2022年1月25日火曜日

足と脚の違い

「足」と「脚」はどちらも「腰から下の二本に分かれている部分」を示す語です。「足」は特に「足首から下の部分のみ」を表せる語です。また、「脚」は元来「膝から下の部分」だけを表す言葉でした。今日では「足」と同じく全体を表せますが、もともとは太ももやお尻の部分は「脚」の対象外だったのです。

「足」「脚」の意味・読み方は?

「足」も「脚」も主な読み方は同じで、「あし」と読みます。その他に、「足」には音読みで「ソク」、訓読みで「た(りる・る・す)」という読み方があります。例を挙げれば、「俊足」「足し算」などです。一方の「脚」には、音読みで「キャク」「キャ」という読み方があります。例を挙げれば、「脚本」「脚立」などです。

「あし」の意味を国語辞典で調べると、「足・脚」としてまとめられて記載してあります。意味は同じで、動物の胴から分かれ出て、歩いたり身体を支えたりする部分を表す名詞です。人間では腰から下の二本に分かれ出ている部分全体をいいます。しかし、「机の脚」のように、本体を支えるものという意味では動物だけでなく物体にも使われます。この場合は、「足」よりも「脚」が多く使われます。

その他、「足として自転車を使う」というように移動手段や交通機関の意味を表したり、「客足が遠のく」というように行くこと・来ることを意味することもあります。さらに、「お足」という言い方をすれば金銭という意味も持ちます。これらの意味で使う場合は、「脚」ではなく「足」を使います。また、「あの子は足(脚)が速い」というように、「足(脚)」だけで歩くことや走ることを示すこともできます。

「足」「脚」の使い方・使い分けは?

国語辞典では一つにまとめて記載されるほど、「足」と「脚」は似た意味を持ちます。日常会話の中で「あしが痛い」と言われても、その「あし」がどちらの「あし」なのか分かりませんし、気にする人もいないでしょう。しかし、両者には、ある点で明確な違いがあります。一般には「足」を使う機会の方が多いですが、「脚」と表記する方が適切な場合、または「足」と表記しなければならない場合もあるのです。

まず、両者が表せる部位には若干の違いがあります。腰から下の全体を表せるのは「足」も「脚」も同じですが、足首から下を示す場合には「足」の方しか使えません。そのため、足首を挫いた場合には「脚の捻挫」ではなく「足の捻挫」となります。同じ理由で、「脚の指」という表現は不適切です。正しくは「足の指」です。また、「脚音」も間違いで、「足音」となります。なぜなら、歩いた時に音がなるのは必ず「足」の部分だからです。

また、「脚」はもともと、膝から下の部分のみを表す言葉でした。それが今では足全体の意味でも使われますが、本来の意味にこだわるのであれば太ももを痛めた場合に「脚が痛い」と書くのはやめておきましょう。ちなみに、「足」「脚」と似た意味を持つ漢字として「肢(シ)」があります。しかし「肢」は「四肢」というように腕の部分まで含んだ意味を持ちます。使い分けとして、哺乳類には「肢」、昆虫には「脚」を使う場合もありますが、哺乳類に「脚」を使ってもなんの問題もありません。

「脚」と表記する方が正しい場合は、支える対象が物体であるときです。たとえば「机の足」よりも「机の脚」と表記する方が適切です。また、漢字には上下に分けられるものがありますが、その下側の部分を「脚」と呼びます。「思」という漢字なら「心(したごころ)」の部分、「点」という漢字なら「灬(れっか)」の部分が「脚」に当たります。

そして、「足」という漢字を使った慣用句は非常に多くあります。腐りやすいという意味の「足が早い」や、歩き続けて疲れたという意味の「足が棒になる」、悪事から離れるという意味の「足を洗う」など、有名なものも多いですが、これらの「足」を「脚」で代用することはできません。

「足」「脚」の用例・例文

「足」と「脚」を使った例文を、以下に挙げます。

「足」でも「脚」でも、どちらでも使える場合。
・あの人は足(脚)が長い。
・脚(足)が太いのがコンプレックスだ。
・足(脚)の速い男の子は人気がある。
・脚(足)を伸ばしてくつろぎたい。

「足」を使う場合。
・雪道で足を滑らせて転んでしまった。
・足の裏がかゆい。
・友人からの提案を足蹴にしてしまった。
・足音を殺して歩く。

「脚」を使う場合。
・テーブルの脚を掴んで持ち上げる。
・「音」という漢字の脚は「日」だ。
・昆虫には六本の脚がある。