2022年1月25日火曜日

修正と訂正の違い

「修正」や「訂正」という言葉は、日常生活、特にビジネスシーンでよく使用される単語です。しかし、両者の違いを聞かれてすぐに答えられる人は多くないのではないでしょうか。実は、「修正」と「訂正」には、決定的な違いがあり、これを誤ると、相手方に失礼な表現になってしまう可能性もあります。両者を混同しないために、漢字の意味や成り立ち、一般的な用例を比較しながら、「修正」と「訂正」の違いについてご説明します。

「修正」「訂正」の違い・概要

「修正」と「訂正」は、よく似た意味を持つ言葉です。共通する字は「正」であり、どちらも「正しい状態に直す」ことを意味しています。しかし、何をどのように直すかという点において、若干異なる意味合いを持っています。

「訂正」という言葉は、正誤がはっきりしている場合に、明らかな間違いを直す場面で使います。これに対し、「修正」という言葉は、間違いを直すことだけでなく、もっと良い状態にするために直したり、補ったりすることも含んでいます。「訂正」は、直す対象に関して、明らかな誤りに限定されているので、「修正」よりも狭い意味をもつ語です。

「修正」「訂正」の意味・読み方は?

「修正」は、すべて音読みで、「しゅうせい」と読みます。不十分な部分や、良くない部分を直して正しい状態やもっと良い状態にするという意味です。「修正」の修の字は、訓読みで「おさめる」と読み、「修飾」や「補修」、「研修」などの語に用いられ、形を整える、飾りや模様をつけるという意味があり、そこから派生して、学問や技術を身に着けるという意味もあります。「修」は、人名にもよく使われていることからも分かるとおり、良い意味合いを含むポジティブな字です。

「訂正」は、すべて音読みで、「ていせい」と読みます。言葉や文章、数字などの情報に明らかな間違い、誤りがあった場合に、それを正しい情報に直すという意味です。「訂正」の訂の字は、訓読みで「ただす」と読みます。この漢字のつくりは「丁」という字ですが、これは頭が平らな釘の形を模した字であり、そこから派生した「訂」は、釘を打って、正しい状態に安定させることを意味する字です。

「訂」は、あくまでも「正しさ」への安定を目指しているのに対し、「修」は、単なる正しさから一歩進んで、美しさや形の良さを目指しているという点に、両者の違いが表れています。

「修正」「訂正」の使い方、使い分けは?

「修正」と「訂正」の使い分けについて、ビジネスの場面などで、書類の内容を確認した結果、一定の「直し」があった場合を例に考えてみましょう。

例えば、相手方に、「もっとユーザーの目線に立った文章に修正してほしい」、「言葉遣いが堅すぎるので、平易に修正してほしい」、あるいは「フォントサイズを大きくして見やすく修正してほしい」など、誤りがあるわけではないが、もっと良くするために内容や体裁を整えてほしいということを伝えたい場合には、「修正」という言葉を使うのが適切です。

一方、「訂正」は、明らかな間違いがあり、正しい情報にする場面で使用します。例えば、「商品Aではなく商品Bが正しいので、訂正しました」とか、「金額が10万円となっていましたが、100万円が正しいので、訂正しました」というような場合です。また、公的な書類や契約書などに字句の誤りがあった場合、訂正箇所に二重線を引き、正しい字句をその上に記入して、訂正印を押印することがありますが、それも良い例です。

このように、「訂正」は、明らかな誤りがあることを前提とした語なので、ビジネスシーンで先方に何かを依頼する場面で「訂正」の語を使うと、先方の行為に誤りがあることが強調され、失礼な態度だと受け取られることもあります。このため、「訂正」は、相手への対抗姿勢を示して誤りを指摘するような場面を除けば、自ら誤りを直す行為について使うことが一般的です。

なお、「修正」という言葉は、「訂正」が表すような明らかな誤りを直すという意味も含んでいるので、「訂正」の語を使用する場面で「修正」を使用することも、誤りではありません。ですから、先方に依頼する場合には、明らかな誤りであっても、「10万円を100万円に修正してほしい」と伝えるのが、ビジネスシーンにおいては無難です。

逆に、「修正」で表されるような、明らかな誤りがなく、内容をより良くするための直しについて、「訂正」の語を使うのは、適切ではありません。例えば、「よりインパクトのある内容になるように、訂正しました」という文章は適切ではなく、この場合、「訂正」ではなく、「修正」の語を使うべきです。

「修正」「訂正」の用例・例文

「修正」については、以下のような用例があります。単なる情報の一部の差し替えというよりも、幅広く、内容や方向性について全体的な見直しが行われている事例が多いことが分かります。
・より迅速な避難を可能とするため、本市の防災計画を修正しました。
・法改正により、プログラムの修正が必要になりました。
・話が脱線したので、論点を整理しながら、軌道修正します。

「訂正」については、以下のような用例があります。誤った情報と正しい情報があることが前提となっていることが分かります。
・先月号の内容に下記のとおり誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
・契約書の訂正は、訂正箇所に二重線を引き、契約書に捺印したものと同一の印を訂正印として、ご捺印ください。
・業務マニュアルの訂正版を公表しました。