使うのではなく、「ご高覧ください」・「ご高覧賜る」・「ご高覧に供する」など他の語句と組み合わせて表現します。「見る」の尊敬語のビジネスメール・手紙での例文
「ご覧になる」の例文は以下の通りです。「当日はスクリーンに貴重な映像を映しますので、どうぞ皆様席について最後までご覧ください」「この度は私のプレゼンテーションを長時間ご覧いただき、誠にありがとうこざいました」「部長が一度現場をご覧くだされば、いかにひどい状況であるかがご理解いただけると思います」「見られる」の例文は以下の通りです。「先生は現在話題になっている映画はもう見られましたか」「我社のショールームを見られる場合には、ぜひ一言お声がけください」「同封した案内書を見られましたら、大切に保管してください」
「ご高覧」の例文は以下の通りです。「メールに画像を添付いたしましたので、ご高覧いただきたく存じます」「社長に拙作の資料をご高覧賜り恐悦至極に存じます」「私の制作した映画が皆様方のご高覧を拝しただけでも大変名誉なことでございます」
「見る」を上司に伝える際の尊敬語表現
「見る」を上司に伝える際の尊敬語表現として、「ご覧になる」・「見られる」・「ご高覧」を用いることが可能です。地位が高い上司には「ご高覧」を、身近な上司には「ご覧になる」・「見られる」を用います。相手の地位をよく確認してから表現しましょう。「見る」の尊敬語での誤用表現・注意事項
「ご覧になる」を用いる時に注意しなければいけないのは二重敬語です。「ご覧になる」は単体で尊敬語としての意味を持ちます。したがって「ご覧になられる」という表現は、尊敬語の「ご覧になる」と尊敬の助動詞「られる」が組み合わさっているため二重敬語となり不適切です。他方で「ご覧いただく」という表現は、尊敬語の「ご覧になる」と謙譲語の「いただく」の組み合わせのため、二重敬語には該当しません。「見られる」は尊敬以外にも多様な意味を持ちます。なぜなら助動詞「られる」は尊敬以外に、自発・受身・可能の意味を持つからです。例えば「手紙を見られましたか」という表現は2通りの意味に取られます。1つ目の意味は上司など目上の人に対して「手紙を見ましたか」、と尊敬の念を込めて問うています。2つ目の意味は「(誰かに)手紙の中身を見られましたか」、という手紙が主体となる受身の意味です。このように1つの文章で解釈が何通りにも受け取られるため、誤解を避けたい場合には「ご覧になる」を用いることをおすすめします。
「ご高覧」は地位の高い人に使う敬語表現です。したがって身近な上司に使うとかえって失礼に当たります。上司との距離感を考えて適切に使用しましょう。また「ご高覧」は書き言葉のひとつです。主に手紙やビジネスメールなどで用いられます。口頭での使用は違和感が生じる場合があるので、口語で伝える場合は「ご覧になる」を用いたほうが賢明です。