2022年1月24日月曜日

給与と給料の違い

「給与」「給料」の違い・概要

「給与」と「給料」はどちらも「雇い主から支給される報酬」であり、「どこまでを含むか」という範囲によって意味や使い所が違います。

おおざっぱに言えば、給料は給与の一部として考える事が可能です。給与は雇い主が従業員に対して与えるあらゆるものが含まれています。そのため、理屈の上では金銭のみでなく現物支給も給与と呼んで問題ありません。一方、給料は雇い主が従業員に対して支払う基本となる金銭の事であり、いわゆる「月給」とほぼ同義と考えて良いでしょう。

「給与」「給料」の意味・読み方は?

「給与」は(きゅうよ)、「給料」は(きゅうりょう)と読みます。「給与」の定義は「労働の対価として雇い主が従業員にしはらうすべてのもの」です。「給」には「金品などを下し与える」という意味があり、「与」は「物事の対価として金銭などをあてがう」という意味を含んでいます。したがって給与という言葉は似た意味の字が2つ連なって構成されているものです。また、給与に該当するのは基本給(月給)だけではありません。年に数回のボーナス・残業代・各種手当てなどはすべて給与という言葉に含意されているので覚えておきましょう。所得税法では給与所得を「俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」と定義しています。 「料」にも「ある事に対して支払う代金・金銭」という意味が含まれているため、言葉の構造としては給与と大きな違いはありません。しかし、給料にはボーナスや残業代といった加給分は含まれていないという点には注意が必要です。給料に各種手当てを加算したものが給与として毎月従業員に支払われている事になります。日本では一般的に給与が支給される日の事を「給料日」と呼んでいますが、これは慣習的に根付いたものであり正確な言い回しではないと言えるでしょう。実際に支払われているのは給料ではなく「給与」なのです。

「給与」「給料」の使い方、使い分けは?

「給与」と「給料」は日常会話においてさほど意識されていませんが、主に企業側が展開する求人情報や契約書において厳密に使い分けられています。例えば様々な企業の求人情報を見てみると、ほとんどの場合「給与・待遇」「給与体系」という言葉が用いられている事が分かるでしょう。これは企業側において各種手当てや賞与の制度が整えられているため、従業員に支払う金銭に基本給以外の加給が行われるためです。また、給与は最終的に従業員の懐へ入る事になる「手取り」の計算にも用いられます。手取りとは給与から社会保険・所得税・住民税といった各種天引きを行った後のものなのです。 また、給与はさらに「給与収入」「給与所得」の2種類に細分化しています。給与収入とは従業員が年間を通して受け取るすべての金銭の事であり、一般的には「年収」と同義です。一方給与所得とは給与収入から仕事上必要になった経費を差し引いたものになります。ここで言う経費とは交通費・飲食費・接待費などです。給与所得の計算には社会保険をはじめとする天引き分は考慮されないという点には注意しておきましょう。したがって「給与所得」と「手取り」は別物となります。 現代社会において「給料」という言葉は、多くの場合慣習的に用いられる事が多いと言えるでしょう。「給料日」「給料袋」といった派生語がありますが、これらについても実際に支給されているのは各種手当てや残業代が加給された「給与」です。戦前の日本において会社員は完全月給制で働くというスタイルが基本となっていました。欠勤・残業・休日出勤によって収入が変動する事がなかったのです。当時は税金の支払いも個々人が行うものであったため、毎月の収入が固定となり「給料」という言葉が用いられていました。「給与」と「給料」が使い分けられるようになったのは、日本において残業代・手当て・税金の特別徴収制度などが整い始めてからです。

「給与」「給料」の用例・例文

「給与」には基本給以外にも様々な要素が含意されているため、企業が用いる正式な文書や税金関連の手続きで用いられるケースが多いです。用例には「給与体系については面接時に詳しくご説明します」「給与所得については支給された源泉徴収票を参照する事」「給与所得控除は2020年に一律10万円の引き下げが実施された」とったものが挙げられるでしょう。「給料」という言葉については正式な書類において使われる事は少なく、日常会話で慣例的に登場する場合が多いです。「今月は給料が少ないからちょっと生活が苦しいよ」「給料が入ったら、みんなでどこかへ遊びに行こう」「給料日が待ち遠しい」などのように用いられるケースが散見されます。ただし、ここでいう「給料」がほとんどの場合実際には「給与」である点には十分留意しておきましょう。