2022年1月24日月曜日

パートと正社員の違い

労働形態を意味する言葉に「パート」と「正社員」があります。いずれもビジネスシーンでは日常的に使われています。ただし、明確な定義をしっかり説明できない人も多いのではないでしょうか。その人の立場を踏まえるうえで、パートと正社員を混同するのは望ましくありません。この記事では、パートと正社員の違い、使い分けなどを解説します。

「パート」「正社員」の違い・概要

もっとも大きな違いは、正規雇用かどうかという点です。パートは主に、非正規雇用者を意味する言葉です。その中でも、長期的に契約し、働く人をパートと呼ぶことが一般的です。パートは1日あたりの労働時間が短く、2~5時間程度の出勤で給料をもらうこともあります。一方、正社員とは企業と正規雇用の契約を果たしている人物です。正社員はフルタイムで働き、能力にしたがって役職を与えられます。「会社員」という呼び方をするときは普通、正社員を指しています。

「パート」「正社員」の意味・読み方は?

パートは「ぱーと」と読みます。語源は、英語の「Part-Timer」です。「部分(Part)的に働く人」という意味で、Part-Timerは使われてきました。毎日、決められた労働時間をこなすFull-Timerとは逆の働き方だといえます。Part-Timerが日本に伝わったとき、略して「パート」と呼ぶようになりました。なお、パートと似た意味の言葉に「アルバイト」があります。いずれも非正規雇用の労働者という点は同じです。ただし、アルバイトは1日あたりの労働時間が長く、短期間で次の職場へと移る傾向にあります。1日の労働時間が短いかわりに、長く勤続するパートとは違ったニュアンスで使われる言葉です。

一方、正社員は「せいしゃいん」と呼びます。意味は「正規雇用の社員」、もしくは「正式な社員」です。正社員は企業と正規の雇用契約を結んでおり、パートやアルバイトよりも大きな責任を負います。現場で中心になり、業務をこなしていくのが正社員です。責任や労働の見返りとして、正社員はパートやアルバイト以上の給料を支払ってもらえます。最初はパートやアルバイトとして働き始め、やがて正社員に登用されるケースもあります。

「パート」「正社員」の使い方、使い分けは?

原則として、正規雇用がなされている従業員は正社員と表現します。ただし、正社員として入社した人物が、後にパートとして働き始めることも少なくありません。たとえば、本人が定年退職後も勤続を希望した場合です。企業側にも「まだ現場に残ってほしい」という意思があったとすれば、パートの立場で再契約が結ばれます。このとき、「パートタイム労働法」という法律が適用されます。パートタイム労働法は、短い時間で働く人についてのルールです。法律の範囲内で、パートは能力や経験を生かせる部署に配属されるのです。ちなみに、パートで働いていた人が、能力を認められて正社員になることもあります。

なお、「パートは正社員と違って退職金を受け取れない」「ボーナスがない」といった意見もあります。ただ、これらの考え方は厳密にいうと正しくありません。なぜなら、退職金やボーナスの支払いに、法的な強制力はないからです。正社員であっても、退職金やボーナスを受け取れない職場は少なくありません。その一方で、パートにも退職金やボーナスを用意しているところもあります。パートと正社員を使い分ける際は、あくまでも労働時間と正規雇用契約の有無に注目しましょう。

そのほか、仕事内容や出勤時間、日数について「融通がきくかどうか」もポイントです。パートはフルタイムでの契約をしていないので、希望が認められれば好きな時間帯、日数で働けます。さらに、仕事内容についても「責任重大な作業はしたくない」といった要望を伝えられます。その結果、パートには軽作業や補助作業がまわされることも珍しくありません。それに対し、正社員には正規雇用を結んでいる責任があります。正社員は社則で決められた労働時間を満たさなくてはならず、重要な仕事を雇い主から優先的に任せられます。現場でパートやアルバイトに指示を出すのも、正社員に課せられている役目のひとつです。

「パート」「正社員」の用例・例文

以下、パートという言葉を使った例文です。

「パートになってからは、楽な仕事が多くてだらけてしまう」
「専業主婦をしていたが、空き時間でできるパートを探すようになった」
「パートで貯めたお金で、高級なバッグを買おうとしている」

なお、パートには「短い労働時間で給料をもらう人」から派生した、揶揄の意味合いもあります。パート契約を結んでいるわけではない人に、「パート」と使うときは皮肉が込められているといえるでしょう。たとえば、

「あの選手は試合にほとんど出ていないパートのくせに、給料だけはたくさんもらっている」

といった文脈です。

次に、正社員を用いた例文です。

「正社員として採用され、やる気に満ちている」
「アルバイトでは話ができないので、正社員を呼んでほしい」
「正社員なのに、ずいぶん気楽な仕事をしている」

一般的に、「サラリーマン」「ビジネスパーソン」といった呼び方をするときは、ほとんどが正社員を意味しています。たとえば、

「サラリーマンになって5年、ようやく昇進のチャンスが訪れた」

といった文章は、正社員のことだと考えられるでしょう。