2022年1月25日火曜日

司法書士と行政書士の違い

法律の専門家を頼る際には様々な選択肢がありますが、それぞれに専門分野が異なるため適切な依頼先を見極める事が重要です。中でも「司法書士」と「行政書士」は名前が似通っている事から、どのような違いがあるのか分からないという人も多いでしょう。以下に司法書士と行政書士の違いやそれぞれの使い方について解説します。

「司法書士」「行政書士」の違い・概要

司法書士と行政書士の大きな違いとしては、まず取り扱う事の出来る業務内容が挙げられます。両者が共通して行う事の出来るものもありますが、細かい業務内容が異なるので注意が必要です。また、司法書士と行政書士は国家資格である点では共通していますが、資格の取得方法が大きく異なるので留意しておきましょう。両者共に試験に通過するというアプローチだけでなく、所定の公的機関で実務経験を積む事で資格を取得する方法もあります。

「司法書士」「行政書士」の意味・読み方は?

司法書士は「しほうしょし」と読み、「司法」+「書士」という熟語の構成になっています。司法とは立法・行政と併せて日本の「三権分立」を成している要素の一つであり、裁判において具体的な裁定を下すために運用されるものです。書士という言葉は書類を扱うスペシャリストを指しているため、司法書士は「裁判・法務に関わる書類を扱う専門家」という意味になります。資格を取得して業務に従事するためには司法書士試験に合格するのが基本的なアプローチです。または、裁判所もしくは検察庁で事務官として10年以上の実務経験を積む事で法務大臣の認定が下ります。例年の合格率はおおむね4%前後、試験合格に必要とされる平均学習時間は約3000時間とも言われている難関国家資格です。

行政書士の読み方は「ぎょうせいしょし」であり、「行政」+「書士」という組み合わせで成り立っている言葉です。行政も三権分立の一つとして機能しており、具体的には法律・条令や条約・協定に基づいて、国家や自治体が執る手続きの事を指します。行政書士は法的根拠に基づいた書面の手続きにおいて、各自治体・行政機関と国民とを繋ぐ役割を果たす資格です。行政書士になるには行政書士試験に合格する、あるいは国家公務員・地方公務員として17年~20年以上の行政事務経験を積む事が求められます。例年の合格率は13%前後で推移しており、試験突破に必要とされる平均学習時間は約800時間です。

「司法書士」「行政書士」の使い方、使い分けは?

司法書士と行政書士は取り扱い可能な業務に違いがありますが、共通して担当可能なものも多数存在しています。例えばどこの家庭でも起こりえる相続・遺言関係の手続きで言えば、「遺産分割協議書作成」「相続人の調査・確定」「遺言書作成」といった手続きは司法書士でも行政書士でも行う事が可能です。また、会社を設立する際に必要となる「定款作成」「公証人役場における認証手続き」といった業務も、両者共通の業務となっています。

両者の明確な違いは、まず司法書士に「登記業務」が独占的に割り振られているという点が挙げられます。登記業務とは主に土地・建物などの所有権を明確にするための手続きであり、これは司法書士でなければ行う事が出来ません。相続・遺言関係の業務では「相続の登記」「相続放棄手続き」などが司法書士の専門分野となります。同様に、会社設立にあたって法務局に届け出る登記業務も司法書士であれば遂行可能です。司法書士は「不動産・商業登記の専門家」として知られているので留意しておきましょう。また、司法書士は請求額が140万円以下の民事訴訟であれば代理人業務を行う事も出来ます。

一方、司法書士が担当出来ない行政書士の専門分野は主に「官公庁・自治体での認可手続き」であるとされています。例えば多くの国民が利用する各自治体での認可手続きには、行政書士に依頼する必要があるものも少なくありません。また、「外国人ビザの申請・帰化手続き」や「自動車登録・車庫証明」といった自動車関連の手続きも、行政書士であれば依頼可能ですが司法書士は管轄外となっています。行政書士が扱う事の出来る書類の数は1万種類に上るとも言われており、国民の日常生活における認可手続きの大部分を代行可能なのです。なお、こうした司法書士と行政書士の業務における類似性や相違点を考慮し、両方の資格を取得する「ダブルライセンス」と呼ばれる事業者も存在しています。

「司法書士」「行政書士」の用例・例文

司法書士は裁判や相続に関わる場面で活躍する専門家であるため、「遺産相続手続きを司法書士に依頼する」「裁判の代理人について、依頼先を弁護士にするか司法書士にするか悩んでいる」といったように用いられる事が多いです。国内有数の難関資格である事から「息子が司法書士試験に合格したので誇らしい」「来年は司法書士試験に挑戦するつもりだ」などのように話題の中心としてフォーカスされるケースもあります。行政書士の業務範囲は多岐に及ぶ事から「ビザ申請のために行政書士を頼る」「区役所へ提出する書類について行政書士の判断を仰ぐ」「実務的な法律知識を身に付けるため、行政書士の資格取得に向けて学習する」など、幅広い用例が挙げられるでしょう。