2022年1月24日月曜日

音読みと訓読みの違い

同じ一文字の漢字でも、読み方は一通りではありません。たとえば「生」という漢字は、「生命」のように「セイ」と読む場合、「生きる」のように「イ」と読む場合の二つに分けて使われています。これは、前者は「音」で読んでおり、後者は「訓」で読んでいるケースです。漢字にはこのように「音読み」「訓読み」の二つの読み方があるのです。

「音読み」「訓読み」の違い・概要

漢字はもともと中国から伝えられた文字です。日本に伝わったばかりのころは、当然のことながら読みようがなく、まずは中国語の発音に基づいた読み方をあてていきました。これが「音読み」です。たとえば「山」は中国語では「shan(シャン)」と発音しますが、この音を日本語として発音した読み方の「サン」に定めたというぐあいです。

これに対して「訓読み」は、漢字にそのまま日本語の読み方をあてて読む読み方をいいます。「山」を「ヤマ」と読む読み方ですが、日本語をそのままあてることで漢字の意味がとても分かりやすく伝わることになります。

「音読み」「訓読み」の意味・読み方は?

「音読み」は「オンヨミ」、「訓読み」は「クンヨミ」とそれぞれ読みます。音は「音色」のような意味で、中国から日本に伝来して国語化した漢字の発音を表します。訓にはもともと「文章や字句をわかりやすく読み解く」といった意味があり、漢字に日本語の語をあてた読み方という意味を示します。

中国の発音を取り入れて日本語の読み方としたのが「音読み」ですので、日本に伝わった時代によって、漢字の音も変化しています。漢字は仏教の伝来とともに4世紀ごろ朝鮮半島を経由して伝わったとされていますが、中国では魏呉蜀の三国時代にあたり、このころの音読みは中国南方から伝わったものが定着していたといわれています。この読み方を「呉音」といいます。時代が下り儒教や仏教を輸入し始めた6世紀から7世紀にかけて漢字の識字層が大きく広がりましたが、このころは遣隋使や遣唐使などによって中国との文化交流がいっそう盛んになり始めた時代にあたります。時を同じくして伝えられたのが「漢音」で、主に北方系の発音に基づいた音読みとなります。さらに鎌倉時代以降になると、禅宗の留学僧らによって「唐音」も伝えられました。このように「音読み」には様々な種類があり、一つの漢字にも多くの読み方があるわけです。

「訓読み」は、漢字に日本語の読み方をあてたものです。漢字の意味と読み方が一致しているため聞いただけで内容が伝わりやすいという特徴があります。なお、漢字を組み合わせて熟語を作る場合、訓は訓、音は音で統一して読むのが基本ですが、中には訓と音、音と訓の組み合わせで読むものもあります。「湯桶」を「ユトウ」と訓+音で読む場合、「重箱」を「ジュウバコ」と音+訓で読む場合などがそうです。前者のような読み方を「ユトウヨミ」、後者を「ジュウバコヨミ」と呼びます。

「音読み」「訓読み」の使い方、使い分けは?

「音読み」する漢字は難解で堅苦しい印象を与え、主に行政や法律など公式的な場で用いられることが多いものです。一方「訓読み」する漢字は、日常的に使われ、柔らかく口語的な印象を与えます。このように「音読み」と「訓読み」を使い分けるには、まずその読み方がどちらの読み方なのかを見分ける必要があります。見分け方には次のようなものがあります。

まず、漢字の読みだけで意味が分かるのは訓読みです。前述したように、訓読みは漢字の意味と読みが一致した読み方です。「山」を「やま」と訓読みすればすぐにわかりますが、「サン」と音読みするとすぐには漢字を特定しにくいといったぐあいです。次に、送り仮名がつくものには訓読みするものが多く見られます。漢字を日本語の読みにあてはめたものが訓読みなので、送り仮名を送って意味を補うような読み方をするのはほとんどが訓読みです。

また、小さく発音する拗音は除き、発音する字数が2字以下であれば音読み、3字以上なら訓読みという見分け方もあります。加えて読み方の中に拗音が入っていればそれは音読みです。さらに、読み方の終わりに注目する方法もあります。末尾が「ウ・ク・イ・ツ・チ・キ・ン」のときには音読みである場合が多いです。末尾ではなく始まりが「ラ行」や濁音の場合もほほ音読みだとわかります。このほか、音読みには熟語が多いという特徴があります。これには、漢字一文字を音読みした場合だと、ほかにも同じように発音する語が多く、なかなか意味が特定しにくいという理由から、漢字を組み合わせて意味をとりやすくしたという理由があります。

「音読み」「訓読み」の用例・例文

「音読み」には呉音、漢音、唐音それぞれの用例があります。例えば同じ「行」という漢字でも呉音では「行事」を「ギョウジ」、漢音では「行動」を「コウドウ」、唐音では「行脚」を「アンギャ」と読み分けるような例です。ほかにも、「頭」なら、呉音では「頭痛」を「ズツウ」、漢音では「冒頭」を「ボウトウ」、唐音では「饅頭」を「マンジュウ」に、「明」なら呉音で「明日」を「ミョウニチ」、漢音で「明治」を「メイジ」、唐音で「明」を「ミン(国名)」と読み分けています。

また、上記の「行」「頭」「明」の例を「訓読み」にすれば、「行」は「イク・ユク・ オコナウ」、「頭」は「アタマ・ カシラ」、「明」は「アカリ・ アカルイ・ アカルム・ アカラム・ アキラカ・アケル・ アク・アクル・ アカス」となります。

このほか、「音読み」「訓読み」という言葉自体の例文としては、次のようなものがあります。
・大神宮・神宮・宮・神社・社など。 音読みで社号を読むのは仏教の影響である。(小野不由美『黒祠の島』より)
・やっかいなのは、漢字の訓読みではないかな。(星新一『あれこれ好奇心』より)