2022年1月24日月曜日

過料と罰金の違い

「過料」と「罰金」はどちらも、何らかの法令に違反した際に金銭の支払いを命じられることを指します。過料は行政罰で罰金は刑事罰であるという違いがありますが、混同されやすい言葉ではないでしょうか。ここでは「過料」「罰金」それぞれの言葉の意味を説明し、正しい使い分けや、実際にどのような時に使われるのかを用例や例文も合わせて解説をしていきます。

「過料」「罰金」の違い・概要

過料は軽微な行政法違反をした者が支払う金銭のことで、刑法は適用されません。自治体の条例に違反したり、行政上の手続きなどの義務を怠った場合に科せられます。社会の秩序やルールを守るための罰、ペナルティという性格をもちます。罰金は窃盗や器物損壊などの犯罪行為に科せられる財産刑の一つです。金銭を支払わせる刑罰で、科せられた者には前科がつきます。過料は前科がつかず、罰金は前科がつくところが大きな違いです。

「過料」「罰金」の意味・読み方は?

過料の読みはカリョウで、訓読みで「あやまちりょう」と読むこともあります。「過」はカ、あやまち、すぎると読み、サッと通り過ぎる、勢い余って度を超す、すべってやりそこなうといった意味を持つ漢字です。熟語で「過失」となると、わざとではなく不注意によって犯してしまったしくじりを指します。過料は江戸時代、過失の償いとして金銭を支払わせるという庶民向けの刑でした。現代でも行政上における軽い禁令を犯した者に支払わせる金銭のことを過料と言っています。

罰金はバッキンと読みます。「罰」という字はバツ、バチと読み、罪を懲らしめるための報い、制裁、仕置きといった意味があります。もともとは罪を叱って刀で刑を加えることを指しました。罰金は窃盗や傷害、器物損壊などの犯罪行為の罪として支払わせる金銭のことで、刑法、刑事訴訟法が適用される財産刑という刑罰の一つです。罰金が科せられると前科がつきます。犯罪に対する制裁としての金銭という意味合いなので、過料よりも重みのある言葉と言えるでしょう。

なお、過料と同じく「カリョウ」と読む言葉に「科料」があります。過料と区別するために「トガリョウ」とも読みます。科料も罰金と同じく刑法上の罰で金銭の納付を命じられます。科料は千円以上1万円未満、罰金は1万円以上の納付をいい、支払う金額によって使い分けられています。

「過料」「罰金」の使い方、使い分けは?

過料は「過料を科せられた」「過料に処する」「過料を納付する」などのように表現します。使い方は「条例で禁止されている路上喫煙をしてしまい過料を納付しなければならない」などです。過料は行政上の法令違反をした者への軽微な罰則で、制裁や報いという意味ではあまり使われず、窃盗などの刑事事件に当たる犯罪に対しても使われません。

過料が科せられる法令違反とは、戸籍や住民票などの届け出を怠ったり、路上喫煙禁止区画でタバコのポイ捨てをして自治体の禁止条例に違反するなどです。科せられる金額は規定により裁判所が決定しますが、それほど高額でないことがほとんどです。過料は行政上の秩序を維持するために、ルール違反や義務違反に対して少額の金銭を徴収するというペナルティです。

罰金は「罰金を支払う」「罰金を徴収する」「罰金に処する」などの言い方が一般的です。親しい者同士で「ルールを破ったら罰金ね」などと使うときは、守るべき事柄に違反した行為をこらしめる、罰としての金銭という意味合いです。「被告人に罰金十万円の支払いを命ずる」「窃盗で罰金刑になり前科がついてしまった」「スピード違反で逮捕されて罰金を支払うことになった」などと使う場合は犯罪の処罰として科せられた金銭という意味です。

刑法としての罰金は、犯罪ごとに「○○万円以下」と刑法などで定められています。罰金が支払えないと身柄を拘束され労役場留置となります。罰金分に相当する労働日数が定められ、その期間の労働を終えるまでは労役場を出られません。過料の場合は労役場留置にはなりませんが、支払わないでいると財産が差し押さえられます。

また行政法違反であっても悪質な場合は罰金に処せられます。例えば独占禁止法違反や不正競争防止法違反などでは法人に対し数億円という罰金が科せられたケースもあります。

「過料」「罰金」の用例・例文

「過料」「罰金」の用例や例文としては次のようなものがあります。

・「過料は金銭罰の一種だが刑事罰ではない」
・「市の迷惑条例に違反したとして過料を科せられる」
・「過料の対象となった行為にやむをえない事情があるなど、過料決定に不服のある場合は一週間以内であれば異議申し立てができます。」
・「過料の金額は、法律で決められた範囲内で裁判所が決定をしています。」
・「罰金刑とは刑事罰の一種で、国に罰金を納めなければなりません。日本の裁判で有罪となると約80%が罰金刑となります。」
・「罰金は、罰金に科せられた本人が一括で支払います。分割はできません。罰金の督促を無視すると、強制執行が行われ財産を差し押さえられます。」
・「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」
・「今度から遅刻をしたら罰金を取るからね」